2年A組
最新 最初 🆕
#107 [我輩は匿名である]
何も悪いことをしていないのに、まるで後ろ指を指されたような感じがして、彩の目に涙がこみ上げてくる。

「…塩見、嫌なら帰っていいよ」

泣きそうな彩を見て、誠が声をかける。

しかし、それでは彼女たちに負けた気がして、彩は大きく首を振った。

「…じゃあ、行こ」

2人はそれから何も言わずに公園へ行って子猫を埋め、少し太くて長い木の枝を土に挿して帰った。

⏰:11/11/04 16:24 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#108 [我輩は匿名である]
その次の日、早くも、2人が子猫の死体を埋めた話が教室中に回っていた。

目が合うとすぐに逸らしてしまう子や、こちらを見ながらこそこそと話をする子ばかりだった。

彩はおそるおそる、隣にいる誠を見る。

しかし、誠は冷めた表情で、何も言わずに自分の席に着いた。

⏰:11/11/04 16:25 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#109 [我輩は匿名である]
そんな話はすぐに忘れられ、学年が変わる頃には、彩の周りに今まで通り友達が集まっていた。

誠が他の人間と距離を置くようになったのは、おそらくそれからだ。

しかしそれでも、龍也のように心を許した相手とは、よく接しているように思う。

彼を変えたのもまた、小松千佳だったのかもしれない。

⏰:11/11/04 16:25 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#110 [我輩は匿名である]
「彩?」

話の途中だったのに気づき、彩はハッと、いつの間にか下がっていた頭を上げる。

「ごめん、…なんだっけ?」

「もー。何かあったのかと思っちゃうじゃん」

「ごめんごめん!…昔の事、思い出しちゃって」

「昔の事?」

中学から友達になった春香は、この話を知らない。

彩はまだ誰にも話した事のないこの話を、初めて春香に聞かせた。

「へぇ…そんな事があったんだ」

⏰:11/11/04 16:26 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#111 [我輩は匿名である]
「うん。多分、うっちーをみんなが『怖い』って思うようになったのは、それからだと思う」

「まぁ、そりゃね…。小松さん、そんな時からすでに問題児だったんだね。…なんか、殺されても仕方ない気がしてきた…」

彩は少し黙り込む。こんな事を言ってはいけないのかもしれない。しかし、春香になら言える気がした。

「…私ね、小松さんが死んだって聞いた時、……正直…いい気味って思った」

今までずっと心に秘めていた感情。口にすることはないと思っていた。

何もしていないのに後ろ指を指され、噂され、彼女のせいで誠も変わってしまった。

今の誠が嫌いなわけでも、そこまで『変わったな』と思う事もない。しかし、もしあの一件がなかったら、誠は今頃、友人に囲まれる明るい性格だったかもしれない。

そう思うと、彼女が憎かった。

⏰:11/11/04 16:27 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#112 [我輩は匿名である]
言ってから、しばらく春香から返事の言葉は発せられなかった。

「…ごめん、嫌な事言ったね。忘れて」

彩はいつものように明るい声でそう訂正する。

「なんか、暗い話しちゃったね。今度はちゃんとした話しよ!…じゃあ、またね」

春香からの返事が怖くて、彩は一方的にそう言って電話を切った。

しばらく、胸に残るもやもやを感じながらベッドに座り込む。

静かになった携帯電話を見つめる。何気なくそれを見る彩の目に、携帯電話が表示する『14:53』の文字が映る。

しばらくして、今度は違う人物に電話を掛けた。

⏰:11/11/04 16:27 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#113 [我輩は匿名である]
「もしもし」

5回ほど呼び出し音が鳴って、誠が電話に出た。

「…うっちー?」

「俺にかけてきてるんだから、わざわざ聞くなよ」

いつも通りの誠の声を聴いて、何だか肩の力が抜けた気がする。

「何だよ」

「さっき、出かけるのが見えたからさ。…どこ行くのかなぁと思って」

「……別に」

誠は短く答える。

⏰:11/11/04 16:28 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#114 [我輩は匿名である]
彩はムッと頬を膨らます。

「せっかく心配して電話かけてあげたのに、冷たいなぁ」

「電話かけてほしいなんか言ってないぞ」

「きーっ!むかつく!」

「はぁ?何なんだよ…。用がないなら切るぞ」

「あっ待って!」

本当に切られる気がして、彩は声を上げる。誠のため息が、スピーカーから漏れてくる。

「…あの…」

「何」

⏰:11/11/04 16:28 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#115 [我輩は匿名である]
「…気を付けてね。ちゃんと帰って来てよ」

彩は少し下を向いていった。受話器から、今度は鼻で笑うのが聞こえてきた。

「お前、俺がそんなすぐ死ぬと思ってんのか?」

「わからないじゃん。誰が狙われてるのかわからないのに」

「心配しなくても、俺は死なねぇよ。…じゃあな」

あ。彩が声を出す前に、電話が切れてしまった。

その自信はどこからくるんだ。一瞬呆れたが、むしろそれを聞いて少し安心した。

彩はちょっとだけホッとして、携帯電話を机に置いた。

⏰:11/11/04 16:29 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#116 [我輩は匿名である]
その日の夜21時頃。家族とともにテレビを見ていると、家の固定電話がけたたましくなり始めた。

母親が立ち上がって受話器を手にする。

彩がなんとなくその様子を見ていると、少しして、母親の顔から血の気が引いていくのがわかった。

驚いて、彩も電話の親機のもとに歩いていく。

「…彩」

「…何?」

「同じクラスに、小山凛ちゃんっていたわよね…?」

「いるけど…どうかしたの?」

⏰:11/11/05 21:49 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194