2年A組
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#252 [我輩は匿名である]
誠は呆れたようにほんの少し笑う。それを見て、彩も小さく笑い返す。

「その上犯人死なせるし…本当頼りになんねぇな、警察」

「何か…犯人の思うつぼって感じだよね、あの人達。寺田くんは体張って美穂ちゃん守ったのに、何も出来ないなんて…馬鹿みたい」

彩は自分で言いながら、だんだんイライラしてきた。逆に、誠は頭を抱えたまま動かなくなった。

「…塩見」

「ん?」

「…しばらく、こっち見るなよ」

そう言った誠の声がちょっと震えていたような気がして、彩は「うん」と頷き、それ以上何も言わずに景色を見つめていた。

⏰:11/12/02 20:30 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#253 [我輩は匿名である]
南里は手袋をして、1冊のアルバムをめくる。

葛城の潜伏先をやっと突き止め、土谷をはじめとする他の刑事たちも張り切って証拠探しに走り回っている。

南里が発見したある中学の卒業アルバム。生徒数名の顔写真に黒いマジックで顔に“×”が書かれている。

凛や春香たち8人に書かれているところを見ると、今まで被害に遭った生徒たちのようだ。

まだあどけなさの残るその顔写真たちを、南里は静かに見つめる。

それを手に、同僚たちがせわしそうに動き回っている居間に入る。

⏰:11/12/02 20:31 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#254 [我輩は匿名である]
まさに“潜伏先”というにふさわしい、ぼろくて小さなアパートの一室。

部屋にはカップラーメンのゴミなどが転がっている。

葛城歩。彼を変えたのは、一体何だったのだろう。

「南里警視!」

名前を呼ばれ、若い刑事のもとに急ぐ。

さっきアルバムを見つけた部屋の棚から、1枚の写真が見つかったようだ。

見ると、1人の少年とその両親らしい人物が映っている。しかも、その両親らしい人物の顔が、見えないように黒いマーカーでぐちゃぐちゃに塗りつぶされている。

⏰:11/12/02 20:31 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#255 [我輩は匿名である]
「これ…葛城本人ですかね?」

若手の刑事と一緒に、南里はそれを見ながら首をひねる。

「そういえば…」

2人の間に、他の刑事が割って入ってきた。

「3年前に葛城の事件を追ってた時の情報なんですが、元々は『葛城』って名字じゃなかったそうです」

「じゃあ、誰の名字?」

南里が尋ねる。

⏰:11/12/02 20:31 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#256 [我輩は匿名である]
「葛城は15歳の時、家で両親を包丁で刺して殺害する事件を起こしています。その後少年院に送られ、出所してから親戚に引き取られたそうで…そこの名字らしいです」

「何でそんな事件を…」

「…虐待されてたそうです、小さいころから」

「…それで…」

南里はため息をつき、もう1度その写真を見る。

もし、まともな両親の手で育てられていたら。もしかしたらこんな事件に手を染めていなかったかもしれない。

犯人に同情する気はこれっぽっちもないが、南里は何とも言えない気持ちで室内を見渡した。

⏰:11/12/02 20:32 📱:PC/0 🆔:YUwrgdBc


#257 [我輩は匿名である]
次の日から、皐は彩と口をきこうとしなかった。

今まで一緒に食べていた弁当も、この日から別々で食べるようになってしまった。美穂も凛もいないため、彩は仕方なく、同じく弁当を食べる相手を失った誠と一緒に食べた。

龍也が亡くなってから10日。葛城が自殺したこともあってか、事件は身を潜めていた。

凛の退院のめどが立ったという嬉しい知らせ以外は、特に何も変わった事はない。

⏰:11/12/05 11:41 📱:PC/0 🆔:o7G4yXkA


#258 [我輩は匿名である]
「良かったよね。凛ちゃんが退院できるだけでも、今の私たちには嬉しい事だし」

「そうだな」

相変わらず、彩と誠は一緒に帰っていた。

「もう、電話とかしても大丈夫かなぁ?さすがにまだ学校には来れないと思うし」

「…今度してみたら?」

「うん!」

ずっと暗いニュースしかなかったためか、彩は嬉しそうだ。

⏰:11/12/05 11:42 📱:PC/0 🆔:o7G4yXkA


#259 [我輩は匿名である]
もちろん、事件前の喜び方と比べると元気がないが、それでもだいぶ表情が明るくなってきている。

「…俺も、久しぶりに司に電話でもしてみようかな…」

誠は小声でもう漏らす。

「そうだね。私も、また美穂ちゃんにも電話してみる」

あれから、美穂は1度も学校に登校していない。彩が電話をかけても、電話にも出ない。

学校が家に電話して母親から聞いた話では、ずっと部屋にこもっているらしい。

「…出てくれればいいけどな」

「うん…」

彩が力なく頷くと同時に、誠が不意に足を止めた。

⏰:11/12/05 11:42 📱:PC/0 🆔:o7G4yXkA


#260 [我輩は匿名である]
「…どうかした?」

「…静かに」

誠は声を潜める。彩は黙って首をかしげる。

すると、誠が黙ったまままた歩き出した。わけがわからず、彩もそれについて行く。

彩は何気なく下を向いて、何かに違和感を感じた。

彩と誠の歩くタイミングが同じだ。

もちろん、誠は彩より背が高く足も長いため、今までは足を動かすタイミングはばらばらだった。

しかし、違和感はもう1つ。2人で同じ歩幅で、同じタイミングで足を動かして歩いているにもかかわらず、バラバラに足音が聞こえるのだ。

⏰:11/12/05 11:43 📱:PC/0 🆔:o7G4yXkA


#261 [我輩は匿名である]
「…うっちー」

「…わかったか?」

「……誰か…いるよね…?」

2人は振り返ることなく、誰にも聞こえないように話す。

彩・誠の足音と、離れたところからついてくる、もう1つの足音。

彩の背筋に、一瞬で寒気が走る。

⏰:11/12/05 11:43 📱:PC/0 🆔:o7G4yXkA


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