漆黒の夜に君と。V[BL]
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#397 [ちか]
そして
きつく抱き締める。
離さないように。
離れないように。
「くる…し…、神崎っ」
「これくらいで?ああ、お前、華奢だもんな。」
頭の中に浮かぶ約束の言葉。
今さら、都合よく取ってしまいそうだ。
あいつの言う、“素敵な人”ってのは、こいつをさしてるんじゃないか、なんて。
素敵という言葉の不釣り合いさに少し笑いが込み上げる。
ザーッ…と音を立てて、
押しては引いてゆく波の中ににあいつの姿が浮かぶ。
まるで本当にそこに居るかのように、あいつの声が何故だか聞こえた。
“意地張ってないで、あたしの分まで幸せになってね”
:11/11/09 13:20
:Android
:/zp5pGog
#398 [ちか]
そして、抱き締めた体勢から俺の顔が見えないように優里を胸にしまい込むと、自分にしか聞こえないくらいの声で小さく呟いた。
「………ありがとう。」
案の定、
優里は聞こえてないようだ。
その代わり、心臓の鼓動ばかり速くなっていく。
:11/11/09 13:23
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:/zp5pGog
#399 [ちか]
もう
“普通の幸せ”なんて望めないかも知れない。
でも、それでもいい。
「か、神崎…」
だって俺は
「ん?」
“嵐”にのまれることを望んだのだから。
「………大好き」
.
:11/11/09 13:27
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:/zp5pGog
#400 [ちか]
これから先、どんな障害があるか分からない。
でも、コイツとなら
なんとかやっていける気がする。
いや、むしろ面白そうにさえ思えてくるから不思議なもので。
「………知ってる。」
夕陽でキラキラと水面を光らせる海を背に、顔を赤らめ今にも爆発しそうなそいつへ俺はそっと口づけする。
そして耳許で囁いた。
「俺も、好きだ。」
こんなことを言う俺はらしくない。
狂ってるかもしれない。
だけど、どうせもう引き返すことなんて出来ないんだ。
そらなら、いっそ、とことん飲み込まれてやろうじゃないか。
お前という嵐に。…────
― 第十二話 e n d ―
:11/11/09 13:40
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:/zp5pGog
#401 [ちか]
*おまけの話。
「めえーぐうーるう〜っ」
「うわ、なんやねん、顔パンダやで?!もう…、はいティッシュ。」
ここは
大阪、椿邸。
「ティッシュじゃなくてハンカチがいいー!!」
「はいはい…」
一番上の姉貴が東京から急に帰ってきたかと思えば、この有り様。
正直、訳が分からへん。
:11/11/09 13:45
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:/zp5pGog
#402 [ちか]
俺の把握してる状況といえば、帰ってくる直前に携帯へ来た、一本の電話の内容くらいで。
それも…
『もしもし、めぐる?あたし。
陽平と離婚した。
他に好きな人が出来たの。あ、パパにはもう言ってあるから大丈夫。もうすぐ家着くから、あんたは家でお姉様を待ちなさい。じゃあね。』
唐突というか、なんというか。
冷静な声やったから心配こそしてなかったものの、帰ってくるなり泣き出す長女、楓(29)。
「なんやねんな、急にぃ。」
事情が掴めずの弟こと俺、めぐる。
:11/11/09 13:54
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:/zp5pGog
#403 [ちか]
「だってぇ〜…グスッ、うっ…」
東京での生活がすっかり長い姉は、いつの間にか関西弁も抜け綺麗な標準語。
そんな姉の頭を撫でながら問いかける。
昔から、姉二人に甘やかされて育った分、そんな姉達の傷心を癒すのも俺の役割だった。
しかし、まさかこの歳になってもこうする日が来るとは…
女医としての姉しか知らない人間から見たら、とんだギャップだろう。
普段完璧キャリアウーマン気質な姉が泣き顔見せるのなんて、弟の俺くらいなのだから。
すっかり目が真っ赤(+真っ黒)な姉に、俺は言った。
「だいたい、好きな人出来て別れたんやろー?なんで姉貴が泣くねん。泣きたいのは陽さんの方ちゃうん?」
陽さんこと陽平さんは姉の旦那(元になるのか)で、親父が院長をつとめる病院の医者だったりする。
可哀想に、陽さん…
:11/11/09 14:02
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#404 [ちか]
そんな何も知らない無神経な俺の言葉に、姉は捨て犬のような目をして、俺を見つめた。
「でも陽平以上の人なんて居ないもん…」
29にもなって、語尾が“もん”て…
半ば呆れつつ、俺は口調を優しめに改める。
「じゃあなんでそんな浮気みたいなんしたん?」
「だって…」
ゴニョゴニョと聞こえづらい声を聞き取ろうと前屈みになった。
「そうでもしなきゃ、陽平気づかないんだもん、自分に。」
「は?」
やっと聞こえはしたものの、言葉の意味がわからず頭の中は“?マーク”でいっぱい。
:11/11/09 14:09
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:/zp5pGog
#405 [ちか]
そんな俺に姉は見限ったように言い放った。
「とにかく、大人の事情なんだからめぐるは聞かなくていいのー!お姉様の介抱だけしてればいいのーっ!!」
まったく、この姉は…
はいはい、と言いながら今日の予定を全キャンセルして姉に徹することに予定を変える俺。
なんて優しい弟なんや、俺は。
そんな風に自画自賛してる時、ふいに姉が呟いた。
「あんたは良い人見つけなさいよ…。あんただけを見てくれる人を…。」
突然のことに目を丸くした。
俺の彼女なんて、イジメ倒してやるが口癖のブラコンな姉がそんなことを言うものだから。
しかし、その発言から俺が連想するのは、
(凌…。)
だったりする。
:11/11/09 14:15
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:/zp5pGog
#406 [ちか]
もうそっからは頭の中が凌だらけで、姉の話などまるで頭に入らない。
その間にも姉はぺらぺらと女の子ってのは、なんてことを語りだしている。
「そうねー、料理できて教養があって、あ、音楽が出来る子がいいわね、繊細そうな…」
姉の勝手な嫁像も全く耳に入ってない俺。
そんな俺を見てもの足りなさそうに膨れたかと思いきや、姉は閃いたと言わんばかりに顔を明るくした。
そして、
「あ、凌くんピッタリかも!!」
突拍子もないことを言う。
:11/11/09 14:20
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