2年A組
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#125 [我輩は匿名である]
「…あぁ、お前が電話かけてきた時か。……散歩」
「絶対嘘だよね」
「…まぁ…。…今は言えない」
予想するよりも意味深な答えが返って来て、彩はさらにショックを受ける。
「…どういう事?何で?」
「だから、言えないって言ってるだろ」
「じゃあいつ言ってくれるの!?」
なかなか言わない誠にしびれを切らし、彩はつい怒鳴るように声を上げた。
電話の向こうから、声が聞こえなくなってしまった。
:11/11/05 21:55
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#126 [我輩は匿名である]
ちょっとムキになりすぎた。彩も困り、黙る。
「…明日」
「え?」
「明日言うよ。…これで満足?」
「…うん…」
「…じゃあな」
怒らせてしまっただろうか。電話を手に持ったまま、彩はうなだれる。
どうして自分たちがこんな思いをしなければならないのか。いつまで続くのか。
彩はため息をつき、しばらくそのまま動けなかった。
:11/11/05 22:00
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#127 [我輩は匿名である]
次の日。目を覚ました彩の携帯電話に、誠からメールが届いていた。
『11時に、マンションの公園で待ってる』
「…へ!?」
ボサボサの頭を左右させてようやく見つけた時計の指す時刻は、11時10分。
「ちょっと…無理だって!」
彩は飛び起き、とりあえず着替える。
そして歯を磨き、朝食も摂らないまま家を飛び出した。
彩の住むマンションと誠の住むマンションの間に、小さな公園がある。子どもたちが遊ぶには少々物足りないが、主婦たちがおしゃべりしたり、1人で静かな時間を過ごすにはうってつけの場所である。
息を切らして公園のそばまで来てみると、ベンチに座って誠が待っていた。
:11/11/05 22:04
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#128 [我輩は匿名である]
「なんだろうなぁ?」
2人の頭の間から男の声がした。
そろって素早く振り向くと、無精ひげを生やした40歳くらいの男が笑いながらこちらを見ている。
ほんのり煙草のにおいが漂ってくる。
「何だよ、あんた」
誠がきつく睨みつける。
「こういうモンだ」
男は動じず、ジャケットの胸ポケットから警察手帳を出して2人に見せる。
手帳に書いてある名前は“土谷信一”。
:11/11/05 22:11
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#129 [我輩は匿名である]
不審者だと思っていた2人は、一瞬安堵の息をつく。
しかし、彩はすぐに表情を引き締めた。
「警察の方が何の御用ですか?」
「ちょっとあなたたちに聞きたいことがあってね」
今度は、土谷の背後から南里が現れた。
それも、あの時とは違い、腕を組み、冷たい表情を浮かべて。
「…内村誠くん。あなた…昨日の15時前ごろ、どこにいた?」
「…俺を疑ってるのか?」
2人の会話に、彩も黙っていられなくなった。
:11/11/05 22:12
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#130 [我輩は匿名である]
「ちょっと待ってください!何でうっ…内村君が疑われなきゃならないんですか!?」
「映ってたんだよ。昨日15時過ぎの中央公園の近くの防犯カメラに、こいつの姿がな」
土谷が早くも勝ち誇ったような顔で誠を指さす。
しかし、誠は全くそれに反応せず、じっと土谷を見ている。
「カメラに映ったから何だっていうのよ!」
彩は我慢できなくなって、誠の代わりに反論する。
しかし、自分で言ったその言葉に違和感を覚え、ふと声を押し出すのを止めた。
「防犯カメラ…」
そう。今回の事件「だけ」、防犯カメラに“容疑者”が映った。
:11/11/05 22:13
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#131 [我輩は匿名である]
今までは防犯カメラにさえ犯人らしき人物は映っておらず、捜査が難航していると、テレビのニュースや新聞で目にした。
彩にはそれが、どうしても引っかかる。
「何をしていたの?あの公園付近で」
「あんた達に話すような事じゃない」
「それは私たちが判断します」
「“黙秘権”って知ってるか?」
「…おい、あんまり大人をなめるんじゃねぇぞ」
彩が考え込む横で、誠と、南里と土谷が静かな言い合いを続けている。
:11/11/05 22:14
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#132 [我輩は匿名である]
「あーもううるさい!!!」
3人を無理やり黙らせるように、彩が大声を上げる。おそらく、2棟のマンションにも響いただろう。
急に声をあげられて、3人とも目を丸くする。
「うっちーをいじめる前に、私の質問に答えてください!何で今回だけ犯人が防犯カメラに映ってたんですか?今まで映ってなかったんですよね!?今度の事件だけカメラに映ってるなんて、おかしいと思わないんですか!?
言っときますけど、うっちーは変なところで馬鹿みたいに頭切れるんだから、今までは防犯カメラに映らなかったけど、今回は映っちゃうなんてヘマするようなマヌケじゃありませんから!!」
彩はものすごい剣幕で土谷に食って掛かる。その迫力に、土谷も思わず後ずさる。
:11/11/05 22:15
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#133 [我輩は匿名である]
その後ろでは、彩の主張を聞いてか、南里が深く考え込む。
「……確かに…そう言われてみればそうね…」
「あんた達、本当に警察かよ?もうちょっとよく考えてから出直して来な」
誠もポケットに手を入れて言い返す。
「俺からも1つ聞くけど、中央公園の防犯カメラ見てるんだったら、その近くのショッピングモールの防犯カメラにも、ちゃんと目ぇ通してるんだろうな?」
まるで相手をあざ笑うかのような笑みを浮かべて、誠も反撃に出る。
「ショッピングモール…?」
南里と土谷が、黙って目を合わせる。
ただの高校生2人に指摘されて何も言い返せないようでは、警察の信用を失いかねない。
南里と土谷は苦虫をつぶしたような顔で、無言のまま、傍に止めていたパトカーに乗ってその場を去っていった。
:11/11/05 22:15
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#134 [我輩は匿名である]
「何なのよ!あの2人、もう1回交番のお巡りさんから出直した方がいいんじゃないの!?」
逃げるように走り去ったパトカーを見て、彩が鼻息を荒くする。
彼女のそんな様子を見て、誠は小さく笑った。
「…で、昨日の話だけど」
「…あぁ、そうそう」
2人は気を取り直して、またベンチに座る。
誠は言いにくそうに頭をかいた後、重い口を開いた。
「…これ、買いに行ってたんだよ」
恥ずかしそうに、置いていた紙袋をぽんと彩の膝の上に置く。
:11/11/05 22:16
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:lu/Ru1I.
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