クソガキジジイと少年

「校長もそれと同じことを言いたそうに頭をハゲ散らかしてたから何も聞かずに出てきました。」

「そうか。じゃあぶっつけ本番、当日が勝負だね。トミーの腕次第だね。」

「それは心配するな。根拠はないがうまく行く。しかしせめて一回くらいはイメージプレイさせてくれ。それくらいいいだろ？俺だって人間だ、心臓は高鳴る。」

ジョウジロウは
なおも耳元で喋りまくる
トミーを振り払った。

「おい。ジョウ。ところでお前なぜ言わないんだ。いじめを目撃したんだろ？お前が証拠を出さないと俺だってやりづらいんだ。そろそろ言わないか！」

ジョウは立ち止まり
くつばこの横のゴミ箱を指指した。

「あの中に資料が入っている。」

そう言い残し、向かう足は
必然的に屋上を目指していた。

(トミーは気づくよね。エノシタさんがいじめられていると知れば俄然やる気が沸いて、黄色い声援を浴びる集会を開催する事ができる。そしてトミーがエノシタさんを助けることになる。そしたらエノシタさんはなおさらトミーを好きになって・・・)

(どんどんみだらな女になっていって、エノモトさん狙いのトミーもそんなエノシタさんに惹かれていって、やがてどっぷりハマる。そしたらボクの入る隙なんてみじんもなくなって、過去を振り返る歴史の勉強に明け暮れて、ヤラずにハタチを迎えるんだ。みんなにヤラハタって呼ばれるようになるんだ。)

(ボクはハタチで、金を払って風俗で童貞を捨てるんだ。。。でもそれでも素人童貞なんだ・・・)

「はあ、、、。ダメだダメだ。ボクはこともあろうか、なんて事を考えてるんだ、、、ふう。」

鈴木ジョウジロウ。
落ち着きを取り戻し、
寒空の下、呪文を唱えた。

「縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、鎌倉、室町、安土桃山、えーどーめいじーたしょーしょうわーへいせー！」

「、、、鈴木。」

「っぎゃっっっ！何ですか一体！何考えてるんですか！」

苦笑いの担任を目の前に
ジョウは大声で怒鳴りつけた。

「何を考えているかは、お前に聞きたい。昼休み、終わってるぞ。とっくにチャイム鳴ったぞ。」

チャイムの音すら聞こえない。
恋わずらいとは重い病気だ。

「鈴木、さっきの、奈良が抜けてたぞ。」

ジョウジロウはスクっと立ち上がり
階段を下りて、教室に向かった。

(縄文、弥生、エノシタ、古墳、飛鳥、エノシタ、奈良、平安エノシタ、安土エノシタ、江戸エノシタ。。。)

「頭おかしーんじゃねーのか！」

ジョウジロウは自分の頭をポコポコ殴った。
担任はジョウジロウの肩を抱いた。

そんなジョウとは
打って変わって
片田舎の中学限定
スーパースターの
昼休みはなんとも
さわやかなものだった。

ジョウにゴミ箱を指差され
置いてきぼりを食らったトミー。

悩ましげな幼馴染の
後ろ姿を見て、確認しないわけには
いかない。