†horror†
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#2 [輪廻◆j6ceQ96kak]
プロローグ




………。



私の名前は村井 響歌(むらい きょうか)


21歳。

都内で一人暮らしをしている大学生。


学校とアルバイトを両立しながら生活をしている、いたって普通の学生。



今回は私の身の回りに起きた5つの物語をあなたに…

⏰:11/04/24 04:02 📱:T004 🆔:spXS9mck


#3 [輪廻◆j6ceQ96kak]
第1話【狂気なる隣人】


今日も学校とアルバイトを終えて帰宅した。

家賃が1ヶ月8000円という格安なアパートに一人暮らしをしている私。

安いからといって、特に曰く付きの物件という事ではない。

私自身が霊感が強くないだけかもしれないが。


響歌『あ〜疲れた』

バッグと上着をベッドに投げ捨て、シャワーを浴びるべくシャワールームに。

⏰:11/04/24 04:08 📱:T004 🆔:spXS9mck


#4 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ゴッ! ゴッ!』

それは丁度、体を洗い終えシャンプーを手に取った時だった。

壁の向こうから何かをぶつけるような音がした。


響歌『なに…?』

しばらくすると、音は止まった。


隣の部屋の人が何かしているのだろう、と思った響歌は首を傾げながらも頭を洗う。

⏰:11/04/26 11:09 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#5 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

頭をお湯で流し、今度はリンスを手に取った時に再びあの音がした。


今度はぶつける回数が先程より多い。


しかし響歌は学校とアルバイトの疲れが溜まっており、特に気にする事なくシャワーを続けた。

⏰:11/04/26 11:14 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#6 [輪廻◆j6ceQ96kak]
シャワーを終え着替えて部屋に戻った響歌。

テレビをつけてドライヤーのコンセントをつけようとした時だった。


『ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

またあの音だ。


響歌『マジなんなの…うっさいな…』

疲れと同時にストレスも溜まっている響歌。

⏰:11/04/26 11:18 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#7 [輪廻◆j6ceQ96kak]
アパートが格安なのは部屋と部屋の壁が薄い為だろうと悟った響歌は、明日管理人さんに苦情を入れようと決意し、ドライヤーで頭の乾かしに入った。


『ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

今度はドライヤーの音を掻き消すほどの大きな音がする。

隣人がドライヤーの音に対して『うるさい』とサインを送っているのだろうか。

⏰:11/04/26 11:23 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#8 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし響歌がドライヤーの電源を落とした後も、しばらくその音は続いていた。


響歌『意味わかんない。言いたい事あんなら直接言えっての』

イライラが頂点に達した響歌は、その音がする壁に向かってキックをかました。


すると同時に音がピタッと止んだ。

⏰:11/04/26 11:26 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#9 [輪廻◆j6ceQ96kak]
これはもう我慢ならないと、ついに隣人の部屋へ向かう事を決めた。


ベッドに置いていた上着を羽織り、サンダルを履いて隣の部屋へバタバタと向かった。


チャイムを押す。


しかし返事はない。


部屋の電気も消えているようだ。


それよりも気になったのが、人の気配が感じられない事だ。

⏰:11/04/26 11:35 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#10 [輪廻◆j6ceQ96kak]
少し背筋が凍ったが、音がした以上は人がいる事は確かだと推理した響歌はチャイムを連打する。


響歌『すみませーん!』

右手でチャイムを押し、左手でドアをガンガン叩きながら呼んだ。


しかし一切返事はない。


すると、その部屋の隣の部屋から人が出てきた。


いつも朝にゴミ出しをしているおばさんだ。


会うと必ず挨拶をする。

⏰:11/04/26 11:40 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#11 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『武田さん…』


武田『村井さんじゃない、どうしたの? こんな時間に』

響歌は音について武田さんに話した。


武田『ああ、私も聞いた事あるよ。この部屋にはね、奥村さんという女性が一人で住んでるんだよ。管理人さんから聞いたんだけど、どうやら壁に自分のおでこをぶつけてるらしいね』

⏰:11/04/26 11:45 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#12 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『暗い部屋で、なんでそんな事を…?』


武田『さあねえ…ここの人ちょっと変わってるから。あまり関わらない方がいいよ』


響歌『でもうるさいんですよね…これじゃ寝られないかもしれないです』


武田『私も管理人さんに言ってるのよ。でも管理人さんってホラ、気の弱そうな人じゃない…だからなかなかねえ』

⏰:11/04/26 11:51 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#13 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌はしばらく武田の話しに付き合わされ『そろそろ寝るから』と一方的に話を打ち切ってニヤニヤ顔で部屋に戻って行った。


響歌『さすがオバチャンパワー』


真面目に見えていた武田の別の一面を見た響歌はため息をついてから自分の部屋へ戻った。


髪は武田との長い会話中に、半分は乾ききっていた。


残りの半分を乾かす為、再びドライヤーの電源を入れた。

⏰:11/04/26 11:56 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#14 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

凝りもせず音がする。


武田は壁におでこをぶつけていると言っていたがこのくらい大きな音であれば出血しているはずだ。


響歌『隣の人も隣の人だけど、黙ってる管理人も管理人じゃない…』

響歌は隣人よりも管理人に呆れかけていた。

⏰:11/04/26 12:05 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#15 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その日は全く眠れなかった。

なぜなら、あの音は深夜にも定期的にしていたのだから。



―翌日


結局音のせいでまともに寝れなかった響歌。


今日もアルバイトへ行く為、眠たい目をこすりながら準備を始めた。


音はしていない。


深夜にずっと起きて壁におでこをぶつけていたせいか、もう眠っているのだろうと響歌は勝手に解釈した。

⏰:11/04/26 12:09 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#16 [輪廻◆j6ceQ96kak]
洗顔などを終え、着替えてから化粧を簡単に済ませ、早々と部屋を後にする。


帰ってきたら管理人に言おうと決めていた。


その日の昼休み、バイト仲間にあの事を話すと『ぜひ聞いてみたい』という声があがった。


響歌は『どうせなら泊まって行く?』という提案をいれるとバイト仲間は嬉しそうにして首を縦に振った。

⏰:11/04/26 12:16 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#17 [輪廻◆j6ceQ96kak]
アルバイトが終わり、大学へと向かう。


学校が終わったらバイト仲間に連絡を入れて、家に泊まりに来てもらう事になった。


一人でいるのが少し怖いと思っていた響歌には好都合だった。


学校が終わると早速バイト仲間にメールを入れた。


返事はすぐに来て内容は『これから行く』というものだった。

⏰:11/04/26 12:24 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#18 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は、せっかく来てくれるのだからとコンビニでお菓子や夜食を適当に買ってからアパートに帰った。


荷物を一旦部屋に置いてから、アパートの前で友達を待っている事にした。


10分くらいして、男女2人組がやって来た。


男性の方は、響歌の仕事場の数年先輩である吉田 優斗(よしだ ゆうと)


女性は、吉田と交際している同僚の松下 雪乃(まつした ゆきの)

⏰:11/04/26 12:32 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#19 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『よっ! お待たせ』


雪乃『遅くなってごめんね、響歌!』


響歌『いや大丈夫だよ。あとは中野君だけだね』


雪乃と同様、仕事場の同僚の中野 敬太(なかの けいた)


以上の3人が響歌の部屋に泊まる事になった。

⏰:11/04/26 12:41 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#20 [輪廻◆j6ceQ96kak]
待っている間、吉田は響歌にひっそりと言った。


優斗『なあ村井、お前って中野の事好きなんだろ?』


響歌『なっ! い、いきなりなんですか?』


優斗『顔赤いぞ。わかりやすいなー』


響歌『な、中野君はただの同僚です! なんであんな奴なんか…』


優斗『ふーん。いやよいやよも好きの内ってな』


雪乃『優斗くんやめなよ、今はそんな話してる時じゃないでしょ』

雪乃のフォローで、恋愛の話は途切れた。

⏰:11/04/26 12:47 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#21 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『チェッ、わかったよ』

それから5分後、向こうから中野がやってきた。


優斗『中野! 遅いぞ』


中野『いやあ、すみません。準備に手間取ったんで』

中野は肩に大きなリュックを背負っていた。


1泊するだけなのにその荷物は大袈裟だなと思いつつも彼らを部屋に招き入れた。

⏰:11/04/26 12:52 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#22 [輪廻◆j6ceQ96kak]
みんながそれぞれ荷物を置いて、響歌の周りに集まった。


響歌『あの音なんですけど、多分そろそろするかもしれません』


優斗『確かババアがデコぶつけてる音なんでしょ? ただの異常者なんじゃねーの?』


吉田の表情からは一切の恐怖という感情が見られない。


逆にそのおばさんを小バカにしているようだ。

⏰:11/04/26 13:04 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#23 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『でも怖いよね。夜中もずっとぶつけてたんでしょ? 警察とか呼ばなくていいのかな…』


優斗『雪乃、お前に何かあったら俺が守ってやるよ。だから心配すんな』


雪乃『あ、ありがとう』

吉田が雪乃の肩に手を回しているのを見て、少々気まずい雰囲気になった。

⏰:11/04/26 13:08 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#24 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかしそれはすぐに打ち切られた。


『ゴッ! ゴッ! ゴッ!』


雪乃『キャっ!』

その音に敏感に反応した雪乃は小さな悲鳴をあげた。



敬太『今の音?』


響歌『そう…』


優斗『きたかババア!』

吉田はそう言って突然立ち上がり、音のする壁の方に向かった。

⏰:11/04/26 13:12 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#25 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして躊躇する事なくその壁をガンガンと強く叩き出した。


優斗『おいババア! うっせーんだよ!』


『ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

しかし音は止まない。


響歌『おかしいな…いつもは止まるのに』

吉田は言葉を続ける。

⏰:11/04/26 13:22 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#26 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『さっさとくたばれババア! こっちは寝れなくて迷惑してんだよ!』

するとピタリと止んだ。


優斗『もう大丈夫かもしれないぜ』


響歌『あ、ありがとうございます』


優斗『でも一応泊まってくわ。ババアとはいえ、なんかやり返してくるかもしれねーし』


みんなは荷物から寝袋を取り出した。

⏰:11/04/26 13:26 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#27 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『響歌、私達はこれで大丈夫だから、ベッドでゆっくり寝てね』


響歌『雪乃、ありがとう』


優斗『その前に腹減ったな』


響歌『これ適当に買ったので、よかったら食べてください』

響歌はコンビニで買ったものを吉田に渡した。

⏰:11/04/26 13:31 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#28 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『サンキューな』

中野『じゃ、俺もいただきます』

それからは4人でたわいもない世間話などに没頭し、あの音の事などを忘れていった。


時計は午後23時を迎えた。


3人は話の最中で順番に『もう寝る』と言い、深い眠りについていた。


起きているのは響歌ただ一人だ。


暗い部屋でベッドに横になって携帯電話をいじっていた。

⏰:11/04/26 13:40 📱:SH003 🆔:5Bo.qlGs


#29 [輪廻◆j6ceQ96kak]
すると、まるで響歌が一人になるのを見計らうように…


『ゴッ! ゴッ! ゴッ』

すっかり音の事を忘れていた響歌は、ハッと我に帰ってから壁の方を見る。


3人を起こそうと思ったが、悪い気もするので厚い毛布を被って音がなるべく聞こえないようにした。

⏰:11/04/27 11:23 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#30 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし…

『ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

音は更に大きくなり、まるで響歌のすぐ耳元で聞こえるような感覚に陥った。


響歌『もうやめて…』

耳を塞ぐも、音はそれを遮って聞こえてくる。

響歌は我慢の限界に達した。


3人を起こす事にしたのだ。

⏰:11/04/27 11:27 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#31 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『吉田さん! 吉田さん!』

響歌はベッドから下り、頼りになりそうな吉田から起こそうと、体を揺する。


優斗『………』

反応がない。


響歌『雪乃! 雪乃!』


雪乃『ん…』

雪乃は目をこすりながらゆっくりと目を開けた。

⏰:11/04/27 11:32 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#32 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『響歌…どしたの…』


響歌『雪乃! 聞こえる? 音が…』


雪乃『み、耳が…』

両耳を塞ぐ雪乃。


しかし…


雪乃『音が…中に…入ってくる!!』


響歌『雪乃! 落ち着いて!』

雪乃は人格が変わったように、まるで別人のような目つきに変わった。

⏰:11/04/27 11:37 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#33 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『鼓膜が…ギャアアアアアアアアアア!!』

そして、この世のものとは思えない悲鳴をあげ、その場に倒れ込んだ。


響歌『雪乃!!』

どうやら気絶しているようだった。

響歌は再び吉田の元に来て体を大きく揺らす。

⏰:11/04/27 11:40 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#34 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『吉田さん! 起きてください! 雪乃が!』

俯せになっている吉田の体を仰向けにしてその顔を見た時、響歌は言葉を失った。


吉田の目は白目を向いていて、顔は青白いのだ。

まるで首を強く締められている時のような顔。


響歌『よ、吉田…さん』

ベッドの方に後ずさりする響歌。

⏰:11/04/27 12:00 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#35 [輪廻◆j6ceQ96kak]
音は相変わらずうるさく鳴っている。

しかし今はその音よりも吉田の顔に恐怖心を抱いていた。


響歌『け…けいさつ…』

響歌はベッドに置いてある携帯電話を手にし、震えた手で『110』を押した。


警察が出て訳を話し、通話を切った響歌は中野敬太の元へ。

⏰:11/04/27 12:04 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#36 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『中野君! 中野君!』

大きく体を揺らすと、彼はすぐに目を覚ました。


敬太『響歌ちゃん…?』

響歌は涙しながら無言で敬太に抱きついた。


響歌『中野君…吉田さんが…うう…』


敬太『な、何があったんだよ?』

泣きながらも響歌は訳を話す。

⏰:11/04/27 12:11 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#37 [輪廻◆j6ceQ96kak]
敬太『警察は呼んだんだよね?』


響歌『うん…。でも私が…3人を巻き込んじゃったんだよね…』


敬太『響歌ちゃんは悪くないよ。もしかしたら、例のおばさんの呪いかもしれない。吉田さん、何度も馬鹿にしてたからさ…』


響歌『吉田さん…』

警察が来るまでの間、2人は寄り添い合っていた。

⏰:11/04/27 12:17 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#38 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ピンポーン』


警官『警察です! 開けてください!』

チャイムと声に気づいた響歌はすぐに玄関に向かってドアを開けた。


響歌『早く来てください!』

警官の手を引っ張り、部屋の中へ案内した。


そして吉田の元へ誘導。

⏰:11/04/27 12:22 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#39 [輪廻◆j6ceQ96kak]
警官『彼が吉田優斗さんですか?』


響歌『そうです! 早く調べてください!』

響歌は部屋の電気をつけた。


あの音はしていない。


警官が吉田の顔を覗き込む。


響歌は見ないように両手で顔を塞いだ。

⏰:11/04/27 12:26 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#40 [輪廻◆j6ceQ96kak]
すると、警官の口から意外な言葉が出てきた。


警官『あの、彼がどうかしましたか?』


響歌『…え?』

警官の言葉に唖然とした響歌は両手を下ろして吉田の方に顔を向けた。


見ると、吉田の顔はいたって正常であった。

⏰:11/04/27 12:29 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#41 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『そ、そんな…』


警官『もしかしてイタズラで電話したのですか?』


響歌『違います! 確かに吉田さんの顔が…』


警官『いい加減にしてくださいよ…こっちだって暇じゃないんです!』

警官はものすごい形相で言い放ち、帰っていった。

⏰:11/04/27 12:35 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#42 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その場に崩れ落ちた響歌の元に敬太がすぐにやってきた。


敬太『…響歌ちゃん、大丈夫?』


響歌『私…確かに見たのに』


敬太『部屋暗かったんでしょ? 見間違えても仕方がないって!』

彼の支えに助けられながらも、平静を保った響歌に急に眠気が訪れた。

⏰:11/04/27 12:41 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#43 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ごめん…もう寝るね』


敬太『ああ』

そしてあの音はそれからは一度もする事がないまま朝を迎えた。


優斗『あーよく寝た!』


響歌『おはようございます』


優斗『あれ村井? なんか暗いじゃん』

響歌は深夜の事を吉田に話した。

⏰:11/04/27 12:45 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#44 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『マジかよ、俺がそんな顔に?』


雪乃『響歌を驚かす為に変顔してたんじゃないの?』


優斗『ばーか。誰がそんな事するか』

いつもの楽しい会話が始まった。

しかしそれを中野敬太が遮るように口を開いた。


敬太『そういえばあの音しなくなりましたよね』

響歌はそれに疑問を抱かずにはいられなかった。

⏰:11/04/27 12:49 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#45 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『そういえば中野君、私が起こしたらすぐに目を開けたよね。起きてたの?』


敬太『ん? いや、寝てたけど。…俺って寝起きがいい方なんだよね』


響歌『でも、私が吉田さんの顔見た時に部屋が暗かった事も知ってたよね。だからちょっと気になって』

敬太は苦笑いをした。

⏰:11/04/27 12:52 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#46 [輪廻◆j6ceQ96kak]
敬太『だって、元から暗かったじゃん? だからそう思っただけ』


響歌『…そうなんだ』


優斗『さ、今日も仕事だ。俺は先に行かせてもらうわ』

吉田は一人黙々と片付けと準備を始めた。

⏰:11/04/27 12:59 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#47 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな中、雪乃が響歌のそばに来て耳元で言った。


雪乃『そういえば響歌、私が悲鳴あげて気絶したって事は優斗くんには内緒にしてね。からかわれちゃうから』


響歌『うん、わかったよ』

響歌は、あれから吉田が起きる前に目を覚ました雪乃に報告していたのだ。

⏰:11/04/27 13:01 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#48 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃が準備に入り、今度は中野が響歌の元へ。


敬太『なあなあ、俺達はまだ時間あるし隣の部屋行ってみない?』


響歌『えっ?』

彼の意外な提案に一瞬戸惑う響歌。


敬太『だって俺そのおばさん見てみたいし。いいだろ?』

⏰:11/04/27 13:07 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#49 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『やめたほうがいいよ…。部屋の鍵もかかってると思うし』


敬太『鍵なら任せとけって。隣のおばさんは俺の親戚の人だって言えば管理人から鍵を貸してもらえるかもしれないだろ?』


響歌『無理があるような…。だって変わった人なんだよ? 管理人さんもおばさんの家族の事はわかってると思うし』

⏰:11/04/27 13:10 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#50 [輪廻◆j6ceQ96kak]
敬太『大丈夫。俺、演技は得意だし。俺も変わった人を演じればいいんだよ』


響歌『大丈夫かなあ…』

昔から嫌な事は嫌と言えない性格の響歌は彼に言われるがまま、その提案に乗る事にした。


吉田と雪乃がいち早く仕事に向かったのを確認した中野は、実行に入った。

⏰:11/04/27 13:15 📱:SH003 🆔:t3.q0Fzo


#51 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中野『じゃあ管理人の部屋に案内して』

響歌は止める事もなく、一緒に部屋を出て管理人の住む下の階の部屋へ。


部屋の前に来ると、中野はためらいもなくチャイムを押す。


しばらくして気の弱い男性の管理人が姿を現した。

⏰:11/04/29 10:50 📱:T004 🆔:WQld2gLY


#52 [輪廻◆j6ceQ96kak]
管理人『はあ、何か?』


中野『あの、上の部屋に住んでる変わったばあさんの事なんですけど』


管理人『はあ、奥村さんの事ですか?』

中野は響歌の耳元で『奥村でいいんだよな?』と聞いてきて、私が首を縦に振ると再び管理人の方に目をやった。

⏰:11/04/29 10:54 📱:T004 🆔:WQld2gLY


#53 [輪廻◆j6ceQ96kak]
敬太『俺、奥村のおばちゃんの親戚なんです。久しぶりに会いに来たんで中に入れてもらえませんか…?』

中野は少し暗めの表情と口調で言った。

すると管理人は顔をしかめて


管理人『あれ…奥村さんに親戚はいなかったと思いますけどね』


敬太『マジで…?』

小さく舌打ちしてから、何か考え込んでいた。

⏰:11/04/30 11:05 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#54 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ねえ、もうやめようよ…』


敬太『いや、どんな奴か見るまでは引き下がれないし』


響歌『私、部屋に戻るよ?』


敬太『いいよ。後は俺に任せといて!』

中野の自信満々の顔を見た響歌は『やれやれ』と言わんばかりのため息をこぼして部屋に戻った。

⏰:11/04/30 11:08 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#55 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌が自分の部屋に戻ると


『ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

隣の奥村さんが起きたのか、壁をぶつける音が。


音はうるさいが、霊的なものではないとわかっていた響歌は気にする事もなく仕事へ行く準備をした。

⏰:11/04/30 11:12 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#56 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『これでよし、と』

時計の針は午前8時半を指した所だった。

準備が完了した響歌が部屋を出ると、奥村の部屋の前に管理人と中野の姿があった。


敬太『おっ響歌ちゃん。もう行くの?』


響歌『今日は9時からだもん。早く行かなきゃ』

⏰:11/04/30 11:20 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#57 [輪廻◆j6ceQ96kak]
敬太『そっか。俺はちょっと用事で遅れるって言っといてくれよ』


響歌『うん、わかった。でもホントに会うの?』


敬太『当たり前! さっき管理人に、俺は孫だって言ったら会わしてくれるってさ』

と、管理人に聞こえないように響歌の耳元で囁いた。

⏰:11/05/01 09:55 📱:T004 🆔:cVsjVqv2


#58 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『後からバレても知らないよ。じゃあまた後でね』


敬太『おう!』

響歌は中野を置いて、早々とアパートを後にした。

⏰:11/05/01 09:58 📱:T004 🆔:cVsjVqv2


#59 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その後、管理人から響歌の携帯電話に連絡があった。


中野敬太が奥村の部屋で死んでいる…と。


それを聞いた響歌、吉田、雪乃は言葉を失った。


管理人は中野を奥村の部屋に1人で入れ、数分してから部屋に行った所、額の部分を鋭利な刃物で刺されており血まみれの状態で発見されたと。

⏰:11/05/03 10:28 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#60 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は仕事と大学をしばらく休む事を店長と学校にそれぞれ伝えた。


中野敬太の死に絶大なるショックを受け、立ち直るのに時間がかかりそうだからだ。


その日の夜、中野の知り合いという事で響歌らは警察から事情聴取を受けた。


肝心の中野の一件は殺人事件と断定。

⏰:11/05/03 10:36 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#61 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかしおかしな事に、奥村の部屋から凶器と思われるものが見つからなかった。


そして管理人が部屋に入った際、奥村自身も部屋で額から血を流して死んでいたという。


響歌らは中野を誰もが奥村が殺したんだと警察に主張したが、彼女自身も死んでいるという事で主張を受け入れてもらえなかった。

⏰:11/05/03 10:47 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#62 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから犯人は見つからず捜査は打ち切られた。


響歌らは悔しい気持ちでいっぱいだった。


それからして吉田が響歌に話した。


中野は響歌に密かに恋心を抱いていた、と…。


吉田は前もって中野から度々相談を受けていたらしい。

⏰:11/05/03 10:59 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#63 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌の家への泊まりが決まった時、吉田は中野に告白のチャンスだという事で連絡をしていた。


それで響歌はわかった。


あの夜…吉田と雪乃が寝た後、中野は響歌に告白するタイミングを伺う為に実は起きていた事。


だから部屋の電気が消えていた事も当然知っていたんだと。

⏰:11/05/03 11:03 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#64 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数日後…

中野の事はショックだが、何日も仕事を休む訳にはいかないと思い、響歌は今日から仕事に復帰した。


もうあの音はしない。


しかし響歌は時々ふと何かの気配と殺気を感じる時がある。


それは霊的なものなのか…


それとも―



第1話 狂気なる隣人【完】

⏰:11/05/03 11:08 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#65 [輪廻◆j6ceQ96kak]
第2話 【怪奇なる旅路】


響歌の仕事仲間だった中野敬太がこの世を去ってから早5ヶ月。


響歌の会社と学校は明日からしばらくの大型連休に入る。


そんな中…


優斗『なあ明日から3日間くらい旅館にでも泊まりに行かね?』


それはある日の仕事の休憩中、響歌の先輩の吉田優斗のこの発言から始まった―

⏰:11/05/03 22:09 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#66 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『旅館…ですか?』


休憩室のソファ。

吉田の左隣に座る響歌が訪ねる。


優斗『そっ! 最近残業も多かったし、気分転換にでもどうかって思ってよ』


雪乃『いいねえ!』


今度は吉田の右隣に座る雪乃が嬉しそうに言った。

⏰:11/05/03 22:11 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#67 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃の反応を確認した吉田は、響歌の方に目をやり、何かを訴える眼差しを示した。


響歌は空気を読むように


響歌『楽しそうですね! 行きたいです!』


と笑顔で答えたものの、その笑いはほぼ苦笑いに近かった。

⏰:11/05/03 22:27 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#68 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その表情を見逃さなかったであろう雪乃の視線が響歌を捉える。


雪乃『響歌、行きたくないなら無理しなくていいんだよ?』


響歌『えっ? そんな事…ないよ』


自分で苦笑いをしているのも気づかない響歌に吉田は眉をしかめた。

⏰:11/05/03 22:29 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#69 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『行きたくねーの?』


その真顔の吉田から放たれるプレッシャーは尋常ではない。


普段はおちゃらけている吉田だが、真顔になる吉田と普段の吉田とのギャップに響歌はいつも驚かされている。


響歌『いえ、ぜひ行きたいです!』


響歌は嫌な事は嫌だとハッキリ言えない自分を呪いたい気分だった。

⏰:11/05/03 22:32 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#70 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『よし、じゃあ決まりだな!』

吉田は安心した顔をすると、バッグから1枚の紙を取り出した。


雪乃『なにそれ。もしかしてパンフレット?』


優斗『あたり! コンビニにあったから貰ってきた』


雪乃『準備いいじゃん。で…どんなとこなの?』

話は響歌を置いて段々と進んでいく。

⏰:11/05/04 10:45 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#71 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『この旅館ネットで調べたんだけど、実は…出るらしいんだよ』


響歌『出る…?』


雪乃『出る…?』

響歌と雪乃はほぼ同時に聞いた。


吉田のニヤけ顔を察した雪乃が更に訪ねる。


雪乃『もしかして…霊的なやつ?』


優斗『…あたり』

静かにつぶやくように答えた。

⏰:11/05/04 10:50 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#72 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『なにそれ〜ウケるね』

しかし雪乃は驚くそぶりを見せず、むしろ楽しげに言う。


響歌『雪乃…怖くないの?』


雪乃『ちょっと耳貸して』

雪乃が響歌の耳元で小声で言った。


雪乃『冗談だと思うよ。ここは一応ホラ、騙されたと思っとこうよ』

その言葉に響歌は内心ホッとした。

⏰:11/05/04 10:56 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#73 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『おい、何話してんだよ〜』


雪乃『なんでもないよ。明日楽しみだねって話ししてたの』


優斗『2人共、霊が出てもチビるなよ!』


こうして明日からの3日間…響歌、吉田、雪乃の旅路が始まる。


この時の3人は、この3日間が地獄の旅路になるとは誰も予想などしていなかった―

⏰:11/05/04 11:03 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#74 [輪廻◆j6ceQ96kak]
翌日―


朝5時。

起床した響歌は早速準備に取りかかる。


昨夜吉田から連絡があり、明日の7時に吉田の車で迎えに来るという事を伝えられた。


泊まる旅館は車で片道5時間はかかる山中にあるという。


それだけでも充分霊が出そうな雰囲気だと感じた響歌。

⏰:11/05/04 11:13 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#75 [輪廻◆j6ceQ96kak]
昨日の雪乃の『冗談』という言葉を信じてその日は通話を終えた。


響歌『あ〜ん…服が決まらない』

女性はそういった身支度に時間がかかる。


お洒落街道まっしぐらの響歌もその1人だ。


響歌『なにやってんだろ私。人のいなさそうな山の中に行くのに服なんかにこだわっちゃって…』

現実に引き戻された響歌は、適当に動きやすそうな服をチョイスした。

⏰:11/05/04 11:19 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#76 [輪廻◆j6ceQ96kak]
結果…

上は黄色いTシャツにピンク色のパーカー。

下は丈の短いジーンズというシンプルなものになった。


洗顔などを含め、ここまでに時間は1時間以上も経過していた。


時計の針は早くも午前6時20分を指した。


響歌は最終的な準備に取りかかる。

⏰:11/05/04 11:27 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#77 [輪廻◆j6ceQ96kak]
大きめのバッグから3日分の荷物の整理。


着替えや生理用品などを細かく確認しながらバッグに入れていく。


響歌『こんなもんでいっか』


チェックが終わり、バッグを玄関に置く。


あとは吉田と雪乃が迎えに来るだけだ。

⏰:11/05/05 15:52 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#78 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『まだ時間あるしゴミでも捨ててくるかな』


脱衣場に向かい、2日分ほどたまったゴミ袋を手にして部屋を出た。


ゴミ捨て場には見慣れた顔の人が。


響歌の部屋の隣人である武田だ。


彼女はほうきを手にして掃除中のようだった。

⏰:11/05/05 15:57 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#79 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌はゆっくり近づいて声をかけた。


響歌『武田さん、おはようございます!』


武田『あら村井さん。おはよう、早いんだね』


響歌『はい。実は今日から3日間泊まりに行くんです』


武田『そうなの? いいわね、羨ましいわ』

ほがらかに笑いながら言った。

⏰:11/05/05 16:02 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#80 [輪廻◆j6ceQ96kak]
武田『どこに泊まるの?』


響歌『ええと…確か池崎旅館っていう所だったと思います』


武田『…池崎…旅館か。楽しんできてね』


響歌『ありがとうございます!』

軽く一礼し、ゴミをゆっくり置いてから部屋に戻った。


いつもは乱暴に投げているが、この時は武田が見ているためにゆっくり置いた。

⏰:11/05/05 16:07 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#81 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくして響歌の携帯電話が鳴った。


響歌『吉田さんだ』

慌てて通話ボタンを押して電話に出る。


吉田『村井? もう着くから家の前で待ってて』


響歌『わかりました』

通話を切り、玄関に置いたバッグを手にして早々と部屋を出た。

⏰:11/05/05 16:12 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#82 [輪廻◆j6ceQ96kak]
外に出て1分もしない内にアパートの前に白い車がやってきた。


雪乃『響歌、おはよー。乗って乗って!』

助手席から雪乃が顔を覗かせて言った。


響歌『うん』

乗ろうとした際、掃除中の武田が近づいてきた。

⏰:11/05/05 16:17 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#83 [輪廻◆j6ceQ96kak]
武田『村井さん、どうか気をつけてね』


響歌『……はい?』

何を気をつけろというのかと聞き返したくなったが、背後で吉田が早く乗れと言ってくるので、何も言わずに早々と車に乗り込んだ。


武田『後悔しなさんな』

武田はそうポツリとつぶやいて、走り行く車を見えなくなるまでただ見ていた。

⏰:11/05/05 16:22 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#84 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『今のババア誰?』


響歌『あ、隣の部屋に住んでる武田さんです』


雪乃『さっきなんて言ってたの?』


響歌『確か…気をつけてって言ってたような…』


雪乃『あ〜優斗の運転荒いからね』

クスっと笑いながら雪乃が言う。

⏰:11/05/05 16:29 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#85 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『うっせーよ。大体あのババア俺の運転の仕方知らねーじゃん?』

それもそうだ。

ならば何に気をつけろと言っていたのだろうと響歌は疑問を感じていた。


雪乃『あ、山の中だからさ〜熊とかに気をつけろって事じゃないかな?』


優斗『なるほどな。それなら納得だぜ』


響歌『そうだよね?』

少し安心した響歌はホッと胸をなで下ろす。

⏰:11/05/05 16:34 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#86 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『そういえばさ、池崎旅館だっけ? あんま人来ない所だってネットで見たんだけどホント?』


優斗『らしいな。でも人少ない方が気楽でいっしょ』


雪乃『私達だけだったりして〜?』

雪乃と吉田2人してケラケラ笑う。

響歌だけは苦笑いだった。

⏰:11/05/06 11:26 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#87 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『なあなあ、もし俺達だけだったら夜肝試しとかやらねえ?』


雪乃『肝試し? 面白そうじゃん。ね、響歌?』

突然振られた響歌は戸惑った。


響歌『でも危なくないですか?』

運転席のミラー越に映る吉田の顔を見て言う。

⏰:11/05/06 11:32 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#88 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『3人で行動すれば大丈夫だって! なんかあったら守ってやるからよ』


雪乃『そりゃ頼もしいね。でもこういうのって意外と女の方が強かったりするんだよね』


優斗『お前を見りゃ霊も驚いて消えるか!』


雪乃『それどういう意味さぁ!』

カップルの会話が始まってしまった。

肩身の狭くなった響歌は窓から外の景色を見ながら2人の会話を聞き流した。

⏰:11/05/06 11:37 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#89 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから数時間後、車は山の中へと入った。


雪乃『なんか暗くない? まだ10時なのに』


優斗『おもしれ〜じゃん。なんか出そうだな』

山の中は自然で静かな空気だが、木々が何かを訴えるようにざわついていて、なんとも不気味だ。

⏰:11/05/06 11:45 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#90 [輪廻◆j6ceQ96kak]
何分か置きに別の車とすれ違いながらも、車は奥へ奥へと進んで行く。


雪乃『眠たくなってきちゃった…ちょっと寝るね』


優斗『…ああ。村井は? 眠たいなら寝ていいよ』


響歌『私は大丈夫です』

せっかくの遠出。

車の窓から見る景色が好きな響歌はじっと窓辺に顔を近づけて外を見る。

⏰:11/05/06 11:52 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#91 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『じゃあ着いたら起こして。おやすみ〜!』


雪乃が眠りについてから、車内は驚くほどの沈黙に支配された。


優斗『音楽でもかけっか!』

沈黙は苦なのか、吉田は前を見ながら片手でカセットテープを手探りで探し、それを見つけるとセットし再生ボタンを押した。

⏰:11/05/06 11:57 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#92 [輪廻◆j6ceQ96kak]
吉田の好きそうなロックの歌が車内に流れる。


山の中には不釣り合いな曲だな、と響歌は少々ガッカリしていた。


その曲がサビに入ろとした瞬間だった。


『ザザザザザザザザザ…』

カセットテープが壊れたのか、男性の声は一瞬にしてノイズのような音に変わった。

⏰:11/05/06 12:00 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#93 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『あ? なんだこりゃ』


しばらく聞き流していると…


『ザザッ…ココデ……ワタシハ…ザザザザザ』


優斗『なんだ? この曲にそんな歌詞ないぜ?』

吉田は独り言のように自分に問いかける。

⏰:11/05/06 12:04 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#94 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここで響歌が何かに気づき、問いかける。


響歌『あの…この曲って男性だけで歌ってるんですか?』


優斗『ああ。それがどうかした?』


響歌『今の声…女の人でしたよ?』


優斗『…マジ?』

吉田はミラー越に響歌の顔を見て、響歌も吉田と目を見合わせた。

⏰:11/05/06 12:08 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#95 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『気味悪ィな』

手探りで停止ボタンを押す。

しかし反応がない。


優斗『ちょっと車止めるぞ』

山の中は険しくなってきていて他の車が来なくなった為に車を一旦停止した。


改めてテープの停止ボタンを連打するものの、全くノイズは止まらない。

⏰:11/05/06 12:12 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#96 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そこで、止まっている車に気がついたのか雪乃が目を覚ました。


雪乃『あれ、もう着いたの?』


優斗『これ聞こえるか? さっきから鳴りっぱなしなんだよ。停止押しても反応ねえし』

少しイライラモードの吉田。


それを悟った雪乃は冷静に言った。


雪乃『一回エンジン切ればいいんじゃない?』

⏰:11/05/06 12:17 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#97 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『あ、そっか』


雪乃『しっかりしてよ〜。もう着いたのかと思ったし。せっかくいい夢見てたのにな』


優斗『起こして悪ィな』

そう言ってエンジンを切ると同時に音はピタリと止んだ。


優斗『よし、じゃあ気を取り直して行くか!』

再びエンジンを入れ、車を急発進させた。

⏰:11/05/06 12:20 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#98 [輪廻◆j6ceQ96kak]
30分後、山の中を進むにつれて霧が発生してきていた。


響歌はいつの間にか眠りについている。


雪乃『霧出てきたね…』


優斗『こんくらい大丈夫だって。それよりもうそろそろ着くから村井起こして』


雪乃『響歌! 着くぞ〜!』

雪乃のバカでかい声で響歌はパッと驚いたように起きた。

⏰:11/05/06 12:28 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#99 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あ…寝てた…?』


優斗『もう着くぜい!』

やがて近くに茶色い建物が見えてきた。

外観はお世辞にもよいとは言えない木造の造りだ。


雪乃『もしかしてあれ? なんか古臭いね〜』


優斗『安いからいいじゃん。なんか出そうだし』

吉田は何かとそればかりを繰り返す。

⏰:11/05/06 12:33 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#100 [輪廻◆j6ceQ96kak]
建物が完全に見えて来た所で車を停止した。


見れば見るほど古臭い外観に、響歌は不気味とさえ思っていた。


優斗『行くぞ』

吉田に続いて雪乃が歩き出し、響歌もそれに続いた。


戸は痛んでいるらしく、開けるとミシミシと音が響く。

⏰:11/05/06 12:41 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


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