悪魔と天使の暇潰し
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#247 [匿名]
そんなどうでもいい事を考えていると、ターゲットの家のドアが開いた。

「うるせぇんだよ!」

中から、スーツを着たターゲットが出てきたかと思うと、またすぐに中へと入ってしまった。

声なんて聞こえるはずないのに。

「今日は仕事なのか?」

ターゲットが黒いスーツを着ているので、疑問に思ったのだろう。中に入りながらあいつが聞いた

⏰:11/08/17 16:52 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#248 [匿名]
「あぁ」

あぁ、だと?

「俺の依頼はどうなったんだよ?今日はその為に来たんだ」

ソファーに座る。

「今日は俺の最後の仕事だ」

なんだと?

「俺の依頼は受けねぇで辞める気かよ!」

これからは真面目に生きていきます。とでも言うつもりか?

ターゲットは応えない。黙ってどっかを見つめている。

⏰:11/08/17 16:58 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#249 [匿名]
「死ぬ気なの?」

俺の言葉に反応しないターゲットを見て、あいつがため息混じりに問い掛けた。

死ぬ気?

「俺もいろいろ考えた」

ターゲットの表情は相変わらず無表情で、何を考えたのか、それは辛かったのか楽だったのか、何も伝わって来ない。

ただ真っ直ぐに何かを決心し、貫こうとしているのは分かる。

⏰:11/08/17 17:04 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#250 [匿名]
「考えたんだよ。今まで俺がしてきた事を、最初から最後まで」

最後?

「話、詳しく聞きたいんだけど」

あいつが言う。

ターゲットが自害しようとしていると、あいつは多分そう思っている。

「お前が調べた内容、図星すぎてびっくりしたよ」

ターゲットがあいつに言った。

⏰:11/08/17 17:09 📱:F06B 🆔:vUQ050R2


#251 [匿名]
「俺は、自分の力じゃ何も出来ない奴の代わりに、やっつけたかったんだ。自分勝手に弱者を傷付ける糞野郎共を!」

ターゲットの顔は無表情から怒りに満ちた顔に変わった。

「許せなかったんだよ!動物は喋れねぇし、子供は力が無い。それなのに自分勝手に傷付けたり、殺したり!…黙ってらんなかった」

ターゲットは悔しそうに拳を握る。


「そう思った事が、この仕事を始める切っ掛けになったのか?」

あいつが聞いた。

「そうだ」

ターゲットが頷く。

⏰:11/08/18 17:58 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#252 [匿名]
ターゲットの怒りに満ちた顔が、涙目に変わる。

「俺が殺すと、依頼人は泣いて喜ぶんだよ。仇をうってくれてありがとう、って泣くんだよ…」


俺とあいつは、ターゲットの言葉にただ耳を傾ける事にした。


「それが嬉しくてさ。誰かに、ありがとう、って言われる事がこんなに嬉しい事なんだって、人を殺して初めて知った」

ターゲットの目から涙が流れた。

「それで決めたんだ。俺は心に傷を負った人を助けようって。癒してあげようって。それが、殺す事に繋がった」

⏰:11/08/18 18:00 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#253 [匿名]
ターゲットは本当にヒーローになりたかったんだ。大切なものを亡くし、傷付いた人を放っては置けなかったんだ。

不器用なターゲットは、こういう形で人を救う事しか出来なかった。


「人を殺せば、救われる人が居る。俺に出来る事は、それしかなかった。それで良いと思った!…いや、思い込もうとしてただけなのかもしれない」

右手で両目を隠し、涙が見えない様にしている。だけど歯を食いしばって震えているからすぐに分かる。

⏰:11/08/18 18:02 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#254 [匿名]
「だけど俺は間違ってたんだよな?人を殺すヒーローなんていない。…本当その通りだ」

涙を拭い真っ赤になった目と、目が合う。さっきよりもさらに真っ直ぐで純粋な目だった。

「今まで気が付かなかった自分が恥ずかしいよ。もっと早くお前らみたいな奴に出会ってたら、まともな人生歩めてたかな?」

ターゲットが窓のある方へと歩いた。咄嗟に俺は立ち上がり、あいつは一歩ターゲットに近付いた。

ガラッと窓が開かれた。
冷たい風が一気に部屋へと入り、俺達に触れながら通り抜ける。

⏰:11/08/18 18:04 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#255 [匿名]
「俺は、ただ…」

ターゲットの上半身が窓の外に出る。

「…ヒーローに、なりたかった」

汚れの無い笑顔を見せ、ターゲットの重心は、完全に外へと向かった。

頭が見えなくなる。
肩が、背中が、ゆっくりと外の世界へと消えて行く。


俺に何も言わせないで、俺の目の前で死ぬ気か?

⏰:11/08/18 18:06 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


#256 [匿名]
「糞野郎!」

俺は悪魔で、あいつは天使で、今飛び降りたのは人間。

ターゲットの足が宙に浮いた瞬間、俺とあいつはターゲットに駆け寄った。

死なせてたまるか!と心の中で叫んで。

二人でターゲットを掴む。脚とか腰とかを、二人共無茶苦茶な格好で掴み、無茶苦茶な力で引き上げた。

「悪りぃ。俺の依頼受けてくれんのは嬉しいんだけどよ、払う金がねぇんだわ!だから、キャンセルで!」

顔の前で手を合わせ、謝るように頭だけ下げた。

⏰:11/08/18 18:09 📱:F06B 🆔:OoxCdEe2


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