2年A組
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#121 [我輩は匿名である]
彼女の答えに、彩はある事を思い出した。
「15時頃…」
春香と電話し終わった時、彩の携帯電話が示していた時間は、確か14時53分。その時間にどこかへ出て行った誠。
ありえない。彩は、なぜその考えに至ったのか、自分でも理解できなかった。
「…塩見さん?」
急に黙り込んだ彩を心配して、南里が声をかける。
「え?あ、すみません。…何でも…ありません」
「…あなた、何か知ってるの?」
:11/11/05 21:52
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#122 [我輩は匿名である]
南里の口調が変わる。彩はドキッとし、体を硬直させる。
「…何も知りません」
「…そう。もし何かあったら、どんな小さなことでもいいから必ず教えてください。…必ず、ね」
南里はそう念を押す。
「…わかりました」
「ありがとうございます。…それでは失礼します」
南里は忙しいのか、すぐに電話を切った。
彩は思った。“今ので、今後きっとマークされる”、と。
:11/11/05 21:53
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#123 [我輩は匿名である]
それは…?
彩は思い切って、『発信』のキーに指を置いた。
自分で確かめれば済むことだ。彩は心に決め、電話を耳にあてる。
「もしもし」
いつもと変わらない誠の声がする。
「…あのさ…」
彩は深呼吸しながら口を開く。
「凛ちゃんの事…聞いた?」
:11/11/05 21:54
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#124 [我輩は匿名である]
「あぁ…さっき連絡網で回ってきた」
「…そっか。でも、何で中央公園なんかで…」
「…中央公園?」
「うん。さっきあの女の刑事さんに聞いた」
「…ふうん…」
誠は、まるで何かを考え込むように低い声で返事を返す。
「…それでさ」
彩はまだドキドキしながら本題に入る。
「今日のお昼、…どこ行ってたの?」
:11/11/05 21:55
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#125 [我輩は匿名である]
「…あぁ、お前が電話かけてきた時か。……散歩」
「絶対嘘だよね」
「…まぁ…。…今は言えない」
予想するよりも意味深な答えが返って来て、彩はさらにショックを受ける。
「…どういう事?何で?」
「だから、言えないって言ってるだろ」
「じゃあいつ言ってくれるの!?」
なかなか言わない誠にしびれを切らし、彩はつい怒鳴るように声を上げた。
電話の向こうから、声が聞こえなくなってしまった。
:11/11/05 21:55
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#126 [我輩は匿名である]
ちょっとムキになりすぎた。彩も困り、黙る。
「…明日」
「え?」
「明日言うよ。…これで満足?」
「…うん…」
「…じゃあな」
怒らせてしまっただろうか。電話を手に持ったまま、彩はうなだれる。
どうして自分たちがこんな思いをしなければならないのか。いつまで続くのか。
彩はため息をつき、しばらくそのまま動けなかった。
:11/11/05 22:00
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#127 [我輩は匿名である]
次の日。目を覚ました彩の携帯電話に、誠からメールが届いていた。
『11時に、マンションの公園で待ってる』
「…へ!?」
ボサボサの頭を左右させてようやく見つけた時計の指す時刻は、11時10分。
「ちょっと…無理だって!」
彩は飛び起き、とりあえず着替える。
そして歯を磨き、朝食も摂らないまま家を飛び出した。
彩の住むマンションと誠の住むマンションの間に、小さな公園がある。子どもたちが遊ぶには少々物足りないが、主婦たちがおしゃべりしたり、1人で静かな時間を過ごすにはうってつけの場所である。
息を切らして公園のそばまで来てみると、ベンチに座って誠が待っていた。
:11/11/05 22:04
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#128 [我輩は匿名である]
「なんだろうなぁ?」
2人の頭の間から男の声がした。
そろって素早く振り向くと、無精ひげを生やした40歳くらいの男が笑いながらこちらを見ている。
ほんのり煙草のにおいが漂ってくる。
「何だよ、あんた」
誠がきつく睨みつける。
「こういうモンだ」
男は動じず、ジャケットの胸ポケットから警察手帳を出して2人に見せる。
手帳に書いてある名前は“土谷信一”。
:11/11/05 22:11
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#129 [我輩は匿名である]
不審者だと思っていた2人は、一瞬安堵の息をつく。
しかし、彩はすぐに表情を引き締めた。
「警察の方が何の御用ですか?」
「ちょっとあなたたちに聞きたいことがあってね」
今度は、土谷の背後から南里が現れた。
それも、あの時とは違い、腕を組み、冷たい表情を浮かべて。
「…内村誠くん。あなた…昨日の15時前ごろ、どこにいた?」
「…俺を疑ってるのか?」
2人の会話に、彩も黙っていられなくなった。
:11/11/05 22:12
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#130 [我輩は匿名である]
「ちょっと待ってください!何でうっ…内村君が疑われなきゃならないんですか!?」
「映ってたんだよ。昨日15時過ぎの中央公園の近くの防犯カメラに、こいつの姿がな」
土谷が早くも勝ち誇ったような顔で誠を指さす。
しかし、誠は全くそれに反応せず、じっと土谷を見ている。
「カメラに映ったから何だっていうのよ!」
彩は我慢できなくなって、誠の代わりに反論する。
しかし、自分で言ったその言葉に違和感を覚え、ふと声を押し出すのを止めた。
「防犯カメラ…」
そう。今回の事件「だけ」、防犯カメラに“容疑者”が映った。
:11/11/05 22:13
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