消えないレムリア
最新 最初 🆕
#121 [ぎぶそん]
真織がいう“ミグピー”とは、ステレオマンに登場する全身茶色い毛に覆われた小さな怪獣のことだ。
半開きの目で口はへの字に曲がっていて、無愛想で不機嫌そうな表情をしている。
知能が低く、地球人と仲良くなるのが好きで、どちらかというとステレオマンの味方として描かれている。
人気のキャラクターらしいが、私から見たら凄く不細工でいいところが1つもない。
私は真織を睨みつける。
こいつ、私の顔をずっとそんな風に思ってたの?
こいつのせいでまた恥をかかされた。
ひどい、ひどすぎる。

彼がレンタルDVDを陳列しに行くので、私はいらいらしながらもそれについていった。
「何か借りたいのあったら持ってきて。俺のカードで一緒に借りておくから」
彼がDVDを元の場所に直しながら言う。
いつもさんざん嫌な思いをさせられてる分、ここは彼の権限を最大限に利用することにした。
私はランキングコーナーに行き、適当に洋画を選んだ。
でも、彼が好きそうな内容のものにしようと思いながら選んでいた。

⏰:12/06/13 20:29 📱:Android 🆔:GrDucbSQ


#122 [ぎぶそん]
彼にそのDVDと家にあった店の袋を渡すと、私は店を出てアパートに帰宅した。
彼もその後、夜の10時過ぎに帰ってきた。

一緒にご飯を食べた後、2人でベッドに寝転がって私がさっき選んだDVDを観てみることにした。
主人公の青年がトカゲに変身すると、白熱した戦闘シーンが続く。
「今のシーンで映ってた建物、たぶん全部CGだよ」
私の後ろで観ている彼が言う。
「本当?実物にしか見えなかった」
「ハリウッドのCG技術は凄いからな。『ステレオマン』もCGに力を入れようと、向こうの技術者を呼んでるし」
そこで彼との会話は途切れ、私は一言も口にすることなく映画を観続けた。

⏰:12/06/13 20:42 📱:Android 🆔:GrDucbSQ


#123 [ぎぶそん]
終盤で、主人公とヒロインの激しいベッドシーンとなった。
私は慌ててリモコンを手に取り、その場面を早送りした。
テレビでも雑誌でも何でも、こういう卑猥な表現があるのは子供の頃から苦手だった。
その度に、目をそらしたりして避けた。
だから私は、そういう行為がどんなものなのか具体的に知らない。
後ろにいる彼が「何恥ずかしがってんの」と馬鹿にしてくると思ったが、何も反応がない。
振り返ってみると、彼は仰向いてすやすやと眠っていた。
とりあえずほっと胸を撫で下ろす。

そういえばこいつ、今まで彼女とかいたことあるんだろうか。
そういうこと、誰かとしたことあるんだろうか。
普通にあるよな。嫌でも目立つし、かっこ悪くはないもん。
私は彼の顔と身体を凝視して、そして最後に唇を見た。
私より年下のくせに私より先に進んでるなんて、むかつく。
 

⏰:12/06/13 20:56 📱:Android 🆔:GrDucbSQ


#124 [ぎぶそん]
後日、私もアルバイトをしはじめた。
アパートの前にあるコンビニが募集の貼り紙を貼っていたので面接を受けると、すぐに採用が決まった。
週2日とのんびりとしたペースでシフトに入る。

私はそこで自分と同い年で近くの専門学校に通う山中泉という子と仲良くなった。
目尻がつり上がった大きな目と、口角が上がり、少し突出した唇が魅力的だ。
彼女は人生を達観してるかのような雰囲気があり、とても自分と同じ年齢とは思えなかった。

バイト中、お客さんがいない時にレジで彼女とよく私語をする。
私は彼女に真織と一緒に住んでることを話した。
そして夏休み彼と旅行に行く約束をしたので、そのお金のためにバイトしているということも。

⏰:12/06/14 19:41 📱:Android 🆔:aR6SCB3I


#125 [ぎぶそん]
「すごく仲が良いんだね。ルームシェアのトラブルってたまに聞くし。それを考えたら幸せなんじゃない?」
泉が綺麗な長い黒髪を耳にかけて言う。
「うん。まあ……」
「いっそのこと付き合っちゃえば?彼氏いないんでしょ」
「馬鹿言わないでよ。誰があいつなんかと……」

そもそも、私は包容力のある年上の男性が好きだし。
中学も高校も、いつも同じ学校の先輩に恋をしてた。
写真部の渋沢先輩も年上だった。
まあ、どれも叶わなかったけど。
年下なんて論外にもほどがある。
「恋愛は年齢じゃない」という人もいるが、私はそこだけは譲れない。
私は好きな人に思いきり甘えたいのだ。
年下に甘えるなんて、私のプライドが許さない。

それに、あいつもそのうち彼女が出来るだろう。

⏰:12/06/14 19:50 📱:Android 🆔:aR6SCB3I


#126 [ぎぶそん]
その数日後。寝る前、私はお風呂上がりの彼の肩を揉んであげた。
ストラップをつけてギターを肩にぶら下げてると、肩が凝るらしい。
痛そうに肩を押さえる姿が見ていられないので、内心は面倒くさいが仕方なく揉んであげる。

「里香ちゃんから、今度の土曜一緒に楽器屋に行ってほしいって言われた」
「良かったじゃない」
ようやくこいつにも春の訪れが来たか。
「良くない。かなめも来てよ」
彼が振り返る。
「あのね、そんなことしたら嫌われるよ」
「別にいいし」
彼はテーブルの上の煙草の箱を手に取った。

里香ちゃんって、こいつと同じサークルにいる背の小さい子でしょ。
赤みのがかった長い髪が印象的で、小顔で、つぶらな瞳をしている。
月並みな表現だけど、人形のようにかわいい。
性格は知らないけど、彼女にするには申し分ない外見だ。
そうか。たぶんあの子、真織のことが好きなんだ。
だからこの間会った時私に冷たかったのか。
私が彼と一緒に住んでるから。

⏰:12/06/14 20:07 📱:Android 🆔:aR6SCB3I


#127 [ぎぶそん]
「どうしようかな」
彼が、煙草を吸いながら頭を掻く。
「行って来なさい。あんた、楽器に詳しいんでしょ」
「里香ちゃんがやるのはベースだから、俺が行ってもよく分からないよ」
「つべこべ言わないで行って来なさい!」
私は床に座った状態のまま、足の甲で彼のわき腹を蹴った。
こいつの好みはいまいち分からない。
里香ちゃんの何が良くないの?

その週の土曜日。昼前、彼は里香ちゃんと会うために出掛けた。
でも、昼の3時には戻ってきた。
「……疲れた」
彼がリビングでうつ伏せに寝る。
「腰の辺り揉んでよ」
私は黙って彼の指図を聞く。
彼の腰に跨がり、両手で彼の腰を適当に押してみる。
自分の身体と彼の身体が触れても、ほとんど意識することがなくなった。

⏰:12/06/14 20:18 📱:Android 🆔:aR6SCB3I


#128 [ぎぶそん]
「今度はどこかで遊ぼうって言われたけど、絶対断る。サークルの子と顔を合わせるのはサークルの時だけでいい」
私は黙って指を押し続ける。
「……俺、かなめと付き合ってることにしようかな」
「やめてよ!」
私は拳を握り、彼の腰を叩いた。
その弾みで彼の身体がわずかに反れる。
「冗談だって」
彼が手を後ろにして腰を押さえる。
「彼女がいることにしたいなら、本当に彼女を作ればいいじゃない」
「別に好きな子いないし。俺、モテないし」

そんなことない。自分で気づいてないだけ。
あんたのことをうっとりとした顔で見てる女の子、よくいるよ?
例えばあんたと同じバイト先にいる女の人、あんたと話してる時嬉しそうだった。
でも、私はあんたの何もかもが全くタイプじゃないけどね。

⏰:12/06/14 20:27 📱:Android 🆔:aR6SCB3I


#129 [ぎぶそん]
5月の第2土曜日。彼の所属する軽音楽部のライブの日になった。
朝の遅い時間に目覚めると彼はおらず、部屋にギターケースもなかった。
私は寝ぼけ眼の中、身支度を済ませる。
部屋を出ようとした時、ずっと棚に置いてあったカメラが目に入った。
今日ステージに立つ彼を撮ってみようかと考える。
あいつはスタイルがいいし、被写体にするには申し分ない素材だ。
私はカメラの表面についてある塵を払い、鞄の中に入れた。

自転車を漕ぎ、ライブが開かれる「エンパシー」という名前のライブハウスを目指す。
そのライブハウスはアパートから大学に行く途中にある商店街から、少し外れた場所にあるらしい。
商店街のそばにある大きな公園に自転車を止め、とぼとぼと歩く。
1週間前彼に渡されたチケットに描かれてる地図を頼りに、辺りを見回しながらライブハウスを見つける。

⏰:12/06/14 21:34 📱:Android 🆔:aR6SCB3I


#130 [ぎぶそん]
公園の周りを探索していると、2階に「エンパシー」という看板が立ってある小さな建物を見つけた。
その建物に入ってすぐにある階段を上がると、開けられたドアの前で部長の荒井さんが立っていた。
手にしていたチケットを彼に渡す。
「まおりんたちの番はもうすぐだよ」
荒井さんが私に微笑みながらチケットの半券を返す。

薄暗いライブハウスの中に入ると、客席は既にたくさんの人でがやがやとにぎわっていた。
ライブを観るのにいい場所を探そうとしていると、何人かに声を掛けられた。
皆口を揃えて“まおりんは1番目だよ”と言う。
部屋の後ろではこのライブハウスの関係者らしき30代くらいの男性たちが、色んな機材を触っていた。
私はライブが始まるまで、客席の後ろの方で何もせず立っていた。

⏰:12/06/14 21:49 📱:Android 🆔:aR6SCB3I


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194