悪魔と天使の暇潰し
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#291 [匿名]
ピリリリリピリリリリ

ハッとした。

今日も目覚ましの音で目が覚める。

嫌な夢を見てしまった。あの日、仕事を定時で終わらせ急いで家に帰り、夕食の肉じゃがを作ろうとした時の夢だ。

守が死んだ。
私は警察の電話で初めて知ったのだ。今でも鮮明に覚えている。

私の人生が終わった日。

⏰:11/08/25 18:09 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#292 [匿名]
上の空で支度をし、家を出た。駅までの道を一人で歩く。隣を見ても守はいない。

慣れる訳がないんだ。守が居て私が居た。今の毎日は、過ごす意味のない日々。


「あの、ハンカチ落としましたよ」

肩をポンと叩かれ、条件反射で肩がビクッと上がる。

振り返ると、二十代前半の若い男が私のハンカチを持ち、差し出してくれていた。

⏰:11/08/25 19:45 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#293 [匿名]
また私は見とれていた。
柔らかそうな茶色の髪の毛に茶色い瞳。大きな目が印象的な可愛らしい男。

昨日会った悪魔さんの様に、整いすぎた顔のせいで、本物の人間には見えなかった。

だけど悪魔さんとは全く違う柔らかい雰囲気。

「あ、ありがとうございます」

もう少しで、お礼を言うのを忘れる所だった。

でも変だな。ハンカチはバッグの中にあるポーチに入れたと思ったんだけど、何で落ちたんだろう。

⏰:11/08/25 19:50 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#294 [匿名]
「落ちてすぐだったので、そんなに汚れてないと思いますよ」

またその男は優しい笑顔で微笑んでくれた。何もかも包み込んで癒してくれる、天使みたいな人だと思った。

「すみません。助かりました」

お礼を言い頭を下げて、立ち去ろうとした時、私は彼にまた呼び止められた。

「あの、こんな事いきなり言うのは自分でもどうかと思うんですが…」

深刻そうな顔になるので、私は一気に不安になる。

⏰:11/08/25 19:51 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#295 [匿名]
「…大切な何かを、なくされた様ですね」

天使さんは少し黙ったあと、私の目を真っ直ぐ見てそう言った。

何故分かったんですか?
そう思ったのに、言葉が出ない。

「まもる、さん?」

何で、何で名前まで知っているの?

「泣かないでください」

「えっ」

また私泣いていたんだ。

⏰:11/08/25 19:54 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#296 [匿名]
「僕にはそういう能力があって。あなたの辛さも、苦しみも分かります。…死にたいって思っている事も」

何だろう、この感情。
涙が止まらない。

「大丈夫です。あなたは大丈夫だから」

大丈夫という言葉が、とても力強く感じた。

「あなたは?」

「僕?えっと、人を救う仕事をしているんです」

私の勘は鋭かった。やっぱり彼は天使みたいに心の綺麗な人だ。

⏰:11/08/25 19:57 📱:F06B 🆔:4gXk0VdA


#297 [匿名]
そして私の涙が止まる頃、天使のような彼と別れ、私は会社に向かった。そしていつもと同じように仕事をする。


今日はいつも以上に忙しく、気が付くと夜の19時を過ぎていた。

もう帰ろう。
そう考えると、帰りたくない気持ちが出てくる。

このまま何も考えず、ただ目の前に山積みにされた仕事を、手際よくこなしているだけの日々だったら、楽なのに。

どうして現実は、こうも複雑なんだろう。

⏰:11/08/26 18:45 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#298 [匿名]
もっと単純で、人生がゲームと同じだったら、私は間違いなくリセットボタンを押す。

そうしたら、やり直せる。守が死なない様に調節出来る。
簡単に想像出来るのに、どうして戻れないんだろう。



暗闇の様な気持ちで歩いた帰り道、私は悪魔さんに会った。

「よぉ!」

馴れ馴れしい。
昨日ほんの少し話しただけなのに、旧友に会った様な態度に、私は臆する。

⏰:11/08/26 18:49 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#299 [匿名]
「やっぱお前元気ねぇな」

「…出ませんよ」

「何で?」

「何でもです」

言葉に出したら、私はきっと崩れ落ちる。立つ事が出来なくなって、目の前も見えなくなる。

「死んだんだろ?だーい好きだった男が」

言葉を失う。
どうして知っているの?朝の天使さんもそうだった。

この人達は何者なの?

⏰:11/08/26 18:51 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


#300 [匿名]
「何で知ってるの?やめてよ!死んだって簡単に言葉にしないで!…って顔してんな?」

悪魔さんはふざけた態度で、私の心をえぐった。

私ってこんなに涙脆かったんだ。ポタポタと涙が垂れて、私の服を濡らす。


そういえば、今まで感動する映画やテレビを見て泣きそうになる時、いつも隣で私より先に守が泣いていたんだっけ。

その様子を見て、私は可笑しくなって笑っちゃうんだ。

⏰:11/08/26 18:52 📱:F06B 🆔:yzyXQKjY


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