漆黒の夜に君と。V[BL]
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#261 [ちか]
「違わないだろっ…あんた、俺のこと…!!」

「違う…っ!!」


好きなんかじゃない。
そんなはずない。


再度遮るように口を挟むと、優里はキッと俺を睨み付けた。
しかしそれはすぐにそらされる。
そしてその顔がみるみるうちに赤くなっていった。


「だって、昨日だって…俺に、キ、キス…して…」

⏰:11/10/26 10:50 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#262 [ちか]
俺は頭の中で思い出した昨日を後悔しながら、ため息をつく。

「あれはただの勢いだ。だいたい14も下の、しかも男に本気でそんな感情持つわけ……、」

本気でそんな感情持つわけない。
そう言おうとしたが、噛みつくように優里が俺の話を割いた。


「じゃあ14も下の男に勢いでキス出来んのかよ?!」

「それはっ…」

思わず、また否定の言葉が口をつく。

それは、違う。
そんな言葉を言いかけて飲み込むと、優里は不服そうな顔で俺を見上げた。

「…俺は、あんたのためならなんでも出来る。」

⏰:11/10/26 13:06 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#263 [ちか]
「あんたが本気になってくれるなら、俺はなんでもする…」


そう言って下唇を噛み締める姿に、胸の奥が揺れた。

その瞬間、
また昔の自分がフラッシュバックする。




今のコイツの言葉、あの日の俺にそっくりだ。

⏰:11/10/26 14:59 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#264 [ちか]
まだ研修医だった頃の俺に。
───────────………

そうあれは、俺があいつと出会って、もうすぐ二度目の春を迎える頃だった。


「な、なに言ってんの先生?病人からかわないでよー!あははは…」

あの日、あいつはそうやって俺の告白を受け流した。
まるで俺が優里にそうしたように。

「からかってない。本当にはあんたが好きなんだ。」


そして俺もまた優里がそうしたようにそれを真剣に繰り返して伝えていた。

⏰:11/10/26 15:18 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#265 [ちか]
「か、仮に、先生が本気だったとしてもだよ?あたしと先生は、患者とお医者さんでしょ!立場ってもんが…」

「そんなの関係ない。」

「関係あるんだってば…ッ!!」

もうすぐ桜が咲くその蕾の下で車椅子越しに見たあの背中を俺は一生忘れない。

「もう長くない人間と一緒になったって、先生が不幸なだけだよ…」

あの細い肩も、
震える声も、
無理をした笑顔も。

忘れることなんて出来なかった。

⏰:11/10/26 15:28 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#266 [ちか]
少しヒステリックに叫んだあいつは、それを消し去るように無理して明るい声を取り繕った。

「だ、だから、先生はさ!!もっと違う人と…」

「俺が治す。」

その声が痛々しくてつらくて、
俺は押していた車椅子の取っ手を強く握る。

「もう〜、分かんない人だなぁ、先生はー!あたし余命まで宣告されてるんだよ?そんなこと出来るわけないじゃん。」

あの頃の俺は何も出来ないただの研修医で、
そんな自分が苛立たしくて

「…俺はあんたのためならなんでも出来る。」

出来るはずもないことを本気で言っていた。

⏰:11/10/26 15:39 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#267 [ちか]
「それであんたが治って、本気になってくれるなら、俺はなんでもする。」


いや、
あの頃だって本当は
そんなこと出来ないと分かっていた。


だから、

「あんたが好きだから…。」


車椅子に乗っているあいつの背中を見て
平然を繕う声とは裏腹に
幾つもの水滴が零れたんだ。

⏰:11/10/26 15:46 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#268 [ちか]
今の優里(コイツ)は、まさにあの時の俺にそっくりだ。


出来もしない約束に必死になって
どんどん人の感情の中に踏み込んでいく。


「なんでそこまで…」

「あんたが好きだからだっつってんだろッ!!!!」



それが正しいと、思い込んで。

⏰:11/10/26 15:50 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#269 [ちか]
グイッ!!!…──

プツンと頭の奥で何かが切れた。

それと同時に優里の手を掴んだ俺はそのまま自分の顔の前に優里を引き寄せる。

優里は突然のことに目を白黒させ長い睫毛が何度も空気中を掻いた。


その瞳は美しい漆黒の色をしていて、金色の髪に似つかわしくないと改めて思う。

そんな優里の顎を片手で掴み、顔を強引に上げた。

驚いたその表情(カオ)は青く、若い。

だが、


「な、なにっ…す…?!」


その人の心の中に土足で踏み込んでくることも
若さゆえの過ちであることを

俺が教えてやる。


「お前、俺のためならなんでも出来るって言ったよな?なら、俺を本気にさせてみろ。」

⏰:11/10/26 16:43 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


#270 [ちか]
そう言って強引に口づけをする。


昨日のキスとは全く違う、ただ強引で理性のある冷淡なキスを。


ついばむように何度か重ねた後、わざとらしく音をたてて俺は唇を離した。

微睡む漆黒の瞳が俺を見つめる。
その目をかしっかり見据えて俺は言った。


「お前が本気だって言うなら、俺を誘ってみろ。」


それで分からせてやる。

⏰:11/10/26 23:06 📱:Android 🆔:7b8hSSCs


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