その日が来る前に、3
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#400 [愛華]
「……なに言ってんの?
するわけないじゃん手術なんか」

「今のまんまじゃダメだ」

「今のままでいいよ」


声が震える。


隆則はわかってくれてると
思ってた。

話ってそれなの……?

手術を受けろって話?

⏰:11/02/11 14:16 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#401 [愛華]
「俺は、いやだよ」



隆則はゆっくり、あたしを
なだめるような口調で言った。



「隆則………あたしだって
自分がいなくなるのやだよ」


目を合わせられない。
悪いことをしてるような気分
になってしまう。

⏰:11/02/11 14:21 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#402 [愛華]
「那佑。ダメだよ」

「やだ。やだよ………」


涙があふれそうだ。


だって嫌なんだよ。
こわいんだよ。


自分から死へ向かう。

そんな気がしてこわいの。

⏰:11/02/11 14:50 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#403 [愛華]
「俺の目見て………」

「やだ!手術は受けない!!
そんな話なら帰ってよ!
聞きたくない!」


隆則は泣き叫ぶあたしの手を
思い切りひっぱると、
自分のほうに抱き寄せた。


小さいあたしの体は全部
隆則の中におさまる。



このあたたかさが今は残酷だよ。

⏰:11/02/11 14:56 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#404 [愛華]
「はなしてよ!!」

「那佑、泣いてもいいから聞け」



隆則の声、震えてる。


隆則も、泣いてるの?


何回あたしのせいで泣いたの?


一緒に泣いてくれたこともあった

⏰:11/02/11 14:59 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#405 [愛華]
今もあたしのせいで………




「……俺の両親が死ぬときさ。


「…………ん」



「直純は俺に『助けて』って
言ったんだ。でも俺は医者
なんかじゃない。無力だった。


どうすることもできなかった」

⏰:11/02/11 15:03 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#406 [愛華]
「自分の無力さを呪った。
直純が苦しんでた時も、俺は
何もできなかったし、

あげくの果てに逃げた。」



隆則は自分の過去を悔いてる。
他人からみればどうしようも
ないことだったとしても、


隆則にはそうじゃないんだ。
今も責め続けてるんだ。

⏰:11/02/11 15:09 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#407 [愛華]
「もうやだ。だいじなやつが
どっかいくのも。
なんもできないのもやだ」



まるで小さい子供がおねだり
するみたいに。

強くあたしを抱きしめる。




苦しくて、怖くて。


あたしは、どうすればいい?

⏰:11/02/11 15:12 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#408 [愛華]
「こわ、い…………
会えないのこわい………」

「わかってる。でも大丈夫。
成功したって失敗したって
ずっと一緒にいてやるから」

「それって………」

「俺が一緒に死んでやる」

「馬鹿すぎ…………」


進むべき道はあるのに。
踏み出せない。

ゴールがあるのかないのかさえ
わからない道を進むのがこわい。

⏰:11/02/11 15:17 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#409 [愛華]
「那佑、夢教えて」



あたしを抱きしめて、肩に顔を
埋めたまま隆則が言う。




あたしの、夢………?



「………バケツプリン食べる」

「まだ食べてなかったのか」

⏰:11/02/11 15:21 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#410 [愛華]
「うん」

「あとは?」



前までは何も望まないはずだった
でも今は………




「学校卒業してね」

「うん」

「振袖とか着てね」

「うん」

⏰:11/02/11 18:44 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#411 [愛華]
「夏は祭に行って花火見たい」

「ん………」

「一緒にプールも行きたいし
お花見もしてみたいよ。
初詣も行きたい………」





行きたいところ、したいこと
まだまだたくさんあるの。


その全部を

隆則と、過ごしたいんだ……

⏰:11/02/11 18:48 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#412 [愛華]
ああ、あたしはまだ。


満足なんかしてないよ。


まだまだ足りないよ。






「……おっきな家におっきな犬。カッコイイ犬がいい」

「……………」

⏰:11/02/11 18:50 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#413 [愛華]
「………子供は、3人。
男の子ふたりと女の子。」

「……………ん……」










「………隆則の、お嫁さんに
なりたいよ…………」


あたしは、欲張りですか?

⏰:11/02/11 18:53 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#414 [愛華]
生きたいのに、手術はこわい。


やるせない思いは涙となって
あたしの中から溢れてゆく。





「…………那佑。」

「ん……」


隆則はあたしを離すと、
真っ正面に向き直った。

⏰:11/02/11 18:55 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#415 [愛華]
いったんきります。

>>388-414

⏰:11/02/11 18:57 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#416 []
うわあ
めちゃ良いところで切りますね…
続き気になる
主さん応援してます

⏰:11/02/11 23:07 📱:F09A3 🆔:C76X2MNo


#417 [愛華]
>>416

ありがとうございます!
がんばりますね!

⏰:11/02/11 23:30 📱:840SH 🆔:zJ6xm7Y6


#418 [我輩は匿名である]
>>414




隆則はあたしの涙を指ですくうと
あたしを強い瞳で見つめる。



「もうひとつのほうの話ね?」

「なに…………?」



あたしの頬から手を離すと
ポケットからなにかを取り出す。

⏰:11/02/12 13:40 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#419 [我輩は匿名である]
隆則の手の中のそれは。
ちいさなちいさなしるし。












「手術が終わったら。


俺と結婚してください。」

⏰:11/02/12 14:06 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#420 [我輩は匿名である]
なんの迷いもない。


そこに存るのは


いつだってたったひとつだけの


大切な大切な気持ちでした。






神様、見ていますか?

⏰:11/02/12 14:30 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#421 [我輩は匿名である]
この人があたしの大切なひと。

命を懸けたっていい。


そう思えるくらい大切なひと。



きっと世界中であなただけ。






だから世界一のひとなんです。

⏰:11/02/12 14:36 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#422 [我輩は匿名である]
「…………っえっ…ひっ…」



「え、なんで泣くの………」




嬉しいんだよ、ばか。


隆則の肩に顔を埋める。



ぐちゃぐちゃな顔見られたくない

⏰:11/02/12 14:42 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#423 [我輩は匿名である]
涙が止まらなかった。





「………子供3人だっけ?」

「ん………」

「花見に祭に初詣……」

「ん………」



「全部終わったら行こう」

⏰:11/02/12 14:50 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#424 [我輩は匿名である]
隆則の涙はあたたかくて。






「約束な」

「うん」



全部終わったら
したいこと全部しよう。



それまで待っててね。

⏰:11/02/12 14:54 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#425 [我輩は匿名である]
左の薬指に指輪がはめられる。






「待ってるから。戻ってきて?」

「うん。約束する」



優しく唇が重なる。


これはお別れじゃないよ。

⏰:11/02/12 15:03 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#426 [我輩は匿名である]
いってきます、のキスだよ。





こんなこと言ったら怒るかな?



きっとあなたは怒るね。

でも言わせて。



あたしはあなたと出会えて
すごくすごく幸せでした。

⏰:11/02/12 15:06 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#427 [我輩は匿名である]
もし約束が守れなくても、


それだけは変わらない。



あなたもそうであってほしい。




想いは共に、胸の……中に。


あなたの明日が
私の明日と重なりますように。

⏰:11/02/12 15:09 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#428 [我輩は匿名である]
-隆則side-

⏰:11/02/12 21:10 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#429 [愛華]
その日は、


雲ひとつない晴天だった。



涼しくて、日差しが心地好い。
ムカつくぐらいにいい天気。

おまけに小鳥まで鳴いてた。



昨日はよく眠れた?那佑。

⏰:11/02/12 21:14 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#430 [愛華]
「んーいい天気だねぇ」

「緊張感なさすぎ、白石…」

「那佑らしくていーじゃん」


手術の直前だというのに、
楽しそうに談笑…………


俺はひとり入れないでいた。


「隆則、どしたの?暗っ」

「へ?いや寝不足でさぁ」

⏰:11/02/12 21:19 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#431 [愛華]
「あはは、ばっかだー」

「うるせ」


それを複雑そうな笑顔で見守る
那佑のご両親。

不安が伝わって来るようで
こっちまで緊張してくる。


那佑も口に出さないだけで
本当はそうなんだろうか。

不安じゃないわけないよな。

⏰:11/02/12 21:25 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#432 [愛華]
「………白石さん、そろそろ…」

「あ、はい」

「横になられていきますか?」

「………いえ、歩いていきます」


心臓がドクンと脈打った。

なんだよ、これ。

今さらこんな、………

那佑の瞳に迷いはないのに。

⏰:11/02/12 21:32 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#433 [愛華]
那佑はゆっくりベッドから、
点滴に気を遣いながら立ち上がる

その仕草がまた俺の不安を煽る。


「………よいしょっと」

「手、貸そうか?」

「んーん。一人で歩きたいの」


那佑は梓の言葉を断ると、
一人で歩きだした。

⏰:11/02/12 21:38 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#434 [愛華]
その歩く後ろ姿は凛としていて
本当に綺麗だった。



お前はいつからこんなに強く
なったんだろうか?


お前のために何度も泣いた俺は
強くなれたんだろうか?

今になってこんなことを思うのはやっぱり弱いのかもしれない。

それでもいい。

⏰:11/02/12 21:43 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#435 [愛華]
手術室の前まで来ると、那佑は
看護士の手を借りて横になった。



「………んじゃ、行くかぁ」

「那佑、待ってるからね」

「ありがとお母さん。お父さん」

「………頑張ってね」

「うん。頑張るよ、梓」

⏰:11/02/12 21:48 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#436 [愛華]
「が、んばっ……て」

「…言うならちゃんと言ってよ、直純くん………」



みんなに一言ずつ言い終えると、
那佑は俺のほうに向き直った。



………やばい、泣きそう。
でも那佑ですら泣いてないのに
泣くわけにはいかない。
かっこわるすぎる。

⏰:11/02/12 21:52 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#437 [愛華]
「………そんな顔すんな!!」

「わかってるよ」


強がってみたけど、上手く
言葉が出ないのがもどかしい。


いや、もう言葉はいらないんだ。



「待っててね、隆則」

「うん。待ってる。ずっと」

⏰:11/02/12 21:57 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#438 [愛華]
ずっと、待ってる。


ここで。




「隆則、手貸してくれる?」

「え?」

「これ、預かってて」


そう言って手渡されたのは
あの日渡した、指輪。

⏰:11/02/12 21:59 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#439 [愛華]
「戻ってきたらまたはめて
くれる?…………教会で!」

「…………わかった……」

「あ、最後にもうひとつ!」


那佑は思い出したように俺の
耳をぐいっと引っ張り、自分の
顔に近づけた。




「もしあたしがいなくなっても。隆則はこっち来ちゃダメだよ」

⏰:11/02/12 22:05 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#440 [愛華]
「……え…」

「生きるの。大事な人見つけてねんで幸せにしてあげんの!」


驚くほど小さくて、早口な。
きっと悩みに悩んで出した
那佑の言葉。


なんでこんなときまで、
後の俺の心配してんだよ?


馬鹿かよお前…………。

⏰:11/02/12 22:10 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#441 [愛華]
「………わかったよ……」

「返事が小さいですよ」

「わかったよ!!」

「ん、よろしい」


那佑は満足したように笑った。
その笑顔は少し淋しそうで。


後ろでは梓の嗚咽が聞こえる。



「………白石さん行きますね」

⏰:11/02/12 22:13 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#442 [愛華]
「はい」



白石の手が離れる。



扉が空いて、那佑が遠くなる。


その時間は一瞬にも感じられたし
まるで永遠のようにも感じた。


ただ、那佑が遠くて。

⏰:11/02/12 22:18 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#443 [愛華]
'







「…………いってきます!!」

そう言って那佑は満面の笑顔で
Vサインを突き出した。





その時の那佑の笑顔を
俺は一生忘れない。

⏰:11/02/12 22:20 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#444 [愛華]
今日の更新分
>>418-444

とうとう明日で最後です。
大量更新になることが予想
されますが、最後までよろしく
お願いします!

感想よければ待っています。

⏰:11/02/12 22:29 📱:840SH 🆔:/rqsAvKY


#445 [愛華]
人生なにがあるかわからない。

それでも生きてる。

多分明日も生きてる。


生きてる意味とか、そんな
小難しいものを探してるうちに
すぐに明日はやってくる。



だから俺は生きるよ。


何よりも大事なひとのために。

⏰:11/02/13 10:57 📱:840SH 🆔:DGZtWYG.


#446 [愛華]
'










「…………おそっ……」


約束の時間から20分。
あたしのイライラは最高潮。

⏰:11/02/13 11:00 📱:840SH 🆔:DGZtWYG.


#447 [愛華]
携帯を取り出すと、打ち慣れた
番号に電話をかける。
イライラしすぎて、何度も
打ち間違えた。



「…………もしもし…」

「もしもしじゃないですよ…
誨さん今どこですか!?」

「渋滞に引っ掛かっちゃって…」


よりによってこんな日に……
なにやってんだろあの人。

⏰:11/02/13 11:04 📱:840SH 🆔:DGZtWYG.


#448 [愛華]
「あたし、那佑のお母さんに
手伝い頼まれてるから先に行ってますけどいいですか?」

「梓、そりゃないでしょう…
俺、道知らないんだもん…」

「なんとかしなさい」



ブチッ


あたしは一方的に電話をきると
急いでバスに乗り込んだ。

⏰:11/02/13 11:10 📱:840SH 🆔:DGZtWYG.


#449 [愛華]
誨さんはいつのまにかあたしを
呼び捨てにするようになった。


嬉しいようなムカつくような…
てか、告白の返事結局もらって
ないしね。ふざけんなっつの。





あれから、2年たったね。
今日もあの日みたいな晴天。


あたしはバスの窓から空を
眺めていた。ずっと。

⏰:11/02/13 11:17 📱:840SH 🆔:DGZtWYG.


#450 [愛華]
「あ、梓ちゃん!」

入口のところで、那佑のお母さんが手をふってるのが見えた。


「こんにちは。遅れてしまって…すいませんでした」

「いいのよ、そんなの。
2階にいるから…いってあげて」

「…………はい」


あたしは強く頷くと、ホールにあるでっかい階段に向かう。

⏰:11/02/13 11:22 📱:840SH 🆔:DGZtWYG.


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