クソガキジジイと少年」
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#987 [○○&◆.x/9qDRof2]
 オッサンとは、二十代をまだ半ばしか過ぎていない女性に対して、失礼である。
 が、自分に対する評価としては言い得て妙だと麻衣は思った。自身の趣向が一般からは少し外れたものだということは、麻衣自身、常々認識していたからだ。

⏰:22/10/07 19:10 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#988 [○○&◆.x/9qDRof2]
麻衣は盆栽が好きなのだ。昨今女性にも人気のあるミニ盆栽などという可愛いものではない。もちろん、大品盆栽――樹の高さが五十センチメートル以上になる種類――だ。それも「松臣」や「桜御膳」など、鉢一つ一つに名前を付ける程の凝りよう。

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#989 [○○&◆.x/9qDRof2]
「普通、盆栽が題材の小説なんか買わないよ。しかもタイトルだけで衝動買いって」
「煩い」
「黙ってたら美人なのに」
「煩いってば」

 暗に麻衣の恋愛経験値の低さを言われたようで、英輔の言葉に麻衣は羞恥に頬を染めた。

 英輔の言うように、麻衣は美人だった。

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#990 [○○&◆.x/9qDRof2]
無駄がなく涼しげな顎の湾曲に合わせたかのように、きゅっと持ち上がった勝ち気そうな唇とその上に乗った切れ長の瞳。
 身長もあり全体的に細く、長く艶やかな黒髪が一層華奢に見せている。だが、その身体つきに似合わず、胴体のラインは緩やかな曲線を描き意外にもボリューム豊かなことが一目でわかる。
 正に容姿端麗を地でいくような恵まれた容姿。

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#991 [○○&◆.x/9qDRof2]
それなのに、口を開けば出てくる言葉は盆栽関連のものばかり。晴れた休日は盆栽の剪定に精を出し、日がな一日盆栽を愛でて恍惚の眼差しを向ける。一言で言えば変わっていた。
 過去に付き合った男で一月と保った者はなく、またその人数も片手だけでも余るくらいだ。

⏰:22/10/07 19:11 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#992 [○○&◆.x/9qDRof2]
その容姿に惹かれて、ふらふらと寄ってきた男は皆、麻衣の偏愛の激しさに閉口してすぐに離れていく。
 もっとも、麻衣にしても彼等に心惹かれる何かを見出だすことはできなかったのだが。
 幼馴染みの英輔は、その全てを一番近くで見ていた。

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#993 [○○&◆.x/9qDRof2]
「英輔だってモテた試しはないでしょう。顔はいいのに」

 麻衣は当て擦りのように語尾も荒く言い返す。

「ああ……、何でだろうな」
「動物オタクだからでしょう」

 間髪を入れずに答えると苦笑が返ってきた。

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#994 [○○&◆.x/9qDRof2]
掘りの深い目元はいつも優しげに細められていて、高く整った鼻梁が甘いマスクを演出している。物腰穏やかな声音はアリアの歌い手のように、柔らかなテノール。
 髪が寝起きのままのように所々跳ねていることだけが残念だったが、それでも、英輔も麻衣に劣らず、外国の映画俳優顔負けの好青年だった。

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#995 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、こちらも麻衣同様、極度の動物好きなのだ。動物好きと言えば聞こえはいいが、最早愛好者という段階ではない。
 麻衣はその人のことを詳しくは知らないが、唯一の彼女であった大学時代のクラスメイトが吹聴していた話では、「彼は人に興味がない」らしい。

「何?」
「……別に。何でもない」

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#996 [○○&◆.x/9qDRof2]
素っ気なく答えてみるが、頭の中ではそのクラスメイトの顔を思い出していた。甘いお菓子や花なんかがよく似合う、小動物のような可愛らしい顔立ち――思い出して、僅かに眉間に皺が寄ったのが自分でも分かった。

「ふーん」

 何か察したのだろう。言ったきり、英輔は追及してこなかった。

⏰:22/10/07 19:12 📱:Android 🆔:GR1soPvw


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