天使と悪魔の暇潰し
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#225 [匿名]
「あぁ。とてもありがたいのですが、話すことが苦手な子なので、あなたには会うかどうか…。でも、どうぞ。せっかくですので上がってください。」
結構簡単に家に入れてくれた。とても綺麗で、埃一つないほどだ。居間でお茶を入れてくれ、息子に声をかけてきますね、と二階に上がって行った。
僕は二人の会話を聞くことにした。
:10/12/26 12:15 :F06B :☆☆☆
#226 [匿名]
「たけるー?お友達がきてるわよ。」
ドアをノックして、中には入らずにターゲットに声をかけている。ターゲットは「たける」というらしい。
「……………」
ターゲットの部屋からは何の声も聞こえて来ない。無視している。
「たけるー?」
母親はもう一度呼び掛けた。
その瞬間ドンっと何かがドアに当たる音がした。たまらず短い悲鳴をあげてしまった母親や、何も言わずに僕達がいる居間に下りてきた。
:10/12/27 17:07 :F06B :☆☆☆
#227 [匿名]
だいたいの予想はつく。
ターゲットは母親との会話を拒否し、僕たちとの面会も拒否した。
昨日会った時の印象と、何も変わらない。ただただ、不愉快だった。
「ごめんなさいねぇ。あの子いつもあんな感じなのよ。」
母親は苦笑しながら言う。そして遠回しに帰ってくれないかしら、と僕に伝えて来た。
:11/01/03 22:46 :F06B :☆☆☆
#228 [匿名]
僕には帰る気などなかった。もし僕が帰ろうとしても、彼は残るだろう。それが気に食わなかったのだ。
「僕から声をかけてみます。」
僕は母親の、帰れという意味合いの言葉を無視し、そう伝えた。
そして立ち上がり、え?あ?と動揺している母親を完全に無視して階段を上がる。
僕が部屋をノックするまで、母親は下から僕の様子を見ていたが、ノックがすみ、ターゲットの部屋から大きな物音が聞こえると居間の奥の方へと引っ込んでしまった。
:11/01/03 22:53 :F06B :☆☆☆
#229 [匿名]
「あのー僕のこと分かりますか?あ、声だけじゃ分からないかな…。君とお話がしたくて来たんだけど。」
僕の得意な、出来るだけ優しい声でターゲットに問いかける。
物音は聞こえない。
「中に入ってもいいかな?」
何も聞こえない。
「じゃあ開けるよ!」
半ば強引に中に入る事にした。ドアノブを握り、捻る。
鍵がかかっていて、少ししかドアノブは回らない。事を想像していたが、意外にも鍵はかかっていなく、すんなりと開いてしまった。
:11/01/03 22:59 :F06B :☆☆☆
#230 [匿名]
ドアを開けると上で見ていた通り、とても汚い。そして臭いもきつい。汗のような油のような臭いと、食べ物の腐った臭い、そしてタバコ。
一瞬にして気分が悪くなった。
「僕の事を覚えているよね?」
吐きそうな気持ちを押さえて、ニコッと微笑んだ。
ターゲットは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真顔に戻った。
「何で家が分かったのー?怖いねー。もしかして昨日つけてたのー?気付かなかったな。」
にやにやとパソコンを見ながら言葉を発しているターゲットは、僕を全く見ない。
「昨日の事、誰かに言ったのー?ニュースでは犯人は捜索中ってなってたけど。」
:11/01/03 23:09 :F06B :☆☆☆
#231 [匿名]
「昨日の事は誰にも言ってないよ。僕の刺された友達は、隠しておいた。だから君の罪は、少し軽くなるかもね。」
僕はやっぱり、得意の出来るだけ優しい笑顔で語りかける。
「面白い事をするねー!」
ターゲットが僕を見た。目を見開き、不気味な笑い声を発して笑っている。キャーキャッキャとも、ヒャーヒャッヒャとも取れない声だ。
:11/01/03 23:17 :F06B :☆☆☆
#232 [匿名]
ちなみに彼は、ターゲットには見えない姿で僕の隣にずっといる。
僕にしか聞こえない声で、くっせぇ!だの、きたねぇ!だの、うぜぇ!だの騒いでいる。
たまに歩き回り、ターゲットの目の前まで行ったり、パソコンを覗き込んだりしている。
やめてほしい。目障りで、ついつい彼の動きが気になって見てしまう。
僕には見えないが、ターゲットにだけ見えるという、演技をこれからしなくてはいけないのに。
:11/01/03 23:22 :F06B :☆☆☆
#233 [匿名]
「自首…しなよ。」
僕は真顔を作った。
ターゲットは僕の言葉を無視している。
「君がした事は犯罪だよ。どうして人を殺したのに、平気でいられるの?」
僕は気にせず質問をぶつける。無視されてもいいや、と投げやりな気持ちでいた。だがターゲットは、僕の気持ちとは裏腹に、ギロッとこちらを睨んだ。
:11/01/04 12:18 :F06B :☆☆☆
#234 [匿名]
「人を殺して平気でいられないような弱い人間じゃないんだよ僕は。人を殺す事に迷っているから震えるんだ。殺したいと思ったら、迷わないんだよー僕は、強いから。」
早口でターゲットは喋る。
人間の強い、弱いが、人を殺す事で決めていいのだろうか。
水泳、格闘技、野球、ろいろな種目で一番強い者が決められている。それなら人殺しという種目で一番強い者を決めてもいいのか!と思った。思った瞬間その考えを捨て去った。馬鹿げてる。
:11/01/04 12:25 :F06B :☆☆☆
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