大量生産の屑みたいな短編集
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#85 [我輩は匿名である]
おもしろかったです!
:11/02/05 20:20
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#86 [我輩は匿名である]
>>85ありがとうございます。そう言って頂けるとホッとします。
:11/02/05 23:59
:biblio
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#87 [身分の低い男と王女の話(1)]
◆身分の低い男と王女の話
焚き火にガソリンをぶちまけたような、激しい恋をした事があった。僕はその時中学二年生で、恋の相手は同級生でも上級生でも下級生でもなかった。相手は僕より十歳くらい年上の大人だった。そして、教師だった。
相手の名は山村といった。山村先生は教師ではあるけれど、通常の授業は行わなかった。養護教諭、つまり保健室の先生だったからだ。
:11/02/20 14:23
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:A5igH2QY
#88 [身分の低い男と王女の話(2)]
僕が山村先生に会ったきっかけは、部活動のテニスでした怪我だった。無理をしてボールに飛び込み、勢いよく腕や足を擦ってしまったのだ。地面は砂だったから、皮が剥けて擦り傷ができた。血が溢れるように出た。
「保健室に行った方がいいよ」と部活仲間が言った。心配ない、大丈夫さ、と僕は強がった(中学生ってどうしても無意味に強がったりするんだよね)。でもラケットを振ると風が傷口を刺激した。ズキズキと痛み、こりゃあテニスなんてできない、と思った僕は、簡単に前言撤回して保健室に行った。
:11/02/20 14:24
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#89 [身分の低い男と王女の話(3)]
怪我や体調不良で保健室に行ったのはこれが初めてだった。それだから保健室の先生がどんな先生なのか、僕は知らなかった。身体検査で何度か保健室に行った筈なのに、なんで僕は知らないんだろう。きっと身体検査のとき、クラスメートとお喋りをしていて、先生の顔に注目しなかったんだと思う。
:11/02/20 14:24
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#90 [身分の低い男と王女の話(4)]
僕が保健室に入ると、机の上で書き物をしていた山村先生が顔を上げてこちらを見た。
「どうしたあ?」と少しハスキーな声で先生は言った。
「怪我をしまして……」と僕は腕と足の傷口を強調しながら言った。
「どれどれ」と言って山村先生は傷口を見た。「擦り剥いたんだね。こういう時はまず水でさっと流すんだよ。洗っておいで」
僕は言われた通り一旦保健室を出て、トイレ前の流し場の蛇口の水で腕の傷口を洗い、そして膝の傷口を洗った。
保健室に戻ると山村先生は消毒液を用意していた。僕は先生の向かいの椅子に腰を下ろす。
:11/02/20 14:24
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#91 [身分の低い男と王女の話(5)]
山村先生がガーゼに消毒液を付けている間、僕は先生の顔を眺めた。髪の色は黒で、ショートだった。顔は小さく、そして細かった。鼻が高く、左の目の下の泣きぼくろが非常にセクシーだ。白衣はとても身体に馴染んでいた。脚は黒のストッキングで覆われていて、これもまたセクシーだった。僕はこの時既に惚れていたのかもしれない。
先生が僕の右腕を手に取る。僕はその何気ないタッチにドキッとした。心臓が強く脈打った。先生はそんな事は知らずに、傷口をポンポンとガーゼで軽く叩いた。消毒液がしみた。
:11/02/20 14:24
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#92 [身分の低い男と王女の話(6)]
傷口を消毒した後、絆創膏が貼られた。「これで良し」と山村先生は言った。「ありがとうございます」と僕は少し緊張しながら言った。
「今度は気をつけてね」
「はい」
保健室を出ると汗をかいてる事に気付いた。体操着の裾で汗を拭った。
そして僕は一瞬混乱した。先生の容姿を思い浮かべると動悸がしたからだ。胸や顔が熱くなった。今までそんな経験がなかったから、それが恋だと気付くのに時間がかかった。
部活動に戻っても、暫く集中できなかった。普段しないようなミスをした。この気持ちはなんなんだ、と自問する。何故、山村先生の顔がチラつくんだ、と。
:11/02/20 14:26
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#93 [身分の低い男と王女の話(7)]
僕は恋をしたのかもしれない。一目惚れだ。セクシーな容姿に心臓をぐさりと刺され、あの何気ないタッチでトドメをさされた。
そうだ、きっとこれは恋だ。これが恋なんだ!
こうして僕は初恋をした。でもこの恋が報われないことを知っていた。相手は十歳以上年上(しかし年齢だけを考えるとそれほど障害ではないかもしれない)で教師だからだ。僕が好きだと告白しても先生は困るだろうし、迷惑かもしれない。だから僕はこの気持ちを胸の奥にしまった。深い暗闇の底に箱を置くように。
:11/02/20 14:26
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#94 [身分の低い男と王女の話(8)]
でも僕は若かった。気持ちを抑える事なんてできなかった。僕は仮病を使って何度か保健室に行ったりした。
「お腹が痛いの?」
「はい」
「トイレには行った?」
「行きました」
「じゃあ三時間目が終わるまで寝てなさい」
「わかりました」
たったこれだけの会話だけど、僕は嬉しくてたまらなかった。気を抜いてしまうとにやけてしまいそうだった。
ベッドで寝ている間、カーテンの隙間から山村先生の姿を覗いた。先生はいつも書き物をしていた。一体いつも何を書いているんだろう? 時々何か考え、そしてまた書いた。僕はドキドキしながら彼女の姿を目にしていた。
:11/02/20 14:27
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