クソガキジジイと少年」
最新 最初 全
#865 [ザセツポンジュ]
------------------
街灯の下で手を振る女の子。
街灯まで走る女の子。
二人は姉妹。
『おねーちゃん。。。』
『お誕生日おめでとう。はい、これプレゼント。私からがこっちで、この料理はバイト先の人から。』
二つのプレゼントを
妹に渡した姉は、
時計を見た。
『ありがとう。。。おねーちゃん。どこでバイトしてるの?』
『ん?料理のおいしいところでバイトしてるのよ。』
姉は、再び時計を見た。
予定は何もないのに。
:08/06/30 01:11 :PC :3PmgDCPQ
#866 [ザセツポンジュ]
『おねーちゃん、おうち入らないの?』
すぐさま帰ろうとしている姉の様子に気付き、
なんとか引きとめようとしている妹。
『今日はもう帰るよ。おめでとうって、言いに来ただけだったから。』
『一緒にケーキ食べようよ。。。帰って来てよおねーちゃん。』
姉は、困ったように笑い、首を横に振る。
ガチャ。
『遅いわねぇあの子。誕生日だって言うのに。』
エプロン姿のまんま、薄着で外に出て来た母親。
隣の家の犬が吠え出した。
『お母さん!おねーちゃん、おねーちゃんとケーキ食べたいんだけど!』
:08/06/30 01:11 :PC :3PmgDCPQ
#867 [ザセツポンジュ]
姉は、母親の姿を見た途端、
背を向けて口を閉ざした。
『あれ?お前いたのか。』
続いて玄関先まで出て来た父親は、
様子に気づき、妻の方へ近づいて行った。
そうして、もう一人の我が娘が
自分達に背を向けている事が分かったのだった。
家族は4人。
食卓を4人で囲むのが当たり前で、
普通の家庭だと、誰もが思っていた。
両親は、7つ、年の離れた妹を
とても可愛がっていた。
天真爛漫で、容姿も端麗だった妹を。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#868 [ザセツポンジュ]
姉は次第に嫉妬して行った。
クリスマスに生まれた妹を
妬んでもいた。
置いてきぼをくらっているような生活が
何年も続いたが、
姉は、疑問をどこに、誰に、
ぶつけたらいいのかさえも分からなかった。
普通の家庭だと誰もが思っていた家庭に
口を閉ざした姉だけが、ポツリと食卓を囲む。
物静かな性格だったためか、
ちょっとした姉の変化に気づく者は、
いなかった。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#869 [ザセツポンジュ]
お姉ちゃんはしっかりしてるから。
お姉ちゃんは心配いらないから。
妹は甘えん坊で可愛いから。
妹は手のかかる子だから。
(私はおねえちゃんだから。私はおねえちゃんだけど。だから何だって言うのよ。。。)
『お姉ちゃん。お母さんね、みんなの好きなケーキ買ってきてるの。』
『おねーちゃん。おうち、入ろうよ。。。』
母の言葉も、妹の言葉も
背中では受け止めているが、
まだ振り返る気には、なれないでいる姉。
何も語らないでいる姿を見かねて、
父親は、ゆっくり姉に近づいて行った。
そして、姉の肩に、手を
置いた。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#870 [ザセツポンジュ]
『さみしい思いをさせていて、ごめんな。。。お姉ちゃん。帰っておいでよ。ね。今日は、クリスマスだから。』
お姉ちゃんは、
ちゃんと分かっていたのだ。
自分が、大きな大きな
意地を張って生きていると言うことを。
抵抗として、
沈黙と言う手段を選んでいたが、
相手に真意を
気づいてもらえにくいと言う事だって
分かっていた。
だけど、それでいて時は経ってしまい、
口に出す事が、日に日に困難になって行った。
溜め込んだものを吐き出すために
手にあざを作り、のどをかき回していた自分。
:08/06/30 01:13 :PC :3PmgDCPQ
#871 [ザセツポンジュ]
“私は何も語らないけど、そんな私の気持ちを察して、あなた達が考えて行動してください。”
は、とても無理な話なのだ。
相手の思惑は探る事が出来たとしても、
真意を掴む事なんて出来ない。
超能力者でもなんでもないんだから。
伝えるべき事は、
口に出して伝える。
それを苦手としている人もいるのだろうけど。
“もっと早く言えば良かった。
もっと私にもかまってと
甘えてみれば良かった。
:08/06/30 01:13 :PC :3PmgDCPQ
#872 [ザセツポンジュ]
寒い中、薄着で立っている
お母さんが
とても恋しくなったのだ。
必死で引き止めようとしてくれている
妹の姿が
とても愛おしく思えたのだ。
姉の目から
次第に涙がこぼれ落ちた。
自分の涙が、温かい事に
気づいた姉は、背を向けるのをやめた。
ずっと前から言いたい事は
たくさんあった。
だけど、今、一番言いたい事を、、、。
隣の犬も、おとなしくしている。
お父さんもお母さんも
妹も、
おねえちゃんの帰りを待ってる、、、。
:08/06/30 01:14 :PC :3PmgDCPQ
#873 [ザセツポンジュ]
『、、、、ただいま。』
妹は姉に飛びついて行った。
『おかえりなさい。』
お父さんの手
お母さんの顔
妹の声。
帰りたい場所があると言うこと。
クリスマスの夜に。
:08/06/30 01:15 :PC :3PmgDCPQ
#874 [ザセツポンジュ]
辺りの空気は冷たく、
吐く息はとても白かった。
最初に口を開いたのは、エノシタさん。
『今日はありがとう。あんな賑やかなオウチで、ジョウくんが羨ましいわ。楽しかったな〜。』
『え?それホントなの?こっちこそありがとう。そしてごめんなさい。相手するのも後始末も大変だけど良かったらいつでも遊びに来てね、エノシタさん、、、。』
:08/06/30 01:15 :PC :3PmgDCPQ
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194