大量生産の屑みたいな短編集
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#31 [ランチルームの怪奇(9)]
ランチルームの窓は開いていた。開いている? おかしい。鍵は外した。しかし窓は開けていない。俺たちは顔を見合わせた。
「マッチョじゃね?」と友人は言った。「一人で侵入? 馬鹿かよ」と俺は言った。二人で苦笑する。
友人が先にランチルームに忍び込む。俺も後に続く。両手を窓枠にかけ、身体を持ち上げたら右足を窓枠にかける。そして身体の左半分をランチルームに入れる。侵入完了。
:11/02/01 23:16
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#32 [ランチルームの怪奇(10)]
ランチルームはなんだかじめじめしていた。空気が違う。それで暗かった。不気味な暗さだった。お互いの表情が見える程度の闇。時々部屋の隅や天井の何かが動いた気がした。俺は懐中電灯の光線を浴びせる。しかしなにもいない。気のせいだ。
「どうした?」と友人が不安げな顔をして言う。「いや、何でもない」と俺は答える。何でもない、何でもない。
俺たちはランチルームを出て、廊下を真っ直ぐ進んだ。非常口の緑の誘導灯の光が廊下を照らしている。二人の歩く音だけがする。俺たちは会話を交わさず、息を潜めながら進む。
:11/02/01 23:16
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#33 [ランチルームの怪奇(11)]
トイレのある所を足早に通り過ぎる。廊下の突き当たりの角には水槽があった。酸素ポンプがぶくぶくと音を鳴らす。やはり不気味。
俺たちは左に曲がって体育館を目指した。バスケットボールを突く音が聞こえるんじゃないか、という変な期待を込めて……。
:11/02/01 23:17
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#34 [ランチルームの怪奇(12)]
体育館の入り口は閉まっていた。大丈夫。扉に鍵は無い筈だ。うろ覚えだがたしか無かった。
「おいちょっと待て……」と友人が立ち止まり、声を潜めて言った。体育館まであともう少しの距離だ。
「なんだよ?」と俺が訊くと、友人は「しっ!」と言った。
ダン……、ダン……。
俺は耳を疑った。おいおい嘘だろ?
ダン……、ダン……。
バスケットボールを突く音だ! 間違いない。それは確かに聞こえた。友人がチラッとこっちを見る。
:11/02/01 23:17
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#35 [ランチルームの怪奇(13)]
「塩持って来たよな?」と友人が訊ねた。俺は「あるけど」と言い、ポケットから塩の入ったビニール袋を取り出した。友人はリュックサックから料理酒を取り出す。
「なんか襲ってきたら塩と酒をぶっかける」
「本当に効き目あんのかな?」
「なかったら困る」
そりゃあそうだ。困る。
ダン……、ダン……。
俺たちは体育館の扉にぴったり付く。
「開けるぞ?」と友人は言う。「ああ……」と俺は力なく言う。
友人は料理酒を構え、俺は手に塩を握る。友人が片手で重たい扉を音を立てながらスライドさせた。
:11/02/01 23:17
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#36 [ランチルームの怪奇(14)]
「うわ!」
俺たちは声を揃えて驚く。だって俺たちの前にはヘルメットを被り肩には銃をかけた兵隊らしき人の姿があったんだから。
俺たちは料理酒や塩をかけることを忘れ逃走を図った。
:11/02/01 23:17
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#37 [ランチルームの怪奇(15)]
叫びながら走る。そうでもしないと心臓が止まってしまいそうだった。廊下を右に曲がる。酸素ポンプがぶくぶくと音を鳴らす。
職員室の横を全速力で駆け抜ける。普段ならできないことだ。トイレの横を通過する。
俺は振り返ってみた。
兵隊は追ってきていた。それもえらいスピードで。
「追ってきてる! 逃げ切れない!」と俺は友人の背中に言った。友人は何も言わずひたすら足を動かす。
:11/02/01 23:18
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#38 [ランチルームの怪奇(16)]
ランチルームに入った所で俺は兵隊に捕まった。兵隊が俺の肩に触れた!
「うわああ!」
俺は叫びながら振り向いて塩を振りかけた。しかし兵隊は動じない。効果なんて全くない。
「落ち着くんだ。落ち着くんだよ」と兵隊は言った。落ち着いてなんていられなかった。俺は肩の手を払う。が、兵隊が俺の腕掴んで逃がしてくれない。
「何もしない! 呪ったりも殺したりもしない! 話がしたいだけなんだ!」
:11/02/01 23:18
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#39 [ランチルームの怪奇(17)]
俺は落ち着きを取り戻す。話がしたい? 幽霊が? その言葉でなんだか拍子抜けしてしまった。俺は座り込む。兵隊も座る。ランチルームに友人の姿はなかった。
「驚かせて悪かった。まさか夜の学校に人が来るなんて思わなかったんだ。それに自分の姿が見えるともね」
それから数十分兵隊と話をした。
:11/02/01 23:18
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#40 [ランチルームの怪奇(18)]
兵隊はこの学校に通っていたらしい。「と言っても改修されてしまってその面影はもうないけどね」
東南アジアで戦死したという兵隊に害はなかった。彼は短く言いたいことを言った。
俺は時計を見る。三十分過ぎだ。
「もう帰らないと」
「悪かった。また明日話せるかな? 昼にここで」
断る理由がない。兵隊は良い人だ。
「良いですよ」と俺は言った。「ありがとう。どうも淋しくてね」と兵隊は照れくさそうに笑いながら言った。
何て言っていいのかわからなかったので頷いておいた。
:11/02/01 23:20
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