2年A組
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#362 [我輩は匿名である]
自分を助けてくれたのは、彼が初めてだ。
『…私…帰る場所がないんです』
凛は声を震わせながら、初対面の連続殺人犯に、自分の境遇を話した。
学校の事、家庭の事…。なぜこんなことを彼に話しているのか自分でもわからなかったが、話すうちに涙がこみ上げてきた。
『…そう。…辛いね』
葛城は、ぽつりとそう呟いた。
:12/02/14 23:32
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:Gu5WMMzk
#363 [我輩は匿名である]
『…いつまでもここにいたら見つかっちゃうから、とりあえずうちにおいで。このオッサンと違って、何もしないから』
『…いいんですか?』
『だって、泣いてる女の子をこのままほっとけないじゃん』
葛城はそう言って、凛を自分の家に連れ帰った。
家と言っても、ぼろぼろのアパートの狭い一室。
一軒家に住んでいる凛には、少し耐え難い環境であったが、あの家に帰る事を考えれば我慢できた。
:12/02/14 23:33
:PC/0
:Gu5WMMzk
#364 [我輩は匿名である]
『僕にはね、親がいないんだ』
家に帰って少しすると、今度は葛城が話し始めた。
『…どうして?』
『僕が殺したんだ。2人とも』
葛城は平気そうに言うが、凛には少し悲しそうに見える。
話しながら、葛城は袖口をまくり、自分の片腕を凛に見せる。
いくつかアザのような、やけどのような跡が残っている。
『それは…?』
:12/02/14 23:33
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:Gu5WMMzk
#365 [我輩は匿名である]
『煙草の跡。よく押し付けられてね』
少し苦笑して、葛城が答える。
どうしてそれを笑いながら言えるのか、凛は不思議で仕方がない。
『僕、小さい時からよく父親に虐待されてたんだ。母親は怖がって、助けてくれようとしない。
4年前…15歳の時かな。本当に殺されそうになったから、とっさに包丁で父親を刺して殺した。警察に通報した母親も一緒に』
話している葛城の表情が、少し暗い。
:12/02/14 23:33
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:Gu5WMMzk
#366 [我輩は匿名である]
『正当防衛だっていう声もあったらしいけど、ちょっと刺しすぎちゃってね。過剰防衛って事になって、少年院に入ってたんだ。
出てきてからは親戚に引き取られて、まぁ適当に育てられてこうなったわけ』
『…でも、なんで殺人犯なんかに…』
話を聞く限り、そんなに悪い人には思えない。凛は真剣に尋ねる。
:12/02/14 23:34
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:Gu5WMMzk
#367 [我輩は匿名である]
『たまたま外歩いてたら、さっきの君みたいに襲われかかってる女の人を見つけてね。
それ見た瞬間、何だか父親に殴られてる自分を思い出して、“殺さないと”って思った。気づけば襲ってた奴が血まみれになって倒れてたよ。
…でも、被害に遭ってた女の人が僕に言ったんだ。“ありがとう”って。…人を殺して感謝されたのは初めてだった。
だからたまーに家を出て散歩しては、生きてても害にしかならない奴を殺してまわってるのさ』
『…そうなんですか…』
不思議な、複雑な人間のようだが、凛はなぜか彼に惹かれた。
:12/02/14 23:34
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:Gu5WMMzk
#368 [我輩は匿名である]
『家に居場所がないんなら、たまにはここに来ていいよ。誰にも言わないなら』
葛城は笑って言った。
『…いいんですか…?』
『君がいいんなら、僕は別にかまわないよ。こんな汚い家でよかったらいつでもおいでよ』
その言葉は、凛の心に響いた。
今まで、こんな言葉をかけてくれたのはこの人が初めてだ。
しかし、どうして初対面の相手にここまで優しくしてくれるのか。
:12/02/14 23:35
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:Gu5WMMzk
#369 [我輩は匿名である]
『…あの』
凛は思い切って聞いてみる。
『どうして、そんなに優しくしてくれるんですか?…会ったばっかりなのに』
そう聞かれて、葛城は少し考えるそぶりを見せる。
そして、10秒ほど黙った後、小さく笑って答えた。
『…君は…僕に似てるから』
:12/02/14 23:35
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:Gu5WMMzk
#370 [我輩は匿名である]
「…それから…私は毎日のようにあの人の所に通った。あの人の所にいる時だけ、私が私でいられたから。
だから…あの人が殺人犯だって、もうどうでも良くなって……下手すれば私も逮捕されるんじゃないかとも思ったけど、それでも良かった。
私もあの人も、もうそんな風にしか生きられないのよ」
「そんな事ない!どんな理由があっても、その人を殺せば、それで全部解決するの!?」
凛の話に、黙って聞いていた彩は反論する。
:12/02/15 22:59
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:2Wja4oSk
#371 [我輩は匿名である]
「確かに、“死んでくれればいいのに”とか思う人はいるかもしれない。でもそんな事でいちいち殺してたらキリないじゃん!
たかが腹立つ奴の為に、人生棒に振るなんてもったいないと思わないの!?」
「言ったでしょ?“私たちはそんな風にしか生きられない”って。もったいないと思えるような人生じゃない。
あんた達みたいに、普通に愛されて育った人には、私たちの気持ちなんてわかるはずない!」
「わかりたくねぇな、そんなもん」
誠もまた、彩に加勢し首を振る。
:12/02/15 22:59
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:2Wja4oSk
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