消えないレムリア
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#182 [我輩は匿名である]
毎日楽しみにみてます。頑張ってください。
:12/06/22 23:36
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#183 [ぎぶそん]
【※180 正しくは“客間へと続く”です】
【182 匿名さん ありがとうございます。出来るだけ毎日更新します】
話も大体終わると、タイミングよく隣の襖が開いた。
「かなめと真織くん、こっちにいらっしゃい」
母が笑顔で私たちを居間へと呼ぶ。
2人で居間に座ると、母は私たちにお茶と茶菓子を出してきた。
「お母さんはね、かなめの好きにさせたら?って言ったのよ」
母が目尻に皺を寄せて笑う。
「かなめ、昔から全くモテなくて心配だったし、お母さんはすごく嬉しいの。真織くんみたいな素敵な男の子といるなんて」
母の話は止まらない。
「どう、真織くん?将来、うちの娘をもらってくれてもいいのよ?」
「ちょっとお母さん!そんなんじゃないから!」
私は慌てて間に入った。
「うーん。まあ、考えておきます」
彼は苦いようなまんざらでもないような顔をしていた。
母との談笑を終え、玄関で父と母が私たちを見送る。
「伊藤くん。娘のことを頼んだぞ」
父が彼に微笑む。
私たちは笑顔で家を後にした。
実家まで来て言うのもなんだが、まさかあのぶっきらぼうな父を説得できるとは思わなかった。
それどころか、父は真織に笑顔を見せた。
真織、あんたは不思議な存在だね。
:12/06/23 00:08
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#184 [ぎぶそん]
住宅地を抜け、ゆっくりとバス停まで歩く。
「せっかくだから、この辺色々見ていきたいな」
そう彼に言われ、道を引き返してこの近辺にある私が通っていた小学校や中学校を回ってみた。
何の変哲もない公舎なのに、彼はとても楽しそうに見ていた。
私はそこで彼に自分の昔話をした。
中学も高校も友達はほとんどいなく、部活も何もしてなかったこと。勉強だけが生き甲斐の、退屈な日々だった。
最後に、中学校の近くにある駄菓子屋に入った。
子供の頃、学校の帰りによくここでお菓子を買っていた。
懐かしくなったので、彼と一緒にお菓子を買うことにした。
しばらくぶりに見た、愛想のない店のお婆ちゃんとレジで顔を合わす。
「あれ?彼氏かえ?」
お婆ちゃんは私のことを覚えてるらしい。
適当に「そうだよ」と返しておいた。
バス停まで戻って、ベンチに座り駅に向かうバスを待つ。
この辺はなかなかの田舎でバスは1時間に1本しか来ず、休日はもっと少ない。
彼とお菓子を食べながら話す。
「俺、またいつかここに来るかも」
「何で?」
「結婚の挨拶に」
「馬鹿じゃないの!」
私は彼の肩を叩いた。
「冗談だって」
私はその場で結婚というものについて考えた。
一生独身でいるくらいなら、こいつを人生の伴侶としてやってもいい。
でももし他に相手がいるなら、絶対にその人と結婚する。
こいつと結婚するということは、そのくらい最低限のレベルに達した時だ。
:12/06/23 00:29
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#185 [ぎぶそん]
夜。無事にアパートに帰宅すると、玄関でさっそく彼が話しかけてきた。
抱きつくというより、巻きつかれてる。
彼の両腕が私の胴体に絡む。
「またお父さんたちが来たらどうするの?」
私は戸惑った。
「たぶん、もう来ないよ」
彼が腕をきつく締める。
彼の手は少し私の胸に当たっていた。
「良かった、お父さんに認められて」
「そうだね」
「今日一緒に寝よ」
「明日学校があるじゃん」
「別にいいじゃん。俺がどっか行ってもいいの?」
「分かったわよ……」
私たちの関係って何だろう?
家族でもないし、恋人でもない。
友達も違う。
こんなに一緒にいるのに、赤の他人というのはあまりにも寂しすぎる。
自然と引き合う、磁石のようなものかな。
私は彼から、当分離れられそうになかった。
:12/06/23 00:56
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#186 [ぎぶそん]
その後、私たちはまた何事もなかったかのように生活した。
6月下旬。夜、テレビで男子サッカー日本代表の試合が行われていた。
他に観る番組もないので、選手のプレーを眺める。
「俺、中学の時サッカー部だったよ。3日だけだけど」
「それ、入ったうちにならない」
「家に帰って『ステレオマン』が観たくて辞めた。真面目にやってれば今頃代表入りしてたかも」
「無理無理。ところで、“オフサイド”って何よ」
「ああ、オフサイドって言うのはね……」
彼に詳しい説明を受けたが、分かるような分からないようなだった。
元サッカー部だったという新事実を知り、私は彼の素性が気になりだした。
血液型を聞くと、お互いA型だということが判明した。
「輸血できるね」と彼は言った。
テーブルに彼の財布が置いてあったので、運転免許証を見せてもらった。
証明写真の彼の髪型は今と違ってまっすぐで、襟髪の毛先が少し外側にはねていた。
清潔感があって、とても爽やかな印象を受けた。
免許証には誕生日が“8月27日”と記されていた。
「後2ヵ月後じゃん」
「祝ってよ」
「気が向いたらね」
「そっちの誕生日はいつ?」
「教えない」
:12/06/24 00:37
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#187 [あすか]
すっごい面白いです!
もう読むたびキュンキュンしてます(#^.^#)
続きも楽しみにしてます!\(^o^)/
:12/06/24 09:17
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:cC.lDC8k
#188 [ぎぶそん]
【187 あすかさん ありがとうございます。とても嬉しいです】
そして彼の中学・高校時代の話を聞いた。
ギターを始めたのは中学2年の時。
1ヵ月ほどで弾けるようになったらしい。
高校は公立の進学校で、結構真面目に頑張ってたとか。
中学まではクラスの男子で1番身長が低かったけど、高校になって一気に伸びた。
男友達は多いけど、女友達は1人もいない。
「あのアコギは30万したよ」
彼がギターケースを指差す。
「高い!バイトでもして買ったの?」
「いや、高2の時親父に買ってもらった。ちなみにバイクも去年買ってもらった」
「バイクはいくらしたの?」
「軽く100万はしたんじゃないかな。『ハーレー買ってやろうか?』って言われたけど、そこは将来自分の稼いだ金で買いたいよな」
何でもない様子でいう彼に、私は思わず腰が抜けた。
中高生にしてその金銭は、異常に思えた。
そんな裕福なら、こんなちんけなアパートにいないでマンションでも借りて暮らせよ。
そうか。だからこいつ、こんな甘えたがりな性格なんだ。
まあ、私も仕送りで生活してるから人のこと言えないけど。
彼の両親は彼にとても甘いらしい。
お父さんは外交官で、海外に行くことがよくある。
お母さんは元客室乗務員。今は専業主婦。
ぞんざいに扱っていた彼が、一気にすごい人間に思えた。
:12/06/24 18:13
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#189 [ぎぶそん]
彼への関心は止まらない。
「あんた、何で“真織”っていうの?」
「知らん。お袋の名前が“チオリ”っていうから、似た名前にしたんじゃないの」
「チオリ?どう書くの?」
「『チ』が『千(せん)』で、『オリ』は俺と一緒」
「千織さんかあ。美人そうな名前」
「いやいや。クソババアだよ」
「弟の“ミオリ”くんはどう書くの?」
「果実の『実』に、『オリ』は俺と一緒」
「実織くん。真織と実織。2人あわせて……“真実”」
「そうそれ。超寒いでしょ」
彼が嫌そうに腕をさする。
「そんなことないよ、すごくいい名前じ
ゃん。珍しいから、すぐに人から覚えてもらえる」
「そう?名前だけだと女に間違われたり、『女の子みたい』っていちいち言われるのがうっとうしい」
「もしあんたが一般的な男の子の名前だったら、私絶対にここ来るの拒否してた」
「そうなの?じゃあこの名前でよかった」
彼が急に黙りこくり、じっと私を見つめる。
「今だからいうけど実は俺、もともとアパート探す気なかったんだよね。最初から誰かを当てにするつもりだった」
「どうして?」
私は驚く。
「1度だけ誰かと一緒に住んでみたかった。ルームシェアって奴?でも寮は嫌。門限があるから。親父顔広いし、探せばこっちで住んでる人いるだろうなって。それがかなめだったわけ」
私は彼の話が全く理解できなかった。
1人で困惑していると、彼が私の肩を抱いた。
「出会えてよかったね。俺にとっては再会になるけど」
彼の目つきがいやらしく感じる。
「あっそ」
私はそっぽを向いた。
:12/06/24 18:38
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#190 [ぎぶそん]
【※188 正しくは“その金銭感覚は”です】
彼が両腕でしがみつき、耳元でささやく。
「最初の夜『すぐに出て行く』って言ったでしょ?あれも嘘。本当はすぐに気に入ったから、ずっと居座る気でいた」
「あっそ」
「でも本当に誰の家でもよかったわけじゃないから」
「あんたがどう思おうが興味ない」
「あ、後あの日布団を買い忘れたのはわざとじゃないよ。女と寝るっていうのに、全然緊張しなかったな。かなめ色気ないからね」
彼の落胆の声にいらっとしたので無視した。
「でも『女として見てない』っていうのは最初はそうだったけど、今はちょっとなら……」
「うるさい!私はサッカー観るのに集中したいの!あっち行ってよ!」
私は勢いよく彼の腕を振り払い、ほとんど観てなかったテレビに目をやった。
試合は既に日本が1点選手してた。
「あんたのせいでゴールの瞬間見逃したじゃん!」
私は色んなことにむしゃくしゃして彼を蹴り倒す。
こいつを黙らせるのにはこれが1番だ。
何度も何度も彼を蹴った。
今日でこいつの色んなことを知った。
でもこいつの気持ちをすべて理解するのはほぼ不可能だと思う。
こいつの心は空に浮かぶ雲のように掴めないから。
届きそうで届かない、そんな人間。
だけど私はそんなこいつの心を掴んでみたい。
そして見事手玉に取り、思いのままに操りたい。
今は自分のほうが弄ばれてる気がして、腹立たしくて仕方がない。
今にぎゃふんと言わせてやる。
:12/06/24 21:02
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#191 [ぎぶそん]
梅雨の時期が続き、この日も1日中雨だった。
夜部屋で洗濯物を干していると、彼に話しかけられた。
「明日の夜椎橋ん家にサークルの皆で遊ぶんだけど、かなめも来いよ」
「私はいいよ」
「もしかしたら皆で泊まるかも知れないから。1人にしておくの心配」
「1日くらいどうってことないって」
「いや心配。ついてきて」
私は彼のしつこさにため息をつき、首を縦に振って了承した。
しかしすぐにある不安がよぎる。
「1年生って、里香ちゃんは来るの?」
「あの子は来ないよ。女子は大友さんだけ。大友さんっていうのは、里香ちゃんと一緒の1年の子ね」
私はひとまずほっとした。
それなら別に行ってもいい。
彼が物干し具に干してある私のベージュ色のブラジャーを掴んだ。
「何でいつもこんなださい下着着けてんの?」
「触らないでよ!」
私は彼の身体を突いた。
「俺とする時は、もっと色気のある下着を着けてよ。興奮しないから。さてと、風呂入ろうかな」
彼が立ち去る。
私は彼の言葉に虫酸が走った。
あいつの正体、皆にばらしてやる。
私は明日が楽しみになってきた。
:12/06/25 22:40
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