亡き君に告ぐ
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#120 [不発花火]
突如込み上げる嘔吐感を堪えることが出来ず、吐き出す。
まさか、まさか、自分の手で妻を。愛する妻を。
「君は自分の手で最愛の妻を殺してしまった。見事だよ」
パチパチと社長が拍手をする。
なぜ、妻なのだ。
「お前…!殺してやる!!」
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#121 [不発花火]
社長に掴みかかろうとした瞬間、目の前に銃口を突き付けられた。
「教えてやろう。なぜ、君の妻を君が殺さなくてはならなかったのかを」
僕は眉間に当てられた銃口に動くことが出来ないでいる。
心臓の音がやけにうるさい。
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#122 [不発花火]
「7年前の話だ。当時、君の妻は18歳で車の免許を取ったばかりだった」
「嬉しかったのだろうね。君の妻は深夜に車を飛ばしていた。
そこで、君の妻が乗った車が人身事故を起こした」
「轢いたのは私の娘だよ。
即死だった。だが君の妻は恐怖からか逃走した」
体が冷えていくのがわかった。
妻が人を殺している。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#123 [不発花火]
そんな話、一度も聞いたことがなかった。
「普通だったらすぐに法で裁かれるだろうが、彼女の父親は警視庁だと聞く。『証拠不十分』でこの事件は揉み消されたよ」
社長が持つ銃がカチリ、と音を立てた。
僕は動くことは愚か、言葉も発することができなかった。
語られていく真実。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#124 [不発花火]
「だから私は私のやり方で彼女を裁いてやろうと誓った。
いやあ、彼女を探し当てるのに7年もかかってしまったよ。
まさか自分の会社の人間の妻になっているとは」
クックッと聞き慣れた笑い声。
社長の口元がニヤリ、と笑う。
「―なぜ、僕の妻だと」
言葉が震えてうまく言葉を紡ぎ出せない。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#125 [不発花火]
「君が書類を忘れた日、それを届けにきた彼女を見た時だよ。
彼女は気づかなかったが、私は死んでも忘れない。
忘れられる訳がない。
たった一人の娘を殺した人間の顔など、一時でも忘れたことなどない!!だから私は君を使って彼女を殺してやろうと思ったのだ!
『あの事件について話がある』と私の名前を使って彼女を呼び出してな!!」
僕はその瞬間、全てを理解した。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#126 [不発花火]
朝、妻がやけに細かく洗濯機の使い方や洗濯物のたたみ方、調味料の置き場所等詳しく書いていたのかを。
妻が今日自分が殺されることを理解していたのだ。
だから僕が、一人でも生きていけるようにと。
体から力が抜け、足から崩れ落ちる。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#127 [不発花火]
守ろうとしていた妻と子を、自らの手で危めてしまった絶望。
愛する者を奪われ、復讐だけを考えて生きてきた人間の味わってきた絶望。
もう、何も考えたくなかった。
「…僕にはもう何もありません。守るものも、失うものも」
社長が握る銃に手をかけ、座り込んでしまった僕の額にまで下げさせる。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#128 [不発花火]
「いっそ、殺してください」
なぜ電話口の声に気付けなかったのか。
なぜ欲に負け、人を危める道を選択したのか。
なぜ、躊躇せず人を殺めてしまったのか。
後悔と、絶望しかなかった。
:10/12/29 21:49
:SH04B
:2c2Jat.Y
#129 [不発花火]
「それと、影武者など本当は用意していない。
君が躊躇った時、私が君と彼女を殺そうと思っていた。
だが君は任務を成し遂げたんだ。
私が殺す義務はない。
自殺するなり、足掻いて生きていくなり、好きにするがいい」
そう言うと社長は、僕の手を振り払い自らのこめかみに銃を当て、発砲した。
再び、乾いた音が響いた。
:10/12/29 21:49
:SH04B
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