消えないレムリア
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#220 [ぎぶそん]
その横で、彼のノートパソコンの電源がつけっぱなしになっているのに気がついた。
消した方がいいのだろうか。
でもいくら一緒に暮らしてるからといって、勝手に操作するのはいい気がしない。
ちょっとの間、暗い画面を見つめたままでいた。
「……何してんの?」
突如起き上がった彼が、険しい目つきをして私の腕を掴んだ。
「パソコンの中、見た?」
「ううん、見てないよ」
「それならいい」
彼は私からパソコンを死角にして再起動し、電源を切った。
そうだよね。一緒にいても、私に知られたくないこともあるよね。
私は彼は私に何でも打ち明けてくれていたと思ってた。
私も彼のことを知った気でいた。
歯磨きの仕方、持ってる下着の種類と数、右鎖骨の真下の部分に小さなほくろがあること。
他の人が知らないようなことをいくつも知ってる。
体温、匂い、そして唇の感触。
私も同じように彼に教えていたつもりだ。
私は彼との隔たりを少し感じて寂しくなった。
そうして大学がテスト期間に突入した。
いつもぼんやりと真織のことが頭から離れずにいたが、さすがに勉強のことだけに集中した。
気持ちよく夏休みを過ごしたいから、単位を落とすのだけは避けたかった。
そうしたら、また彼と遊べる。
:12/07/11 23:10
:Android
:OQA3Vljc
#221 [我輩は匿名である]
あげます。頑張ってください!
:12/07/15 18:25
:F08A3
:i2gzdEis
#222 [ぎぶそん]
【221 匿名さん ありがとうございます】
【皆さんへ 最近思うように書けず、更新できないでいました。この話が皆さんの目にどう映っているのか気になるので、ご意見ご感想があれば小説総合にある「*ぎぶそん*」というところまで書き込みしてくれると嬉しいです】
テスト科目も残り半分とした時。
放課後図書館に行くと、見慣れた後ろ姿があった。
真織が机で勉強をしていた。
私は声を掛けようとした。
でも、彼の隣には長い髪の女の子がいた。里香ちゃんだ。
2人は一緒に勉強をしていた。私は肩を落とし、踵を返した。
その日の夜、彼は風呂上がりに黒いノースリーブシャツを着ていた。
少し筋肉のついた彼の二の腕に、私は恍惚として見とれた。
「最近里香ちゃんがやたらまとわりついてくる。このくそ暑い時期に、抱きついてこないでほしい」
床に座ってる彼が気だるそうにうちわを扇ぐ。
私は“里香ちゃん”“抱きつく”という単語になぜかむっとした。
今日の放課後、図書館で見た光景がよみがえる。
私は部屋の脇にあるクーラーに視線をやった。真下のベッドに直接風が当たるようになってある。
「ねえ。あんたがいいのなら、毎日私のベッドで寝てもいいよ。床で寝るとクーラーが当たらなくて暑いでしょ。でも、夏の間だけね」
「本当に?」
彼が喜んだ顔をする。その姿にどこか安心感を覚えた。
:12/07/16 01:56
:Android
:vGLf04X2
#223 [ぎぶそん]
すぐに部屋の明かりを消して、2人で一緒にベッドに入った。
「ちょっと頭上げて」
彼に言われたとおり頭を浮かせると、彼がこちら側に腕を伸ばしてきた。
私は彼の二の腕に頭を乗せた。吐く息も相手にかかるくらいの距離で互いに見つめ合うと、彼が言葉を発した。
「神様っていると思う?」
「いないんじゃない。そういった宗教的なことは全然信じない。あんたはどう思うの?」
「俺もいないと思う。でも、『いる』って思うことによって救われてる人はたくさんいるんじゃないかな」
その言葉の意味を頭で考えていると、彼が私の手を取った。
「……俺らってなんで出会ったのかな?それもこんな形で」
「知らないわよ。あ、運命とか言わないでね。気色悪いから」
「言わないよ。でも俺って、世界一運がいい」
彼が私を抱きしめてきた。
「このくそ暑い時期に、抱きついてこないでよ」
そうは言うものの、私は特に抵抗はしなかった。
今心臓がばくばく言ってるのも、向こうに丸聞こえなんだろうな。
私は神様を信じない。2年前の厳しい大学受験も誰のおかげでもなく、この手で勝ち取った。
運命とやらも信じない。こいつと出会ったのもただの偶然に過ぎない。
そんな風に目に見えないものは信じないけど、どうもこいつには透視能力があるのかってほど自分の心を見透かされてる気がする。
こいつは私が何を言われたりされたりすると嬉しいのかとか、全部分かってるみたいだ。
:12/07/16 02:17
:Android
:vGLf04X2
#224 [ぎぶそん]
7月下旬。大学のテストがすべて終了した。
第4金曜の夜。彼が豪勢にも寿司屋で寿司セットを買ってきてくれた。
「テストも無事終わったし、今日はパーッと飲もうぜ」
彼がレジ袋から缶チューハイを取り出す。
「何お酒なんか買ってきてるの?私たちまだ未成年でしょ」
「いいじゃん別に。2人だけの秘密」
彼がテーブルに置いたいくつもの缶を見て、ごくりと唾をのんだ。
さまざまなフルーツの絵が載ってあるパッケージは、中身がおいしそうに見えた。
私はその中から自分が飲むものを1つ選び、彼と乾杯をした。
生まれて初めて飲んだ酒の味は、ジュースのちょっとした延長線だと思った。
寿司はとりあえず大トロから頂いた。わさびがツンと鼻を刺激する。冷たく新鮮なネタを口の中で味わう。
寿司と酒の組み合わせは最高だと思った。
それからどんどんと缶のフタを開けた。しだいに全身に酔いが回る。頭が何度もふらつく。
今いる場所が現実なのか夢なのかも分からなくなっていった。
翌朝。目を覚ますと、私はベッドで寝ていた。
身体を起こすと、頭がずきずきと痛む。
真夏なのにやけに身体が寒いと思うと、どういうわけか下着姿だった。思わず胸元を布団で隠す。
隣で彼が寝ていた。彼もまたなぜか上の服を着ていない。
部屋には私たちが脱いだと思われる衣類が散乱していた。
「ねえ、昨日何があったの!?」
彼の肩を揺さぶると、彼が頭を掻きながら起き上がった。
「覚えてないの?昨日のこと」
彼の深刻な表情に、漠然とした不安が生まれる。
私は恐怖で声が出せず、無言で首を縦に振った。
「あーあ、せっかくあんなに愛し合ったのにな」
彼のその一言で、すべての事情を察した。
:12/07/16 04:20
:Android
:vGLf04X2
#225 [ぎぶそん]
「いやあああ!」
私は両手で顔を覆って叫んだ。
確かにこいつと肉体関係を結ぶと約束はしたが、まさか貴重な初体験をこんな記憶もないまま終わらせてしまうとは思いもしなかった。
私が1人パニック状態になっていると、彼が突然笑い出した。
「冗談だよ、何もないって。そっちが昨日酔って脱いだだけ。もう大変だったんだからな」
彼の言葉に平常心を取り戻し、ほっと胸を撫で下ろした。
「何であんたも脱いでるのよ?」
「暑かったから脱いだだけ。とりあえず服着てよ。そんなださい下着見せられても、目に毒だから」
彼にそう言われ、服を取りに行こうとした。でも彼の手前、下着姿で部屋をうろつきたくない。
「しょうがないなあ。取って来てやるよ」
私のためらいに気づいたのか、彼がベッドから降りる。
初めて見た同居人のパンツ一丁姿に、条件反射で目を伏せた。
彼は脱ぎっぱなしになっていた私のブラウスとスカートを、私の元に投げてきた。
私はそのままベッドの上で服を着た。彼もズボンを履くと、テレビをつけた。
私もベッドから降り、彼の隣に座った。
「酔った私ってどんな感じだった?」
「よく喋ってたかな。でも話の内容が支離滅裂で、何て言ってるか分からなかった。後、やたらキスしたがってた」
「したの?」
「うん、5回くらい」
私は自分の行動にげんなりとした。
「後ね」
彼が話の途中で私の肩を持ち、そのままぐいと床に押し倒した。
:12/07/16 05:30
:Android
:vGLf04X2
#226 [チャーリー]
こんにゎ

すごくいい作品ですね

忙しいと思いますが続きが気になります
頑張ってください

:12/07/16 09:55
:N02C
:ZjNRE6mo
#227 [ぎぶそん]
【226 チャーリーさん ありがとうございます。未成年喫煙に飲酒、いい作品ではありませんが(笑)、できるだけ頻繁に更新します】
「こんな風に押し倒された。勘弁してくれって思ったよ」
どうせこれもまたお得意の嘘に決まっている。
でも彼が上半身が裸なこともあって、とてつもなく緊張した。
これも演技の1つなのか、彼が真顔で私を見る。本当に今にも襲われてしまいそうだった。
「そうやってからかうのやめてよ!」
私は彼の股間を思いきり蹴り上げた。
「金的蹴りはまずいって。それに、押し倒されたのは本当だから」
彼が苦しそうに蹴られた箇所を押さえる。嘘を言ってるようには思えない。
「だったら何でそのままやらなかったのよ?男として、この上ない“チャンス”でしょ?」
恋愛経験がない私でも、オトコというものがどういう生態なのかは分かってるつもりだ。
オトコは、その気がなくてもそういうことが簡単に出来る。
オトコの本能はすさまじい。
と、前雑誌に書いてた。
でも改めて考えると、どうしてこいつは私を襲ってこないのだろう?
ここに来た初めての夜「絶対に手を出さない」って言ってたし、皆の前でも「死んでも手を出さない」って言ってた。
その根拠はなぜ?そんなに私って女として魅力ない?
「こないだお父さんにするなって言われただろ。それに、」
彼が急に黙り込む。長い沈黙が続く。
「……出来ないよ」
そう言うと、彼は照れ臭そうに顔を両手で隠した。
それはどういう意味だろう。経験がないから、一歩踏み出す勇気がないということ?
いつか全部分かるかな?嘘つきなあなたの本音が。
:12/07/16 23:53
:Android
:vGLf04X2
#228 [ぎぶそん]
早めの昼食を取った後、気を取り直して2人で夏休みの大まかな計画を立てた。
1番は前々から予定していた国内旅行のことである。
テーブルの上にパンフレットを広げて、お互いどこに行きたいのか意見を言う。
十分な話し合いの結果、9月の上旬に関西に行くことになった。
「俺、温泉に行きたい。日本人なら、やっぱり温泉だよね」
「いいねそれ。じゃあ、どこか旅館に泊まろうか」
「混浴がいいな」
彼がぼそっとつぶやく。
ふいに、こいつと私が全裸で温泉に入ってるところを想像した。
「冗談じゃない!馬鹿も休み休み言ってよ!」
「今夏休みだよ?」
「揚げ足を取るな!」
彼を叩こうと手を上げると、彼が手首を掴んだ。
すごい形相でこちらを睨んでくる。
「言うこと聞かないと、普段俺らがこの部屋で何やってるのか皆にばらすよ?」
「脅す気?卑怯だよ!」
「別にいいじゃん混浴でも。いずれそういう仲になるんだし」
彼がちらりと私の身体を見る。その言動に心底吐き気がした。
さっきはそういうことが出来ないと言っていたのに、この余裕は一体何なのだろう。
それと同時に、1人だけ取り乱す自分が悔しくなった。
「分かったわよ。でも、タオルを着用してもいいところにして」
私は立ち上がり、自分の思い通りにならない苛立ちから親指の爪を噛んだ。
今朝の騒動といい、今年の夏休みはとんだものになりそうだ。
:12/07/17 00:25
:Android
:1Qv0VpXY
#229 [ぎぶそん]
その2日後。昼過ぎ彼とニュース番組を観ていると、まりやから電話があった。
「8月の終わりにあるサークルの合宿行く?」
写真部の話だろうと思ったら、案の定そうだった。
私の大学の写真部は恒例行事として、毎年夏休みに群馬県の山奥にある、とあるペンションに泊まることになっている。
去年参加した時はそれなりに楽しかったのを覚えてる。
彼女に参加希望の意思を伝えようとしたが、8月の終わりと聞き焦った。
確か真織の誕生日は8月27日だったはず。
「8月のいつにあるの?」
「えーっとね、23、24、25だよ」
とりあえず2つのイベントが重なっていないことにほっとした。
「それじゃあ行く」と返すと、まりやが突然話題を変えた。
「知ってる?小原朱実と渋沢先輩、最近別れたらしいよ」
予想だにしなかった出来事に、私は唖然とした。
夏休み2人を見た時はあんなに楽しそうだったのに。
電話越しに聞く彼女の情報が、到底信じられなかった。
「小原がずっと5股くらいかけてたんだって。でも彼女サークルは辞めないみたい。すごい神経してるよね」
その後の彼女の話にも、私はただ上の空で聞いていた。
昔好きだった人が、失恋をした。
たったそれだけのことなのに、不思議ともやもやする。
人生とは複雑で、狂った歯車の連続のようなものなのだろう。
:12/07/17 01:02
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