漆黒の夜に君と。V[BL]
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#286 [ちか]
「職業病みたいなもんでな、いつでも何してる時でもそれくらい無意識に分かんだよ。お前今、息苦しいだろ。」

「………っ!!」


図星か。

問いかけが確信に変わるような、そんな表情で優里は俯いた。

「これで分かっただろ?お前には向いてない。やめとけ。」

釘をさすように言い放つと、細い肩が萎縮する。

「でも、俺は神崎が好きで…っ、あんたのためなら死んでもいいくらい好きで…っ」

喉の奥が震え、顔は見えなくても泣いてるいることが分かった。



「 ふざけんなっ!!!!!! 」


気づけばそんな優里を怒鳴っている自分が居た。

⏰:11/10/29 23:36 📱:Android 🆔:34CuKAt6


#287 [ちか]
「死んでもいい?!簡単に言うな!!!!!生きたくても生きれない人間がこの世界にどれだけ居ると思って…っ!!」

脳裏に浮かぶ鮮明なあいつの顔。
生きたくても生きれない人間の無理をした明るい笑顔。

あの顔を見て、何度願ったか。
彼女を治したいと。


でも叶わなかった。
末期の状態にまで陥った病気の前で、俺はその時無力な研修医でしかなかった。


悔しくて何度も噛んだ唇の痛みさえ、生々しく蘇るようだった。

⏰:11/10/29 23:43 📱:Android 🆔:34CuKAt6


#288 [ちか]
いきなり浴びせられた怒声に優里は潤む目を何度も瞬いた。

俺はそんな優里に背を向け、すっかり短くなってしまったタバコをくわえなおした。


「出ていけ。」


冷静になろうと心がけた声は思いの外震えていた。
それは優里にも伝わってしまっているだろうか。

怒鳴り声のあとの研究室は一層静かに感じられた。

⏰:11/10/29 23:48 📱:Android 🆔:34CuKAt6


#289 [ちか]
時計の秒針が研究室の静けさをさらに駆り立てる。

俺は振り向かずただくわえたタバコの煙を見つめた。



暫くして、ソファから立ち上がる音。

そのまま足音はドアの方へ近づいていく。

そしてドアノブが捻られ唸る音がした。




「……………ごめんなさい。」


か細い声はそう言い残すと、ドアが音を立て、ゆっくりと閉められた。

⏰:11/10/29 23:55 📱:Android 🆔:34CuKAt6


#290 [ちか]
一人になった部屋の中で深い溜め息は執拗に響いた。


「これで良かったんだよな…」

この感情の正体も本当はすでに分かり始めている。
ただ気づかないフリをしてるだけ。


おもむろに足下に落ちている皺くちゃの離婚届に目線を落とした。

震えるあの手で、これをどれほど強く握っていたのだろうか。

⏰:11/10/30 10:26 📱:Android 🆔:nfDV2Ves


#291 [ちか]
一人になった部屋の中で深い溜め息は執拗に響いた。


「これで良かったんだよな…」

そう言い聞かせるものの、
心に残る虚無感と蠢く感情。

この感情の正体も本当はすでに分かり始めている。
ただ気づかないフリをしてるだけ。


おもむろに足下に落ちている皺くちゃの離婚届に目線を落とした。

震えるあの手で、これをどれほど強く握っていたのだろうか。

⏰:11/10/30 10:27 📱:Android 🆔:nfDV2Ves


#292 [ちか]
紙を拾い上げまじまじとそれを見つめる。

蠢く感情がじわじわと俺の体を支配していくようだ。
今すぐ追いかけてしまいそうなほど、その感情は昂っていた。

それを無理矢理消し去るように俺は頭を振る。



「…俺は、あの約束を裏切れない。」

────────────────…………
─────────………
─────……

⏰:11/10/30 10:30 📱:Android 🆔:nfDV2Ves


#293 [ちか]
あの日以来、


再び優里は俺の前に現れなくなった。

しかし、以前現れなくなった時とは全く違う。


俺の行動する範囲の一切から姿を見せなくなった。

そんな状態が長く続き、晩秋だった季節はいつの間にか年も明け冬も大詰めの2月に差し掛かろうとしていた。

⏰:11/10/30 11:42 📱:Android 🆔:nfDV2Ves


#294 [ちか]
何度かアイツの病室のすぐ近くまで行ったこともあった。

しかし、
意地なのかプライドなのか、
はたまた約束という名の呪縛からか、
あと一歩というところでいつも引き返していた。


そんなある日の午後。

噂好きの同僚が妙に神妙な顔で俺を尋ね、研究室へやってきた。

⏰:11/10/30 14:19 📱:Android 🆔:nfDV2Ves


#295 [ちか]
「優里くん、すっかり来なくなっちゃいましたねー」

同僚は研究に持ってきた書類ら文献、データを片っ端からデスクに投げ捨てるとつまらなそうな顔でそう言った。

一瞬、体がピクリてと反応を起こしそうになったが平然を装い相槌を打つ。


「そうだな。」

「先生は寂しくないんですか?」

「は?なんで俺が」

窺うような目線を寄越す同僚を冷たくあしらう。

「だってあれだけ毎日騒ぎに来てたのが急にパッタリ来なくなると、はじめはうるさいなーって思ってたのに、なんか物足りなくなりません?」

「まぁ、たしかに。」

寂しくないといえば嘘になる。

⏰:11/10/30 15:06 📱:Android 🆔:nfDV2Ves


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