大量生産の屑みたいな短編集
最新 最初 全 
#75 [香川人の野望(4)]
こうして僕は場の雰囲気に押され、香川人の部屋を訪ねることになった。
コンコンとノックをする。
「香川人、居るかい?」
「居るよ。何の用だい?」
「ちょっと話があるんだ。入っていいかな?」
「いいよ」
僕はドアノブを回し部屋に入った。香川人はベッドに寝転び本を読んでいた。文学本でないのは確かだ。生物図鑑だとか、そんな感じの大きな本だった。
:11/02/01 23:47
:biblio
:R.sy3Skc
#76 [香川人の野望(5)]
「何を読んでるんだい?」
「きっと笑うよ」
僕は本を上から覗いた。うどんの調理本だった。僕は吹き出しそうになった。香川人は食事の時間以外もうどんなのだ。
「本当にうどんが好きなんだね」
「ま、まあね」
香川人はちょっと震えていた。どうしたんだろう? 風邪でもひいてるのかな。
「ねえ、熱でもあるじゃない? 寒いんだろ?」
「いや、寒くないし熱もない」
「なら良いんだけど」
:11/02/01 23:47
:biblio
:R.sy3Skc
#77 [香川人の野望(6)]
沈黙。僕はなかなか切り出せなかった。触れてはいけない問題。アメリカの陰謀に触れるような感じがした。訊ねたら香川人は一生僕にうどんを食わせるかもしれない。
「君は知ってはいけない事を知った。これから毎日一日三食、うどんを食ってもらうよ。悪いとは思うけど、君がいけないんだ。君が首を突っ込んだんだからね」
馬鹿げてる。僕は首を振って馬鹿げたイメージを振り払った。
「僕香川出身なんだ」と僕は言った。「へえ」と彼は興味なさそうに言った。意外だった。
:11/02/01 23:47
:biblio
:R.sy3Skc
#78 [香川人の野望(7)]
もういい。さっさと訊いてしまおう。
「ねえ、香川人」
「なんだい」
「なんで君は毎日一日三食、うどんを食べているんだい?」
香川人は本から目を移し、鋭い目をして僕の顔をじっと見た。
ごくり。やはり訊いてはいけなかったんだ。そんな空気が流れた。
:11/02/01 23:48
:biblio
:R.sy3Skc
#79 [香川人の野望(8)]
「教えてあげてもいいけど、一つ条件がある。のんでくれるかい?」
ごくり。これはちょっとヤバいかもしれない。一生うどんを食わされるかもしれない。一生うどんをこねるための奴隷にされるかもしれない。
「条件を訊いても良いかな?」
香川人は頷いた。そして間を作った。なんだこの間は。ごくり。唾を飲む音が拡張され、部屋に響き渡った気がした。
「友達になってくれないか?」
:11/02/01 23:49
:biblio
:R.sy3Skc
#80 [香川人の野望(9)]
友達? 僕はなんだか呆気にとられた。そして反応が遅れた。香川人は拒否されたと思ったのか、がっかりして下を向いていた。僕は慌てて「構わないよ。でも友達は勝手になるもんだよ。別に結婚するわけじゃないんだから断りを入れる必要なんかないんだ」と言った。
それを聞くと香川人は顔を上げて笑った。
「ありがとう」と香川人は言った。「気にしないでいい」と僕は言った。
「それで……」
「ああ、約束だったね。うどんを食べ続ける理由だったよね? 教えるよ。けど笑わないでくれよ?」
「笑わない」と僕は言った。
:11/02/01 23:49
:biblio
:R.sy3Skc
#81 [香川人の野望(10)]
「友達が欲しかったんだ。奇抜なキャラクターを作ってみんなの目を惹きたかったんだ。そしたら友達ができるかなと思って」
「それなら随分回り道をしたね」
「でも友達ができた。うどんは食いすぎて嫌いになったけど、今じゃ好きになったよ」
それから香川人はうどんを食べなくなった。うどんを失ったかわりに友達を得た。香川人の野望は実を結んだのだ。
:11/02/01 23:49
:biblio
:R.sy3Skc
#82 [我輩は匿名である]
これで短編集は終わりです。読んでくれた方、ありがとうございます。
:11/02/01 23:51
:biblio
:R.sy3Skc
#83 [(o^〜^o)]
面白かったです(*^O^*)
お疲れさまです
:11/02/02 08:03
:F01A
:EIeSsfc2
#84 [我輩は匿名である]
:11/02/02 19:50
:biblio
:tOcU4qO6
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194