漆黒の夜に君と。V[BL]
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#347 [ちか]
「…でもさ、」
が、またその手は優里の言葉に遮られるようにして止まった。
「よかった、最後に神崎に会えて。」
何を言ってるのか分からない。
いや、分かりたくないと言った方が正しいだろうか。
「なんだよ、最後って。」
じわじわと上がってくる底知れぬ感情を抑えようとするが、もはや出来ているかは分からない。
しかし優里はそんな俺に聞く耳を持たないようだ。
「もう会えないと思ってたからさ。これも俺が“最後”だから、神サマが仕向けてくれたのかな?なんつって…」
「だから、何言ってんだよさっきから…っ」
「だってもう俺、明日には死ぬかも知れな…、」
「おい…っ」
沸き上がった感情が俺を動かした瞬間だった。
:11/11/04 23:17
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#348 [ちか]
ギュッ…――
気がつけば目の前の華奢な身体を力一杯抱き締めていた。
「かっ…神崎?」
動揺を隠せない様子の優里。
それは俺も同じだった。
バクバクと心臓が鳴る。
こんな密着した状態でお互いの鼓動はうるさいほどに伝わっていた。
俺はまた何して…っ
そうは思うものの、
抱き締めた腕を緩める気にはなれない。
そうか。
もう、そろそろ俺は自分の気持ちに気づかないといけないってことか。
:11/11/05 00:41
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#349 [ちか]
回した腕にポタポタと滴が落ちる。
「なにこれ、俺夢でも見てんのかな?」
ふざけて見せるが、無理しているのがよく分かる声。
俺はさらに回した腕をきつくした。
「……俺が今ここに居るのも、お前が今生きてんのも夢じゃない。」
夢じゃないから…、
「だから、最後とか死ぬとか言うな。」
抱き締めた身体が小刻みに揺れる。
:11/11/05 00:53
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#350 [ちか]
「でも手術の成功率は40%しかないし…ッ」
「40%あれば十分だ。0じゃないなら、そこに望みを賭けろ。俺はお前が明日でも生きてるって確信持って言える。」
そんな根拠何処にある。
しかし、今の俺にそんなこと考える余裕など無かった。
「どっから来るんだよ、その自信…」
「知らん。」
現実味を帯びた質問を適当に受け流す。
これではどっちが大人かわかんねえな。
そんな風に俺たちは
抱き締め、抱き締められたまま小さく笑った。
:11/11/05 01:04
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#351 [ちか]
笑い声に涙の音が混ざる。
儚くて弱々しく。
ふいに部屋は静かさを取り戻した。
それに溶け込むように優里は俺の名前を呼んだ。
「なぁ、神崎…」
「ん。」
「やっぱ俺、あんたのこと好き。」
急なソレに身体がピクリと反応した。
胸の奥が締め付けられる。
絞り出すような声は今にも消えそうなのに、その意思だけがどんどん直球で伝わってくる。
「この何ヵ月会ってなかったけど、ずっとあんたのことばっか考えてた…」
さらに胸の奥が痛む。
「神崎が、好き…ッ」
その気持ちに今、応えられれば
全てはハッピーエンドで終われるのに。
:11/11/05 01:12
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#352 [ちか]
「優里…」
俺はまだ、
「お前の手術が終わったら、」
その気持ちには
「大事な話がある。」
応えられそうにない。
.
:11/11/05 01:17
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#353 [ちか]
「大事な話…?」
掠れた声に俺は頷いた。
「ああ。…だから、絶対生きて帰ってこい。」
「俺はどっかの国に旅立つ勇者かよ。」
可笑しそうに呆れて笑う優里。
しかしその手は俺の腕をしっかりと握って離さない。
「こんな時くらい黙れねえのか、お前は。」
「うるさい。」
そうしていつの間にか互いの鼓動は同じ速さで時を刻んでいた。
:11/11/05 01:23
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#354 [ちか]
'
「約束だ。お前は絶対生きろ。そしたら俺も本当の気持ちをお前に話す。」
「分かった…約束する。」
誓い合う俺達を月明かりが照らす。
そんな夜明けの時が迫る部屋の中で
俺達はお互いにそう誓って
キスをした。
.
:11/11/05 06:03
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#355 [ちか]
静かに口づけたソレを離し、俺は言う。
「生憎朝から仕事で手術まで一緒には居れねえけど、朝までは居てやるから寝ろ。どうせ寝れなかったんだろ。」
向き合って久しぶりに見た優里の目は疲労の色を帯びていた。
きっと手術が不安で眠れない日が続いていたんだろう。
俺の促しに優里は小さく頷くと、起こしていた上体を再びベッドに沈めた。
優里に布団を深めにかけて俺自身もベッドの脇にある椅子に腰掛ける。
「あんま見られると寝れないんだけど…」
恥ずかしげに布団から顔を覗かせる優里にそう言われハッとした。
「…わ、悪い。」
とりあえず謝って目線を外しておくと、ゆっくり沈黙が流れた。
:11/11/05 08:47
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#356 [ちか]
長い沈黙の中、ふいに小さな声が俺を呼ぶ。
「…神崎」
「ん?」
その声はもごもごとして聞こえづらく、なんとか拾おうと身を近づける。
するとさらにそのその顔は赤くなった。
「…………手、握って。」
言うだけ言って優里はパッと布団の中に籠ってしまう。
そんな優里が少し微笑ましくて、俺は笑った。
「はいはい。」
.
:11/11/05 08:59
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