漆黒の夜に君と。V[BL]
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#427 [ちか]
それは昼休みだった。
いつものように、冥と昼飯を食っていると廊下側のクラスメイトに茶化すような声で名前を呼ばれた。
「蓮見ー、お前に用事だってー!」
そう呼ばれれば、目の前のコイツは興味津々と言った顔で、廊下に立つ見えない女子の姿を覗こうと背筋を張る。
そんな姿に思わずため息をついて、俺は席を立った。
その時は、
昼休みに呼び出すなんてまためんどくさいことをしてくれるな、とかそんな風にしか考えていなかったのに。
まさかこんな事になるとは。
「えーっと、…用ってなに?」
サラサラの黒髪ショートヘア。
色白な肌にシンプルで整った目鼻立ち。
なんか、見たことあるんだけど、…誰だっけ。
少なくとも目立つグループの女子じゃないよな。
そんなことをグルグルと考えながら適当に笑いかける。
「ここじゃちょっと話しにくいから、屋上行きたいんだけど、いい?」
が、一瞬で分かる。
この子、俺の苦手なタイプだ。
だって目の奥が俺と似てる。
:11/11/12 23:11
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#428 [ちか]
言われるがままう頷いて、屋上に向かう二つの足取り。
「屋上って締め切ってなかった?」
「あたし合鍵持ってるから大丈夫だよ。」
「へえ…」
合鍵なんて、どこから手に入れたんだ?
ますます読めない人間だ。
警戒心からか眉間に皺がよる。
そうこうしているうちに屋上に着き、本当に持っていた合鍵でいとも簡単に扉を開ければ、夏だけに少し暑苦しいがきれいに晴れ渡った空が広がった。
「さっそくなんだけど、」
実のところ屋上には来たことがなく、そのインパクトの大きさに魅了されていると、よく通る凛とした声が話を切り出す。
:11/11/12 23:18
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#429 [ちか]
そこで我に返った俺は曖昧な相づちを打ち、続きを促した。
それに対してニッコリ微笑む彼女。
「あたし、E組の瀬野麻美(セノ アサミ)。分かる?」
「……や、ごめん分かんない。」
E組なら分からなくても無理は無い。
俺や冥はA組で、AとEは廊下の端同士なのだから。
俺の返事に瀬野も、だよね、と笑う。
そしてニコっと微笑み直し、続けた。
「あたし、蓮見くんのこと好きなんだ。付き合ってほしいの。」
ほら、来た。
構えていたその言葉が。
:11/11/12 23:29
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#430 [ちか]
結局はみんなそうなんだ。
特に俺を知りもしないで、そんな状態で俺を好きだの言ってくる。
簡単に。
俺が冥に言えない言葉を簡単に。
しかし、それは決して叶うこともない。
そこに自分を重ねて、同情という名のもとに優しい口調で断り続ける自分。
そんな時の優しさなんて
本当の優しさでもなんでもないのに。
それをまた勘違いするんだから、つくづく可哀想になる。自分共々。
そんなことを悶々と考えながらも、こんな状況にももう慣れたのか自動的に適当な言葉が口から滑るように出た。
最後にお決まりの言葉を添えて。
「…だから、部活以外今興味ないんだ。ごめ…」
それでいつもみたいに終わると思っていた。
「嘘はダメだよ、蓮見くん。」
のに。
:11/11/13 19:11
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:08ju6xVE
#431 [ちか]
「え?」
思わず自分の耳を疑った。
嘘?
こいつ、何言って…
「なんで俺が嘘なんかつかなきゃいけないんだよー?瀬野さんなんか勘違いしてない?」
動揺を悟られてはいけないと、さらに笑顔を作り誤魔化す。
が、瀬野はトドメの一言をさらりと言ってのけた。
「あたし、知ってるよ。蓮見くんが日下くんのこと好きなの。だから、みんなの告白断ってるんでしょ?」
.
:11/11/13 19:30
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:08ju6xVE
#432 [ちか]
ドクン、
と心臓が跳ねた。
なんだ、こいつ…
なにを根拠にそんなことを…
俺はそんな素振り一度だって…
「なんで?って顔してるね。教えてあげよっか?」
そんな俺に瀬野は悪戯っ子のような笑顔を向ける。
咄嗟に俺は自分の顔にてを当てた。
顔に出るほど、動揺してるなんて。
動揺がさらなる動揺を呼び、暑さからなのかさえ分からない汗がだらりと額から落ちてきた。
「目、見たら分かるの。日下くんのこと見てるときの蓮見くんの目、恋する女の子みたいなんだもん。」
暑さのせいで耳までおかしくなったのだろうか。
俺が恋する女の子?
「意味分かんねぇ。勝手に推測だけで話進めんのやめてよ、瀬野サン。」
冗談じゃない。
:11/11/13 22:21
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:08ju6xVE
#433 [ちか]
「そうそう、その顔!日下くん以外の子には今みたいな冷めた目してるのにさ、日下くんにはなんかあったかい目で見てるの。自覚ないでしょ?あたしね、人間観察、得意なんだ。」
そう言ってパンと嬉しそうに叩く瀬野。
なんなんだ、この底抜けな明るさとなんでも見透かしているかのような目は。
どう話をそらしても、軌道修正されてしまうその苛立ちに俺は痺れを切らしため息をついた。
「…で、だったらなに?」
別にバレたらバレたでどうにでもなる。
今はコイツから離れたい。
その一心で、俺は敵意むき出しの顔で結んでいた口を開いた。
:11/11/13 22:29
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:08ju6xVE
#434 [ちか]
そんな俺に、瀬野もため息をつく。
「だーかーらー、あたしは蓮見くんが好きなの。付き合って?」
やれやれ、と言った顔でそんなことを言ってのける瀬野に俺は唖然とした。
そうか、これは脅しか。
俺が冥のことが好きなのを黙っておく変わりに自分と付き合え、と。
なんて打算的な女だ。
だけど、俺はその手には乗らない。
俺はフン、と鼻をならし牙を向くようにその提案をはね除けた。
「なに、脅迫のつもり?勝手にすればいいじゃん。そんなの誰も信じないよ。」
目立ちもしない女子一人の噂事なんて、人望のあつい俺からすればどうってこと無い。
好きにしろよ、そう言って蒸し暑い屋上の出入り口に手をかけた、その時。
「違うよ、これは立派な交換条件。」
それは相変わらずのニッとした猫みたいな笑顔が背中越しでも分かるような声だった。
:11/11/13 22:38
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:08ju6xVE
#435 [ちか]
ドアノブを掴みかけた手が固まる。
「なに、どういう意味。」
そう言って、顔だけ瀬野の方に振り向くと案の定猫みたいな笑顔が目に映った。
その笑顔さえ少し鬱陶しさを覚える。
「蓮見くんだっていつまでも片想いじゃ苦しいでしょ?」
そんな俺の内心などお構い無しに瀬野は痛いところを突いてきた。
『苦しい』…確かにそれは否めない。
出来ることならこの感情を忘れたいとさえ思ったほどだ。
瀬野は俺の心を見透かしたように目を細め続ける。
「だからあたしで試したら良いと思うの」
「は?試すってなにを…」
「あたしと付き合って忘れられるか試してみるってどうかな?」
無意識か、思わずため息がこぼれた。
ワケが分からず、俺は乱雑に頭を掻き瀬野を睨み付ける。
「そんなこと、出来たらとっくにやってるよ。」
そう、とっくに。
出来ないのは、やっぱり俺の中の一番が冥だからで。
隣に居る女がさも自分が一番だなんて顔で自分に引っ付いてくると思うと、どうしてもダメなのだ。
そんな俺の頭の中を知ってか知らずか、瀬野はとっておきの作戦と言っても過言じゃないような大袈裟な口調で最後の一言を言ってのけた。
:11/11/15 21:27
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:3nDUr.S6
#436 [ちか]
「もちろん、蓮見くんの最優先は日下くんのままでいいよ。
今まで通り日下くんだけ見てればいい。
あたしはね、女の子の中で蓮見くんの一番になりたいだけだから。」
なんの迷いもなくそう言う瀬野に、思わず俺が戸惑った。
瀬野がそこまで言う意味が分からない。
だけど、なぜだろうか。
俺の心の中をすべて読んでいるような不思議さに少し興味を引かれたのもたしかだった。
「なんであたしがそこまでするのかって思ってるでしょ?」
「…………。」
ほら。
また見透かされる。
今までこんなこと無かったのに。
:11/11/15 21:57
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:3nDUr.S6
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