2年A組
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#247 [我輩は匿名である]
すると、「うっち〜?」という声とともに、彩も屋上にやってきた。
「あっ、こんな所にいたの?掃除終わったよー」
彩はたたたっと足音を立てて、2人のもとに走ってくる。
「2人とも何してるの?もしかして、ナンパ?」
「ふざけた事言うな」
「…ごめん」
本気で機嫌が悪そうな誠に、彩は素直に謝る。
:11/12/02 20:28
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#248 [我輩は匿名である]
「…俺、塩見と話があるから、どっか行ってくれない?」
誠は皐を見ようともしないで言い放つ。
「(…何?この険悪なムード…)」
間に挟まれ、彩は困ったように皐と誠を交互に見る。
すると、皐が何も言わずに早足でその場を後にした。
大きな音を立てて閉まったドアを見つめ、彩は首をかしげる。
:11/12/02 20:28
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#249 [我輩は匿名である]
「…うっちー、今のはさすがに怖いよ」
彩は少し間を空けて、誠と同じベンチに腰を下ろす。
しかし、誠はむすっとした顔で黙り込む。
誠がこういう態度をとる時は、大体嫌いな相手と接している時だ。皐も不機嫌そうだったし、2人で喧嘩でもしたのだろうか。
彩は考えたが、今の誠には直接聞けない。仕方なく、彩も少し黙る。
「…今日、美穂ちゃん学校来なかったって」
しばらくしてから、彩がぽつりと言った。
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#250 [我輩は匿名である]
誠はじっとどこかを見つめたまま口を開く。
「そりゃ、あんな事があったんだから、次の日に学校なんか来ないだろ。…俺だって来たくなかった」
「…まぁ、そうだけどさ…」
彩は暗い表情でうつむく。
「…今、前のお前と同じこと考えてるわ、俺」
誠も少し視線を落として言う。「何?」と、彩が誠の方を向く。
「“何で俺たちがこんな目に遭わないとならないんだろう”…って」
:11/12/02 20:29
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#251 [我輩は匿名である]
「うっちー…」
「…何で、寺田が死ななきゃいけなかったんだろうな。あいつは何も関係ないのに…」
誠は両手で顔を覆い、うなだれる。
高校に入って、龍也が1番誠と仲良くしていたことは、彩もよく知っている。他の野球部員たちともそこそこ仲良くしていたが、龍也だけが誠とよくつるんでいた。
それだけに、誠のショックも大きいのは明らかだった。
「…長谷部の時みたいに病院に行ってあいつらと顔合わせたら、俺多分あいつらの事ボコボコにしてると思う」
「…あの時の私の気持ち、よくわかったでしょ?」
「…わかりたくなかったけどな」
:11/12/02 20:29
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#252 [我輩は匿名である]
誠は呆れたようにほんの少し笑う。それを見て、彩も小さく笑い返す。
「その上犯人死なせるし…本当頼りになんねぇな、警察」
「何か…犯人の思うつぼって感じだよね、あの人達。寺田くんは体張って美穂ちゃん守ったのに、何も出来ないなんて…馬鹿みたい」
彩は自分で言いながら、だんだんイライラしてきた。逆に、誠は頭を抱えたまま動かなくなった。
「…塩見」
「ん?」
「…しばらく、こっち見るなよ」
そう言った誠の声がちょっと震えていたような気がして、彩は「うん」と頷き、それ以上何も言わずに景色を見つめていた。
:11/12/02 20:30
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#253 [我輩は匿名である]
南里は手袋をして、1冊のアルバムをめくる。
葛城の潜伏先をやっと突き止め、土谷をはじめとする他の刑事たちも張り切って証拠探しに走り回っている。
南里が発見したある中学の卒業アルバム。生徒数名の顔写真に黒いマジックで顔に“×”が書かれている。
凛や春香たち8人に書かれているところを見ると、今まで被害に遭った生徒たちのようだ。
まだあどけなさの残るその顔写真たちを、南里は静かに見つめる。
それを手に、同僚たちがせわしそうに動き回っている居間に入る。
:11/12/02 20:31
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#254 [我輩は匿名である]
まさに“潜伏先”というにふさわしい、ぼろくて小さなアパートの一室。
部屋にはカップラーメンのゴミなどが転がっている。
葛城歩。彼を変えたのは、一体何だったのだろう。
「南里警視!」
名前を呼ばれ、若い刑事のもとに急ぐ。
さっきアルバムを見つけた部屋の棚から、1枚の写真が見つかったようだ。
見ると、1人の少年とその両親らしい人物が映っている。しかも、その両親らしい人物の顔が、見えないように黒いマーカーでぐちゃぐちゃに塗りつぶされている。
:11/12/02 20:31
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#255 [我輩は匿名である]
「これ…葛城本人ですかね?」
若手の刑事と一緒に、南里はそれを見ながら首をひねる。
「そういえば…」
2人の間に、他の刑事が割って入ってきた。
「3年前に葛城の事件を追ってた時の情報なんですが、元々は『葛城』って名字じゃなかったそうです」
「じゃあ、誰の名字?」
南里が尋ねる。
:11/12/02 20:31
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#256 [我輩は匿名である]
「葛城は15歳の時、家で両親を包丁で刺して殺害する事件を起こしています。その後少年院に送られ、出所してから親戚に引き取られたそうで…そこの名字らしいです」
「何でそんな事件を…」
「…虐待されてたそうです、小さいころから」
「…それで…」
南里はため息をつき、もう1度その写真を見る。
もし、まともな両親の手で育てられていたら。もしかしたらこんな事件に手を染めていなかったかもしれない。
犯人に同情する気はこれっぽっちもないが、南里は何とも言えない気持ちで室内を見渡した。
:11/12/02 20:32
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