俺とコウの物語
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#101 []
「………………」

「おーいお茶…ですか」

「……………」

「僕ジュースを買ってきてと言いましたよね?なぜ緑茶なんですか?おしるこはどうしたんです?」

おしるこってジュースやっけ?

ってか、そんなことより

「今の女の子誰なん!?」

⏰:07/08/17 03:23 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#102 []
「知りませんよ」

「え?」

「全く知らない人です」

「でも今お前殴られとったやん!」

「…急に殴られました」

殴られた頬を押さえ、コウは不機嫌そうに顔をしかめた。

「彼女…なかなか強烈でした。激しい方です」

⏰:07/08/21 02:17 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#103 []
「お前……」

「大丈夫か、とは聞かないのですか」

「は?」

「殴られて大丈夫か、と聞かないのですかあなたは」

「さっき聞いたけど」

「聞こえませんでした。聞こえない心配などしてないに等しいです」

ムスッとしながらコウは言った。

どうやらこいつは俺が心配していないことにご立腹なようだ。

⏰:07/08/21 19:01 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#104 []
「…大丈夫か」

「大丈夫ですけどね」

ほなゆーな。

「まぁ、僕は誰かとは違って女性のパンチは何も感じないですから」

こいつ…
まだ俺が女に殴られて鼻血をだしたこと引きずってやがる。(きみを送る参照)

「でもお前なんで殴られたんやろな?」

⏰:07/08/21 19:08 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#105 []
「先日志乃くんが見た、僕似の方と間違えられたんじゃないですかね」

おーい、お茶の缶をプシュッと開け、不機嫌なままコウが言った。

「あ〜…それありえる」

「…あなたのせいです」

おーい、お茶を一口飲み、コウは俺を睨んだ。

⏰:07/08/23 12:30 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#106 []
「なんでやねんな!」

「あなたが僕似の方を探しに行こうと言わなければこんな目にあいませんでした。」

まぁ、確かにそーやけど

「謝ってください」

「は」

「謝ってください」

⏰:07/08/23 12:31 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#107 []
「なんでやねん!」

「ですからあなたのせいで殴られたんです。何回言えばわかるんですか」

「はいはいすんませんでしたね」

「なんですかそれ…あなたはだいたい………」

コウはそこまで言い、
俺の背後に目線を移し口を閉じた。

⏰:07/08/30 02:04 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#108 []
続いて俺もコウの視線の先に目を向ける。

「あっ!」

コウのそっくりさんや!

「…やはり………」

「…コウ…久しぶりやな」

コウが話し終わる前に
コウのダミー(と呼ばせてもらう)は微笑を浮かべて言った。

「何年ぶりや?」

⏰:07/08/30 02:06 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#109 []
「久しぶりですね、あなたも大阪にいたとは」

…?

全くわけがわからない。

コウとダミーは知り合いか?はたから見ると双子といった感じだが。

「志乃くん失礼、彼はカイ。僕の従兄弟にあたります」

「………従兄弟!?」

⏰:07/08/30 02:08 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#110 []
「お前従兄弟おったん!?」

「従兄弟がいない、といつ言いました?」

まるでいないと言ってない親族系は全ているみたいな言い方やな。

「カイ…あなたのせいで先程僕女性に殴られたのですが」

⏰:07/09/06 04:10 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#111 []
「へぇ〜だからなんや?」

「謝って下さい」

「…はぁ?」

「謝って下さい」

こいつ今さっき俺に言った台詞またゆーとる!!

「なんでお前に謝らなアカンねん!い・や・じゃ」

「…相変わらずあなたは僕をいらつかせますね」

⏰:07/09/06 04:12 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#112 []
「まぁな!俺様は他人をイラつかせるのがお得意なもんで!!」

コウの従兄弟、カイは腕を組み、得意げにエヘンと喉を鳴らしてみせた。

…なんだこいつ。
さすがはコウの従兄弟…
顔も似てれば性格も異常なところがそっくりだ。

⏰:07/09/07 02:55 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#113 []
「あなたは随分な特技があるみたいですね感心しました」

それ感心するよーな事ちゃうやろ!!

「しかし残念ながらこちらにいる柏木志乃という方はあなたよりもさらに上手ですよ」

コウは俺を指し、ニッコリ(ニヤリ?)と笑った。

⏰:07/09/07 02:58 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#114 []
「は…?上手って…」

それって…つまり…

「他人をイラつかせるのはあなたの特技でしょう?」

はーーー!?

「はぁ!?」

俺が怒りで口を開く前に
カイが俺に向かい怒った表情で近付いてきた。

⏰:07/09/07 03:02 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#115 []
「お前と俺と、どっちが他人を多くイラつかせるか、勝負や!」

俺を頭のてっぺんから足のつま先までなめ回すように見ながらカイが言った。

てかどーでもいいし!

「いや、下らんし遠慮しときますわ」

⏰:07/09/07 03:04 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#116 []
カイというコウにそっくりな男は、俺の言葉にいらついたように舌打ちをし、

「俺の負けや」

と言って去っていった。

どうやら俺はカイをいらつかせてしまったようだ。

「やはりあなたの勝ちですね。あなたは人をいらつかせるのだけはピカ1です」

⏰:07/09/20 02:13 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#117 []
「…お前が一番やと」

「はい?」

「お前が一番人をいらつかせるのがうまいと」

「はい?」

コウは俺の言葉をわざと遮る。

俺はコウこそこの世の全人類をいらつかせるのがうまいナンバーワンだと確信した。

⏰:07/09/20 02:16 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#118 []
「てかお前の従兄弟お前そっくりやな」

「はい…もともと僕達の母親が双子ですから」

へえ〜

「そうなん…」

「柏木くん!!!」

俺の言葉をまたもや遮ったのは

「…紀香?どしたん?」

同じクラスの紀香だった

「お願い…助けて…」

⏰:07/09/20 02:20 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#119 []
【第四章 女子トイレ】

「助けてって…何を?」

紀香はよほど慌てて来たのか、肩で息をしながら言った。

「柏木くんって、霊が見えるんよな!?」

「…は?」

まぁ、見えるけど…

「お願いだから、あたし達を助けて!」

あ た し… 達 ?

⏰:07/09/20 02:24 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#120 []
「霊がどうかされましたか?」

困惑する俺をよそに
コウは目を輝かせながら紀香を見つめた。

やばい。
このパターンはやばい。

俺は嫌な予感がした。

まぁ、その予感は的中するのだが。

「実はね…」

⏰:07/09/20 02:27 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#121 []
 
「さぁ、志乃くん行きましょう!」

「…嫌といったら?」

「それでも行きます」


紀香の話はこうだった。

⏰:07/09/20 02:32 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#122 []
 
最近学校内の女子達の間での噂話らしい。

三階にある女子トイレの第三番目の鏡の前に立ち、
「麻生さん、お願いを聞いて下さい」
と言う。

その後願い事を言うと
麻生さんという女が鏡に映り、その願いは叶えられる。

どの学校にもありそうな
七不思議の一つみたいもんだ。

⏰:07/09/20 02:35 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#123 []
「ただの噂話やと思ってんけどな…実際鏡に知らん女が移ってん…」

「…紀香の願いは?」

俺の問いに、紀香は下唇を噛みながら俯いた。

「言わなわからんやん」

「…美和子を…」

俺はその名前だけで
紀香達が望んだ願いがわかった。

⏰:07/09/20 02:38 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#124 []
美和子とは

三年になると同時に東京から転入してきた女。

俺は興味ないが
ものすごく可愛い女だ。
色白で、くるくるな栗色の髪に大きな瞳。頬と唇はきれいな桃色で…

俺は全く興味ないんだけどね?

⏰:07/09/20 02:47 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#125 []
「だって美和子ったら…あたしの彼氏を…」

はいはい、奪ったんでしょ。

そう、美和子はその端正な容姿ゆえ、性格がなんとも悪い!…と言いますか…
友達の彼氏も平気で奪っちゃうのよね〜。

そりゃ怨まれて当然だって。

⏰:07/09/20 02:49 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#126 []
 
足早に学校へと向かうコウにはぐれまいと、俺は足を急がせた。

「コウ…おいコウ!」

学校の校門が見えたあたりで、俺はコウを呼び止めた

⏰:07/09/21 03:41 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#127 []
コウは爛々と目を輝かせたまま振り返り

「なんですか」

と半ば焦り口調で言った。

こいつほんまに霊のことになりと張り切るな…

「学校行ったところでどないすんねん?」

⏰:07/09/21 03:43 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#128 []
「行ってみなければ状況がわかりません」

まぁそーかもしらんけど

「今日日曜やけど…」

俺のにごった言葉を聞き、コウは勘を働かせた。

「あぁ…今日部活の方もいますね、それで僕たちが女子排泄室に入ろうものなら僕たちは変態のレッテルを背負わされます」

…てか女子排泄室て言い方がもう変態なんですけど。

⏰:07/09/21 03:48 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#129 []
「せやから女子排泄室に入るんはやめるべきちゃうか?」

「何言ってるんですか、入らなければ全く無意味です。例え人がいようとも、僕は入ります」

じゃあ一人で入ってくれ。

「さぁ早く行きますよ」

⏰:07/09/21 03:50 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#130 []
三階の女子排泄室の前まで来て、
俺は無理だ、と思った。

扉の向こう側では女子達のキャーキャーとした笑い声が聞こえている。
少なくとも三人はいる。

「コウ…なぁもう少し後からでいいん……おい!?」

⏰:07/09/26 08:56 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#131 []
俺の止めるすきもないまま勢いよくコウが扉を開き、

「失礼します」

と言った。

同時に聞こえたのはキャーと言う女子達のでかい悲鳴。

「…鼓膜がやぶれます」

コウは両手で耳を押さえ、顔をしかめた。

⏰:07/09/26 08:58 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#132 []
「神谷!!ここ女子トイレやで!?変態!」

女子の一人がコウに向かい言った。

「ですから失礼しますと言ったでしょう」

いやいや、言うてもな…

「神谷くんって見掛けに寄らず変態なんだぁ〜」

ブリッとした高い声。
このくせのある声は…

⏰:07/09/26 09:02 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#133 []
「あなた誰でしたっけ」

キョトンと目の前のかわいらしい女を怪訝に見つめるコウ。

「え〜神谷くんひどーい」

わざとらしいブリブリ口調で言う女。

彼女こそが

「…美和子……」

⏰:07/09/27 03:38 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#134 []
「あ、柏木くん…」

俺に気付いた途端、美和子は顔を赤らめ照れたようにみせた。

俺は騙されない。
これこそが美和子のテクなのだ。

おおかた俺にテクを見せるのは、学年一アイドル的な俺の彼女、幸子に敵意をもってだろう。

俺は騙されんぞ。

⏰:07/09/27 03:41 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#135 []
「志乃!あんた幸子がおるってのになんやねん!痴漢が趣味なん!?」

急に声を張り上げたのは
幸子と仲の良い、香苗だった。

「ちゃうて!俺はさっき紀香から……」

「紀香?紀香がなによ?」

いけね。紀香の話はさすがに美和子の前ではタブーやんな。

⏰:07/09/27 03:46 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#136 []
「紀香がどーしてん?」

冷静に口を開いたのは、同じクラスの恵真だった。

恵真は俺も尊敬している、いわば神!
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能。そのうえクールだが性格もかなりいいと幸子から聞いている。
完璧なやつだ。

「いや…その……」

⏰:07/09/27 03:50 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#137 []
苦虫を潰したような歯切れの悪い俺を見かねたのか、コウはため息をついた。

「あなた方は、最近噂になっている麻生さんの話をご存知ですか?」

コウの言葉に、香苗と恵真は表情が暗くなった。

⏰:07/09/27 03:53 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#138 []
「なにそれ〜?」

美和子がキョトンとした顔でコウを見る。

「…あなたは誰ですか」

「美和子だよ!一緒のクラスじゃん!!」

「そうでしたっけ」

コウは美和子に興味なさげに女子トイレ内を見回した。

⏰:07/09/29 02:55 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#139 []
「三番目の鏡…あぁ、これですね」

コウは何の躊躇もなしに女子トイレに入っていき、三番目の鏡の前に立った。

なんか嫌な予感がする

「コウちょっと待…」

「麻生さん、お願いを聞いてください」

⏰:07/09/29 02:59 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#140 []
言っちゃった…。

言っちゃったよこの人。

「麻生さんお願いを聞いてください」

「…………」

「麻生さん」

「…………」

しばらく鏡とにらめっこをしていたコウだが、何の反応もなく苛立ったように舌打ちをし、俺に振り返った。

⏰:07/09/29 03:01 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#141 []
「何もありません。見たところただの鏡です」

半ば残念そうな表情のコウに対し、香苗と恵真は暗い表情のままだ。

「麻生さん…って何〜?」

美和子がトロい口調で言った。

「それよりあなたが誰なんですか」

⏰:07/09/29 03:06 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#142 []
「だから美和子!何回言えばわかんだよ〜」

何時も同じ問い掛けをするコウに、美和子は若干いらついた口調になった。

お。本性でるか?

「何回聞いてもわかりません。あなたは一体」

「…あなたが美和子…」

コウの言葉を遮ったのは、香苗でも恵真でもない
冷たく暗い声だった。

⏰:07/09/29 03:09 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#143 []
声の主を見た香苗と恵真は口を開いたまま、言葉にならない声を発し、ガタガタと奮え出した。

まさか本当に…

「麻生さん…?」

声の主は
三番目の鏡の近くにいたコウのすぐ後ろで
長い黒髪のすき間から目だけを覗かせ美和子を見ていた。

⏰:07/09/29 03:13 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#144 []
なんだこいつは。

「…ほう。これはまた厄介な…」

振り返り後ろの女を見つめたコウがため息まじりに呟いた。

「…これ…結構やばないか…?」

今までにみたことないほどのやばい霊だ。

多分、間違いない。

俺の額から嫌な汗が流れる。

⏰:07/09/29 03:18 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#145 []
「美和子…あなたが…」

ボソッと呟くように
髪の長い女はゆっくりと美和子に近づいて行く。

紀香が何をお願いしたのかはわからないが、相当嫌な予感がする。

俺は足が震えて動かなかった。

⏰:07/09/30 03:17 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#146 []
香苗も恵真も怯えているだろう、ガタガタと震えたまま微動だにしない。

当然か。

美和子は不思議そうな顔で近づいてくる女を見ている。

どうしたらいい?

俺はどうしたら…

「待って下さい」

⏰:07/09/30 03:23 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#147 []
誰一人口も開かず
動けない中で唯一口を開いたのはやはり

「ちょっと待ちなさい」

コウだった。

コウの声に、髪の長い女は足を止め、ゆっくりコウに振り返る。

⏰:07/09/30 03:26 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#148 []
「あなたが麻生さんですか」

冷静に問う。

「…………」

女はコウを見たまま口を開かずに立ち止まっている。

「あなたが麻生さんですか」

「…………」

⏰:07/09/30 03:28 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#149 []
「答えなさい。あなたが麻生さんですか」

何も答えようとしない女に苛立ったのか、コウは眉間にしわを寄せた。

「僕が質問しているんです。早く答えなさい」

でたー

この世は僕中心に回ってるんですよ発言!

⏰:07/09/30 03:30 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#150 []
「…なんで男子がいるの」

「はい?」

「なんで男子が女子トイレにいるのよ」

女は長い髪の間から覗かせた目をコウに向けて言った。

「ここは女子トイレでしょう?」

おっしゃるとおりです。

⏰:07/09/30 03:41 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#151 []
「いたらダメな理由があるんですか」

コウは女をギロッと睨みながら、低い声で言った。

いやいや、普通はダメでしょ!

「今願い事をしたのはお前か…?」

目線をコウに向けたまま、女が言う。

「まずは僕の問いに答えなさい。あなたは麻生さんですか、と僕何度も聞いてますよね」

⏰:07/09/30 03:44 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#152 []
コウと女はお互いを見つめ合ったまましばらく動かなかった。

先に口を開いたのは

「…そうよ」

麻生さんだった。

「ほう。あなたが麻生さんですか」

棒読みに近い状態でコウが言った。

⏰:07/10/01 05:47 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#153 []
「僕、お願いをしたいのですが」

コウは麻生さんに近寄りながら低い声で言う。

「…聞けないわ」

麻生さんは髪の間から目線をコウに向けたまま、冷静に言った。

「なぜですか」

⏰:07/10/01 05:49 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#154 []
「男だからよ」

「は」

「私は女子トイレにすんでるの。だから女子の願いしか聞けない」

「…意味がわかりません」

意味わかるやろ!!
女子トイレにおるから女子の願いしか聞けんて今ゆーたやん!

⏰:07/10/01 05:51 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#155 []
「男子は…男子トイレの住人に願いを聞いてもらったら?」

「男子…?」

男子トイレにも麻生みたいやつがおるんか?

「男子は下品なのであまり好ましくありません」

お前(下品な)男子やろ!

⏰:07/10/01 05:54 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#156 []
「男子排泄室にもあなたと同類の方が?」

「………」

「答えなさい」

しつこいコウに嫌気がさしたのか麻生さんは、
とりあえずコウをチラリと見たあと鏡の前に立ち、何も言わずフッと消えてしまった。

⏰:07/10/01 05:57 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#157 []
「消えてしまいました」

残念そうなコウに対し、
香苗と恵真、美和子はボー然とその場に立ちつくしている。

「志乃くん、なかなか強敵ですよ彼女は」

強敵!?敵なんか!?

⏰:07/10/01 05:59 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#158 []
「まぁ、確かに今まで見たことないような霊やな」

俺はまだ足が奮えている。

「彼女、僕の問い掛けにはほとんど答えてくれませんでした。なかなか手強い方です」

そこかい!!
てか、それどーでもいいから。

⏰:07/10/01 06:00 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#159 []
「まぁしかし今回は…」

コウは眉間にしわをよせ、三番目の鏡を睨みつけた。

「本当に厄介です…」

コウは呟くように繰り返す。

「本当に…」

⏰:07/10/05 02:45 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#160 []
【第五章 必殺仕置人】

《いちかけ、にかけ、さんかけて…》

「………ん…?」

《仕掛けて、殺して、日が暮れて…》

「なんや!?」

「あぁ、志乃くんおはようございます。」

「…今の……」

また目覚まし音変えた…

「必殺仕事人です」

⏰:07/10/05 02:48 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#161 []
「…中村…」

「中村もんどさんです。まぁ、藤田まことさんですが、僕とても好感を持っています」

「…あ、そ」

だから何やねん

「中村さん役は、彼しか、彼以外は無理だと思ってます、僕は」

…あ、そ。

⏰:07/10/05 02:51 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#162 []
「てかさぁー!!」

いかん、いかん。
この辺で違う話題を出さねば延々と仕事人の話をされてしまう。

「…なんですか」

話を遮られたコウは不機嫌そうに俺を睨みつけた。

睨むな!!

⏰:07/10/05 02:52 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#163 []
「ほら、昨日の女子…」

「女子排泄室の事ですか」

「…はい、女子排泄室の。あいつ一体なんやねん」

コウは俺の問い掛けに答えず無言で窓を明け、たばこを一本取り出し火をつけた

⏰:07/10/05 02:56 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#164 []
煙をフーッとはき、
窓の外を眺めながら物思いにふける(ような表情)コウは、俺が女ならイチコロだろう、それはそれは綺麗な…

「志乃くんは朝っぱらから汚い話題を出しますね。まぁ排泄室の話題なので朝にはピッタリですけども」

…はい!?

⏰:07/10/05 02:59 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#165 []
「僕は朝っぱらから排泄室の話題などしたくないのですが」

今じゃなきゃいつすんねん!!てかだいたいさ〜

「お前が厄介なやつや言うたから早めに話し合わなアカンと思って気ーきかしたんやんけ!」

「余計なお世話です」

⏰:07/10/05 03:01 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#166 []
「…………」

いつ余計なお世話しましたか。

「厄介は…まぁ厄介ですが、今はその話したくありません。新鮮な朝なので」

「…ほな何の話題」

「必殺仕事人の」

それ新鮮な朝にピッタリの話題ですかね!?

⏰:07/10/05 03:03 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#167 []
「それも似たよーなもんやん!殺しの話題やん!」

「いいえ、彼らは人の恨みつらみを晴らしているだけです、世のためです」

「新鮮ちゃうやん。斬新やん」

「…志乃くん…」

コウは俺を見ながら呆れたようにため息をついた。

また嫌な予感…。

⏰:07/10/05 03:05 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#168 []
「いいですか、彼らは世のために仕事をしているんです。それが彼らの仕事なんです。麻生という霊とは全く違います比べものになりません。むしろ比べるのは失礼です、いいですか?彼らは…」

嫌な予感が的中した。

コウは俺に注意すると見せ掛け、仕事人の話を延々と語りだした。

⏰:07/10/05 03:08 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#169 []
15分経過したが、コウのトークはノンストップだ。
むしろ話に拍車がかかり、やや興奮気味。

あげくの果てには物真似をしだしてしまった。

「お前さんの恨み、晴らしてやったぜ」

「…………」

似てない。

俺は今日耳栓を買おう、と決心した。

⏰:07/10/05 03:11 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#170 []
学校へ行く間中も
ウザがる俺を全く気にせずにコウは延々と仕事人、中村さんの話題をしていた。

「…そこで藤田まことが敵の…」

はぁ…ウザイ。

俺は耳に手をあてながら学校への道を歩く。

「…志乃ぉ……」

⏰:07/10/05 03:27 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#171 []
耳に手をあてていた俺だがこの愛しい声は聞き逃さなかった。

「幸子!おはよう」

「…おはよ……」

俺の後ろから声をかけてきた幸子は、あからさまに暗い…いや、悲しい表情だった。

「どしてん?」

⏰:07/10/05 03:29 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#172 []
「…あのね……」

幸子は口を開こうとしない。

「幸子?どしたん?」

「………」

「幸子?」

「―で、ですね、その時藤田まことが…―志乃くん!聞いてますか?」

「やかましい!」

まだ仕事人の話しとんかいなコイツは。

⏰:07/10/06 02:52 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#173 []
「おや?幸子さんいたんですか」

お前がいたんですか、じゃ。

「…神谷くん…おはよ…」

「元気ないですね、どうしました?」

「う…ん……」

幸子は俯いたまま、俺の制服の裾を掴んだ。

⏰:07/10/06 02:54 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#174 []
「どした?話聞くで、二人になるか?」

俺は幸子ももちろん心配だが、コウから離れたくて仕方なかった。

「そうしましょう、あちらで話を聞きましょうか」

お前も来るんかい!!

⏰:07/10/06 02:55 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#175 []
「…うん…じゃあ…」

幸子は俺の裾を掴んだまま俺の後についてきた。

表情が暗い。
一体どうした…?

しばらく歩き、学校の近くにある公園のベンチに腰を降ろした。

「さて、聞きましょう」

余計なコイツも一緒に。

⏰:07/10/06 02:57 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#176 []
ベンチに座り、しばらく幸子は俯いたまま何も話さなかったが、しびれを切らしたコウが煙草に火をつけると同時に重い口を開いた。

「実は昨日、電話かかってきてん…」

「誰から?」

「…わからんねやけど…内容が…」

⏰:07/10/06 03:14 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#177 []
「うん、内容が?」

「………あんたは嫌われてるって…」

「…は?」

あんたは嫌われてる?

あんたはって…幸子が?

俺の愛しいマイハニー幸子が嫌われてるやて?

そんな馬鹿な。

「…昨日何回も……」

⏰:07/10/06 03:17 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#178 []
何回も…?

「同じ番号から?番号でてたんやろ?」

「…非通知やってん…でも、声は同じやった…」

「その声に聞き覚えはありますか?」

煙草の煙を吐きながら、コウは眉間にしわを寄せた。

「…わからへん…」

⏰:07/10/06 03:19 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#179 []
「非通知で何回も…?」

俺は幸子を悲しませるのが大嫌いだ。

全く手掛かりもないが、その非通知の犯人に殺意が芽生えた。

「…くそっ……」

幸子は今にも泣きそうになっている。

「それは何時頃ですか」

冷静にコウは問う。

⏰:07/10/06 03:23 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#180 []
「夜の…8時頃から10分おきくらいにずっと…。途中で電源切ったから、それからはわからへんねやけど…」

10分置きにずっと…?

俺は得体の知らない非通知魔にイライラがつのった。

「…ほぅ。許せませんね。僕の幸子さんにこんな事をするなんて」

⏰:07/10/06 03:26 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#181 []
「…今なんて」

「僕のアイドル幸子さんにこんなひどい事をするなんて許せません」

「さっきアイドルて付けてなかったやん」

「忘れてました。志乃くん、あまり怒らないで下さいよ」

怒るわい!
あたかも幸子が自分のものみたい言い方しやがって。

⏰:07/10/06 03:28 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#182 []
「幸子は俺のやから」

「知ってますよ」

クスクス笑うコウの隣で、幸子は俯きながらも顔を赤らめた。

…なるほど。
コウのたくらみか。

幸子を暗い表情から少しでも救うために言ったようだ。

それでも許さないけど。

⏰:07/10/06 03:31 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#183 []
コウの頭を一発ぶん殴り、幸子に詳しく話を聞くことにした。

「…痛いです」

頭を押さえながらコウは俺に向かいぶつぶつと文句を言っている。

「やかましい」

コウを気にせずに幸子の話を聞く。

⏰:07/10/06 03:35 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#184 []
「急に鳴ったん。携帯が。ただ、一言だけ“あんたは嫌われてる”って…ずっとその一言だけやった。」

一言だけ…ずっと…

何か変や。

「その声もね、なんか機械音みたかった。普通の電話口の声じゃないみたいな…なんか怖かってん…」

「嫌われる心当たりも、もちろんないですよね?」

⏰:07/10/06 03:37 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#185 []
「当たり前やん!幸子が嫌われるわけないやん!」

馬鹿じゃねーのか!?

「志乃くん興奮しないで下さいよ、聞いただけですから」

聞く必要もないわ!
幸子が嫌われる理由なんてない!

「まぁ…幸子さんが嫌われる原因があるならば…嫉妬ですかね」

⏰:07/10/06 03:40 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#186 []
「嫉妬…?」

「はい。女の嫉妬は醜いですから。幸子さんはかわいらしいですが、女子生徒からの嫉妬もすごそうです」

「…………」

考えたこともなかった。

幸子は容姿はもちろんかわいい!性格もかなりいい!全てパーフェクト!

それゆえに嫉妬する女が嫌がらせを…?

⏰:07/10/06 03:46 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#187 []
「あー!あーー!!」

「…なんですか志乃くんキモチ悪いですね」

急に叫びだす俺をコウは怪訝な顔で見ていた。

俺はまたもやコウを殴ろうとしたが、コウの呟くような小さな一言で俺の思考は停止してしまった。そう、恐怖で。

「その嫉妬から女子生徒の誰かが麻生さんに頼んで幸子さんを苦しめなければいいのですが…」

⏰:07/10/06 03:50 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#188 []
「え…?麻生さん…?」

コウの小さな呟きが聞こえたのか、幸子は不思議そうな表情で言った。

「麻生さんって…誰?」

幸子は多分知らないのだろう。

「あ?何それ?」

俺もとっさにとぼけてみせる。

⏰:07/10/08 00:38 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#189 []
コウもハッとし、俺に合わせてとぼけてみせた。

「すみません昨日読んだ小説を思い出してしまい独り言を言ってしまいました」

苦しすぎ!!

こいつはもっとうまいこととぼけられんのか。

⏰:07/10/08 00:40 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#190 []
「小説…そーなんやぁ…なんの小説読んでたん?」

幸子がアホでよかった!

「タイトルは忘れました。タイトル未定です(の別の小説ですちゃっかりアピール)」

また苦しい!
コウくん苦しい!

⏰:07/10/08 02:28 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#191 []
「幸子さん、電話は確かに気味が悪いですがただのイタズラです、あまり気にしない方がいいと思いますよ」

煙草を地面に押しつけ、コウが言った。

「そうそう!気にすんなって!何かあったら俺が幸子を守るし!」

⏰:07/10/11 03:46 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#192 []
「…志乃…ほんまに?」

「当たり前やん!幸子を守るのが俺の役目やし!」

彼氏ならトーゼン!

俺の言葉に、幸子は嬉しそうに顔を赤らめたが、コウは
「志乃くん台詞がクサイです」
などとブツブツ言っていた。

「やかましい」

⏰:07/10/11 03:49 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#193 []
学校へ向かう幸子を見送り、俺とコウはブランコに乗りながら思考を練った。

「…で、どうする?」

「どうしましょうか」

「…幸子のイタ電は」

「腹痛にしましょう」

…腹痛?

「なにが」

「遅刻の言い訳ですよ」

幸子の事考えとったんちゃうんかい!!

⏰:07/10/12 02:30 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#194 []
「遅刻の言い訳なんて寝坊でいいやん!」

「寝坊は僕の人権に反します」

人権てなんやねん!!

「てか遅刻の理由なんてどーでもいいやん!これからどーすんねんて!」

「なにが」

「麻生の事やろ!」

こいつは何を考えとんじゃ

⏰:07/10/12 02:47 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#195 []
「ああ…」

コウは片足で地面を蹴るとゆっくりブランコを揺らした。

「俺の予想では…幸子の電話は麻生が絡んでると…」

「はい。それは僕も確信しています。麻生さんが絡んでる、間違いありません」

⏰:07/10/12 03:29 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#196 []
やっぱりそうか。

しかし霊相手じゃどうしていいのか…。

「コウ…どーする?」

「…そうですね…」

コウはしばらく俯き、親指をガリッと噛んだ。

「何か怨念があるのかもしれません」

「…誰が」

「麻生さんが、ですよ」

⏰:07/10/12 03:31 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#197 []
まぁ、確かに怨念があるから霊になってさ迷ってるんやろな。

「怨みを晴らしてあげましょうか」

「は」

「僕たちが晴らせぬ怨み、晴らしてさしあげましょう」

「…………」

この台詞…いかにも

「必殺仕置人です」

何それ!一体何の仕置きするの?

⏰:07/10/13 03:13 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#198 []
コウの謎の言葉と共に、
俺はコウに手を引かれ(?)学校へと向かった。

学校についたはいいが…

「あのさ〜」

「なんですか」

「普通にこれは変態じゃないですか?」

そう、いかにも。
俺とコウは三階の女子トイレ、もとい女子排泄室の前にいる。

本日は普通〜に学校。もちろんみんな登校している。

⏰:07/10/16 03:25 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#199 []
「変態ではなく、仕置き人と呼んでいただきたいですね」

この時代、変態としか呼ばんやろ。

「志乃くん準備はいいですか?」

「なんの」

「仕置き人のですよ」

「…無理」

「では入ります」

無理てゆーたんですけど!

⏰:07/10/16 03:27 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#200 []
「きゃぁぁああ!!」

バタンという女子トイレのドアを開けると共に、
トイレにいた女子達から
ものすごい悲鳴を上げられた。

ま、当然だけど。

「…悲鳴を上げるとは失礼ですね」

女子トイレにノックもなく男子が入る方が失礼ですけど。

⏰:07/10/16 03:30 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#201 []
中にいた女子は俺とコウを変質者を見るような目付きで見、悲鳴を上げながら出て行った。

「邪魔者は消えました」

そーですね。

「では」

コウは三番目の鏡の前に立つ。

「麻生さん、お願いします。出てきてください」

⏰:07/10/16 03:33 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


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