短編サスペンス
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#16 [正人]
 
 
 
 
「心臓…麻痺ですか?」

北峰が拍子抜けしたような表情で新塚さんに言う。


おそらく俺も同じ表情をしていると思う。


「ああ、間違いない。遺体に刺し傷や銃創などは見られなかった。おそらく被害者は何かに驚いたショックで心臓麻痺に陥り、立ったまま仰向けになるようにして倒れた」

「…では、これは殺人ではないと?」

「まだ一概にはなんとも言えない。ただ、この倉庫は…」

新塚さんがここまで言うと、その先を察知したかのように北峰が口を割った。


「大物政治家による麻薬売買現場…ですよね?」
 
 
 
 

⏰:12/01/28 00:10 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#17 [正人]
 
 
 
 
「さすが北峰くんだな…」

「ボクを誰だと思っているんですか?」

「……そうだったな」

二人のやりとりはどこか楽しげでもあった。

おかげで俺は肩身が狭くなり、二人の会話を黙って聞く事しかできないが。


「目撃者とかがいればいいんですけどね」

会話の途中で北峰がつぶやいた言葉に俺はピクリと反応した。
 
 
 
 

⏰:12/01/28 00:11 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#18 [正人]
 
 
 
 
「目撃者か……ん?」

腕を組んで考え込む新塚さんは、何かに気づいたと共に俺の方を見た。


「君…丹葉といったかな?」

「ええ、そうですけど」

「確かさっき言ってなかっただろうか?“死体を最初に発見した”と」

彼がそう言うと、北峰は意外そうな顔をした。


「そうなんですか?丹葉君」

二人の視線が俺に集中する。
 
 
 
 

⏰:12/01/28 00:12 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#19 [正人]
 
 
 
 
「ええまあ…」

「怪しい人物などは見ましたか?」

北峰が真顔かつ、目を輝かせながら聞く。


「いや見てませんけど」

「…そうですか。それは残念」

俺の期待外れの答えに北峰は露骨にガッカリし肩を落とすと、新塚さんの方に向き直した。


「新塚さん、これから遺体の解剖ですよね?何か詳しい事がわかったら連絡頂けますか?」

「え…」

新塚さんは、あからさまに困った表情をする。
 
 
 
 

⏰:12/02/01 21:42 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#20 [正人]
 
 
 
 
彼が困った顔をする理由はわかる。


警察関係者でも探偵でもない彼…北峰に、なぜ遺体の解剖結果を教えなくてはならないのか?という事だろう。


新塚さんは当然の答えをした。


「しかしね、一般の方にそういった情報を与えるわけには…」

当たり前のようにそう言うと北峰は新塚さんの耳に顔を近づけ、何か小声でひそひそと言っている。


「……いやしかし……」

所々で焦りの表情をする彼を北峰は面白がっているように見える。
 
 
 
 

⏰:12/02/01 21:43 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#21 [正人]
 
 
 
 
何を言われたのか俺にはさっぱりわからないが、新塚さんの表情を見ると、北峰が何か弱みにつけ込んで説得しているように見えた。


案の定…というべきか、やがて新塚さんは観念したようにため息をついて言った。

「わかった…何かわかったら報告しよう」

北峰のどんな言葉が新塚さんの心を揺さぶったのだろうか。


…聞いても教えてくれそうな雰囲気ではない。
 
 
 
 

⏰:12/02/01 21:44 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#22 [正人]
 
 
 
 
「ありがとうございます。感謝しますよ、新塚さん」

「…………」

新塚さんはどこか納得できないような表情を浮かべながら俺達に頭を軽く下げると、その場を後にしていった。


「さてと…ボクは彼の報告を待つ間、現場を調べさせて頂くとしますか」

「…え?いいんですか?警察関係者でもないのにそんな事…」

「“父”には後でしっかり説明するので大丈夫ですよ」


その言葉を聞いて、俺はハッと思い出したのだった。


北峰の父親は、現職の都内警視庁長官だという事を―
 
 
 
 

⏰:12/02/01 21:46 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#23 [正人]
 
 
 
 
前に彼と関わったとある事件の時に聞いていたのに、いつのまにか忘れていた。


俺は心の中で「そういう事か」と納得しながら北峰の顔を見る。


「どうかしました?」

「…いえ別に。じゃあ俺は帰ります。警察関係者でもなく、身内にそういう人もいませんので」

そう言って背を向けて歩き出そうとした時、北峰の手がポンと俺の肩に置かれた。
 
 
 
 

⏰:12/02/01 21:47 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#24 [正人]
 
 
 
 
瞬間的に振り返ると、北峰は爽やかな笑みを浮かべながら首を左右にゆっくりと振っていた。


「な、なんですか?」

「君もボクと同じジャーナリストでしょう。よければ現場の調査をご一緒にいかがですか?」

「え…でも…」

「大丈夫ですよ。後で…」

「“父には説明しておく”…ですか?」

北峰の言おうとしていた言葉を察知して俺は先に口走った。
 
 
 
 

⏰:12/02/01 21:48 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#25 [正人]
 
 
 
 
「よくわかりましたねぇ」

「なんとなく、予想できてました」

「そうですか。では…行きましょう」


現場を調査できるのは嬉しいのだが、なぜか素直に喜べない。


でもここは一応、北峰と北峰の父親に感謝しておこうと思う。



―麻薬売買が行われている倉庫で心臓麻痺で亡くなっていた男性…


一体その男性は何を見たのだろうか?




エピソード1
『間抜けな死体』〜完〜

⏰:12/02/01 21:49 📱:W62P 🆔:☆☆☆


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