漆黒の夜に君と。V[BL]
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#351 [ちか]
笑い声に涙の音が混ざる。
儚くて弱々しく。
ふいに部屋は静かさを取り戻した。
それに溶け込むように優里は俺の名前を呼んだ。
「なぁ、神崎…」
「ん。」
「やっぱ俺、あんたのこと好き。」
急なソレに身体がピクリと反応した。
胸の奥が締め付けられる。
絞り出すような声は今にも消えそうなのに、その意思だけがどんどん直球で伝わってくる。
「この何ヵ月会ってなかったけど、ずっとあんたのことばっか考えてた…」
さらに胸の奥が痛む。
「神崎が、好き…ッ」
その気持ちに今、応えられれば
全てはハッピーエンドで終われるのに。
:11/11/05 01:12
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#352 [ちか]
「優里…」
俺はまだ、
「お前の手術が終わったら、」
その気持ちには
「大事な話がある。」
応えられそうにない。
.
:11/11/05 01:17
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#353 [ちか]
「大事な話…?」
掠れた声に俺は頷いた。
「ああ。…だから、絶対生きて帰ってこい。」
「俺はどっかの国に旅立つ勇者かよ。」
可笑しそうに呆れて笑う優里。
しかしその手は俺の腕をしっかりと握って離さない。
「こんな時くらい黙れねえのか、お前は。」
「うるさい。」
そうしていつの間にか互いの鼓動は同じ速さで時を刻んでいた。
:11/11/05 01:23
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#354 [ちか]
'
「約束だ。お前は絶対生きろ。そしたら俺も本当の気持ちをお前に話す。」
「分かった…約束する。」
誓い合う俺達を月明かりが照らす。
そんな夜明けの時が迫る部屋の中で
俺達はお互いにそう誓って
キスをした。
.
:11/11/05 06:03
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#355 [ちか]
静かに口づけたソレを離し、俺は言う。
「生憎朝から仕事で手術まで一緒には居れねえけど、朝までは居てやるから寝ろ。どうせ寝れなかったんだろ。」
向き合って久しぶりに見た優里の目は疲労の色を帯びていた。
きっと手術が不安で眠れない日が続いていたんだろう。
俺の促しに優里は小さく頷くと、起こしていた上体を再びベッドに沈めた。
優里に布団を深めにかけて俺自身もベッドの脇にある椅子に腰掛ける。
「あんま見られると寝れないんだけど…」
恥ずかしげに布団から顔を覗かせる優里にそう言われハッとした。
「…わ、悪い。」
とりあえず謝って目線を外しておくと、ゆっくり沈黙が流れた。
:11/11/05 08:47
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#356 [ちか]
長い沈黙の中、ふいに小さな声が俺を呼ぶ。
「…神崎」
「ん?」
その声はもごもごとして聞こえづらく、なんとか拾おうと身を近づける。
するとさらにそのその顔は赤くなった。
「…………手、握って。」
言うだけ言って優里はパッと布団の中に籠ってしまう。
そんな優里が少し微笑ましくて、俺は笑った。
「はいはい。」
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:11/11/05 08:59
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#357 [ちか]
暫くして寝息が聞こえ、安心する。
長い睫毛には少年のあどけなさが残っていた。
もう外はいよいよ夜が明けはじめていた。
握っている手にそっと目を落とす。
そして力を込めた。
「気持ちに応える前に、俺もそれなりにケジメつけないとな。」
―――――――…………
―――――………
―――………
:11/11/05 09:09
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#358 [ちか]
夜が明けて朝になり、
握っていた手をそっと離した。
こいつは手術頑張るんだから、俺も仕事を疎かにするわけにはいかない。
「よしっ」
気合いを入れるように声を出し、研究室に戻った。
―――――――――――――――
―――――――――――――――
「先生、さっきからずっと時計見てますけど何か用事でも?」
「あ、いや、まぁ…」
敢えて手術の時間は聞かなかった。
聞いてしまうときっとその時間には病院に戻ってしまうから。
「もう少しで終わるので間に合えばいいですね。」
「…はい」
もう少し、か。
カチカチと一定に時を刻む時計に神経が奪われていった。
:11/11/05 09:22
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#359 [ちか]
俺も意志が弱いっつーかなんつーか…
疎かにはしてないが
集中出来てるわけでもない。
もう何度時計と睨み合っただろう。
知らぬ間に一日の3分の2が過ぎていた。
………―――「では、以上を以てちまして、研究経過発表を終わります。」
そんな言葉と共に締め括られた一日に俺は安堵の息を漏らす。
無事発表も済んだし、このまま病院に直帰だ。
そう思い乱雑な音をたてて席を立った瞬間、ポケットの中で鳴る機械音。
:11/11/05 11:37
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#360 [ちか]
発信元が見知らぬ番号なことに怪訝な顔を浮かべながら、通話ボタンを押した。
「もしもし…」
「あ、先生?!わたしです!ナースステーションからかけているんですが、急ですいません!!」
聞き覚えのある声にいつもの看護婦の顔が浮かぶ。
一体、俺の番号を誰から聞いたのだろうか。
……こんなに焦り電話をかけてくるなんて。
嫌な予感がした。
「どうかしたんですか…?」
そしてこんな時の俺の勘は、
「優里がっ…――」
よく当たる。
:11/11/05 11:46
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