消えないレムリア
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#31 [ぎぶそん]
やばい。バレてたのか。
「ま、まあね」
私は素直に答えた。
「安心してよ、あんたには絶対手を出さないから。それに、他に部屋が見つかったらすぐに出て行くし」
絶対に手を出さない。非常に喜ばしいことだけど、こいつにそうはっきりと断言されるのも癪に障る。

「あのさ、その“あんた”って呼ぶのやめてくれない?私にも一応、名前があるんですけど」
私はずっと気になっていたことを少し感情的になって指摘した。
「名前?足立……かもめだっけ?」
「違う!」
一気に振り返り、私は彼の足元をばたばたと蹴った。
私の取り乱す様子がおかしいのか、彼が初めて私の目の前で笑った。
暗闇でもよく分かる、はっきりとした笑顔だった。
不覚にも、私はその笑顔をかわいいと思ってしまった。

⏰:12/06/03 11:11 📱:Android 🆔:Ddsu8QkE


#32 [ぎぶそん]
「あー、かなめからかうの面白い」
彼がさりげなく私の名前を呼んだ。あんた呼ばわりよりはいいけど、呼び捨てかよ。
私は彼に取り合うのをやめて、再び背中を向けた。
それから眠ろうとしたが、なかなか寝付けずにいた。
しばらくそのままの体勢でいると、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。

――寝たのかな?
私は振り返ってみた。
彼もまた私に背を向け、静かに眠っているようだった。
「おやすみ、真織」
そう囁き、私はまた彼に背を向けた。

得体の知れない男の子がこんなに近くにいるのに、全く苦痛に感じない。
今日初めて彼と出会ったとは思えない、不思議な感覚にとらわれた。

⏰:12/06/04 21:33 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#33 [ぎぶそん]
次の日の朝。目を開けると彼は隣にいなかった。
ベランダの方から物音がしたので見てみると、彼がそこで洗濯物を干していた。

こんなに朝早くから偉いじゃん。感心したので、褒めてやろうと身体を起こしベランダまで行った。
「偉い……」
そう言いかけた時、私の下着も一緒に干していることに気がついた。

「ちょっと!人のまで一緒に洗濯しないでよ!」
私は怒りをあらわにした。
「は?一緒に洗ったほうが効率がいいでしょ」
「だって……」
私は物干し具に彼の下着と一緒に仲良く干されてある、哀れな自分の下着を見つめた。

⏰:12/06/04 21:46 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#34 [ぎぶそん]
彼も私の視線の先に目をやる。
「ああこれ?こんな色気もクソもない下着見ても、何とも思わないって」
彼が下着を干している物干し具を揺さぶった。
その揺れで、ベージュ色のパンツとブラジャーが小刻みに振動した。
「こんな下着着るとかおばさんかよ」
「50になったうちのお袋でもまだこんな下着着ないわ」
彼は立て続けに文句を言い続ける。

私は服の下から下着が透けて見えるのが嫌なので、下着を買う時は全部肌の色に近いベージュを選んでいる。
それをこいつは全力で否定してきた。本当に悔しい。

私は彼を無視し、顔を洗いに洗面所に向かった。

⏰:12/06/04 21:59 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#35 [ぎぶそん]
彼との共同生活、このままではだめだ。
顔を洗い、少し冷静さを取り戻してから再びリビングに戻った。
洗濯を干し終った彼をそのままリビングに座らせ、2人で掃除や食事などそれぞれの役割を決めることにした。

まず、ゴミ出しは月・水・金・日が私。火・木・土が真織。
洗濯は月・水・金・日が真織。火・木・土が私。
食事当番は月・水・金が私。火・木・土が真織。日曜は一緒にやる。
風呂掃除やトイレ掃除は各自が気がついたときにやることになった。

いまいち波長が合わない彼との話し合いは、意外にもスムーズに終わった。
私は項目を書いた紙を壁に貼った。

⏰:12/06/04 22:12 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#36 [ぎぶそん]
今日は金曜日だったので、私は早速ゴミを出しに行くことにした。
金曜日は可燃ゴミの日なので、ゴミ箱のゴミを片手に玄関でスリッパを履いた。

外に出て、階段を下りる。
階段を下りたところにある駐輪場に、見たことのない大型バイクが止まっていた。
そのバイクはまだ新品に近い状態で、黒いボディが光の反射でぴかぴかと輝く。
かっこいいな、誰のだろう。少し気になりながら、ゴミ置き場にゴミを捨てた。

再び部屋に戻ると、彼がわざわざ玄関まで姿を出して話しかけてきた。
「今日布団買いたいんだけど、この辺にデパートある?」
「えーっと、デパートは確か駅の近くにあったような……」
彼に場所をうまく説明しようと、頭に街の地図を思い浮かべた。

⏰:12/06/04 22:26 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#37 [ぎぶそん]
「一緒についてきてよ。どうせ暇なんでしょ」
ムカッ。こんな効果音が頭をよぎった。
どうしてこいつはこうも私をイライラさせるのが得意なのだろうか。

でも、彼のいうように確かに暇だった。
春休みになってから、外にはあまり出ていない。たまには外の空気も吸わなきゃな。
「分かったわよ」
私は彼と一緒に出掛けることにした。

歯を磨き、脱衣室で服を着替えた。
それからリビングに行き、彼の見てる前で平然とメイクをした。
「かなめってさ、化粧しても素っぴんとほとんど変わらないよね。昨日風呂から出た時から思ってた。まじウケる」
メイクを終えると、彼が私の顔を見てげらげらと笑ってきた。
それって褒めてるの?けなしてるの?ムカつく。

⏰:12/06/04 22:37 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#38 [ぎぶそん]
荷物を持って、2人で一緒に部屋を出た。
階段を下りると、彼がさっき私が見ていたあのバイクに近づいた。
「後ろ、乗って」
彼は収納スペースからヘルメットを取り出し、私に投げてきた。
そして黒いゴーグルを着け、自分もヘルメットを被りながらバイクにまたがった。

このバイク、こいつのだったのか。
10代のうちからこんな大きなバイクを乗り回しているなんて、彼の実家は裕福なのだろうなと感じた。
というか、昨日実家の埼玉からわざわざこのバイクで来たの?なんかイカすなあ。

私はヘルメットを被り、彼の後ろに乗った。
そして彼の腰元に手を回し、思いきりしがみついた。
彼の背中に顔をつけるとパーカーに染み付いた煙草の臭いが鼻を刺激して、その不快な臭いに思わずむせた。こいつやっぱり最悪。

⏰:12/06/04 22:56 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#39 [ぎぶそん]
彼がエンジンを掛けると、耳をつんざく大きな音がした。
そして私たちを乗せたバイクは瞬く間にアパートを離れていった。

駅へと一直線に進む道に出て、そのまま歩道を歩く通行人を一気に抜き去った。
空気が向かい風となって、彼のパーカーを膨らませる。
私は生まれて初めてバイクというものに乗ったので、車道にいて自動車やトラックを至近距離で見ることがとても新鮮に感じた。

昨日彼と出会って、色々なことを知った。
ミドリムシ。ステレオマン。そしてバイク。
彼と出会わなければどれも知ることも興味を持つこともなかっただろう。
年下の彼は私にとって凄い影響力を持っていた。

⏰:12/06/04 23:20 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


#40 [ぎぶそん]
道でほとんど信号に引っ掛からなかったので、彼の運転するバイクは5分ほどで駅前に着いた。
駅前の駐輪場にバイクを止めると、そこから近くにあるデパートに歩いて向かった。

デパートに入ると、エレベーターで寝具のコーナーがある5階まで上がった。
5階に到着すると、部屋の一室みたいに様々なベッドや棚が設置してあった。

「どれにしようかなあ」
彼が棚に入っている敷き布団を押して感触を確かめたりする。
「いらっしゃいませ」
彼の元に、若い女の店員さんがやって来た。
店員さんはすかさず彼に、彼が触っている商品の説明をはじめた。
私は2人のやり取りを後ろから見ていた。

⏰:12/06/04 23:35 📱:Android 🆔:FfDMhJ8o


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