†horror†
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#742 [輪廻]
響歌『(終わらない……?)』
男が言った言葉が何度も脳内にこだまする。
急に全身に寒気が走り、すぐその場から立ち去ろうとした時、後ろから誰かが響歌の肩をポンと叩いた。
響歌『…きゃっ!!』
いきなりの事に反射的に驚きの声をあげ
、その手を、肩を激しく動かして払いのける。
武田『わっ!』
後ろから聞き覚えのある声がして振り返ると、そこに立っていたのは驚いて目をシロクロさせているアパートの隣人の武田だった。
:11/12/10 17:35 :Android :K/HY0xQ.
#743 [輪廻]
響歌『あっ、た、武田さん…』
武田『久しぶりぃ…。一体どうしたの?
私も驚いちゃったよ』
武田のすぐ下の地面には、驚いた拍子に落としてしまったと思われる、ほうきがあった。
響歌『すっ、すみません!』
武田『大丈夫よ。それよりそのリュック…またどこか泊まりにでも行くの?』
響歌『いえ…このアパートを引き払って実家に帰ろうと思ってるんです』
武田は当然理由を尋ねてきたので、響歌はこのアパートで死んだ者の事についての話をした。
:11/12/10 17:37 :Android :Us.cY7T2
#744 [輪廻]
武田『あらそう…私もびっくりしたのよ。
奥村さんの時もそうだったけど、管理人さんまでもが殺されたって聞いた時はねぇ』
さすが噂話や世間話が好きなおばちゃんと言った感じか、武田は少し嬉しそうに喋る。
響歌『武田さんは…怖くないんですか?』
愚問だとは思ったが、彼女も女性なので、念のためにと聞いてみた。
武田『私? あはは!
そりゃ怖いに決まってるじゃないの!』
笑いながら即答する武田を見て響歌は“この人なら大丈夫だ”…直感的にそう思った。
:11/12/10 17:39 :Android :Us.cY7T2
#745 [輪廻]
武田『でも村井さんがいなくなっちゃうとなんだか寂しいわ。
実家はどの辺りにあるの?』
響歌『あ、ここから20分くらいの所です』
武田『あらそう…じゃあおばさんに会いたくなったらいつでも来てちょうだいね』
響歌『…ありがとうございます』
気さくで明るい武田と話していると、今までの出来事などが最初からなかったように感じた。
そんな意味も込めた“ありがとう”を武田に言い、響歌は実家へと向かうー
:11/12/10 17:41 :Android :Us.cY7T2
#746 [輪廻]
途中あの河原を歩いていると、上から一枚の紙が風に流されるように響歌の方に向かってきて、やがて足元にフワリと落ちた。
その白いA4サイズのくしゃくしゃになった紙には…
“高収入! 誰にでもできるアルバイト急募! 詳しくはコチラへ”と書かれ、担当者の名前などはなく電話番号だけが記されている。
響歌『……やめとこ』
“高収入”という響きに一瞬だけ心が揺らいだが、担当者の名前がないのはどう考えても不自然だと思い、その紙を拾い上げると、まるめて後ろにポイっと投げ捨てた。
:11/12/10 17:43 :Android :PW2isk5o
#747 [輪廻]
数十分後―
高校を卒業してから出ていった実家の前に到着し、ドアの前で足を止めて深呼吸してからインターホンを押す。
『はあい!』
ドアの向こうからした、久しぶりに聞く母の声に安心を覚える響歌。
そしてドアが開き、中から母が顔を覗かせた。
響歌『お母さん…久しぶり』
『響歌じゃない! 久しぶり!』
お互いの顔を数秒間眺めた後、次に母の目に入ったのは、響歌が背中に背負った大きいリュック。
:11/12/10 17:46 :Android :PrFZziwo
#748 [輪廻]
『あれ、どこか旅行にでも行ってたの?』
響歌『ううん、違うよ。あのさ…』
前もって連絡しなかったせいで“アパート暮らしをやめてここに帰ってきた”とはなかなか言い出せない響歌だった。
すると母は、響歌がこれから言おうとした事を悟ったかのように、優しい目をして言った。
『わかってるよ、響歌。
何も言わなくても…お母さんには』
そんな母の言葉で、響歌の目は涙で一杯になり、そんな響歌を母は優しく抱きしめた―
:11/12/10 17:48 :Android :7tj.6SrI
#749 [輪廻]
中に入り、しばらくして落ちついた所で、母は一枚の紙を差し出した。
響歌『なに? これ』
そう言いながら、紙に目をやる。
響歌『……同窓会……?』
印刷された紙の上部分には大きめな文字で“桜丘中学3年A組・同窓会のお知らせ”と書かれていた。
『昨日ファックスで送られてきたんだよ』
響歌『同窓会か…どうしようかな』
最近続いた出来事もあり、あまり乗り気じゃなさそうに言う。
:11/12/10 17:50 :Android :7tj.6SrI
#750 [輪廻]
『そうそう、ニュース見た?
アンタが通ってた中学校の先生が自殺したって』
母は突然、思い出したように言う。
響歌『う、うん…そうみたい』
その件に自分も関わっていたとは言えなかった。
『名前は…望月って言ったっけ?
響歌、どんな人だったか覚えてる?』
今の響歌にとって、これほど戸惑う質問はなく…
響歌『……よく覚えてない』
と、そう一言だけ答えた。
:11/12/10 21:46 :Android :ltKS0pug
#751 [輪廻]
『もう前の事だもんね。
お母さんも全然覚えてないの。もう年なんだね』
響歌『なら、私も年だよ』
そんな他愛のない話をしばらくの間続けた。
アパートの部屋にあったほとんどの荷物を運び、そのアパートを引き払い、再び実家に住み始めて数ヵ月が経ち、翌年新年を迎える―
この数ヵ月間、あの男が響歌の前に姿を現す事は一度もなかったが、時々外を歩いているとふと背後に誰かの視線や気配を感じたりする事は度々あった。
:11/12/12 13:14 :Android :iKeZKfsg
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