2年A組
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#391 [我輩は匿名である]
「…こちらこそ、ありがとうございました。…犯人…捕まえてくれて」
彩は苦笑して言葉を返す。
「…きっと、春香たちも喜んでると思います」
「…そうね」
窓の外に目を向ける彩に、南里は頭を上げ、頷く。
「……凛達は…どうなるんですか?」
少し間をおいて、彩が南里に尋ねる。
彼女の質問に、南里は表情を暗くして答える。
:12/03/05 21:44
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#392 [我輩は匿名である]
「主犯の小山凛は、殺人罪、銃刀法違反等で、少年法に基づいて罰せられるでしょうね。永井皐は、おそらく殺人幇助(ほうじょ)で同じように罰せられると思うわ」
「…そうですか…」
彩は少しうつむいて、それだけ答えた。
やっと終わった。何もかも。
でも、何だか終わった気がしない。
中学時代、私がもっと凛の力になれていたなら、こんな事にはならなかっただろう。
そう思うと、なんだかやるせない気持ちになる。
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#393 [我輩は匿名である]
「…それじゃあ、私たちは署に戻るわね。今日は、ゆっくりお休みなさい」
南里はそう言って、鞄を手に立ち上がる。
「また何度か話を聞きに来たりするかもしれないけど、その時はよろしくね」
「はい。じゃあ、また」
彩が笑って答えると、南里も笑って、病室を後にした。
1人になり、彩はまたベッドに横になる。
今度、彼らの墓参りに行こう。彩はそう決めて、また目を閉じ、静かに寝息を立てた。
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#394 [我輩は匿名である]
2週間後。事件はさらに、最悪の形で終わりを迎えた。
警視庁に戻ったばかりの南里は、今度はある留置所にいた。
留置所からの1本の通報。「勾留中の被疑者が死んでいる」。
それは、自分が逮捕した、あの少女だった。
横たわる彼女の遺体の首には、彼女が勾留中に着ていた着衣の上着が巻き付いていた。
おそらく、脱いだものを自分の首に巻いて絞めたのだろう。
呆然と立ち尽くす南里の視界の端に、ふと、ペンと紙が置いてあるのが映る。
:12/03/05 21:46
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#395 [我輩は匿名である]
「…これは…?」
南里は手袋をしたままそれを拾い上げる。
「それは昨日、『母に手紙を書きたい』と申し出があったので、渡したものです」
その対応をしたのだろう担当者が、南里に答える。
しかし、手紙の内容は明らかに、残された母親にあてられたものではない。
南里は黙って、その全てに目を走らせる。
:12/03/05 21:46
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#396 [我輩は匿名である]
『どうして私ばかりこんな目に遭うの?
悪いのは私だけ?そんなはずない。
でもみんな、私だけを責める。
もう疲れた。早く葛城さんに会いたい。
葛城さんの隣だけが私の居場所。
葛城さんのいないこの世界に、生きてる価値なんかない。
冷たい世界よ、さようなら。』
:12/03/05 21:47
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#397 [我輩は匿名である]
手紙は、そこで終わっていた。
手紙というよりは、遺書という方がいいような気もする。
「…どこから…狂ってしまったんでしょうね」
南里はぽつりと、その1枚の紙に視線を落としながらつぶやく。
父親が事故を起こしてから?いじめが始まってから?葛城と出会ってから?
それはきっと、凛本人にもわからないだろう。
もしも生まれ変われたら、彼女は何を望むのだろうか。
そう考えると何だか胸が痛くなって、南里は目を背けた。
:12/03/05 21:47
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#398 [我輩は匿名である]
同じ頃。彩はやっと退院できた誠と2人で、春香、龍也、美穂の墓参りに来ていた。
まだ入院中の司は退屈そうにぶつぶつ文句を言っていたが、誠がなだめるとしぶしぶ納得して昼寝をしていた。
「今頃…みんなどうしてるんだろうね」
墓に向かって手を合わせた後、彩がふとつぶやく。
「…誰?」
まだ三角巾で左腕を肩からつりさげた誠が、首をかしげて聞き返す。
:12/03/05 21:48
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#399 [我輩は匿名である]
「春香たち。天国でどうしてるんだろうなーって思って」
「あぁ…。長谷部はわからねぇけど、龍也は相変わらず青山にもうアタックしてるんじゃねぇの」
「ははっ、当たってそう」
適当ながらももっともな答えを出す誠に、彩は笑う。
「でも…本当に終わったんだね」
「…あぁ…」
「…これで、みんな安心して眠れるね」
「…あぁ、俺たちか?」
:12/03/05 21:49
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#400 [我輩は匿名である]
「違う!春香たち!」
「あぁ、そっち」
彩に大声で起こられ、誠は顔をしかめて返事する。
「ったくもう…」
「さぁ、みんなの墓もまわったし、飯食いに行くぞ。腹減った」
誠はそう言ってさっさと歩き出す。
:12/03/05 21:49
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