大量生産の屑みたいな短編集
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#16 [最低最悪のトンネル(3)]
死ねば地獄から解放される。痛みはひどくキツいだろうが一瞬だ。このままちびちびと痛みを加えられるより良いだろ? それに精神的ダメージからも解放される。
死ねば楽になる!
僕は立ち上がった。拳を強く握る。息を飲む。いけるか? いける! 飛べる!
「止せよ」
なんだ? 後ろから声がした。僕は振り返る。
そこに居たのは、人間ではなかった。人の形はしていた。それでも人間じゃなかった。全身真っ黒で目や口のない不気味な生き物……。黒い物体……。僕の足から伸びたそれはそうだ、影だ。
:11/02/01 23:03
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#17 [最低最悪のトンネル(4)]
「お前に死なれちゃあ、俺が困る」と影は言った。「俺はこんな所で諦めたくないね。まだまだ人生は長いんだ。いじめられたくらいで死んでたまるか」
僕は苛ついた。『いじめられたくらいで』だと? お前は僕の影なんだろう? なら僕の苦しみを間近で見てきた筈だ。それなのに『いじめられたくらいで』なんて言うのか?
影は笑った。笑ったように見えた。
「間近で見てきたからわかるんだ。俺たちはまだ生きていける」
「いや無理だ。耐えられない」
「全く。情けないぜ、俺よ」
:11/02/01 23:03
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#18 [最低最悪のトンネル(5)]
「ならどうしたらいい? 教えてくれよ」
「最低最悪のトンネルを抜けるんだ」
最低最悪のトンネル? なんだそれは。
影は続けた。
「今、俺はトンネルにいる。いや君と呼ぼう。君はトンネルにいる。最低最悪のトンネルだ。じめじめしていて臭くて暗い。先が見えない。いつまで続くかわからない。でも歩き続けるんだ。靴がボロボロになっても、足が吊っても、ガラスの破片で足の裏を切ってもだ。歩くのを止めたら最低最悪のトンネルに留まることになる。最低最悪のまま終わることになる」
:11/02/01 23:04
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#19 [最低最悪のトンネル(6)]
「いいかい? 出口のないトンネルなんて無いんだ。そんなトンネルは許されない。絶対出口はある。そして出口の先が楽園じゃなくても、君は幸福を感じる筈だ。だって最低最悪のトンネルを抜けて来たんだもんな。これ以上最低最悪の所なんてない。そうだろ? 悪いことは沢山あるけど、これよりひどいことなんてないんだ」
:11/02/01 23:04
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#20 [最低最悪のトンネル(7)]
「それにさ、足を進めれば良いことにだって巡り会えるんだぜ? たとえそれが小さなことでも、死んでしまったら味わえない。どんな小さなことでも味わえないんだ。そうだろ? 歩き続けようぜ。
そんでさ、俺を明かりのある所へ連れて行ってくれよ。影は暗い所にいちゃあ駄目なんだ。闇と同化しちまう」
:11/02/01 23:05
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#21 [最低最悪のトンネル(8)]
「君の言いたいことはわかったよ。でも辛いんだ」
「辛いのは君だけじゃない。俺だって影同士、格闘してたんだ。勿論痛みだって感じる。だから君の辛さもわかる。……辛いだろうけど一緒に頑張ろう。きっと出口は近い」
言いたいことを言うと影は元の影に戻った。立体的だった影は地面の中に入り込み、いつもののっぺりした影になった。そこには立体的な影はもういない。言葉を話す影もいない。
「わかったよ。頑張って歩いてみるよ。一緒にトンネルから出よう」
:11/02/01 23:05
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#22 [最低最悪のトンネル(9)]
「そうこなくっちゃな」と影は言った。言ったような気がした。そして笑った。笑ったような気がした。
結局僕は誰かに引き止めて欲しかったんだ。そして痛みや辛さを共有したかったんだ。誰でもよかった。それを影がやってくれたということだ。
自分の一部に救われるというのはなんだか不思議な感覚だ。でもそれはとても当たり前なことなのかもしれない。自分を知ってるのは自分だけ。本当は影に頼らず、自分に語りかけるべきだったんだ。
あれから影を見ると「あの時はありがとう。僕は頑張ってるよ」と心の中で呟くことがある。すると影は笑ってくれる。笑ってくれたような気がする。
「そうこなくっちゃな」
:11/02/01 23:06
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#23 [ランチルームの怪奇(1)]
◆ランチルームの怪奇
「夜の学校って絶対怖いよな」
と、とある友人は言った。俺とその友人は怪談話が大好きだ。顔を合わせればこぞって仕入れた怪談話を披露していた。それだから日常会話もホラーだとかオカルト物ばかりだ。珍しいことじゃない。
「墓地なんか屁だよ。学校は本当にヤバい」と俺は言った。
「今夜学校に忍び込まないか? 夜の学校を体験しないとなんだか真のホラー好きにはなれない気がするんだ」と友人は真剣な顔つきで言った。
なんだよ、真のホラー好きって、と俺は思った。
:11/02/01 23:11
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#24 [ランチルームの怪奇(2)]
「なあ、今夜忍び込もう。な?」
俺は「わかった」と言った。わかったと言わなければ友人の気が収まらないだろう。友人は「よっしゃ! 待ってろ夜の学校!」っとニヤニヤしながら言った。
「なあ、二人じゃ心細い。頼りになりそうな奴呼ぼう」と俺は言った。友人は同意した。
そこで俺たちは体格の良い友人を誘った。そいつはマッチョと呼ばれている。筋肉トレーニングで中学生とは思えないたくましい筋肉を身に付けている。肩、腕、胸、腹、太もも、ふくらはぎ、とにかく全ての筋肉が一回り大きい。こいつがいれば心細いなんてことはない。
:11/02/01 23:11
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#25 [ランチルームの怪奇(3)]
しつこく誘っていると「わかった。参加するよ」とマッチョは嫌がりながらも言った。
これで決まりだ。今夜決行。胸が高鳴る。遠足前日のような高鳴りだ。おかげで授業の内容は全くと言っていいほど耳に入らなかった。
:11/02/01 23:11
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