2年A組
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#242 [我輩は匿名である]
『寺田くん!』

眠ろうとする龍也の手を掴み、美穂が呼びかける。

『今まで気が付かなくてごめんね。私も…私も寺田くんの事、大好きだよ!』

すると、龍也は少しだけ目を開け、嬉しそうに笑った。

『…サンキュ』

あの時の手の感触は、今でも残っている。

龍也の最期の笑顔も、温かさも、全部覚えている。

美穂はしばらくじっと自分の手を見つめた後、毛布をその場において、ひっそりと夜の闇に消えた。

⏰:11/12/02 20:24 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#243 [我輩は匿名である]
次の日の放課後。

彩が掃除当番をやっている間、誠は1人、屋上でぼーっと外の景色を眺めていた。

龍也が亡くなった事は、すでに彩や誠、皐たちに伝わっている。

数少ない理解者である龍也が死に、犯人であると思っていた葛城も死んだ。「犯人はまだいる」。そう言い残して。

置いてあるベンチに座り、誠はため息をつきながら頭を抱える。

少し遠くでドアが開く音がした。

⏰:11/12/02 20:26 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#244 [我輩は匿名である]
「…内村?」

聞き覚えのある声が自分の名前を呼ぶが、振り返る気にもならない。

誠が返事をしないからか、声の主が誠に近づいてくる。

「…こんなところで何してんの?」

誠の視界の端に、皐の顔が映る。

「…別に」

目も向けず、短く答える。機嫌が悪い時や誰とも話したくない時は、こうするのが1番。今までよく使ってきた手だ。

⏰:11/12/02 20:26 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#245 [我輩は匿名である]
しかし、誠の思惑とは反対に、皐はその場から立ち去ろうとしない。

「…寺田たちの事、考えてるの?」

傍に立ったまま、再度問いかけてきた。

誠は、今度は目だけを皐に向ける。

「…俺に何か用?」

「…用があるわけじゃないけど…」

「じゃあほっといてくれないか。今は誰とも話したくない」

誠に突き放され、皐はショックを受けた表情を見せる。

⏰:11/12/02 20:27 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#246 [我輩は匿名である]
さっさと行ってくれ。誠はそう思いながら視線をそらす。

「…相手が彩でも、同じ事言うの?」

皐は、今度は声のトーンを落として言う。なぜか不機嫌そうな態度の皐に、誠はまた目をやる。

「…は?」

「私が彩でも、今みたいに『ほっといてくれ』って言えるの?」

皐と誠は、お互い苛立ったような顔で見つめ合う。

「…しょうもない事聞いてくんじゃねぇよ」

誠はうっとうしそうに、顔ごとそっぽを向く。

彼のあからさまな態度に、皐もムッとした表情で何か言い返そうと口を開く。

⏰:11/12/02 20:27 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#247 [我輩は匿名である]
すると、「うっち〜?」という声とともに、彩も屋上にやってきた。

「あっ、こんな所にいたの?掃除終わったよー」

彩はたたたっと足音を立てて、2人のもとに走ってくる。

「2人とも何してるの?もしかして、ナンパ?」

「ふざけた事言うな」

「…ごめん」

本気で機嫌が悪そうな誠に、彩は素直に謝る。

⏰:11/12/02 20:28 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#248 [我輩は匿名である]
「…俺、塩見と話があるから、どっか行ってくれない?」

誠は皐を見ようともしないで言い放つ。

「(…何?この険悪なムード…)」

間に挟まれ、彩は困ったように皐と誠を交互に見る。

すると、皐が何も言わずに早足でその場を後にした。

大きな音を立てて閉まったドアを見つめ、彩は首をかしげる。

⏰:11/12/02 20:28 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#249 [我輩は匿名である]
「…うっちー、今のはさすがに怖いよ」

彩は少し間を空けて、誠と同じベンチに腰を下ろす。

しかし、誠はむすっとした顔で黙り込む。

誠がこういう態度をとる時は、大体嫌いな相手と接している時だ。皐も不機嫌そうだったし、2人で喧嘩でもしたのだろうか。

彩は考えたが、今の誠には直接聞けない。仕方なく、彩も少し黙る。

「…今日、美穂ちゃん学校来なかったって」

しばらくしてから、彩がぽつりと言った。

⏰:11/12/02 20:28 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#250 [我輩は匿名である]
誠はじっとどこかを見つめたまま口を開く。

「そりゃ、あんな事があったんだから、次の日に学校なんか来ないだろ。…俺だって来たくなかった」

「…まぁ、そうだけどさ…」

彩は暗い表情でうつむく。

「…今、前のお前と同じこと考えてるわ、俺」

誠も少し視線を落として言う。「何?」と、彩が誠の方を向く。

「“何で俺たちがこんな目に遭わないとならないんだろう”…って」

⏰:11/12/02 20:29 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#251 [我輩は匿名である]
「うっちー…」

「…何で、寺田が死ななきゃいけなかったんだろうな。あいつは何も関係ないのに…」

誠は両手で顔を覆い、うなだれる。

高校に入って、龍也が1番誠と仲良くしていたことは、彩もよく知っている。他の野球部員たちともそこそこ仲良くしていたが、龍也だけが誠とよくつるんでいた。

それだけに、誠のショックも大きいのは明らかだった。

「…長谷部の時みたいに病院に行ってあいつらと顔合わせたら、俺多分あいつらの事ボコボコにしてると思う」

「…あの時の私の気持ち、よくわかったでしょ?」

「…わかりたくなかったけどな」

⏰:11/12/02 20:29 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


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