2年A組
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#81 [我輩は匿名である]
中には記録係らしい男性と、話を聞く役目らしい女性警察官が座っていた。
「(やったぁ、女の人だ)」
てっきり男ばかりの部屋だと思っていたため、いくらかほっとする。
「わざわざごめんなさいね。そこに座って」
女性警察官は少し笑い、手を椅子に向けて彩に腰掛けるよう促す。長い髪を1つに束ね、灰色のスーツをきっちりと着た、そこそこ美人な警察官に、彩は少し見とれる。
「私は南里(なんり)由紀。警視庁の警視です」
「警視庁?」
そんなに凄いところから捜査に来ているのか。彩は驚いて聞き返す。そこまでしているという事は、警察も本気なのだろう。
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#82 [我輩は匿名である]
「えぇ。捜査にご協力いただき、感謝します」
「あ、いえ…」
それにしても、きれいな人だなぁ。彩は本題そっちのけで南里を見つめる。
「ところであなた、昨日の夜20時ごろ、どこで何してました?」
南里は早速問いかけてきた。
「昨日は…家にいました」
「それを証明できる方は?」
:11/10/29 22:20
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#83 [我輩は匿名である]
「家族しかいません。…あ、でも人じゃなければありますよ」
彩が付け足して言うと、南里は「どういう事ですか?」と首をかしげた。
「うちのマンション、防犯カメラが付いてるんです。絶対にカメラの前を通らないとマンションの外に出られません」
「…ふふっ、なるほどね」
彩が自信満々に言うと、南里は小さく笑った。
「わかりました。では…今まで殺害された生徒をご存知ですね」
「はい。中学の時、同じクラスでした」
彩はそれから、被害者たちとどのような関係だったか、彼らをどう思っていたかを聞かれ、正直に話した。
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#84 [我輩は匿名である]
とはいっても、ほとんど関わりがなく、そこそこ仲良くしていただけの関係だが。
「…犯人、まだ捕まらないんですか?」
答え終えてから、彩は素直に尋ねてみる。
「え、えぇ…」
「テレビで、防犯カメラとかにも映ってないし、全然手がかりがないって言ってましたけど…」
「…ごめんなさい、毎日心配でしょう。早く逮捕できるよう、私たちも全力で犯人を捜してるわ。もしこれから何かあったら、ここに連絡をくれれば、いつでも話を聞きますから」
南里はそう言って、小さな紙に自分の携帯電話番号とメールアドレスを書いて彩に手渡した。
:11/10/29 22:21
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#85 [我輩は匿名である]
「はい。わかりました」
彩はそれを受け取り、大事に財布に入れた。
「では最後に、話を聞かせてもらった証明という事で、ここに署名していただけますか?」
南里は1枚の紙を机に置く。見ると、今まで聴取を受けた同級生たちの名前が書いてある。
「はい」
彩はボールペンを借り、誠の下に自分の名前を書いた。
:11/10/29 22:22
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#86 [我輩は匿名である]
「ありがとう。では、くれぐれも気を付けて。パトカーで送りましょうか」
「え!?結構です!まだ明るいし、歩いて帰れます」
パトカーで家まで送られるのは、さすがに恥ずかしい。彩は両手をひらひらさせて断る。
「そう?わかりました。それじゃあ、気を付けて帰ってくださいね」
「はい」
すると、記録係の男性がドアを開けてくれた。
彩はぺこっと頭を下げて、その部屋を後にした。
:11/10/29 22:22
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#87 [我輩は匿名である]
「…さっき内村誠と話してたわね、あの子」
「そうですね。幼馴染のようです」
「…ふうん…」
南里はじっと、帰っていく彩の背中を見つめていた。
:11/10/29 22:22
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#88 [我輩は匿名である]
「はぁ…疲れたなぁ…」
同じような部屋はもう1つあり、凛はそっちで話を聞かれているようだ。
とりあえずここを出ようと、彩は足早に警察署を出る。
建物を出てすぐの所に、誠が壁にもたれて立っているのが見えた。
「うっちー?」
「あぁ、終わったか」
「もしかして、待っててくれたの?」
「…まぁ…一応…。今1人で帰るのは危ねぇし…」
恥ずかしいのか、誠はそっぽを向きながら答える。
:11/10/29 22:23
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#89 [我輩は匿名である]
ぶっきらぼうだがたまに優しい誠に、思わず彩の顔がほころぶ。
「ありがと。さすがうっちー」
「うるさいな」
2人は並んで歩き出す。幼稚園から一緒の2人は、向かいのマンションに住んでいる。
いつも彩が近所のやんちゃな男の子に泣かされては、誠が追い払っていた。
誠は小学校の時期からあまり笑う子ではなかったため、周り(特に女子)からは“怖い子”と思われがちな誠だが、彩だけはいつも誠と一緒にいた。
:11/10/29 22:24
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#90 [我輩は匿名である]
幼い時の事を思い出して自然と笑顔になっている彩を、誠はボーっと見下ろす。
「…気持ち悪い」
「なっ、何が!?」
「何ニヤニヤしてんだよ。寒気がする」
「ニヤニヤしてないもん!」
「してた」
真顔で押し通され、彩は言い返せず黙る。
:11/10/29 22:24
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