漆黒の夜に君と。V[BL]
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#101 [ちか]
しかし動こうにも、体がそれを許さない。
足は地面から離れないし、まともに目を開くことも叫ぶことも出来なかった。
死ぬかも知れない。
そう思ったその瞬間。
「危ないっ!!!」
:11/10/14 17:48
:Android
:0c0hhoR2
#102 [ちか]
そんな声が聞こえた時にはもう何か分からない浮遊感を感じていた。
その直後に身体中に痛みが走る。
どうやらアスファルトに叩きつけられたようだ。
俺…死んだのか?
しかし確かに痛みはある。
死んでも痛みって感じるのだろうか。
そんなことを意識が途切れそうになりながら思う。
それにしても体が重い…
「って〜…、危ないだろうが!!お前目ついてんのか?!どう見ても赤だろ!!」
え?
:11/10/14 17:54
:Android
:0c0hhoR2
#103 [ちか]
よく見ると、俺の上に男が覆い被さっている。
俺助けられたのか。
ていうかこの声、さっきの…
「聞こえてんのか?!おい!!」
あー、ダメだ
「ちょ、お前、顔真っ青だぞ!?おい、しっかりしろよ!!」
もう、
「安心しろ、俺は医者だ…――っ!!」
無理。
:11/10/14 18:26
:Android
:0c0hhoR2
#104 [ちか]
そこで意識は途切れた。
ただなぜか頭に鮮明に残っている。
その男の顔と声が。
.
:11/10/14 19:16
:Android
:0c0hhoR2
#105 [ちか]
目が覚めると、見覚えのある天井があった。
隣には…――
「あ、起きた!もう、いい加減にしてください!!」
いつもの外人看護婦。
:11/10/14 19:42
:Android
:0c0hhoR2
#106 [ちか]
「そりゃそうか。」
何を考えてたんだ、俺。
思わず乾いた笑いが零れた。
「なんですか?!ちゃんと話聞いて…っ」
「聞いてる、聞いてる。」
適当に相づちを打ったが、看護婦は納得できない様子でまだ怒っている。
それにしても、
隣にそいつが居たからってどうするつもりだったのか。
何に一瞬期待したのか。
その時はさっぱり分からなかった。
:11/10/14 19:49
:Android
:0c0hhoR2
#107 [ちか]
だけど、
「そう言えば…」
看護婦の言ったその一言は
「さっき君を運んできてくれた方、」
俺の心臓をドクンと跳ねさせた。
「病院(ウチ)に日本から研究で来たお医者さんみたいで今、隣の病棟に…って、ちょっと!!!!」
そして最後まで聞くまでに走り出していた。
:11/10/14 20:08
:Android
:0c0hhoR2
#108 [ちか]
もう看護婦の制止なんて聞こえなかった。
ただ長い廊下を走って、
走って
走って。
息が切れそうになった頃、
「居た…。」
やっと見つけたそいつの姿を見た瞬間、分かったんだ。
これは恋だって。
:11/10/14 20:17
:Android
:0c0hhoR2
#109 [ちか]
だから
「だからこれは恋なんだ。」
それから毎日毎日こうやって、
気持ちを伝えに来ている。
なのになんでこの男はそれを、
「安心しろそれは恋じゃない、それは気のせいだ。」
はぐらかすんだ。
:11/10/14 20:38
:Android
:0c0hhoR2
#110 [ちか]
― 陽平side. ―
ヒトメボレ…。
まさかこの歳になって、
そんな言葉を聞かされるとは。
「安心しろそれは恋じゃない、気のせいだ。」
はやく正気に戻してやらないと。
:11/10/14 20:49
:Android
:0c0hhoR2
#111 [ちか]
しかし俺のそんな努力はむなしく、さらにこいつの神経を逆なでするだけだったようだ。
「だから違うっつってんだろーが!!!何回言ったら分かんだよ、このバカ医者!」
それが好きな相手に言う言葉なのか。
思わず顔がひきつりそうになる。
まったく、この手のタイプは正直かなり苦手だ。
「いいからとっとと帰れ。俺は研究の続きがしたいんだ。」
できれば極力関わりたくない。
:11/10/14 20:55
:Android
:0c0hhoR2
#112 [ちか]
「だから返事くれるまで帰らないって…」
押し問答になりかけていたその時、研究室のドアが開いた。
「すいません、うちの患者がまた来てしまって!」
助かった。
ちょうど看護婦のお迎えだ。
溜め息が安堵の息に変わる。
:11/10/14 21:02
:Android
:0c0hhoR2
#113 [ちか]
「いやだ、離せよ!!」
「いいから来なさい!!」
そんな会話と共に、嵐のようなソレは去っていった。
再びドアがバタンと閉まる。
「…はぁ。」
あれが理由なら、助けなければ良かった。
そう思うのは医者として最低だろうか。
そんなことを思いながら、
煙草に火をつけた。
:11/10/14 22:25
:Android
:0c0hhoR2
#114 [ちか]
肺に煙が入ってくる感覚が、
心地良い。
もう一度吸い、そして吐く。
濁った白煙が浮かんで消えた。
暫くソレを味わったあと、
散らかった机の上からおもむろに一枚の紙を取り出した。
“離婚届”
そう記されたその紙には、すでに片方の枠に名前が記入されている。
「俺はもう誰も好きになれないんだよ。」
その紙を眺めて、独り言のように呟いた。
………――――――
……―――――
…―――
:11/10/14 23:26
:Android
:0c0hhoR2
#115 [ちか]
:11/10/14 23:32
:Android
:0c0hhoR2
#116 [ちか]
― 優里side. ―
むかつく。
むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつく!!!!!
「なんで分かんねえんだよ、あのバカヤロー!!」
「廊下では静かに!!」
「うるせー!!」
黒羽優里(16)、
ただいま病室に強制送還中。
:11/10/15 08:35
:Android
:GBumr9Qk
#117 [ちか]
「今日こそ返事聞くつもりだったのに邪魔しに来んなよ。」
ギロリと俺は看護婦を睨んだ。
しかし、さすがは長年俺の担当をしているだけある。そんな睨みに怯む様子は一切ない。
むしろ、
「あなたが先生の研究邪魔してるでしょうが。」
なんて揚げ足を拾ってくるくらい。
:11/10/15 12:54
:Android
:GBumr9Qk
#118 [ちか]
「うっせ。」
これ以上揚げ足を拾われるのも気分が悪いから、反抗は控え目にしておく。
そんな調節も、この歳になって多少するようになった。
そんなことより問題は、
あいつが“返事”をくれないこと。
:11/10/15 12:56
:Android
:GBumr9Qk
#119 [ちか]
気のせいだの、からかうなだの、そんなことの一点張りで、“コレ”と言える決め手をあいつは一度も言ってきたことがない。
「振るなら振ればいいのに。」
思わず心の中の声が漏れてしまった。
慌てて片手で口を塞いだが、もうすでに遅い。
看護婦の耳にはしっかりと届いていたみたいだ。
「それが先生の優しさなんじゃない。」
看護婦は特に興味もなさそうに呟くが、それは俺にとって受け入れたくない言葉だった。
優しさ。
そんなもの、俺には同情にしか聞こえない。
:11/10/15 13:03
:Android
:GBumr9Qk
#120 [ちか]
イライラする。
まさにあの曖昧な返事があいつの優しさだと言うなら、俺はそんなの…―――
ちょうど検査室の前に到着し、
看護婦は去り際に忠告のような雰囲気で口を開いた。
「まぁ、でもあんまり困らせちゃだめよ。あの先生、ご結婚されてるらしいから。」
:11/10/15 13:11
:Android
:GBumr9Qk
#121 [ちか]
「え…」
結婚…――
頭の中でグルグルとその単語が回る。
「そういうことだから、面白半分でからかっちゃだめよ。」
捨て台詞のようにそう釘を刺して、看護婦は去っていった。
「結婚…」
口に出してみると、余計に胸が痛んだ。
―――……………
――…………
―………
:11/10/15 13:58
:Android
:GBumr9Qk
#122 [ちか]
― 陽平side. ―
「ご結婚されてるのに研究のためにカナダへ、なんて奥様は反対されなかったんですか?」
どこから漏れたのか、
交流がてら一緒に昼食をとっていた医者らにふいにそんなことを聞かれた。
「……ええ、まぁ。」
俺は曖昧な相槌を打つ。
反対どころかむしろ離婚届まで押し付けられた、なんてなかなか言えたもんじゃない。
:11/10/15 14:16
:Android
:GBumr9Qk
#123 [ちか]
「いい奥さんですねー!僕もそんな相手と結婚したいなぁ。」
「あは…ははは…」
「やっぱり先生みたいに優秀で外見もカッコいいと、奥さんも素敵なんですね!」
「いや、そんな……、あはは…」
勝手に盛り上がるのは結構だが、
残念ながら俺はそんな円満な結婚生活を送った覚えがない。
まぁ、
すべて俺が悪いんだが。
:11/10/15 14:52
:Android
:GBumr9Qk
#124 [ちか]
離婚届を渡されたのは、日本を発つ前日の夜だった。
…………―――――
………――――
……―――
「離婚?」
それはまさに不意討ち、という言葉が丁度合うようなタイミングだった。
「…そう、別れてほしいの。」
荷造りも終えてソファで一息ついていた矢先の申し出に俺は驚いた。
吸いかけの煙草を灰皿に押し付ける。
「向こう(カナダ)に行くのが原因か?」
頭の中は酷く混乱しているはずなのに、そのトーンは至って冷静な自分に少し驚く。
:11/10/15 15:12
:Android
:GBumr9Qk
#125 [ちか]
もともと妻は、旦那に頼るようなタイプではなく、自立心の高い性格だったから、
「そんなんじゃないわ。」
この質問が的外れだと言うことは分かっていた。
“なんで”
その言葉が出てこなかった代わりに、そんな質問を投げてしまったのだ。
妻は、呆れたように笑った。
色目無しにそんな妻は美しいと思う。
「…そんなんじゃないのよ。もう、私達潮時だと思ったの。」
潮時…―――
たしかにそうかも知れない
なんて納得してしまったのは、やっぱり俺が妻を愛していなかったからだろうか。
:11/10/15 15:26
:Android
:GBumr9Qk
#126 [ちか]
「それにね、私好きな人が出来たの。……あなたと違って、私のことをちゃんと見てくれる人よ。」
そこまで聞いてやっと、妻の言いたいことが分かった。
一瞬目を見開いて驚いたが、徐々にその事実が体に溶け込んでくる。
ああ、そうか。
お前は気づいてたんだな。
もう遅いかも知れないが、俺は、お前のそういうハッキリしたところ、好きだったよ。
内心でそう呟きながら、潰れた吸殻に目を向ける。
:11/10/15 23:01
:Android
:GBumr9Qk
#127 [ちか]
「でもね、」
顔は見えないが、その声は涙を堪えているように震えていた。
見上げることが出来ない。
いや、今思えば、どんな顔で妻を見たら良いのか分からなかった、と言った方が正しかったかも知れない。
「あたし、あなたのこと好きだったのよ。父が院長、そしてあなたの上司で、こうやって結婚したけど、そんなことが無くてもあたしは…、」
ごめん。
「本当に愛してた。」
ごめん。
「あなたは、あたしのこと一度でも愛してくれたことあった…?」
そんなことをわざわざお前の口から言わせて、
本当に……ごめん。
:11/10/15 23:12
:Android
:GBumr9Qk
#128 [ちか]
結局それ以上俺は何も言えなかった。
すまない、と言えばそれはさらに妻を傷つけると思ったから。
それ以上、何も言えなかったんだ。
自業自得だ。
俺が、
向き合わなかったから、
これはきっと当然の報いだったんだ。
だけど俺は、
:11/10/15 23:24
:Android
:GBumr9Qk
#129 [ちか]
カナダ(こっち)に来た今も、
俺は離婚届(コレ)に自分の名前を書けずにいる。
あの約束が
どうしてもひっかかって。
目を閉じれば、
今でも色褪せることなく頭の中で甦る。
『先生はちゃんと素敵な人と幸せになって。』
その言葉と精一杯の笑顔が。
:11/10/15 23:29
:Android
:GBumr9Qk
#130 [ちか]
そういう経緯で、
今俺は妻と別居状態にある。
もともと妻の父がうちの病院の院長で、俺はそのお気に入り。
紹介したのが院長本人なだけあって、院長は、形式上男を作って出ていった娘が後ろめたいのか、執拗に俺を優遇してくれた。
おかげさまで、
カナダでの研究費用もタダ。
ありがたいっちゃ、ありがたいが、
それはそれで荷が重い。
:11/10/15 23:37
:Android
:GBumr9Qk
#131 [ちか]
そんな矢先、
研究で世話になっている病院の患者にいきなり告白された。
それも、
14歳も年下の。
しかも、
「男」に。
:11/10/15 23:55
:PC/0
:O7q2J.UE
#132 [ちか]
好きだと宣言されてから一週間、そいつはうちの研究室に毎日来てはヒトメボレだの恋だのほざきにきやがる。
まったく、うんざりだ。
もちろん、告白が2日3日と続いた頃、上の人間に助けを求めた。
男に告白されて研究が進まない、どうにかしてくれと。
:11/10/16 00:58
:Android
:5cqVBQH2
#133 [ちか]
しかし、返ってきた返事は俺の期待をあっさりと裏切った。
―――――…………
―――…………
――……
「いやー、どうにかしてやりたいのは山々なんだが、彼はうちの病院でも大事な患者で…」
「大事な患者?!なんですか、それ!!」
「だから…、その、つまりだな、うちに毎年寄付を…してくださる企業のご子息様なんだよ…。」
俺はその言いにくそうにする外科部長を見ながら悟った。
金貰ってる分、手荒な扱いが出来ないってわけか。
俺は諦めきれない気持ちを溜め息にして吐き出した。
:11/10/16 01:30
:Android
:5cqVBQH2
#134 [ちか]
そんな俺を見て、外科部長も苦笑い。
「まぁ、一時の気の迷いというやつだろ。彼はもうすぐ大きな手術があるからな。それが終わるまで、刺激しないように適度に相手してやってくれよ。」
「は、はい……。」
―――――……………
――――…………
――…………
そんな風に頼まれると俺も一室を借りて研究させてもらってる身である以上、さらにまくし立てて苦情を言うことは出来なかった。
「まったく神様っつーのは、意地悪なんだな…。」
心の声もここまで来ると、吐かずにはいられない。
:11/10/16 01:40
:Android
:5cqVBQH2
#135 [ちか]
外科部長からも適度に相手してやってくれと言われてるから、それ以来邪険に扱うことも出来ず。
心臓を患ってるみたいだから、万が一ショックで発作…なんてことがないように、遠回しに諭している。
これが一番良い方法だろう。
って…
「これじゃまるで、俺がガキの告白に本気になってるみたいじゃねえか!!!」
:11/10/16 09:30
:Android
:5cqVBQH2
#136 [ちか]
「あ…」
イライラしすぎて、怒気の混ざった声が感情に勢いを任せて出てしまった。
思わず、頭を乱雑に掻く。
今は結婚願望の強い同僚達との昼食を終え、俺は中庭の隅で一人、一服中なのだが。
「あれ?」
もうハコが空だ。
中身の無いそれはまるで自分のようで。
力任せにソレを握り潰した。
「医者がヘビーなんて説得力ねえな。」
そう呟いて、最後の一本を大事に味わった。
:11/10/16 09:33
:Android
:5cqVBQH2
#137 [ちか]
( げ。)
消灯時間も過ぎた頃、
用事があって隣の病棟に来た。
隣の病棟とは
「『げ、会っちまった』みたいな顔してんじゃねーよ。」
あのガキの城。
:11/10/16 10:08
:Android
:5cqVBQH2
#138 [ちか]
ナースステーションに寄る際、必ず前を通るこの共同区画スペース。
消灯時間も過ぎていたので特に警戒もせずに来てしまったが、忘れていた。
「なんでウチに来てんだよ。」
ここはヤツにとって、無法地帯なんだということを。
区画スペースのソファに我が物顔で座り、何やら本読んでいたようだ。
カバーがかけられていて、その中身までは分からないが。
しかし、
:11/10/16 10:16
:Android
:5cqVBQH2
#139 [ちか]
相変わらず目付き悪いな。
でもちゃんと見れば、
顔も綺麗で可愛いし、
喋りさえしなけりゃモテるだろうに。
見た目は少し派手だが。
って!!
だから、
なんで俺がコイツをそういう目で見てるんだよ!?!?
その気?!
その気なのか?!俺!!
いや、違う!
俺はゲイじゃない!!
断じてゲイなんなじゃない!!
「なに一人で悶えてんだよ、気持ちわり。」
「え?」
あ、俺心の声になってなかった?
:11/10/16 10:21
:Android
:5cqVBQH2
#140 [ちか]
俺は咳払いをして、混乱していた頭を落ち着かせる。
「お前には関係ない。ていうか、消灯時間とっくに過ぎてんぞ。はよ寝れ。」
至って自然に。
且つ、突き放すような口調を心がけて。
「……………り。」
「は?」
「お前じゃねえ、優里だっつってんだよ!!」
こいつはそんな俺の配慮なんて関係ないみたいだ。
:11/10/16 11:52
:Android
:5cqVBQH2
#141 [ちか]
「名前くらい知ってる。」
敢えて呼ばなかっただけだ。
「………///」
なのになんでこいつは
「………知ってるなら、最初から名前で呼べ…。//」
それだけでこんな顔するんだ。
:11/10/16 11:55
:Android
:5cqVBQH2
#142 [ちか]
こいつと喋ってると調子が狂う。
だからあんまり関わりたくないんだ。
「はいはい、優里くん。」
「くん付けとかキモい。」
イラッ
オジサン、キモいって言われるとけっこう気づつくんだけど。
:11/10/16 11:58
:Android
:5cqVBQH2
#143 [ちか]
少し苛立った俺は、
これ以上ここに長居する必要もないと思い、ナースステーションの方へ再び足を向けた。
「……あ、あのっ、」
「なに。」
そんな俺の右手を咄嗟に掴む優里クン。
意味がわからない。
:11/10/16 12:26
:Android
:5cqVBQH2
#144 [ちか]
なかなか口を開かないそいつに苛立ちは募るばかり。
そもそも俺はそんな我慢強い人間じゃないんだよ。
離せと口には出さずに、振り払うように手を引いた。
しかしその手は掴まれたまま。
痺れを切らして、口を開く。
「用事無いなら離し…、」
「結婚…!!…してるってホントなんけ…?」
:11/10/16 12:41
:Android
:5cqVBQH2
#145 [ちか]
※訂正
>>139なんなじゃない→×
なんかじゃない→○
>>142気づつく→×
傷つく →○
>>144ホントなんけ→×
ホントなわけ→○
すいませんm(__)m
:11/10/16 13:23
:Android
:5cqVBQH2
#146 [ちか]
ああ、もうこいつの耳にも入ってたのか。
そんなことをまるで他人事のように思った。
振り向くと頭一個分くらい下に顔がある。
目はやっぱり本気っぽい。
身長差のせいで自然と見下ろす側と見上げる側に役割は分担されるわけだが、このアングルで見ると心なしかガキ臭い顔も一瞬可愛く見えた。
医者にとって子供の患者とはそういうものだ。
そういうものなんだ、きっと。
頭の隅で蠢くモヤモヤした感情を消し去るように、自分へ言い聞かせる。
そして、
突き放す。
:11/10/16 14:06
:Android
:5cqVBQH2
#147 [ちか]
「ああ、そうだ。」
いい機会じゃないか。
既婚者の男相手じゃ、さすがに暇潰しにもならないだろう。
さっさとこんなお遊びはやめさせるべきだ。
俺が肯定すると、みるみる優里クンの表情(カオ)は複雑になっていった。
そして不安な目で俺を覗きこむ。
「…う、上手くいってるのか…?」
早く正気戻してやらないと。
たとえ嘘をついてでも。
「そりゃもう、ラブラブ。」
嘘をついてでも。
:11/10/16 14:23
:Android
:5cqVBQH2
#148 [ちか]
ピリリリリリ..ピリリリリリ..
ちょうどその時、白衣のポケットの中で電子音が鳴った。
ポケットから携帯を掴み出し、ディスプレイを見る。
「…お、ちょうど嫁からだ。」
「…………。」
通話ボタンを押す際にチラリと見えた表情は俺の目に悲しげに映った。
捕まれていた手はいつの間にか自由になっている。
これでいい。これでいいんだ。
「もしもし、おー、マイハニー。そっちは朝?そうか、そうか。うんうん、俺も会いたいよー」
俺はそのままそいつから離れるようにして足早にそこを出た。
―――――………
―――………
:11/10/16 14:42
:Android
:5cqVBQH2
#149 [ちか]
― 優里side. ―
ああ、そうだ。
そりゃもう、ラブラブ。
あいつの言った言葉が何度も何度も頭をループする。
:11/10/16 14:56
:Android
:5cqVBQH2
#150 [ちか]
俺は去っていく後ろ姿を追いかけることすら出来なかった。
「やっぱりしてたんだ…」
結婚。…――
昼より胸の締め付けは一層強くなった。
だって
愛し合っている人が居るってことは、
入り込む隙間がないってことで。
兄貴と冥のように。
:11/10/16 15:32
:Android
:5cqVBQH2
#151 [ちか]
兄貴は兄貴。
冥は良い奴。
そんなことは分かってはいるものの、やっぱり大好きだった人を奪われるのは少しトラウマだった。
相手がいる人間を素直に好きでいることは、それだけ俺にとって難しいことだった。
:11/10/17 08:14
:Android
:PYlVZMCg
#152 [ちか]
「何してるの?」
呆然と立ち尽くす俺に背後から誰かが声を掛けてきた。
「あ?」
俺に声をかけてくる奴が居るなんて珍しいな。
新人か?
警戒心全開の顔で振り向くと、そこに立っていたのは金髪の男。
「君、ユーリくんだよね。」
俺とは違って天然のブロンドヘアを持ったその男はたしか見覚えがあった。
:11/10/17 08:19
:Android
:PYlVZMCg
#153 [ちか]
ああ、そうだ
コイツたしか‥
「俺の向かいの病室の、」
「ケン。―って言うんだ。」
俺相手ににっこり微笑むなんてますます珍しい。
ケン。
たしかにそんな名前だった。
スラッとした長身で外人特有の髪色と目、どっかのモデルなんじゃないかと思うほどその顔は外人という枠を省いても整っていた。
:11/10/17 08:26
:Android
:PYlVZMCg
#154 [ちか]
「なんか用?」
いつからなのか、患者同士で馴れ合うなんてことはしたくなくて敢えて頑なな態度で接するクセがついてしまった。
大抵の人間はそれ以上俺に関わってこない。
「いや、別に?でも俺、前から君と話してみたかったんだ。」
…はずなんだけど。
:11/10/17 12:41
:Android
:PYlVZMCg
#155 [ちか]
「隣いい?」
ケンと名乗るそいつはそう言って俺の隣にあったソファに腰をおろした。
「良いとか言ってないし。」
そう返しつつ、俺もソファに腰かける。
いつもならそんなことしないのに。
今日は一人になりたくなくて、つい…
「あのさ、」
つい口を開いてしまった。
「好きな人に好きな人が居たら、どうする?」…―――
:11/10/17 12:50
:Android
:PYlVZMCg
#156 [ちか]
― 陽平side. ―
もうここまで来れば俺の声も聞こえないだろう。
足を止めたのはもと居た七階と八階を繋ぐ階段の踊り場。
安堵の息を漏らす暇もなく、受話器から声が聞こえた。
『なにがマイハニーよ、悪いものでも食べたの?』
「相変わらずだな」
電話の主は妻で、ざっくりと切り込んでくるような口調は相変わらずだとふいに笑いが出た。
:11/10/17 16:18
:Android
:PYlVZMCg
#157 [ちか]
そんな俺とは対称に、至って真面目に淡々と話す妻。
『そんなことより離婚届、まだ届かないんだけど。』
やっぱりその電話か。
予想はしていた。
わざわざ浮気までして別れた夫に電話なんて、はじめから目的が限られている。
「ごめん、まだ書けてない。」
俺がそう返すと電話ごしでその口調から、妻は怪訝な顔が思い浮かんだ。
『それは大切な人との約束ってやつが原因?』
「勘が鋭い妻を持つといろいろキツいな。」
いつだったか一度だけした夫婦喧嘩の中で、あの約束の話をしたがさすがに覚えているとは思っていなかったから、痛いところをつかれたと声が弱った。
:11/10/17 16:26
:Android
:PYlVZMCg
#158 [ちか]
「ああ。その通りだ。」
――――………
―――……
喧嘩の原因は1つのアクセサリーだった。
「これなに?」
そう言って妻が突きつけてきたのは引き出しの名かにしまっていたはずの古いデザインをしたネックレス。
「お前、ヒトの引き出しを…」
「掃除のときにたまたまよ。あなたの仕事で使う書類が出しっぱなしになってたからしまおうと思ってあけたの。そしたら、その中にコレがあった。」
突きつけられたネックレスは紛れもなく俺のもので、俺は言い訳する気にもなれず頷いた。
「それは大切な人の形見だ。返せ。」
:11/10/17 16:44
:Android
:PYlVZMCg
#159 [なあ
]
一気によみました
読んでたら濡れちゃいました//
頑張ってください
この小説すごいすきです

:11/10/17 18:26
:P02B
:6UhE0Yw.
#160 [ちか]
>>159 なあさま.
十話のところのことですかね(*^^*)笑
ありがとうございます、頑張ります!
感想板に各キャラクターのプロフィール貼ってあるので、よかったら感想板にも遊びに来てくださいね♪
:11/10/17 21:42
:Android
:PYlVZMCg
#161 [ちか]
>>158続き
しかし、それでは妻は納得いかなかったようでそのネックレスを俺の手元に戻そうとしない。
こういう時、女の勘というやつは厄介だ。
出来るだけ説明は避けたかったのに。
「大切な人って?」
説明するほどに、あの日、あの頃の記憶がフラッシュバックする。
「…………研修医の頃、惚れてた人だよ。」
色褪せることなく、鮮明に。
:11/10/17 21:47
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:PYlVZMCg
#162 [ちか]
「亡くなる直前に渡されたんだ。“これ持ってたらきっと幸せになれるから”って言って。約束したんだよ、きっと幸せになるって。」
『先生はちゃんと素敵な人と幸せになって』
その約束と共に渡されたネックレス。
見るたびに胸が苦しくなって、
何年か前に引き出しにしまったきり見ないようにしていた。
「……誤解は解けたかな?」
まさかこんな形でまた見ることになるとはな。
妻は、俯いたまま握っていたソレを俺の手の中に戻した。
それが俺達が結婚生活のうちでした最初で最後の喧嘩だった。
:11/10/17 21:57
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:PYlVZMCg
#163 [ちか]
『……私、あの頃からその人に嫉妬してたわ。いつでもあなたが見てるのは、私じゃなくてその人だったもの。』
思い出に浸っている途中、妻がそんなことを言った。
きっと同じことを思い出していたのだろう。
俺は何も言えずにただ黙りこんだ。
『私が一番悲しかったのは、あなたの中にいつも私の居場所が無かったことよ。』
決して未練たらしさなんて感じさせない淡々とした口調で言うその言葉は俺の胸を痛めた。
これは罪悪感なんだろうか。
:11/10/17 22:05
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:PYlVZMCg
#164 [ちか]
『でもあなたの約束とあたしの都合は関係ないわ。早く書いてこっちに送ってね。』
「ああ。」
じゃあ、と言う声が聞こえて通話は切れた。
あなたの中にいつも私の居場所が無かったことよ。…――
「それは少し違うんだけどな。」
そう呟いて俺は壁にもたれこんだ。
正確には、
居場所が無かったんじゃない。
作らなかったんだ。
もう自分の中に誰かを留めるのは、あの時からやめた。
:11/10/17 22:10
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:PYlVZMCg
#165 [ちか]
自分の中に誰かの居場所を作れば、
その人が居なくなったとき
それは居場所じゃなく、穴になる。
俺は我慢強い人間じゃない。
その穴を塞ぐ勇気すら無いんだ。
そうやって穴を塞いで彼女を忘れようとすることは彼女との約束、いや彼女自身を、裏切る気がして。
ただ約束を守ることで
それ以外を拒絶することで
自分を保ってきた。
だから、優里(アイツ)みたいに無鉄砲に人の心の中に入ってくる人間は嫌いなんだ。
:11/10/18 00:53
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:QHFRTQno
#166 [ちか]
なのに何故だろう。
はじめて好きだと言われてから
一週間。
毎日毎日言われるごとに
心の中が揺さぶられるような感覚になる。
まさか…
「………そんなワケないよな。」
もたれている壁が冷たくて、暫くそうするうちに苛立っていた感情もいつの間にか落ち着いていた。
:11/10/18 00:57
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:QHFRTQno
#167 [ちか]
―――――……あの夜から2週間と3日。
みなさん、
優里クンは
俺の研究室に来なくなりました。
:11/10/18 02:26
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:QHFRTQno
#168 [ちか]
チラリとドアに目をやる。
ドアは開くどころか外に人が居る気配もない。
あれだけ毎日暇さえあれば時間を問わず押し掛けて来ていたというのに、それがこの2週間と少しの間、パッタリと途絶えた。
今日に至ってはココに出入りする者すら居ない。
そんなドアを見つめているうちに、無意識に溜め息と近い独り言が漏れた。
「…勝手な奴。」
…………え?
あれ、俺、今、なんて?
:11/10/18 02:41
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:QHFRTQno
#169 [ちか]
“勝手な奴”?
「なな、なに言ってんだ、俺!!!」
思わず自分の片頬にビンタを喰らわし、正気を取り戻そうとする。
だって…
勝手だろうがなんだろうが来なくなったならそれでいいじゃねえか。
:11/10/18 08:12
:Android
:QHFRTQno
#170 [ちか]
いちいち「今日から行きません」「はい、分かりました」なんてやり取りでも欲しかったのか?
今どき中学生でもそんなん会話ねえっつーの!!
バカか、俺は!
あれだ、急に惚れただのはれただの言われて焦ってるだけで!!
え、焦ってる…?
だーかーらーぁ、
なんで俺が14も下のガキごときの告白マジにして焦ってんだよおおおぉぉぉおおお!!!!!!
:11/10/18 08:20
:Android
:QHFRTQno
#171 [ちか]
「頭割れそ…。」
痛む頭を片手で抱え、項垂れる。
ああ、頭が重い…
なんでせっかく研究に集中できる環境になったっていうのに、よりよってアイツの顔ばっかり浮かんでくるんだ。
「クソ…ッ」
考えれば考えるほど募る苛立ちに愛想がつきて、俺は心を落ち着かせようとタバコを持ってベランダに出た。
:11/10/18 08:25
:Android
:QHFRTQno
#172 [ちか]
ライターの火がなかなかつかず、さらに苛立ちは上っていく。
「あ〜、もう…ッ!!なんなんだよ、チクショー…」
どいつもこいつも…
これ以上俺を乱さないでくれ。
苛立ちを抑える余裕もないまま何度かカチカチとライターをいじり、漸く火のついたライターにタバコを近づけた時、ベランダの柵の間から2つの人影が見えた。
「あれは、…」
見覚えのあるソレに目を細め焦点を合わせる。
ピントがあった時、それが2週間ぶりの優里の姿だと分かった。
しかしもう一人の外人には見覚えがない。
「誰だあいつ?」
:11/10/18 16:01
:Android
:QHFRTQno
#173 [ちか]
記憶を辿ってみるが、やはり当てはまる記憶はない。
しかしなんだかじゃれあってやたらと楽しそうにしている。
同じ病棟の友達ってとこか?
…いや、それにしては密着しすぎじゃないか?
すぐに目を離せば良いものの、なぜか沸々とした感情が沸き上がって二人の姿から目が離せない。
暫くその姿をただ呆然と見ていたが、ふいに我に戻った俺は捨てるにはまだ少し勿体無い吸殻を足で踏み潰し、室内に戻ろうとした。
その時。
:11/10/18 16:12
:Android
:QHFRTQno
#174 [ちか]
「なっ…」
一瞬二人の影が重なった。
そう、それはまるで、
「キス…」
しているように見えた。
募る感情が頭の中、全身を支配していく。
思わずその姿から目をそらした。
言い表しのできないモヤモヤが体を重くしていく。
そしてふいに何かプツンと切れる音がした。
「男なら誰でもよかったってことか。」
お遊びは終わり。
そういうことだ。
そうして俺は納得したように笑って音と共に消えた何かをベランダに残し、室内に戻った。……――――
:11/10/18 16:31
:Android
:QHFRTQno
#175 [ちか]
― 優里side.―
あの夜から2週間と3日。
俺は神崎の研究室に行くのをやめた。
なんでだって?
だって、こいつが…
「押したら引くは常識だよ?」
なんて言うから。
:11/10/19 13:13
:Android
:QrYx6tI6
#176 [ちか]
あの夜、あの後、
俺は神崎とのことをケンに話した。
なぜあんなにもあっさりと話せてしまったのかは分からない。
だけど、ケンに話しやすいオーラのようなものがあったのは確かだった。
「別に諦めないよ、俺なら」
それが、あの夜聞いた最初の質問の返事だった。
:11/10/19 13:17
:Android
:QrYx6tI6
#177 [ちか]
「だって、そんなんで諦めれるならはじめから好きになってなくない?」
顔は笑顔だけど、核心をつくその言葉に、俺はコクコクと頷いた。
まるで、自分の心の中をすっかり見透かされているようで、そうするしか出来なかったのだ。
暫く、これまでの自分の特攻ぶりとそれに対しての反応を話し、出た結論が、
“押してダメなら 引いてみる”
だったのだ。
:11/10/20 14:28
:Android
:Aayw5T/s
#178 [ちか]
「だって、そんなんで諦めれるならはじめから好きになってなくない?」
顔は笑顔だけど、核心をつくその言葉に、俺はコクコクと頷いた。
まるで、自分の心の中をすっかり見透かされているようで、そうするしか出来なかったのだ。
暫く、これまでの自分の特攻ぶりとそれに対しての反応を話し、出た結論が、
“押してダメなら 引いてみる”
だったのだ。
:11/10/20 14:31
:Android
:Aayw5T/s
#179 [ちか]
それからその“引く”が始まって今日まで2週間と3日。
効果は、
「無い気がするんだけど。」
「え?何が?」
:11/10/20 14:39
:Android
:Aayw5T/s
#180 [ちか]
「何って…」
ここは昼下がりの中庭。
最近はケンとよくここに来てはベンチで話すことが多くなった。
ケン曰く、ここはお気に入りの場所らしい。
ケンは俺が語尾を濁すのを悟って、思い出したように口を開いた。
「あー、あの先生のことな!」
「うん…」
力なく頷き、あからさまに落ち込んだ顔をする俺に
「だーい丈夫だって!」
これでもかと言うほどキラキラした笑顔でケンは笑う。
こいつの自信はどこから来ているんだろうか…
:11/10/20 14:49
:Android
:Aayw5T/s
#181 [ちか]
「まだ2週間じゃん。これからこれから!な?」
そう言って、ケンはぐいっと俺の肩を抱きよせる。
その手が大きくて、俺は改めて自分の華奢さを思い知った気がした。
そんなケンを見ているうちに妬みに近い苛立ちが起こり、強引にその手をはらう。
それでもケンは何か気にする様子もなくニコニコと、あのマンガがどうだ、だの、あの曜日の飯が不味いだの、そんな話をペラペラと話している。
「はぁ…」
そんなケンの話を耳に入れつつ、無意識に思わず溜め息が溢れた。
:11/10/20 14:56
:Android
:Aayw5T/s
#182 [ちか]
その時。
常に笑顔を絶やさないケンの顔が一瞬、鋭い目付きと共に冷淡な顔になった。
その目線は俺の頭上を少し上の方にある。
「ケン?どうかして…」
不思議に思った俺は、その目線を辿ろうと振り返ろうとした。
しかし、
「あ、ちょっと待って、ユーリ。」
それはあっけなく制止される。
:11/10/20 15:07
:Android
:Aayw5T/s
#183 [ちか]
「髪になんかついてるよ」
「え、マジ?」
「とってあげるから、じっとして。」
髪に触れられる感覚に一瞬戸惑い、俺は体を縮めた。
ケンの顔がすぐ近くにある。
その近さに思わず瞬きすら忘れそうだった。
そんな俺を見て、ケンはクスリと笑う。
「はい、取れた。もう力抜いていいよ。」
やっぱり見透かされてる!!
そう思った瞬間、なんだか恥ずかしくなり、急に顔が赤くなった。
:11/10/20 15:16
:Android
:Aayw5T/s
#184 [ちか]
「顔、赤いし。可愛いな、ユーリは♪」
「なっ?!赤ねえし!!!///」
「あははは♪」
「笑うな!!!!////」
おかしそうに腹を抱えるケンを見ていると、さっきの冷淡な顔が嘘のように思えた。
俺は思い出したように、さっき目線のあった場所へ振り返ってみる。
が、何もない。
強いて言うなら、ちょうどそこにあったのは並んでいる部屋達の窓とベランダ。
しかし、誰かがいるわけでもなく、静閑な雰囲気だけがそこにあった。
気のせいか…
そう思ってもう一度、ケンの方へ向き直りその顔をまじまじと見た。
:11/10/20 15:29
:Android
:Aayw5T/s
#185 [ちか]
「ん?俺の顔、なんかついてる?」
目をぱちぱちと瞬かせ、俺に問いかけるその顔はやっぱりいつも通り。
気のせいだよな。
とくにそれ以上気にすることもなく、俺は納得したように顔を横に振った。
「いや、なんでもない。」
「そう?なら良かった。」
そうして俺は、微笑みかけるケンにつられて久しぶりに少し笑った気がした。
──────────‥‥‥‥‥
────────‥‥‥‥
:11/10/20 15:35
:Android
:Aayw5T/s
#186 [ちか]
しかし、それから何日経っても
“引く”は“引く”のままだった。
「もう我慢出来ねえっ〜…」
思わず、心の声が口をついて出る。
それもそうだ。
自らが行かなくなると、もともと自分の病棟と神崎の研究室は違う建物なため、会うことがさっぱり無くなってしまったのだから。
「でも、前なら時々こっちにも来てたのに……。」
あの夜からそれすらも無くなった。
痺れを切らした俺は、女々しいとは思いつつも偶然を装って会うために、ナースステーションに近いこの共同区画スペースに入り浸るようになった。
そんなことを始めて、3日。
ついに、
「「あ。」」
神崎と遭遇。
:11/10/21 13:08
:Android
:jLFXF6R2
#187 [ちか]
「あ………っ、の、…え、えっと…―!!」
(何か言わねえと…っ!!なんか、なんか…っ)
頭ではいつも会ったときのための言葉を考え、イメトレを繰り返していたというのに、そんなのは会ってしまえばたちまち無意味なモノとなってしまい、口は空気中の酸素を吸いこむことしか出来ない。
そんな俺を神崎は酷く冷たい目で見つめた。
“何かが違う”
本能的にそう察すると、頭はさらに空回り余計に言葉を詰まらせる。
「…ぐっ、偶然…だなっ!!」
自分を叱咤しそうになる感情を押さえ漸く出たのはそんな気のきかない台詞だった。
:11/10/21 13:43
:Android
:jLFXF6R2
#188 [ちか]
しかし、やっとの思いで出た言葉も会話にはならず、神崎は俺を初めて見るかのように、ただ冷ややかな目で見つめている。
「え……っと、…な、何しにき…、あ!」
なんとか間を繋げようと口を開いたのも束の間、神崎はおもむろに俺から目線を外し、歩き出した。
「な…っ、ちょっと、神崎!!」
そんな神崎を引き留めようと名前を呼んだが、神崎はこっちに見向きもしない。
:11/10/21 18:13
:Android
:jLFXF6R2
#189 [ちか]
「待てって…ッ!!」
咄嗟に、去ろうとする神崎の腕を掴んだ。
その瞬間、
再び冷淡な瞳と向かい合う。
そして乱暴に掴んだ手を振り払われた。
一瞬のことに戸惑い、
俺は振り払われた痛みで痺れる手を擦って、目を見開いた。
見上げた神崎はもはや俺の知っている神崎ではない。
:11/10/21 19:01
:Android
:jLFXF6R2
#190 [ちか]
一瞬が永遠のように感じる。
張りつめる空気に息が詰まりそうだ。
冷たいその目から目が離せずにいると、神崎は突き刺さるような声で言った。
「触んな。」
それは
この上なく冷酷で、俺の心を抉(エグ)った。
:11/10/21 19:11
:Android
:jLFXF6R2
#191 [ちか]
そしてそのまま神崎は振り向きもせずに俺から遠ざかっていく。
「…………ッ、……――っ。」
呼び止めたいのに、
引き留めたいのに、
声が出ない。
声もかけられずにその姿を見つめているうちに、もうその背中は見えなくなっていた。
頬を一筋の水滴が伝う。
そんなただ立ち竦む俺に残されたのは、
振り払われた手の痛みと胸に突き刺さった言葉だけだった。‥‥‥──────
:11/10/21 19:23
:Android
:jLFXF6R2
#192 [ちか]
*
少し休憩( ´`〃) 。。
読んでくれてる方いるのかな( ´`;)
*
:11/10/21 19:41
:Android
:jLFXF6R2
#193 [☆☆☆]
読んでます

かなり面白いです

:11/10/21 21:26
:F05C
:ngvLqfP2
#194 [ちか]
>>193 ☆☆☆さま.
わー( ´`〃)
ありがとうございます!///
そう言ってもらえるとすっごくやる気が出ます( *´`* )がんばろっと!
:11/10/22 12:11
:Android
:FmyfOmCg
#195 [ちか]
>>191続き
― 陽平side.―
「触んな。」
それは自分でも驚くほど、
冷たくて突き刺さるような声だった。
:11/10/22 12:24
:Android
:FmyfOmCg
#196 [ちか]
衝動的に振り払った自分の腕がジンと痺れる。
どれほど強く握られていたのだろう。
一瞬のことに記憶はついていかず、代わりに痛みばかりが腕に残った。
チラリと横目で見ると、
優里は驚いたように自分の手を擦り俺を見上げている。
その顔は酷く怯えていて、
まるで俺が俺じゃなくなっていくみたいだった。
:11/10/22 12:35
:Android
:FmyfOmCg
#197 [ちか]
そんな優里を見てられずに目線を外した俺はその場を立ち去った。
ある程度離れた場所まで来て、振り返ってみる。
追いかけてくる気配はない。
「〜…っ、なんなんだよ…ッ」
力任せに壁を殴る。
拳に鈍い痛みが走るが、そんなことをしたところで胸の中で蠢く感情は消えない。
:11/10/22 12:43
:Android
:FmyfOmCg
#198 [ちか]
優里があの場所に入り浸っていることは、同僚からの噂で聞いていた。
大きな大学病院内とは言え、噂話なんて広まるのはあっという間。
同僚や仲間内の中で、俺への優里の特攻ぶりはすっかり有名になっていた。
─────────………
─────……
「先生、聞きました?優里くんのこと」
「え?いや…」
ふいに優里、という単語を聞かされてドクンと心臓が跳ねる。
あの日二人のキス現場を見てから苛立ちは募るばかりで、俺はその名前を執拗に避るようになったからだ。
できる限り会うことも避けたくて向こうの病棟も行く回数をめっきりと減らした。
なのに、
:11/10/22 13:04
:Android
:FmyfOmCg
#199 [ちか]
「最近、先生のところに来ないと思ったら、偶然装って会うために共同区画のスペース入り浸ってるみたいですよー」
どうしても、その名前を聞くタイミングは必ずあって、俺の苛立ちと動揺を浚(サラ)う。
同僚は面白半分といった調子でそんな話をしてくるが、俺にとってそれは良い迷惑でしかない。
しかし仕事の関係上、そんな噂に振り回されるわけにもいかず隣の病棟に行くことになったのだ。
:11/10/22 13:10
:Android
:FmyfOmCg
#200 [ちか]
そしたら案の定アイツに会って、
見れば見るほど苛立ちが抑えられなくなって。
結果、あんな態度をとってしまった。
「…気安く触ってきやがって」
壁を背に、俺は握られていた腕を思い出したように擦る。
頭の中では何度もあの日の二人の重なった影が浮かぶ。
散々俺を振り回しておきながら、どこぞの男とキスだのなんだの盛りやがって…
「ちょっとはヒトの気持ちも考えろよ。」
ため息のような台詞が口をついた。
:11/10/22 13:16
:Android
:FmyfOmCg
#201 [ちか]
って!!!!!
ヒトの気持ち?
んなもん、ねーよ!!
端からあるわけないだろうが!!!
「あー、俺はまた何を口走ってるんだ…」
思わず自分の混乱ぶりに頭を抱えた。
女でもあるまいし、こんなのただの嫉妬じゃねえか。
俺がそんな感情持つわけがない。
履き違えるな、神崎。
お前は研究を散々妨げられ遊ばれていたことに苛立ってるんだ。
そうだ、そうに違いないんだ。
だから、
「落ち着け、俺…」
言い聞かせるようにそう呟いて、すっかり疲れはてたようにズルズルと壁を伝い座り込んだ。
:11/10/22 13:21
:Android
:FmyfOmCg
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