亡き君に告ぐ
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#77 [不発花火]
僕の人生、お先真っ暗だ。
―リストラ、その先は(1)―
:10/12/23 15:50
:SH04B
:vGZkDNeY
#78 [不発花火]
今日僕は会社をクビになった。
まあ、このご時世仕方のないことと言ったら仕方がないんだけどいまいち納得がいかなくもない。
無遅刻無欠席が誇りだったがどうやらそれだけでまんまを喰える程人生は甘くなかったようだ。
:10/12/23 15:50
:SH04B
:vGZkDNeY
#79 [不発花火]
「この先どうすればいいんだ…」
どうする?
家に帰るか?
ちなみに僕には妊娠4ヶ月の妻がいる26歳だ。
なんかもう色々とやばい。
子供はどうする?
妻にはなんて説明する?
よくドラマに出てくるリストラされたサラリーマンのように妻が作る愛妻弁当を鞄につめて公園でハローワークに通いながら時間を潰す生活を送るか?
:10/12/23 15:52
:SH04B
:vGZkDNeY
#80 [不発花火]
いやそれは近所の奥方に見付かり即、妻に密告されるだろう。
あぁ僕の人生お先真っ暗だ。
「ん…?」
『人を殺してみませんか?日払い500万円』
「ちょっと待て」
:10/12/23 15:52
:SH04B
:vGZkDNeY
#81 [不発花火]
何だこの看板は。
僕は突如目の前に現れた(いや別に歩っていたから突如でもないかまぁいいや面倒くさいし)看板を目の前に立ち止まる。
「人を殺して500万円か…」
いや待て。
殺してみませんか?って何だ。
何だこの「キャバ嬢、体験してみませんか?」って書いてあるティッシュペーパーみたいなノリは。
:10/12/23 15:52
:SH04B
:vGZkDNeY
#82 [不発花火]
よく見たら下の方に携帯番号が書いてある。
ここに僕が電話して、人を殺したら500万円が貰えるのか?
馬鹿げている。
でも500万円といえば僕の年収とあまり変わりがない。
「人を殺して、500万円…」
殺してどうする?
見つからない保障なんてあるのか?
:10/12/23 15:53
:SH04B
:vGZkDNeY
#83 [不発花火]
警察にバレたら無職になった今よりもヤバい状況になるのは目に見えている。
でも500万あったら1年は確実に無職のままで持つだろう。
妻だって騙せる。
どうするか。
「えーっと、090…」
頭の中の天使と悪魔の言い合いが始まる前に僕は携帯を手に番号をプッシュする。
どうやら僕の頭の中には悪魔しかいないようだ。
:10/12/23 15:53
:SH04B
:vGZkDNeY
#84 [不発花火]
「あ、でも非通知がいいか…えーっと、いやよ090…」
『ただ今呼び出しております』
内心、携帯から聞こえるお笑い芸人の漫才のメロディーコールを聞きながら僕の心臓はドキドキだ。
早く出て欲しい気持ちとやっぱり出て欲しくない気持ちが入り混じって気持ち悪くなってくる。
心臓の音が、うるさい。
『…はい、もしもし』
:10/12/23 15:53
:SH04B
:vGZkDNeY
#85 [不発花火]
…出た。
低い男の声だ。
どうする。
「あ、あの…看板見て電話したんですけど…」
もはや僕の頭の中には500万円と恐怖しかなかった。
『あぁ、君、人殺せる?』
「はあ…多分…」
多分て何だ。
無理だろ。殺人だぞ。
『多分じゃ困るんだよね。躊躇うと返り打ちに合う可能性もあるし、はっきりしてよ』
「はあ…すみません」
何で謝ってんだ僕。馬鹿か。
むしろ何で説教されてんだ。
見ず知らずの電話越しの男に。
:10/12/23 15:54
:SH04B
:vGZkDNeY
#86 [不発花火]
『で、どうなの?殺せるの?殺せないの?どっち?』
どうする。
このまま妊娠中の妻に「会社クビになった」と報告するか、人生を棒に降って人殺しをするか。
いざとなったら金は妻に渡して「幸せになってくれ」と失踪する手もあるが、人殺しだぞ。
よく考えろ、自分。
「あの、バレない保障は…」
『大丈夫。俺を誰だと思ってるんだ』
いや、知らねーし。誰だよ。
:10/12/23 15:54
:SH04B
:vGZkDNeY
#87 [不発花火]
『殺し方はこちらが指示をする。道具もこちらで用意する。お前はただ決められた人間を殺すだけだ。もしバレたり見られたりしたらお前の変わりに影武者を用意するからお前は何も気にする必要はない』
あ、なんかそれなら大丈夫そうだ。
バレても影武者がいるなら全然問題なくこれから先の人生を過ごせそうだ。
でも、人を殺したという事実を背負ったまま人生を過ごせるか?
:10/12/23 15:54
:SH04B
:vGZkDNeY
#88 [不発花火]
世間は知らなくても自分が死ぬまで一生人殺しのレッテルを貼って生きていかなきゃならないんだぞ。
自分はそれに堪えられるのか?
『ただし、条件がある』
条件。
よし、それで決めよう。
『もし殺すことに躊躇いが出て失敗した時だ』
ゴクリ、と自分が唾を飲み込む音が大きく響いた。
:10/12/23 15:55
:SH04B
:vGZkDNeY
#89 [不発花火]
電話越しの男がクックッと喉を鳴らしながら笑っているのが聞こえる。
『その時はお前を殺す』
―いいな?
「…わかりました」
将来のため。
僕と妻と子供の幸せの未来のため。
『じゃあ、場所とターゲットを今から言う。決して躊躇うな。わかったな』
どうせ職なんか見付からないし、無駄な労力は使いたくない。
僕にはなんの資格も取り柄もないし、大学だって出てない。
:10/12/23 15:55
:SH04B
:vGZkDNeY
#90 [不発花火]
何より妊娠した妻に心配をかけたくなかった。
前の職場に就けたのは奇跡に近いレベルだ。
見ず知らずの人間を殺して大金がもらえるなら、妻が笑顔でいてくれるなら、自分は闇に墜ちたとしても構わない。
一生人殺しのレッテルを掲げたまま生きてみせる。
愛する妻と、子供のため。
「…わかりました。10日後の、○×倉庫ですね」
僕は、大罪を犯す。
NEXT
:10/12/23 15:56
:SH04B
:vGZkDNeY
#91 [不発花火]
朝日が眩しく、僕を照らした。
―リストラ、その先は2―
:10/12/29 16:52
:SH04B
:2c2Jat.Y
#92 [不発花火]
「全然寝れなかった…」
寝不足に加えて朝の光が強く差し掛かり、頭痛がする。
今日は約束の10日後。
妻には「体調が優れないため長期の有給休暇を取った」と嘘を吐き、やはり人を殺すという罪悪感と恐怖から余り眠れない日々を過ごした。
:10/12/29 16:53
:SH04B
:2c2Jat.Y
#93 [不発花火]
「おはよう」
軋む体に鞭を打ち、妻がいるだろう居間に向かうがいつも笑顔で「おはよう」と迎えてくれる妻はいなかった。
代わりに、テーブルに妻からのメモが残されていた。
『友人と出かけてきます。
朝ごはんは適当に作ってしっかり食べてね。
洗濯と掃除をよろしくお願いします。』
:10/12/29 16:53
:SH04B
:2c2Jat.Y
#94 [不発花火]
他にもメモがあり、洗濯機の使い方と洗濯物のたたみ方、掃除の仕方、調味料の場所等が記されていた。
「なんでこんな丁寧に書いてんだ…」
やけに詳しく書かれたメモに自分は妻から本当に何も出来ない人間だと思われてたことに僅かに怒りを覚えたが、そこは気にしない。
:10/12/29 16:53
:SH04B
:2c2Jat.Y
#95 [不発花火]
メモの通り一通りの仕事をやり終えてから、そういえば時間を確認していないことを思い出し再び非通知で雇い主に電話をかけた。
―プルルル
コール音がやけに大きく聞こえる。
出なければいい、やはり何かの冗談であって欲しい、でも今は金が必要だ。
:10/12/29 16:54
:SH04B
:2c2Jat.Y
#96 [不発花火]
色々考えてるうちに、酷く手が震えることに気付く。
やはり、自分は。
『―やあ、今日は約束の日だが、覚悟は出来たかい?』
ドクン、と心臓が高鳴った。
「あ、は、はい…あの、時間を、確認するのを…忘れてしまって…」
:10/12/29 16:54
:SH04B
:2c2Jat.Y
#97 [不発花火]
電話の男が笑ったのを電話越しに感じた。
心臓の音が煩い。
僕は、今日人を殺す。
大金と引き換えに。
でも本当に金は貰えるのだろうか。
『そうだな。もうターゲットは○×倉庫にいるから何時でも構わないんだが。あぁ、心配しなくても金は○×倉庫にターゲットと影武者と共にある。手に取ってから執行しても構わない』
:10/12/29 16:54
:SH04B
:2c2Jat.Y
#98 [不発花火]
ターゲットはもう、いるのか。
途端に立っていられないくらいの恐怖を感じ、足が震え出す。
この男は、本気だ。
本気で僕に人を殺させるつもりだ。
大金と引き換えに。
でも何故大金を払い、わざわざ影武者まで用意する程の完璧主義者なのに自分の手で殺さないのか。
:10/12/29 16:55
:SH04B
:2c2Jat.Y
#99 [不発花火]
聞きたいことは山ほどあったが、なぜか聞くことが出来なかった。
恐怖で、うまく口が言葉を紡いでくれなかった。
『あぁ、君が失敗した場合は』
―影武者が君の死刑執行人だ。
心臓が、うるさい。
:10/12/29 16:55
:SH04B
:2c2Jat.Y
#100 [不発花火]
「わかりました。では、これから向かいます」
『随分早いね?』
また男がクックッと喉で笑う。
「後々だと…僕の心臓がもちません」
ハハ、と笑ってみせるが、ヒクッと喉が引き攣るのがわかる。
怖いのだ。
だって人を殺すんだ。
:10/12/29 16:55
:SH04B
:2c2Jat.Y
#101 [不発花火]
もし「助けてくれ」と懇願されたら?
もし恐怖で涙が溢れる瞳で見つめられたら?
そう考えると本当に自分が出来るのか不安になるが、妻の顔がふと浮かんだ。
愛しい妻と、その子供。
リストラされた僕には出産費用や養育費、とにかく大金が必要になる。
:10/12/29 16:56
:SH04B
:2c2Jat.Y
#102 [不発花火]
500万あれば、今まで少ない給料で貯めていた貯金と合わせれば2年は家族3人なんとか生活出来るだろう。
その間に僕は再び就職先を見つければいい。
足りなくなったらアルバイトをしながらでも出来る。
もう、引き返せない。
:10/12/29 16:56
:SH04B
:2c2Jat.Y
#103 [不発花火]
気付けば電話は切れていて、僕はただ携帯を持ったまま立ち尽くしていた。
「―幸せのためなら」
僕は上着を羽織り、マスクを付け、家を飛び出した。
NEXT
:10/12/29 16:56
:SH04B
:2c2Jat.Y
#104 [不発花火]
絶望、それだけ。
―リストラ、その先は(3)―
:10/12/29 21:38
:SH04B
:2c2Jat.Y
#105 [不発花火]
ギィ、と錆びた音を立てながら扉が開き、僕は中に足を踏み入れた。
―場所は○×倉庫。
随分前に廃墟と貸した倉庫には、中にはもちろん周りにも誰一人としていなかった。
静寂の中、僕の呼吸の音が大きく聞こえた。
先程から煩く鳴る心臓の音まで聞こえそうだ。
:10/12/29 21:38
:SH04B
:2c2Jat.Y
#106 [不発花火]
突如、背後から扉が大きな音を立てて閉まる。
僕の体はビクリと跳ね、鼓動が今までよりも早く鳴りはじめた。
マスクを外すと、ポタポタと汗が足元に落ちる。
目線を少し上げると、何もない倉庫の中に何かが転がっていた。
:10/12/29 21:39
:SH04B
:2c2Jat.Y
#107 [不発花火]
それがガムテープと包装紙のような紙でグルグル巻きにされ、芋虫のような状態になっているそれが人間だと気付くのにあまり時間はかからなかった。
もぞもぞと苦し気に動いているのだ。
まるで助けを乞うように。
:10/12/29 21:39
:SH04B
:2c2Jat.Y
#108 [不発花火]
「はっ、はぁ…はぁ…」
それを見た途端、呼吸が酷く乱れるのを感じた。
確かに生きているそれを、僕は殺す。
妻との幸せな未来のために。
:10/12/29 21:40
:SH04B
:2c2Jat.Y
#109 [不発花火]
「あ、武器…武器は」
早く済ませ、金を貰って帰りたい。
妻が待つ家に。
きっと何も知らない妻は僕を笑顔で迎えてくれるだろう。
僕はうまく笑えるだろうか。
:10/12/29 21:40
:SH04B
:2c2Jat.Y
#110 [不発花火]
それに近付くと、もぞもぞと動くそれの横に黒いビニール袋があった。
中を開くと大金と、一丁の拳銃が無造作に入っていた。
初めて見る拳銃と大金。
束ねられていない札は500万以上あるように感じた。
「―そういえば、影武者は」
影武者の存在がどこにもないのを確認すると、突如僕の携帯が鳴りはじめた。
:10/12/29 21:40
:SH04B
:2c2Jat.Y
#111 [不発花火]
何もない空間に響く携帯の音に体が大きく跳ね、震える体で画面を確認すると『非通知』の文字があった。
「も、もしもし…」
『やぁ、私だ。影武者の存在は心配するな。こちらから君の姿は見えているよ』
:10/12/29 21:41
:SH04B
:2c2Jat.Y
#112 [不発花火]
―なんで、僕の番号を。
聞き慣れた男の声。
僕は男に電話をかける時は必ず非通知にしていたし、今まで一回だって男から電話がかかってくることはなかった。
『驚いているな?こちらは君のことを何でも知っているんだ。
さて、早速そこに転がる芋虫を殺して頂こうか』
男はそう言うと、有無を言わさず電話を切った。
:10/12/29 21:41
:SH04B
:2c2Jat.Y
#113 [不発花火]
僕はただ呆然と立ち尽くし、横に転がるそれに目をやった。
口を塞がれているのか、声を上げることもなく、ガムテープと包装紙でグルグル巻きになっている体を逃げようと必死になっている塊。
性別すらわからない人間。
顔すら覆われてるのが救いか。
:10/12/29 21:41
:SH04B
:2c2Jat.Y
#114 [不発花火]
僕は銃を手に取り、横になるそれを蹴飛ばして仰向けにして心臓に向ける。
「―神様」
目を閉じて、刹那。
乾いた銃声が倉庫に鳴り響く。
目を開けると、ピクリとも動かないそれの胸元辺りの包装紙が血に濡れていくのが見えた。
:10/12/29 21:42
:SH04B
:2c2Jat.Y
#115 [不発花火]
ジワジワと染み込み、床に血溜まりを作っていく。
僕はあまり見ないように、黒いビニール袋を手に取り颯爽と倉庫を後にしようと扉に足を向ける。
不思議と先程まで感じていた恐怖も何も感じなかった。
なぜか清々しささえ感じていた僕は異常なのだろうか。
それともずっと感じていた恐怖と緊張感から逃れられた安堵感なのだろうか。
:10/12/29 21:42
:SH04B
:2c2Jat.Y
#116 [不発花火]
薄暗い倉庫から出ると、陽は高く登り、眩しさに目を凝らした。
「やぁやぁ、君は見事任務を成し遂げることに成功したね」
「!?」
突如背後から聞き慣れない声が聞こえ、勢いよく振り返ると、扉の横にもたれ掛かるように老人が立っていた。
「…社長…?」
:10/12/29 21:43
:SH04B
:2c2Jat.Y
#117 [不発花火]
老人はよく見慣れた人物だった。
忘れもしない、自分がつい先日まで勤めていた会社の経営者。
人物に解雇を告げた張本人。
まさか、社長が。
社長が僕に人を殺させたというのか。
「君は見事大金を手に入れることが出来た訳だが、代わりにとても大切なものを失った」
:10/12/29 21:43
:SH04B
:2c2Jat.Y
#118 [不発花火]
社長はニコニコと人当たりの良い笑顔を向けている。
「どういうこと、ですか」
心臓が再び大きな音を立てて鼓動を刻み始めた。
「君が殺した人間を確認してくれば、全てわかるよ」
社長の顔から笑みが消え、声のトーンを落とした。
その声は、電話越しの男の声と同じだった。
:10/12/29 21:43
:SH04B
:2c2Jat.Y
#119 [不発花火]
「さぁ、確認しておいで」
トン、と肩を叩かれる。
僕は弾かれたように再び倉庫の扉を開け、事切れたそれに近づき包装紙とガムテープを解く。
おかしなくらいに手が震え、うまく開けることが出来ない。
乱暴に包装紙を剥ぎ取ると、そこには変わり果てた愛しい妻の顔があった。
「―…ッ!」
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#120 [不発花火]
突如込み上げる嘔吐感を堪えることが出来ず、吐き出す。
まさか、まさか、自分の手で妻を。愛する妻を。
「君は自分の手で最愛の妻を殺してしまった。見事だよ」
パチパチと社長が拍手をする。
なぜ、妻なのだ。
「お前…!殺してやる!!」
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#121 [不発花火]
社長に掴みかかろうとした瞬間、目の前に銃口を突き付けられた。
「教えてやろう。なぜ、君の妻を君が殺さなくてはならなかったのかを」
僕は眉間に当てられた銃口に動くことが出来ないでいる。
心臓の音がやけにうるさい。
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#122 [不発花火]
「7年前の話だ。当時、君の妻は18歳で車の免許を取ったばかりだった」
「嬉しかったのだろうね。君の妻は深夜に車を飛ばしていた。
そこで、君の妻が乗った車が人身事故を起こした」
「轢いたのは私の娘だよ。
即死だった。だが君の妻は恐怖からか逃走した」
体が冷えていくのがわかった。
妻が人を殺している。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#123 [不発花火]
そんな話、一度も聞いたことがなかった。
「普通だったらすぐに法で裁かれるだろうが、彼女の父親は警視庁だと聞く。『証拠不十分』でこの事件は揉み消されたよ」
社長が持つ銃がカチリ、と音を立てた。
僕は動くことは愚か、言葉も発することができなかった。
語られていく真実。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#124 [不発花火]
「だから私は私のやり方で彼女を裁いてやろうと誓った。
いやあ、彼女を探し当てるのに7年もかかってしまったよ。
まさか自分の会社の人間の妻になっているとは」
クックッと聞き慣れた笑い声。
社長の口元がニヤリ、と笑う。
「―なぜ、僕の妻だと」
言葉が震えてうまく言葉を紡ぎ出せない。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#125 [不発花火]
「君が書類を忘れた日、それを届けにきた彼女を見た時だよ。
彼女は気づかなかったが、私は死んでも忘れない。
忘れられる訳がない。
たった一人の娘を殺した人間の顔など、一時でも忘れたことなどない!!だから私は君を使って彼女を殺してやろうと思ったのだ!
『あの事件について話がある』と私の名前を使って彼女を呼び出してな!!」
僕はその瞬間、全てを理解した。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#126 [不発花火]
朝、妻がやけに細かく洗濯機の使い方や洗濯物のたたみ方、調味料の置き場所等詳しく書いていたのかを。
妻が今日自分が殺されることを理解していたのだ。
だから僕が、一人でも生きていけるようにと。
体から力が抜け、足から崩れ落ちる。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#127 [不発花火]
守ろうとしていた妻と子を、自らの手で危めてしまった絶望。
愛する者を奪われ、復讐だけを考えて生きてきた人間の味わってきた絶望。
もう、何も考えたくなかった。
「…僕にはもう何もありません。守るものも、失うものも」
社長が握る銃に手をかけ、座り込んでしまった僕の額にまで下げさせる。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#128 [不発花火]
「いっそ、殺してください」
なぜ電話口の声に気付けなかったのか。
なぜ欲に負け、人を危める道を選択したのか。
なぜ、躊躇せず人を殺めてしまったのか。
後悔と、絶望しかなかった。
:10/12/29 21:49
:SH04B
:2c2Jat.Y
#129 [不発花火]
「それと、影武者など本当は用意していない。
君が躊躇った時、私が君と彼女を殺そうと思っていた。
だが君は任務を成し遂げたんだ。
私が殺す義務はない。
自殺するなり、足掻いて生きていくなり、好きにするがいい」
そう言うと社長は、僕の手を振り払い自らのこめかみに銃を当て、発砲した。
再び、乾いた音が響いた。
:10/12/29 21:49
:SH04B
:2c2Jat.Y
#130 [不発花火]
スローモーションのように倒れる様を僕はただ呆然と見ていた。
気付けば僕の目の前には二つの死体と、二丁の拳銃。
拳銃を手に取り、僕も二人の後を追おうと心臓に当てレバーを引くが、弾は入っていなかった。
:10/12/29 21:49
:SH04B
:2c2Jat.Y
#131 [不発花火]
「はは…」
僕はまだ立ち上げれないでいる。
END
:10/12/29 21:50
:SH04B
:2c2Jat.Y
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