漆黒の夜に君と。V[BL]
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#371 [ちか]
「ゆ……う、り……、」
ああ、そうだ。
この声だ。
神崎の取り乱したような声。
聞くのは初めて会ったあの時と、
夢の中でたしか二回目。
クマ、あの日より濃くなってんじゃん。
そう思うと、自然に笑いが零れた。
何故だか涙みたいな滴も一粒零れながら。
:11/11/06 18:51
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:Onz7Ylgk
#372 [ちか]
装着された酸素マスクが邪魔で声が籠り、話しにくい。
意識もしっかりとするまでもう暫くかかりそうだ。
少ししてたくさんの医者や看護婦が入ってきた。
医者達は驚いた顔で俺を見る。
俺の心拍数や容態を色々調べた後、
漸く酸素マスクが外され口が聞けるようになった。
:11/11/06 21:11
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:Onz7Ylgk
#373 [ちか]
その間もただ神崎は俺を見つめていた。
まるで俺が起きたのが夢を見てるんじゃないか、なんて疑っているような顔で。
とりあえず、今はもう落ち着いているから安静にと一声かけてまた医者達は部屋を出ていった。
再び、部屋の中は俺と神崎の二人。
「神…崎、俺、約束守ったよ。」
そう言って笑って見せると、
その顔はますます複雑になった。
そして、
「ふ……っざけんな!!!!!」
いきなり怒鳴られた。
:11/11/06 21:17
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:Onz7Ylgk
#374 [ちか]
なんで怒鳴られてるのか。
そんなにも泣きそうな顔で。
言葉の意図がさっぱり分からず、目を白黒させていると、神崎は吐き出すように言った。
「四日間…っ、四日間だ、お前が昏睡状態から目が覚めるまで……ッ」
.
:11/11/06 21:25
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:Onz7Ylgk
#375 [ちか]
「え…」
気づかないうちに俺はそんなに眠っていたのか。
信じられずにまだ何も言えない俺はただ神崎を見た。
神崎の表情が切なくなっていく。
この人はそういう人なんだ。
照れる時、悲しい時、すぐ怒って誤魔化す。
表情と裏腹な態度で。
神崎は力が抜けたようにベッドの脇にしゃがみこんだ。
「心配させやがって…。」
「…ごめん。」
なんだかその顔を見ていると、俺まで胸がぎゅっと苦しくなった。
:11/11/06 21:31
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:Onz7Ylgk
#376 [ちか]
口調からは考えられないほど優しく、神崎は俺の髪を撫でる。
そんな神崎を見上げる俺。
無意識に言葉が零れる。
「もしかしてずっと傍に居てくれてた…?だからそんなクマだらけで…」
そう言って神崎の顔にそっと触れると、すぐに顔が赤らんだ。
「うるせ…。」
照れる神崎が珍しくて、無償に愛しく思えた。
:11/11/06 21:40
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#377 [ちか]
そのまま俺の口からは次々と言葉が溢れ、饒舌になる。
「でも約束守ったことには変わりないだろ?聞いてもいいよな、大事な話ってやつ。」
急かすような目付きで神崎を見つめると、神崎はぐっと眉根を潜めた。
ずっと気になっていた神崎の言う、“大事な話”。…───
はやく
はやく聞かせて。
そう促すように神崎の服の袖を掴む。
が、神崎は厳しい顔をした。
「……バカか。まだ完全に回復したわけじゃねえだろうが。話は完全に体力が回復してからだ。」
「はぁ?俺もう大丈…」
「黙って寝てろ。」
どうも、神崎はつくづく照れ屋らしい。
仕方ない、話を聞くためにもはやく回復してやろう。
俺はそう納得して笑った。
───────────………
────────………
──────……
:11/11/06 21:54
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:Onz7Ylgk
#378 [ちか]
― 陽平side.―
昏睡状態が続いたのは四日間。
諦めたくなくて研究なんて投げ出して常に優里の傍から離れなかった。
いや、離れたくなかった。
精密機器の中で音を刻み、
画面上で辛うじて動く心拍数に何度も祈りを込め続ける。
そして四日目の昼、
漸く優里が目を覚ました時には、奇跡が起きたと思った。
その拍子に全身の力が抜けて、なんとも言えない感情が込み上げてくる。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、
相変わらず少し生意気な優里は
俺の言う“大事な話”を催促した。
しかし俺は回復してからだと固く口を結ぶ。
そんな俺に少し不貞腐れた優里さえ、今は愛しく思えた。
どうであれ、優里は約束を守った。
今度は俺の番だ。
コイツが回復したらちゃんと言おう。
金色の髪を撫でながら、俺はそう決心した。
……の、だが。
:11/11/06 23:23
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:Onz7Ylgk
#379 [ちか]
「うそだろ?」
「ウソじゃねーよ。」
「まだ1週間も経ってないのに?」
「あー、そう言えば、なんか奇跡的な回復力だって言われた。」
正直、
この野生児の回復力を見くびっていた。
:11/11/06 23:27
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:Onz7Ylgk
#380 [ちか]
優里が目を覚ましてから6日目。
優里はみるみる元気になっていった。
6日目の今日には、もうピンピンしてる。
これが本当にほんの何日前まで昏睡状態だったのかと思うと、不思議で仕方ない。
なんか拍子抜けと言うか、なんと言うか…
俺はため息をついてフラリとドアの方向に足を向けた。
するとそんな俺に向けられる噛みつくような声。
「ちょ、神崎っ!!どこ行くんだよ!!逃げんのか?!」
喧嘩でも吹っ掛けてきそうな台詞に思わず吹き出しそうになった。
それをグッと堪えて顔だけ振り返る。
「外出許可貰ってくるだけだ、バカ。」
そろそろ俺もはっきりしないと、な。
:11/11/07 23:03
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