大量生産の屑みたいな短編集
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#101 [身分の低い男と王女の話(15)]
「先生がいなくなるなんて寂しいなあ」と女子が言った。「先生も寂しいよ。せっかく仲良くなったのにねえ」と先生は言った。
やはり事実なんだな、と僕は実感する。やはり先生はいなくなるんだ。今でも遠い存在だったのに更に遠い存在となってしまう。
僕は想いを伝えるべきかどうか考えた。この学校を離れるのなら告白してもいいんじゃないか、と思う。結果はどうであれ、この想いを伝えなければ一生後悔する気がする。
僕は決めた。想いを打ち明けよう。
:11/02/20 14:32
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:A5igH2QY
#102 [身分の低い男と王女の話(16)]
ある日の昼休み、僕は教室を出た。とても緊張している。保健室に女子がいなければ、今日想いを打ち明けるつもりだ。
北校舎に入るとき、もう緊張で腹が痛くなるようだった。僕は一度トイレに入って気持ちを落ち着かせた。
トイレのひんやりとした空気は僕を少し落ち着かせた。小便をして、流し場で手を洗い、ハンカチで手を拭いた。
僕は保健室前に立ち、保健室に女子がいるかどうかチェックした。話し声はしない。どうやら今日はいないみたいだ。僕は保健室のドアを横に引く。
:11/02/20 14:32
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:A5igH2QY
#103 [身分の低い男と王女の話(17)]
案の定女子はいなかった。女子がいないとまるで神様が僕に知らせてるみたいだった。先生に告白するべきだ、と。
先生はいつも通り書き物をしていた。そして顔を上げ、「こんにちは、水野くん」と言った。僕は「こんにちは、先生」と言った。
僕はベッドに座った。先生は書き物を再開した。
さあ、言うんだ僕。口に出すんだ僕! けれどなかなか言葉が出なかった。僕は迷惑がられる事を恐れていた。恐れが僕の口を閉ざしてしまった。
:11/02/20 14:32
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#104 [身分の低い男と王女の話(18)]
直接言うのは無理だ、と僕は思った。とてもじゃないけど好きですなんて言えない。でも何か言わなくてはならない。ここで想いを伝えなければ、僕はこれからも伝える事はできないだろう。そうなれば僕は一生後悔という念を背負って生きていく事になる。
「先生」と僕は言った。「なあに?」と先生は書き物をしながら言った。
「最近ファンタジー小説を読んでるんです。そのファンタジー小説なんですが、とっても悲しい話なんです。主人公は身分の低い男性で、王女に恋をしてるんです。激しい恋です。心臓を焼くような恋です。これは小説にあった表現なんですがね……」
:11/02/20 14:34
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#105 [身分の低い男と王女の話(19)]
僕は一息ついた。下を向いて話していたせいで、先生がこちらを向いている事に気が付かなかった。僕は顔を赤く染めた。
「続きを話して」
「あ、はい。えっと……それから男は耐えきれなくなり、王女に告白するんです。ほんの僅かな時間ですが、王女に会える時間があるんです。男は好きだと告げるんです。でも王女はやはり身分の違いから断るんです。こんな話なんですが、僕はこれを読んで強い衝撃を受けました。あまり本を読まなかったから、本ってこんなに素晴らしい物なんだって」
:11/02/20 14:34
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#106 [身分の低い男と王女の話(20)]
先生は少し考えてから言った。
「身分っていうのはやはり大きな障害なのよね。身分の低い男性と付き合ったら、王女の身分が危なくなってしまう。王様から『お前はもう王女じゃない』って言われるかもしれない。だから王女は断るしかないのよ。でもね、王女は嬉しかったと思うの。どんな身分であれ、人から愛の告白を受けるって嬉しいものよ。そして身分の低い男性。あっぱれよね。彼は断られる事を知ってて告白したんだから。その勇気って凄いと思う。なかなかできないと思うわ」
先生は一息ついてからまた口を開いた。
:11/02/20 14:35
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#107 [身分の低い男と王女の話(21)]
「こんな風に色々考えさせられるわよね、小説って。水野くんは良い小説を見つけたね」
「そうですね。その小説を見つけて良かった」
僕は緊張から解放されていた。僕の心には温かい気持ちがあった。
四月に離任式があった。離任式には卒業した生徒が何人か駆けつけた。中には泣いている人がいた。
山村先生はステージに上がり、生徒に感謝の言葉だとかを述べた。僕が見た山村先生の姿はそれが最期だった。
もう僕が保健室に行く事はない。心を焦がすこともない。二年生の時感じた想いは思い出となっていつまでも心に残るだろう。
:11/02/20 14:35
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#108 [異世界への行き方(1)]
◆異世界への行き方
僕は夜中、友人と二人で酒を飲んでいた。
「異世界への行き方って知ってる?」と友人は出し抜けに足首のミサンガをいじりながら言った。僕は「異世界って?」と訊き返した。
「よくわからないんだけど、行ってみたらわかるらしいんだ。『ああ、ここは異世界だ』っていう風に」
「へえ。それで行き方を知ってるの?」
「知ってるよ。聞きたい?」
「是非」
すると友人は頷き、改まった表情をして言った。
:11/02/20 15:01
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#109 [異世界への行き方(2)]
「まず十階以上あるマンションを探すんだ。見つけたら一人でエレベーターに乗り、四階、二階、六階、二階、十階と移動するんだ。このとき、誰かが乗ってきたら成功しない。もし乗ってきたらもう一回やり直しだ。誰も乗ることなく十階についたら、降りずに五階を押す。五階に着いたら女の人が乗ってくる。その人には話しかけちゃいけない。というか、その人が乗ってきたら声を出しちゃいけない。女の人が乗ってきたら一階を押す。押したらエレベーターは一階に降りず、十階に上がっていく。十階についたらそこはもう異世界ってわけさ」
「よくわからないな。その女の人は何なんだろう?」
:11/02/20 15:01
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#110 [異世界への行き方(3)]
「わからない。多分異世界の住人かなんかじゃない?」
「なるほど」
友人はタバコを取り出し、ライターで火をつけた。煙をうまそうに吸い、上に吐き出す。そして僕の顔をじっと見る。
「やってみたいとは思わない?」
「別に。面倒じゃないか」
「もしかしてビビってる?」
「ビビってなんかない」
「じゃあやろうよ。このマンションって十二階建てだろう?」
僕は階数を思い出してみた。ああ、十二階だ。僕は頷く。
「なあ、やろうぜ。どうせ異世界なんて行けやしないんだから」
「わかったよ」
:11/02/20 15:01
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#111 [異世界への行き方(4)]
僕は渋々了承した。本当に面倒だったんだ。でもそこまで言うならしょうがない、付き合ってやろう。
僕たちは部屋を出た。外は闇が広がっていた。腕時計に目を遣る。時刻は二時五分だった。
「どっちが先にやるかジャンケンをして決めよう」と友人は言った。「オーケー」と僕は言った。
「最初はグー、ジャンケンポン」と二人で言う。僕はパーを出し、友人はグーを出した。
「チェッ、俺が先か」と友人は不服そうに言った。しょうがないだろう、ジャンケンで負けたのだから。
僕たちはエレベーターがある所まで歩いた。
:11/02/20 15:02
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:A5igH2QY
#112 [異世界への行き方(5)]
友人はエレベーターに乗った。へらへらと笑っていた。
友人を乗せたエレベーターが四階に向かう。十一階にいた僕は、エレベーターの上に設置された階数表示を見ていた。これを見ていれば友人が何階にいるのかがわかる。
エレベーターは二階行き、そして六階、二階、十階と移動した。夜中だし誰もエレベーターには乗らなかったのだろう。エレベーターは降下し五階で止まった。奇妙な世界に入っていなければエレベーターは一階に向かう筈だった。しかし、降下すると思われたエレベーターはゆっくり上昇した。そしてエレベーターは十階で止まった。そのときだった。
:11/02/20 15:03
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:A5igH2QY
#113 [異世界への行き方(6)]
「うわあああ!」という友人の小さな叫び声が耳に届いた。参ったね。きっと僕を驚かせるために十階を押し、そして力一杯叫んだんだ。僕はエレベーターのスイッチを押した。
エレベーターが十一階につき、扉が開く。誰も乗っていなかった。僕はエレベーターに乗り、十階を押した。エレベーターは僕を十階に運ぶ。そして扉が開く。僕はエレベーターを降りた。辺りを見渡すが友人の姿は見当たらない。
きっと隠れているんだ。僕は十階を歩き回って隅まで探した。しかし友人の姿はなかった。嫌な予感がした。
:11/02/20 15:03
:biblio
:A5igH2QY
#114 [異世界への行き方(7)]
僕は階段を上り、十一階に戻った。そして隅まで見て回った。自分の部屋に入って風呂場やトイレ、押し入れまで探した。しかし友人の姿はなかった。
部屋の前に立って辛抱強く友人を待った。どこかに隠れているに違いない。そうなら友人が根を上げるまで待ってやる。しかし、友人は三十分になっても現れなかった。
本当に異世界に行ってしまったのだろうか? 何だかそんな気がしてきた。馬鹿げてると思う。でも僕は焦り始めていた。
やってみればわかる。
僕はエレベーターに乗り込んだ。
:11/02/20 15:04
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:A5igH2QY
#115 [異世界への行き方(8)]
四階を押し、ついたら一旦降りてまたエレベーターに乗り込む。同じように二階、六階、二階、十階と進む。この間誰も乗ってこなかった。十階についたら、降りずに五階を押す。僕は緊張していた。堅く握られた手や脇の下には汗が感じられた。
五階につくと若い女が乗ってきた。髪は長く、肌は白い。なかなか美人だった。女が僕の横につくと、僕の緊張はピークに達していた。まさかな……。これは単なる偶然なんだ……。
僕は手を震わせながら一階を押した。僕は階数表示を見る。五から六に変わった。エレベーターは上昇しているのだ。
:11/02/20 15:04
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:A5igH2QY
#116 [異世界への行き方(9)]
エレベーターはゆっくり上昇する。六がゆっくり七に変わる。
僕はふと壁に目をやった。何か黒い染みのようなものが壁に浮かび上がっていたからだ。七が八に変わる。すると染みは広がる。八が九に変わる。染みが壁全体に広がり、色が鮮やかになる。黒みがかった赤色だ。
僕は染みに触れてみた。黒みがかった赤色の液体が指についた。液体のついた指を鼻に近付かせて匂いを嗅いでみた。血の匂いがした。
僕は息を飲む。九が十に変わる。僕は隣に目を遣る。女の姿はなかった。僕が正面に顔を戻すと先ほどの女の顔が眼前にあった。僕の心臓が跳ね上がる。
:11/02/20 15:07
:biblio
:A5igH2QY
#117 [異世界への行き方(10)]
何とか声を出さずに済んだ。この女は驚かそうとしているのだ。僕に声を出させて、そして殺すつもりなんだ。
異世界に行くための試練は非常に厳しかった。女の右側の目玉が前に飛び出してきて、そしてこぼれ落ちる。鼻からは緑の液体が垂れ、顎が外れ口は大きく開いた。よく見ると口にはミサンガがあった。友人がしていたミサンガだ。
女は更に僕の顔に顔を近付ける。女から鼻をえぐるような腐敗臭がする。女は蛇のような細くて長い舌を出し、ペロペロと僕の頬を舐める。
:11/02/20 15:07
:biblio
:A5igH2QY
#118 [異世界への行き方(11)]
僕は身体を震わせる。目を閉じて、悪夢が去るのを待つ。これは悪夢なんだ。覚めない夢なんかない。必死に自分に言い聞かせる。
女が僕のまぶたに触れる。そして無理やり目を開かせる。ちゃんと見ろと言いたいらしい。良いだろう、僕はこの悪夢をはっきり見てやる! 僕は手を払い、目を見開いて女の顔を見た。
やがてドアが開く。女は観念したのか僕に背中を見せた。やっと終わる、と僕は思った。女がエレベーターを降りる。そしてどこかへ消えた。僕は崩れ落ちるようにして床に座った。エレベーターのドアは開いたままだ。
:11/02/20 15:07
:biblio
:A5igH2QY
#119 [異世界への行き方(12)]
もう僕には外に出て異世界かどうか確かめるような力はなかった。やがてドアが閉まり、エレベーターは一階へ向かう。エレベーターは通常の速さで降下する。壁の染みはもうない。
一階につく。僕は立ち上がり、エレベーターを出た。現実に返ったのだ、悪夢から覚めたのだ。僕は外の空気を肺に運び、ゆっくり吐いた。深呼吸をすると気が楽になった。
あれは幻覚だ。僕はそう自分に言い聞かせた。友人は用事を思い出して帰ったのだ。僕は腕で額の汗を拭おうとした。
血だ。腕には血がべったりついていた。
:11/02/20 15:08
:biblio
:A5igH2QY
#120 [我輩は匿名である]
異世界への行き方はhttp://bbs2.ryne.jp/r.php/occult/1319/このスレを参考にして書きました
:11/02/20 15:11
:biblio
:A5igH2QY
#121 [我輩は匿名である]
:11/02/20 15:11
:biblio
:A5igH2QY
#122 [我輩は匿名である]
なんのオチもどんでん返しもない話ばっかりだね
:11/02/21 15:42
:PC
:RFih9ObM
#123 [我輩は匿名である]
>>122貴重な意見ありがとうございます。そうですね、考えてみたらオチがありませんね。自分の作品って可愛い物でなかなか悪い点がわからんのです。低レベルな作品で満足しちゃってるせいですね。
ちゃんとオチだとかが書けるよう精進します。
:11/02/21 18:16
:biblio
:0qvT8Zb2
#124 [我輩は匿名である]
短編集好きなので、頑張ってください。
偉そうにすみませんでした。
:11/02/21 18:36
:PC
:RFih9ObM
#125 [運命の人(1)]
とある病院に二人の男女が入院していました。二人は何度か顔を合わせる内に、互いのことが好きになりました。
「エミちゃん、好きだよ」
「ヤマトくん、私も好きよ」
二人は手を握り合いました。二人は幸せでした。けれど、不幸でもありました。二人は重い病気で、あと数ヶ月しか生きられないのです。
「ヤマトくん、なんで神様は意地悪をするんだろうね?」
「意地悪?」
「私たちをくっつけたかと思えば、引き離そうとするじゃない?」
「そうだね。でもこういうことなんじゃないかな。愛する人のために、希望を捨てずに頑張れって。頑張って生きてみろって」
:11/05/29 22:32
:biblio
:8XGo/2Jc
#126 [運命の人(2)]
二人は頑張りました。副作用の強い薬を飲んで、病気と戦いました。でも、駄目でした。ヤマトくんが先にこの世を去りました。エミちゃんは泣きました。ヤマトくんが亡くなったことで、自分が抜け殻になってしまったような気がしました。
「エミちゃん、これ」
看護婦がエミちゃんに手紙を渡しました。
「これは?」
「ヤマトくんからの手紙。預かってたの」
「ありがとうございます」
エミちゃんは手紙を受け取ると、早速封を切りました。
:11/05/29 22:32
:biblio
:8XGo/2Jc
#127 [運命の人(3)]
「この手紙を受け取ったということは、もう僕はこの世界にいないってことだ。残念だけれど、一時的なさよならだ。何故一時的ってエミちゃんは思うだろう。実はというと、僕はまだ諦めてないんだ。僕は転生――つまり、生まれ変わりを信じてる。生まれ変わって、また君を愛したい。
エミちゃんが病気に勝ったら、僕のことを待っててほしい。成長したら、きっと君に会いに行く。年の差なんて大した障害じゃない。死に比べたら……そうだよね?」
:11/05/29 22:33
:biblio
:8XGo/2Jc
#128 [運命の人(4)]
「こういうことは言いたくないんだけれど、もしエミちゃんが病気に負けたら、生まれ変わってまた会おう。運命は信じる? 僕は信じるよ。きっと僕たちは会えるさ。きっとうまくいく。僕たちは再び会うことを約束するために出会ったのだから。
それじゃあ、一時的なさよならだ。また会おう」
エミちゃんの目からは涙が溢れ出ました。手紙には大粒の涙がこぼれ落ち、字が滲んだ。エミちゃんは生まれ変わりを信じました。そして、絶対ヤマトくんを見つけると決めました。
エミちゃんが亡くなったのは、それから数ヶ月してからでした。
:11/05/29 22:33
:biblio
:8XGo/2Jc
#129 [運命の人(5)]
ここはとある高校。沢山の若者が授業を受けています。
「あ、シャーペンの芯がない」
女の子は慌てました。筆箱や机の中を探しましたが、芯はありません。
「ヤマトくん、シャーペンの芯貸してくれない?」
「いいよ」
ヤマトくんと呼ばれた男の子はシャーペンの芯を貸してあげました。
「ありがとう」
:11/05/29 22:33
:biblio
:8XGo/2Jc
#130 [運命の人(6)]
「あれ、消しゴムがない」
ヤマトくんは慌てました。筆箱や机の中を探しましたが、消しゴムはありません。
「ねえ、エミちゃん、消しゴム貸してくれない?」
「はい」
「ありがとう」
二人はまだ気付いていません。隣に運命の人がいることに。
意外と近くに運命の人はいるかもしれません。あなたはどうですか?
:11/05/29 22:33
:biblio
:8XGo/2Jc
#131 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age
:22/10/07 17:01
:Android
:GR1soPvw
#132 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/07 17:05
:Android
:GR1soPvw
#133 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/07 17:06
:Android
:GR1soPvw
#134 [○○&◆.x/9qDRof2]
「ほんと、動物好きだね」
「可愛いからなぁ」
そう言って、英輔はまた、甘く笑った。
麻衣には動物への興味などさらさらないが、英輔が趣味に傾倒する気持ちは、理解できる。時には、その趣味とはまた別の時間の使い道があるということも。
だからこそ、今日のような雨の日は、こうして二人で時間を共有する。
英輔もまた、休日の雨の日の読書を密やかな楽しみとしているのだ。
:22/10/07 19:19
:Android
:GR1soPvw
#135 [○○&◆.x/9qDRof2]
「雨、止まないね」
視線を窓の外に移して、英輔が呟く。
「だからここにいるんじゃないの?」
「……それもそうだ」
また麻衣に視線を戻して小さく笑う。
「何言ってるんだか」
まだへらへらと笑っている英輔に呆れたように嘆息した。
どこか掴み所のない英輔だが、こうして過ごすこの時間が思いのほか心地好い。それが何故なのかわからなかったが、麻衣はいつの間にかこの雨の休日を待ち遠しく感じていた。
:22/10/07 19:19
:Android
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#136 [○○&◆.x/9qDRof2]
コーヒーに口を付けた後、麻衣は読書に戻ろうと文庫本を手に取った。栞を挟んだページを開き、最後に目を通した一文の一行前から読み直していく。次第に文章が目に馴染み始め、物語に引き込まれていった。
しかし、ものの数分もしない内に、
「なぁ、佐々木」
再び英輔の声によって現実の世界に呼び戻される。
「……何よ」
返す言葉に険が籠もった。彼は麻衣がこんな邪魔のされ方を嫌っていることを知っているはずだ。それなのにどうして、今更、こんな声のかけ方をしてくるのだろうか。
:22/10/07 19:20
:Android
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#137 [○○&◆.x/9qDRof2]
麻衣は苛立ちと訝しさとを混ぜたような視線を英輔に向けた。相変わらず、英輔は安っぽい笑顔を浮かべている。
そして、唐突に、
「結婚しよう」
そう言ったのだ。
からん、とグラスの中で氷が音を立てた。その拍子に、グラスの側面に浮いていた汗の玉の一つが雫となって、ガラスの表面を滑り落ちていく。
ああ、そうだったのか。
不意に麻衣は理解した。
:22/10/07 19:20
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#138 [○○&◆.x/9qDRof2]
麻衣が、何故、どの男にも心を惹かれるものを見付けられなかったのか。何故、“彼女”のことを考えると胸の中がモヤモヤするのか。何故、英輔と過ごす雨の日を待ち遠しく感じていたのか――その事に、漸く、答えが出せた。
雫はテーブルに溜まった小さな水溜まりに混ざり、その一員となって目には見えなくなっていった。
:22/10/07 19:20
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#139 [○○&◆.x/9qDRof2]
「…………読まないの?」
麻衣はテーブルの上のブックカバーを掛けられた文庫本を、人差し指でとん、と叩いた。
「え? ああ、読むよ。久しぶりにシートン動物記を持って来たんだ」
「そう。懐かしいわね」
そう言って麻衣はページに視線を落とした。
「あれ? 佐々木、返事は?」
「返事?」
:22/10/07 19:20
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#140 [○○&◆.x/9qDRof2]
質問には答えず逆に英輔に問い掛ける。丁度、ページの最後を読み終わったところだったので、麻衣はページを繰る為にのその端に指を掛けた。
「いや、だから……」
言葉を濁した英輔にちらと目だけで先を促す。真剣味のなかった彼に初めて焦りのようなものが見えた。
「俺、一応プロポーズしたんだけど」
「冗談でしょ?」
一言の元に斬って捨てた麻衣はページを捲る。
:22/10/07 19:20
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#141 [approach]
(´∀`∩)↑age↑(∩゚∀゚)∩age
:25/11/13 00:49
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:b8Rd/wD6
#142 [あげ]
あげアゲ(🤟 ˘ω˘ )🤟アゲ
:26/04/26 18:23
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:KZfGZ9u2
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