2年A組
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#85 [我輩は匿名である]
「はい。わかりました」
彩はそれを受け取り、大事に財布に入れた。
「では最後に、話を聞かせてもらった証明という事で、ここに署名していただけますか?」
南里は1枚の紙を机に置く。見ると、今まで聴取を受けた同級生たちの名前が書いてある。
「はい」
彩はボールペンを借り、誠の下に自分の名前を書いた。
:11/10/29 22:22
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#86 [我輩は匿名である]
「ありがとう。では、くれぐれも気を付けて。パトカーで送りましょうか」
「え!?結構です!まだ明るいし、歩いて帰れます」
パトカーで家まで送られるのは、さすがに恥ずかしい。彩は両手をひらひらさせて断る。
「そう?わかりました。それじゃあ、気を付けて帰ってくださいね」
「はい」
すると、記録係の男性がドアを開けてくれた。
彩はぺこっと頭を下げて、その部屋を後にした。
:11/10/29 22:22
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#87 [我輩は匿名である]
「…さっき内村誠と話してたわね、あの子」
「そうですね。幼馴染のようです」
「…ふうん…」
南里はじっと、帰っていく彩の背中を見つめていた。
:11/10/29 22:22
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#88 [我輩は匿名である]
「はぁ…疲れたなぁ…」
同じような部屋はもう1つあり、凛はそっちで話を聞かれているようだ。
とりあえずここを出ようと、彩は足早に警察署を出る。
建物を出てすぐの所に、誠が壁にもたれて立っているのが見えた。
「うっちー?」
「あぁ、終わったか」
「もしかして、待っててくれたの?」
「…まぁ…一応…。今1人で帰るのは危ねぇし…」
恥ずかしいのか、誠はそっぽを向きながら答える。
:11/10/29 22:23
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#89 [我輩は匿名である]
ぶっきらぼうだがたまに優しい誠に、思わず彩の顔がほころぶ。
「ありがと。さすがうっちー」
「うるさいな」
2人は並んで歩き出す。幼稚園から一緒の2人は、向かいのマンションに住んでいる。
いつも彩が近所のやんちゃな男の子に泣かされては、誠が追い払っていた。
誠は小学校の時期からあまり笑う子ではなかったため、周り(特に女子)からは“怖い子”と思われがちな誠だが、彩だけはいつも誠と一緒にいた。
:11/10/29 22:24
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#90 [我輩は匿名である]
幼い時の事を思い出して自然と笑顔になっている彩を、誠はボーっと見下ろす。
「…気持ち悪い」
「なっ、何が!?」
「何ニヤニヤしてんだよ。寒気がする」
「ニヤニヤしてないもん!」
「してた」
真顔で押し通され、彩は言い返せず黙る。
:11/10/29 22:24
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#91 [我輩は匿名である]
「ちょっと、小っちゃい時の事とか思い出して」
「どんな事?」
「普通にしてるだけなのに女子から怖がられる誠の事とか」
「…余計なこと思い出すなよ」
「バレンタインデーで、一応顔はまぁまぁだからチョコもらいかけたけど、超怖い誠の顔を見て、渡した子がすぐにチョコ取り返して走って行った事とか」
:11/10/29 22:25
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#92 [我輩は匿名である]
「あ、あれは、全然知らない奴からもらったから『誰?この子』と思ってたら、勝手に『やっぱりいいです!』って、もらったチョコ持って行かれて…。っていうか、何で知ってんだよ」
「だって見てたもん。『うっちー、よかったねぇ』と思いながら」
「母親かお前は」
「へへへ」
「笑うな」
思えば、こうして2人だけで帰るのは久しぶりだ。何だか嬉しくなって、彩は帰るまでずっと笑顔でいた。
:11/10/29 22:25
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#93 [我輩は匿名である]
「よう、そこのエリートお姉さん」
土谷に呼び止められて、南里は足を止める。
「何か?土谷警部」
「容疑者は絞り込めたのかい?今日の“元2年A組”生徒全員の事情聴取」
土谷は腕を組み、南里に問いかける。
南里は振り返り、一息ついてから口を開く。
「まだ何も。とりあえず、事件の日のアリバイと利き腕くらいは」
「利き腕…あ〜あ」
土谷は頭をかきながら南里に近づく。
:11/10/29 22:26
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#94 [我輩は匿名である]
「そういえば最初に殺された事件の容疑者、鑑識から『左利きの可能性が高い』って言われてたな。それも、身長は170〜175cm前後」
「えぇ。元2年A組の女子生徒の身長は、最高でも…167cm。学校から収集した4月の健康診断のデータなので、今も大差ないでしょう。
よって、最初の殺人はこの中の女子生徒によるものではないでしょうね。そして、男子生徒の中で左利きの生徒は」
南里は言いながら、手に持っていた捜査資料の1枚を土谷に見せる。
「内村誠、ただ1人」
そこには、誠の顔写真と彼の詳細な情報が記載されていた。
どこかで聞いた名前だ。土谷は思いながらそれを手に取る。
:11/10/29 22:27
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