2年A組
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#102 [我輩は匿名である]
「はぁ!?」
「だってそうじゃん。今もじーっと見てるんでしょ?内村君の事」
「みっ、見てないよ!」
「嘘。絶対見てたね、その慌てっぷり」
春香がからかうように笑う。
「内村君のどこがいいの?ほとんど笑わないし、『話しかけるな』ってオーラ出しまくりじゃない?」
「そうでもないよ?そんなオーラ出てるかなぁ」
彩は「うーん」と首をかしげる。
:11/11/04 16:22
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:EdsrP/zo
#103 [我輩は匿名である]
「女子はみんな怖いって言ってたよ?たまに『かっこいい』って言ってた子もいたけど」
春香の心の底からの疑問を聞きながら、彩は幼いころの事を思い出した。
:11/11/04 16:22
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:EdsrP/zo
#104 [我輩は匿名である]
「うっちー?」
まだ小学校低学年だった頃。あの日も今日のような雨だった。
学校の帰り道、一緒に帰っていた誠が、ふと足を止める。
その視線の先には、道路の端にぽつんとある黒い影。
誠は何も言わず、それに近づいていく。彩もまた、興味津々でついていく。
しかし、それが何なのかわかった時、彩はついてきたことを後悔した。
それは、車に轢かれたらしい子猫の死体だった。
「…かわいそう」
動かない子猫を見て、誠はぽつりとつぶやく。
:11/11/04 16:23
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#105 [我輩は匿名である]
「…そうだね」
悲しそうな誠を見て、彩も目を伏せる。
「…俺、お墓作ってあげる」
少しして誠が言った。彩は驚いた。しかし、すぐに彩も「うん。私も手伝う!」と大きく頷いた。
そんな彩を見て、誠はちょっと嬉しそうに笑った。
今と比べて、幼いころの誠はよく笑っていたと、彩は思う。
彩が誠の傘も手に持ち、誠が濡れないように頑張って2本の傘を支える。誠は小さな体で、重たい子猫の体を抱える。
家の近くの公園の隅に埋めてあげよう。そういう話に決まった。
何歩か進んだとき、背後から声がした。
:11/11/04 16:23
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#106 [我輩は匿名である]
「うわ!きったな〜い!!」
2人はびっくりして振り向く。そこには、他の女子とは違うピンクのランドセルを背負った小松千佳と、彼女に従う女子たちが意地の悪そうな笑みを浮かべて立っていた。
「何あれ?」
「げぇっ!ネコだよ!ネコの死体!内村君と塩見さん、気持ち悪〜」
「ネコが死んでるのの何が気持ち悪いんだよ!」
カッとなったらしく、誠が声を荒げた。同感だった彩も、腹を立てて彼女たちをにらみつける。
「こわっ。行こ行こ!」
「明日みんなに言わなくちゃ!」
そう言って、その女子たちは笑って走り去っていった。
:11/11/04 16:24
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#107 [我輩は匿名である]
何も悪いことをしていないのに、まるで後ろ指を指されたような感じがして、彩の目に涙がこみ上げてくる。
「…塩見、嫌なら帰っていいよ」
泣きそうな彩を見て、誠が声をかける。
しかし、それでは彼女たちに負けた気がして、彩は大きく首を振った。
「…じゃあ、行こ」
2人はそれから何も言わずに公園へ行って子猫を埋め、少し太くて長い木の枝を土に挿して帰った。
:11/11/04 16:24
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#108 [我輩は匿名である]
その次の日、早くも、2人が子猫の死体を埋めた話が教室中に回っていた。
目が合うとすぐに逸らしてしまう子や、こちらを見ながらこそこそと話をする子ばかりだった。
彩はおそるおそる、隣にいる誠を見る。
しかし、誠は冷めた表情で、何も言わずに自分の席に着いた。
:11/11/04 16:25
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#109 [我輩は匿名である]
そんな話はすぐに忘れられ、学年が変わる頃には、彩の周りに今まで通り友達が集まっていた。
誠が他の人間と距離を置くようになったのは、おそらくそれからだ。
しかしそれでも、龍也のように心を許した相手とは、よく接しているように思う。
彼を変えたのもまた、小松千佳だったのかもしれない。
:11/11/04 16:25
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#110 [我輩は匿名である]
「彩?」
話の途中だったのに気づき、彩はハッと、いつの間にか下がっていた頭を上げる。
「ごめん、…なんだっけ?」
「もー。何かあったのかと思っちゃうじゃん」
「ごめんごめん!…昔の事、思い出しちゃって」
「昔の事?」
中学から友達になった春香は、この話を知らない。
彩はまだ誰にも話した事のないこの話を、初めて春香に聞かせた。
「へぇ…そんな事があったんだ」
:11/11/04 16:26
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#111 [我輩は匿名である]
「うん。多分、うっちーをみんなが『怖い』って思うようになったのは、それからだと思う」
「まぁ、そりゃね…。小松さん、そんな時からすでに問題児だったんだね。…なんか、殺されても仕方ない気がしてきた…」
彩は少し黙り込む。こんな事を言ってはいけないのかもしれない。しかし、春香になら言える気がした。
「…私ね、小松さんが死んだって聞いた時、……正直…いい気味って思った」
今までずっと心に秘めていた感情。口にすることはないと思っていた。
何もしていないのに後ろ指を指され、噂され、彼女のせいで誠も変わってしまった。
今の誠が嫌いなわけでも、そこまで『変わったな』と思う事もない。しかし、もしあの一件がなかったら、誠は今頃、友人に囲まれる明るい性格だったかもしれない。
そう思うと、彼女が憎かった。
:11/11/04 16:27
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