漆黒の夜に君と。V[BL]
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#377 [ちか]
そのまま俺の口からは次々と言葉が溢れ、饒舌になる。
「でも約束守ったことには変わりないだろ?聞いてもいいよな、大事な話ってやつ。」
急かすような目付きで神崎を見つめると、神崎はぐっと眉根を潜めた。
ずっと気になっていた神崎の言う、“大事な話”。…───
はやく
はやく聞かせて。
そう促すように神崎の服の袖を掴む。
が、神崎は厳しい顔をした。
「……バカか。まだ完全に回復したわけじゃねえだろうが。話は完全に体力が回復してからだ。」
「はぁ?俺もう大丈…」
「黙って寝てろ。」
どうも、神崎はつくづく照れ屋らしい。
仕方ない、話を聞くためにもはやく回復してやろう。
俺はそう納得して笑った。
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:11/11/06 21:54
:Android
:Onz7Ylgk
#378 [ちか]
― 陽平side.―
昏睡状態が続いたのは四日間。
諦めたくなくて研究なんて投げ出して常に優里の傍から離れなかった。
いや、離れたくなかった。
精密機器の中で音を刻み、
画面上で辛うじて動く心拍数に何度も祈りを込め続ける。
そして四日目の昼、
漸く優里が目を覚ました時には、奇跡が起きたと思った。
その拍子に全身の力が抜けて、なんとも言えない感情が込み上げてくる。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、
相変わらず少し生意気な優里は
俺の言う“大事な話”を催促した。
しかし俺は回復してからだと固く口を結ぶ。
そんな俺に少し不貞腐れた優里さえ、今は愛しく思えた。
どうであれ、優里は約束を守った。
今度は俺の番だ。
コイツが回復したらちゃんと言おう。
金色の髪を撫でながら、俺はそう決心した。
……の、だが。
:11/11/06 23:23
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:Onz7Ylgk
#379 [ちか]
「うそだろ?」
「ウソじゃねーよ。」
「まだ1週間も経ってないのに?」
「あー、そう言えば、なんか奇跡的な回復力だって言われた。」
正直、
この野生児の回復力を見くびっていた。
:11/11/06 23:27
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:Onz7Ylgk
#380 [ちか]
優里が目を覚ましてから6日目。
優里はみるみる元気になっていった。
6日目の今日には、もうピンピンしてる。
これが本当にほんの何日前まで昏睡状態だったのかと思うと、不思議で仕方ない。
なんか拍子抜けと言うか、なんと言うか…
俺はため息をついてフラリとドアの方向に足を向けた。
するとそんな俺に向けられる噛みつくような声。
「ちょ、神崎っ!!どこ行くんだよ!!逃げんのか?!」
喧嘩でも吹っ掛けてきそうな台詞に思わず吹き出しそうになった。
それをグッと堪えて顔だけ振り返る。
「外出許可貰ってくるだけだ、バカ。」
そろそろ俺もはっきりしないと、な。
:11/11/07 23:03
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:YQF1SW5s
#381 [ちか]
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「すっげー!!きれー!!」
「はしゃぎすぎんなよ。」
「わーかってるって!」
外出許可を半ば押しきる形でもらい、車を走らせること一時間とちょっと。
着いたのは、
「でも俺、海なんか見んの何年ぶりか分かんないからさ!なんか感動!」
2月ではまだ肌寒い冬の海。
:11/11/07 23:57
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:YQF1SW5s
#382 [ちか]
「うわーまじ綺麗!」
そう言って目をキラキラさせながら海に近づいていく優里の背中を眺めながら、俺は一人考えていた。
本当のことを、本当の気持ちを話すなら海(ココ)がいい。
そう思って何日か前に来ることを決めた。
桜がまだ蕾のままなちょうど今と同じ季節、そして自分の過去、消せない約束と思い出。
すべてが最後には海に詰まっている気がして。
俺は結んでいた口を開いて優里に話しかける 。
「昨日、離婚届書いて日本(あっち)に送った。」
.
:11/11/08 01:07
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:9R3No4Oc
#383 [ちか]
その瞬間、さっきまでキラキラと輝いていたその瞳に不安の影が宿る。
振り向いた優里に俺は宥めるような口調で言葉を繋いだ。
「安心しろ。別にお前のせいじゃない。」
そう、コイツのせいじゃなく
約束に依存してきた俺に対して
至って自業自得なことなのだ。
それでも少し眉をさげる優里に俺は苦笑いする。
「……ていうか、正直、はじめから好きだったのかどうかも分からない。」
こんなことを言うのは最低だと自分でも思う。
しかし、それが事実なのだから仕方ない。
コイツにはすべてを言うと決めたから。
:11/11/08 08:13
:Android
:9R3No4Oc
#384 [ちか]
優里はますます分からないと言った表情で小首を傾げた。
「じゃあ、なんで結婚したんだよ?」
なんで、か。
そこにはやっぱり、あの約束があるんだよな。
俺は静かに話始めた。
「好きだった人と約束したんだよ。…幸せになるって。」
あの頃のすべてを。
:11/11/08 08:17
:Android
:9R3No4Oc
#385 [ちか]
「まだ研修医だった頃なんだけどな。患者に惚れて、ちょうど今のお前みたいに、俺もそいつしか見えてなかった。」
自嘲気味にそう言って笑うと、優里も恥ずかしがるようなバツが悪いようなそんな顔をする。
その時、ゴォッと一瞬、突風が吹いて寒さが増す海の浜辺。
冷えすぎてはいけないと、海に近づきすぎな優里を手招きしながら話を続けた。
「でもそいつ癌の末期患者で。余命数ヵ月って宣告されてて。知り合って一年も経ってなかったけど、もうヤケクソで告白したよ。」
そう、
ちょうど今のお前みたいにな。
敢えて言わなくても分かるだろう、と思い口にはしないが。
「へ、返事は…?」
ちまちまと歩み寄ってくる優里に俺は笑いかけた。
穏やかに笑えているだろうか。
ここからは思い出しただけで胸が軋む。
:11/11/08 18:26
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:9R3No4Oc
#386 [ちか]
「いや、あっさり振られた。ていうか相手にされなかったかな。先生は医者で自分は患者だ、って言い張って、はじめは取り合おうともしなかった。」
「はじめは?」
あれま、勘のいいヤツだ。
俺の言葉の意図をちゃんと掴んでいる。
敢えて聞き返されると、もう顔は笑えてなかった。
「何度も何度も懲りずに好きだって言ってるうちにとうとうそいつの余命も残り一ヶ月になってな、そしたらそいつがポロッと言ったんだ。
“もう長くない人間と一緒になったって先生が不幸なだけだ”って。
なんかもう悔しくて、俺があんたを治すって言い張って、でもそんな俺にあいつはただバカだな、無理だよって笑ってたよ。
今考えたら、酷な話だよな。
患者本人の口から、無理とか治らないとか言わせるなんて。」
頭の中では
ちょうどまだ蕾の桜の木の下で悲しげに笑うあいつの顔が浮かぶ。
:11/11/08 18:40
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