2年A組
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#162 [我輩は匿名である]
「どうかしたんですか?」

「………亡くなったわ」

南里のその一言に、彩は思わず息を止める。

一瞬、彼女が何を言ったのかわからなくなった。意味が分からなかった。

「…いつ…?」

「今日の昼、13時半頃です」

「どこで?どうして!?」

彩は全然信じられず、ただ何度も問いかける。

⏰:11/11/22 19:27 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#163 [我輩は匿名である]
「…駅前の国道です。歩道で、…胸部を一突きされて」

彩は全身の力が抜け、あやうく携帯電話を落としそうになった。

また事件の被害者が増えた。1人ずつ、自分の周りの人間が消えていく。彩はもう、我慢できなくなった。

「…どこですか?」

「…何がです?」

「…春香がいるところ」

彩は南里から、春香の遺体が近くの警察病院に搬送されたことを聞いた後、すぐに電話を切って家を飛び出した。

⏰:11/11/22 19:28 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#164 [我輩は匿名である]
外に出るのが怖いなど、今はこれっぽっちも思わなかった。

「塩見!」

マンションを出たところで声がした。向かいのマンションを見上げると、3階のベランダから誠が顔を出している。

「どこ行くんだよ?もう暗くなるぞ」

「…春香が…」

「…聞こえないから降りる。ちょっと待ってろ」

誠はそう言うと、いったん姿を消し、すぐにマンションから出てきた。

⏰:11/11/22 19:28 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#165 [我輩は匿名である]
「何て?」

「春香が…春香が、…殺されたって…!」

今にも泣きだしそうな様子の彩に、誠の表情が曇る。

「…いつ?」

「今日、駅前の大通りで…。私、警察病院まで行ってくる!」

「待てよ!」

慌てて走り出そうとする彩の手を、誠がつかんで止める。

「お前、1人で行く気か?“狙ってくれ”って言ってるようなもんだぞ!?」

「でも!」

⏰:11/11/22 19:29 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#166 [我輩は匿名である]
「落ち着けよ!今から走って行ったら暗くなる!…タクシーかなんか拾うぞ」

思わぬ言葉に、彩はきょとんとする。

「え?うっちー…一緒に行ってくれるの?」

「…1人で行かせられないだろ。そんな話聞いちまったら」

「…うっちー…」

今まで張りつめていたような気持ちが緩んだように、彩の目に一気に涙が浮かんできた。

「…泣くなよ。まだ早いだろ。…病院行ってから泣け」

「…うん…」

彩は必死にそれをこらえて、誠と一緒にタクシーを拾って病院に向かった。

⏰:11/11/22 19:29 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#167 [我輩は匿名である]
財布の有り金をはたいて、病院に着くころにはもう暗くなっていた。

時間外の受付から病院に駆け込む彩の前に、意外な人物が現れた。

「…皐ちゃん!」

「彩!?内村君まで!」

廊下でばったり出会った3人は、思わず足を止める。

「何してるの?こんなところで」

「いやぁ、暇だから小山さんのお見舞いでもって思ったんだけどさ。面会断られちゃって」

「そりゃそうだろ。病院なんか誰でも入ってこれるんだぞ」

呆れたように誠が言う。それを聞いて、皐は複雑な顔で視線を外す。

⏰:11/11/22 19:30 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#168 [我輩は匿名である]
「そういう彩たちは?」

「私は…」

「塩見さん」

皐の後ろから、南里の姿が見える。どうやら彩たちを待っていたかのようだ。

「南里さん!」

彩は南里に駆け寄る。一緒についていく誠に、気になる皐もわけもわからずついてくる。

「春香は!?」

「……こっちよ」

南里は多くは語らず、彩たちを案内しようと歩き出す。

⏰:11/11/22 19:30 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#169 [我輩は匿名である]
素直についていこうとする彩の肩を、誠が軽く掴む。

「……大丈夫か?親友の死体見ることになるんだぞ」

「…私はこの目で見るまで信じない」

南里が嘘をつくような人間でないのは、彩も大体知っている。しかし、春香が死んだなんて、どうしても信じたくなかった。

信じるには、自分の目で見てからだ、と。

階段を下り、着いた先は霊安室だった。

ここに来た時点でもう間違いないだろう。誠は思ったが、何も言わずに彩の後ろからついて行く。

⏰:11/11/22 19:30 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#170 [我輩は匿名である]
皐は皐で、“春香”という人物も知らないまま何となくついて来ている。

ある部屋の前で、呆然と長椅子に座り込んでいる、春香の家族がいるのが見えた。

「…彩ちゃん」

春香の母親が気づき、声を漏らす。

「おばさん…」

しかし、春香の母親はそれ以上何も言わず、黙って下を向いた。

南里が立ち止まる。

「…長谷部春香さんは、この先よ」

⏰:11/11/22 19:31 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


#171 [我輩は匿名である]
そう言って案内された向こうには、白い、重そうな1つのドア。

彩と誠は、静かにドアを開け、部屋に入る。

2人の前には、よくドラマで見るような、顔に布をかけられて横たわる1体の人間。

彩はしばらくそこに立ち尽くしたが、ゆっくりとそれに近づく。

誠はそれ以上歩を進めようとはしない。ただ、彩の後ろ姿を見つめている。

震える手で、彩はその布をめくる。その瞬間、その頬を一筋の涙が伝った。

少し色白だが、それは、今まで修学旅行や彼女の家に泊まりに行った時に見た寝顔と変わらなかった。

ただ一つ。呼吸をしていない事を除いて。

⏰:11/11/22 19:31 📱:PC/0 🆔:tgc3i41M


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