2年A組
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#292 [我輩は匿名である]
昨夜。何も用はないが、ただ外をぼーっと歩いていた美穂は、何かから逃げるように目の前を横切って行く黒いパーカーの男性を見つけた。

美穂は生気のない目でそれを見た後、足をそちらに向けて歩き出した。

『もしかしたら、寺田くんを殺した奴の仲間かもしれない。』

その考えが美穂の頭の中をよぎる。

「…許さない…」

美穂はそう呟き、家から持ってきた包丁が入った鞄を大事そうに肩からかけ直す。

男性が走って行った道を、美穂はじっと物陰から様子を伺う。

⏰:11/12/14 21:35 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#293 [我輩は匿名である]
そこには、どこから逃げてきたらしく、膝に手をついて呼吸を整えている黒いパーカーの男がいた。

しかも、その先はゴミ置き場。行き止まりだ。

美穂はそれを見て、いったん少し離れたところに来て南里に電話を掛けた。

「刑事さん、…犯人っぽい人がいますよ」

相手が電話に出ると同時に、美穂は淡々と言う。

思わぬ通報に、南里は目を丸くする。

「どこ!?」

南里は美穂に聞いた場所を、近くにあった紙にメモする。

⏰:11/12/14 21:36 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#294 [我輩は匿名である]
「…今からその人に聞いてみる。…何でこんなことするのか」

「やめなさい!あなたが危ないだけよ!」

急に声を荒げる南里に、周囲にいた刑事たちが動きを止める。

「…構わないよ。それで、もう他の子が被害に遭わなくて済むんなら」

美穂の言葉に、南里は耳を疑った。前にあった時は、こんな事を言う子ではなかったはずだ。

少し考え、南里は美穂に言った。

「…青山さん、…電話を切らずに、携帯電話をそのままポケットに入れてちょうだい」

⏰:11/12/14 21:36 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#295 [我輩は匿名である]
「…どうして?」

「何を言っても、あなたは犯人との接触を試みるでしょう。犯人との会話を少しでも聞くことができたら、犯人の特定に役立つわ。逮捕できる可能性も高くなる。

…くれぐれも気を付けて」

本当は、どうしても引き止めなければならない。それは南里もよくわかっていた。しかし今の美穂の様子では、おそらく誰が何を言っても聞く耳を持たない。

南里は受話器を離し、そこにいた全警官に、美穂が言った場所に向かうよう命じる。

そして、近くにいた鑑識課の男性を呼び寄せた。

⏰:11/12/14 21:37 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#296 [我輩は匿名である]
「今から、私の携帯の通話を全部録音して下さい」

「わ、わかりました」

「この形態の近くで、絶対に物音や声を出さないように。音を拾われたら、きっとその場で電話を切られる」

「はい」

南里に指示を出され、半ばあまり事情が分かっていないながらも、周囲の捜査員は大きく頷いた。

⏰:11/12/14 21:38 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#297 [我輩は匿名である]
美穂は言われたとおり、携帯電話を通話状態のまま上着のポケットに入れ、男のもとへと向かう。

男はまだそこにいて、誰かに電話しているようだった。

「ねぇ」

美穂が背後から話しかけると、男はびくっと肩を上げ、急いで電話を切った。

「…あんた、犯人でしょ?」

男は何も言わない。その態度が、“自分が犯人だ”という事を物語っているのに、彼は気づいていないのだろう。

何も答えず固まっている男に、美穂は追い打ちをかける。

⏰:11/12/14 21:38 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#298 [我輩は匿名である]
「そうなんでしょ?2年1組の…岡本君」

美穂が名前を呼ぶと、男は…岡本忍は、ゆっくりと振り向いた。

以前教室でぶつかった事を、美穂は覚えていた。

岡本は動揺したような表情で美穂を見ている。

“こんな奴らに、寺田くんは…”

美穂は腹の底から湧いてくる怒りを抑え、岡本に尋ねる。

「どうして…こんな事してるの?」

岡本は、さらに困ったような顔で黙っている。

⏰:11/12/14 21:38 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#299 [我輩は匿名である]
「同じ中学じゃなかったよね?なのに何で私たちを狙うの?誰に命令されてるの?」

「…それは…」

岡本は口ごもる。弱そうな割に、口だけは堅いらしい。

美穂はもう少し岡本に近寄り、鋭い目で彼をにらみつける。

「頭おかしいんじゃないの…?命令されて、自分の人生棒に振ってまでこんな事件起こして…バカみたい。あんたも、そのボスも」

「…バカなんて言うな…」

“バカ”という言葉に反応したらしく、岡本が小声で言った。

⏰:11/12/14 21:39 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#300 [我輩は匿名である]
言い返されて、美穂は眉間にしわを寄せる。

「僕は、何て言われてもいいよ…。でも、あの子は…あの子を侮辱する事だけは、…許さないよ」

「あんたなんかに許してもらおうなんて思ってない」

“あの子”。岡本はそう言った。おそらく、首謀者の歳は、自分たちとそう離れてはいなさそうだ。

そして、もう1つ。

「…その“あの子”が、よっぽど大事なんだね」

美穂は小さく笑って言う。

⏰:11/12/14 21:39 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


#301 [我輩は匿名である]
まるで心の内側を見透かされたような感じがして、岡本は言い返せず、また黙る。

「でも、その“あの子”は…あんたの事何とも思ってないと思うよ?」

美穂はまるで挑発するような笑みを浮かべて続ける。

「何…!?」

「だって本当にあんたの事を大事に思ってるなら、こんな事させないでしょ?普通の人なら逆に止めるはず。でもあんた達は違う。

その人にとってのあんたは……ただの“捨て駒”だよ」

「黙れ!!」

岡本はキレたように叫び、自分の腰に手を当てる。

⏰:11/12/14 21:40 📱:PC/0 🆔:MqhoO8ew


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