大量生産の屑みたいな短編集
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#41 [ランチルームの怪奇(19)]
「驚いただろ? 幽霊でもまともなんだ。呪ったりしない。見かけで判断しちゃいかんよ」
「そうですね。ごめんなさい」
「良いんだ。じゃあまた会おう。さよなら」
「さよなら」
俺はランチルームの窓から外の世界に戻った。少しばかり空気が違った気がした。振り返ると兵隊の姿はなかった。
翌日、友人は兵隊の話を言いふらして回った。しかし誰も信じてはくれなかった。当然だ。俺も兵隊を目撃しなかったら信じない。
:11/02/01 23:20
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#42 [ランチルームの怪奇(20)]
マッチョは俺たちに謝った。怖くなって来れなかったらしい。友人は「惜しいことをしたな」と自慢げに言った。お前もな。俺は幽霊(兵隊)と話をしたんだ。そして兵隊を思い出し、俺はマッチョに謝った。
昼休み。一人でランチルームを訪れた。ランチルームに昨日の夜のようなじめじめとした空気はない。
俺は兵隊が来るのを待った。しかしいくら待っても兵隊は現れなかった。やがて昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。きっと兵隊は人と話せて満足したんだ。成仏したんだ。俺はランチルームを後にした。
:11/02/01 23:20
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#43 [新聞から始まった再会と別れ(1)]
◆新聞から始まった再会と別れ
僕は新聞を読むのが好きだ。真剣に新聞を読むようになったのは大学を出てからだったと思う。それまではテレビ欄しか見なかった。
新聞はあらゆる情報を僕の脳に届けてくれる。政治や経済、世界情勢と言った堅い内容。文化的ニュース。スポーツの結果。映画の公開情報。旅行の広告。全国的ニュース。地元の出来事。(僕にとって)どうでもいい情報から興味を引く情報まで本当にさまざまな情報が詰まっている。
新聞に目を通すと朝の行事は終わる。そして朝食を済ませ仕事に向かうのだ。
:11/02/01 23:28
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#44 [新聞から始まった再会と別れ(2)]
ある朝、新聞の地元欄を見ているとバーで傷害事件が起きたと報じられていた。死者は出なかった。ナイフを持って暴れた男は現行犯逮捕された。
僕はバーに興味を持った。それでネットでそのバーの住所を調べた。結構近くにそのバーは在った。ダーツバーだった。別にダーツはしたくなかったけど、何故かそのバーに行きたくなった。そしてその日の夜、僕は思いがけない形で新聞に載ってしまったバーを訪ねた。
どこにでも在りそうなダーツバーだった。まあ、雰囲気は悪くない。店内で流されている洋楽がバーの雰囲気と調和している。
:11/02/01 23:28
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#45 [新聞から始まった再会と別れ(3)]
客は少なかった。と言っても普段どれ程の客がいるのか僕は知らない。カウンターに一人の女性が居て、他に若者三人がダーツに耽っていた。
僕はカウンターの隅に腰をかけ、ビールとナッツを頼んだ。物静かなバーテンダーがビールとナッツをそっと置く。
:11/02/01 23:28
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#46 [新聞から始まった再会と別れ(4)]
バーテンダーとちょっとした話をし、ナッツをつまみながらビールを呑む。時々隣(と言っても少し距離がある)の女性がチラチラとこちらを見ていることに気が付いた。しかし僕は気付かないフリをしてビールを呑み続ける。
「やあ、お姉さん。僕に興味があるの?」なんて言えるような体質じゃない。まあこれは馬鹿げた話だ。もっとマシな言い方がある。
彼女が爪でカウンターをコツコツと叩く。僕はチラッと彼女に目を遣る。すると目と目が合う。僕はドキッとした。女性が微笑みながら軽くお辞儀をする。僕はお辞儀を返す。
:11/02/01 23:29
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#47 [新聞から始まった再会と別れ(5)]
僕はビールを眺めながら考えた。彼女は昔付き合っていた女性に似ていた。それは中学から高校にかけて付き合っていた人で、少し複雑な出来事をきっかけに別れた人だ。
彼女なんじゃないか? と僕は思った。別れて以来何年も会っていないため確信は持てない。それでも時間が経つごとに彼女が元恋人である気がした。
話しかけてみよう。違えば間違えました、と言って謝ればいい。
:11/02/01 23:29
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#48 [新聞から始まった再会と別れ(6)]
僕は席を離れて彼女に近寄った。彼女がこちらを見る。
「気付いてくれないのかと思った」と彼女は言った。「気付いていたのなら話しかけてくれれば良かったのに」と僕は言った。僕は彼女の隣に座る。バーテンダーがビールを持ってきてくれた。
:11/02/01 23:29
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#49 [新聞から始まった再会と別れ(7)]
「気付いてくれなくても、それはそれで良いと思ったの」
「でも君は呼んだ」
「最後のチャンスを上げたのよ」
彼女はカクテルを一口含んだ。カウンターに置かれた綺麗で細長い指を持った左手。薬指には指輪がされていた。
「結婚したんだ?」と僕は話の種にでもと思い訊ねてみた。「二歳年上の人とね」と彼女は何でもなさそうに言った。
:11/02/01 23:29
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#50 [新聞から始まった再会と別れ(8)]
「地元の人?」
「東京の人。小さな会社を経営してるの」
「へえ。今日はなんでまた地元に?」
「特に用事なんてないわ。なんかふらっと帰りたくなったの。そういうのない?」
「僕はずっと地元で生活してるからわからないな。でもあれだろう? たまに卒業した学校が見たくなるとか、よく遊んだ場所を懐かしむとか、そういったことだろ?」
「まあ、そうかもね」
違うのか、と僕は思った。そういったニュアンスが含まれていた。僕はビールとナッツのおかわりを頼んだ。
:11/02/01 23:30
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