2年A組
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#111 [我輩は匿名である]
「うん。多分、うっちーをみんなが『怖い』って思うようになったのは、それからだと思う」

「まぁ、そりゃね…。小松さん、そんな時からすでに問題児だったんだね。…なんか、殺されても仕方ない気がしてきた…」

彩は少し黙り込む。こんな事を言ってはいけないのかもしれない。しかし、春香になら言える気がした。

「…私ね、小松さんが死んだって聞いた時、……正直…いい気味って思った」

今までずっと心に秘めていた感情。口にすることはないと思っていた。

何もしていないのに後ろ指を指され、噂され、彼女のせいで誠も変わってしまった。

今の誠が嫌いなわけでも、そこまで『変わったな』と思う事もない。しかし、もしあの一件がなかったら、誠は今頃、友人に囲まれる明るい性格だったかもしれない。

そう思うと、彼女が憎かった。

⏰:11/11/04 16:27 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#112 [我輩は匿名である]
言ってから、しばらく春香から返事の言葉は発せられなかった。

「…ごめん、嫌な事言ったね。忘れて」

彩はいつものように明るい声でそう訂正する。

「なんか、暗い話しちゃったね。今度はちゃんとした話しよ!…じゃあ、またね」

春香からの返事が怖くて、彩は一方的にそう言って電話を切った。

しばらく、胸に残るもやもやを感じながらベッドに座り込む。

静かになった携帯電話を見つめる。何気なくそれを見る彩の目に、携帯電話が表示する『14:53』の文字が映る。

しばらくして、今度は違う人物に電話を掛けた。

⏰:11/11/04 16:27 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#113 [我輩は匿名である]
「もしもし」

5回ほど呼び出し音が鳴って、誠が電話に出た。

「…うっちー?」

「俺にかけてきてるんだから、わざわざ聞くなよ」

いつも通りの誠の声を聴いて、何だか肩の力が抜けた気がする。

「何だよ」

「さっき、出かけるのが見えたからさ。…どこ行くのかなぁと思って」

「……別に」

誠は短く答える。

⏰:11/11/04 16:28 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#114 [我輩は匿名である]
彩はムッと頬を膨らます。

「せっかく心配して電話かけてあげたのに、冷たいなぁ」

「電話かけてほしいなんか言ってないぞ」

「きーっ!むかつく!」

「はぁ?何なんだよ…。用がないなら切るぞ」

「あっ待って!」

本当に切られる気がして、彩は声を上げる。誠のため息が、スピーカーから漏れてくる。

「…あの…」

「何」

⏰:11/11/04 16:28 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#115 [我輩は匿名である]
「…気を付けてね。ちゃんと帰って来てよ」

彩は少し下を向いていった。受話器から、今度は鼻で笑うのが聞こえてきた。

「お前、俺がそんなすぐ死ぬと思ってんのか?」

「わからないじゃん。誰が狙われてるのかわからないのに」

「心配しなくても、俺は死なねぇよ。…じゃあな」

あ。彩が声を出す前に、電話が切れてしまった。

その自信はどこからくるんだ。一瞬呆れたが、むしろそれを聞いて少し安心した。

彩はちょっとだけホッとして、携帯電話を机に置いた。

⏰:11/11/04 16:29 📱:PC/0 🆔:EdsrP/zo


#116 [我輩は匿名である]
その日の夜21時頃。家族とともにテレビを見ていると、家の固定電話がけたたましくなり始めた。

母親が立ち上がって受話器を手にする。

彩がなんとなくその様子を見ていると、少しして、母親の顔から血の気が引いていくのがわかった。

驚いて、彩も電話の親機のもとに歩いていく。

「…彩」

「…何?」

「同じクラスに、小山凛ちゃんっていたわよね…?」

「いるけど…どうかしたの?」

⏰:11/11/05 21:49 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#117 [我輩は匿名である]
「……さ…刺されたって…」

彩は自分の耳を疑った。

「刺された…?」

その言葉だけを繰り返す。

ショックも大きいが、彩の中で、恐怖が一気に膨らんだ。

この高校の生徒も、とうとう狙われ始めた。そう思うと、体が小刻みに震えだす。

「…幸い、たまたま通った人がすぐに通報してくれたみたいだから、けがで済んだそうよ」

電話を終え、母親が彩に言う。

⏰:11/11/05 21:49 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#118 [我輩は匿名である]
「…犯人は…?」

彩は俯いたまま尋ねる。

「まだ…捕まってないそうよ」

「…そんな…」

彩はふらつき、壁にもたれかかる。そのまま、よろよろと歩きながら自分の部屋に入り、ドアにもたれて座り込んだ。

なぜ、今回は凛だったのか。犯人はいったい何がしたいのか。彩の頭の中で、いろんな疑問が浮かんで巡る。

ふとベッドに目をやると、無防備にぽんとおかれた携帯電話が見えた。

⏰:11/11/05 21:50 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#119 [我輩は匿名である]
彩は素早くそれに駆け寄り、南里に電話を掛ける。

1分ほど粘ると、呼び出し音が止まった。

「はい」

「あの…この間警察署でお話しした、塩見彩です」

「…あぁ、この間はありがとうございました」

南里はご丁寧に礼を言う。

「いえ…。そんな事より、凛ちゃんが刺されたって、本当ですか?」

彩の問いに対し、南里のため息が聞こえてくる。

⏰:11/11/05 21:51 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#120 [我輩は匿名である]
「えぇ。誰に聞いたんです?」

「連絡網で回ってきました」

「そうですか…」

「いつですか?いつ、どこで?」

彩は畳み掛けるように問い詰める。

「今日の昼過ぎです。15時前じゃないかと。場所は中央公園です」

南里は淡々と答えた。ここで隠しても、どうせ報道でばれると思ったのだろう。

⏰:11/11/05 21:51 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


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