俺とコウの物語
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#301 []
その後美和子は行方不明ということになっていて、
もちろん発見はされていない。

噂では女子トイレに
麻生(千春)の姿は映らなくなったが、たびたび鏡の中から、女性の

「助けて…」

という声が聞こえてくるそうだ。

未解決なまま、女子トイレの件は終わった。

⏰:08/02/02 00:00 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#302 []
【第七章 右目】

「あちぃ〜…」

うだるような暑さ。
季節は夏。

コウとの悪夢の伊豆旅行から早一年がたとうとしている。

「暑い暑い何度も言わないで下さい。暑いのはわかってます。暑い暑いとそう暑いと何度も言われると余計暑くなります。」

暑い暑いて、こいつも何回ゆーねん!

⏰:08/02/02 04:06 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#303 []
「ときに神谷くん。」

教科書に目を向けるコウを俺は机にへばりついたまま呼んだ。

「なんでしょうか柏木くん。」

横目で嫌そうな顔をしながらコウが答える。

「今年はあの別荘、いかへんのか?」

⏰:08/02/02 04:10 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#304 []
俺の言葉にコウは驚いたように目を真ん丸にし、教科書を閉じた。

「…ほう。」

俺をまじまじと見、ニヤリと意地悪く笑う。

「伊豆に行きたい、と?」

⏰:08/02/02 04:13 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#305 []
「いや、お前とやなくて…」

俺の返答にコウはまたも教科書を開きムスッとした。

「では誰と?」

「さ…」

「幸子さんとですか?」

「当たりっ!頼む!あの別荘貸してくれへん!?俺どーしても…」

「却下します。」

⏰:08/02/02 04:15 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#306 []
「なんでやねん!!」

「あなたの童貞を捨てるためだけのために、あの貴重な別荘は貸せません。それに、昨年のような被害に合ったらどうするんですか」

「昨年の被害て?」

「忘れたとは言わせませんよ?あなたの髪の毛の事です。」

…忘れさせて。

⏰:08/02/02 04:22 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#307 []
「まぁ…条件をのむならば貸して差し上げないこともありません。」

「条件て…?」

嫌な予感がする。
多分的中するだろう。が、俺はどんな条件でも聞かなければ…。

俺の顔を見て、コウがにっこりと悪魔の微笑みをした。

やはり嫌な予感が的中。

⏰:08/02/02 04:25 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#308 []
 
「お〜!幸子!こっちこっち!」

夏休みに入り、伊豆への旅行の日がやってきた。

「ごめん、待った?」

幸子は真っ白なワンピースに、赤い花がついた麦わら帽子を押さえながら俺たちの元へ走ってきた。

か わ い い !

「いや、余裕!荷物持ったるわ!」

⏰:08/02/02 04:40 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#309 []
幸子の手荷物を持ち、俺は改札口へ向かった。

見ぬふりをしよう。
気付かないふりをしよう。さりげなく、さりげなく…

「志乃くん待ちなさい。まだ揃ってませんよ。」

改札口へ向かう俺の腕を掴み、コウがにっこり微笑んだ。

気付かれたか…。

⏰:08/02/02 04:44 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#310 []
「ねぇ、ほんまにあたし大丈夫?初対面やし仲良くなれるんかなぁ…」

小さな声で幸子が言った。

「まぁ、別に無理して仲良くする必要もないで。」

てか、できれば仲良くしないでくれ。

「あ、到着されたようですね。姫菜さん、こちらです。」

…来ちゃったか…。

そう、覚えている方はいるだろうか?
コウの条件とは旅行に姫菜を誘う事、だった。

⏰:08/02/02 04:48 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#311 []
「姫菜さん、今日もお美しいですね」

………………

「姫菜さん、おしるこ飲みます?」

…………………

「姫菜さん、暑くないですか?」

…………………

「姫菜さん、」

「姫菜さん、」

「姫菜さん、」

ええい!!!

⏰:08/02/03 01:17 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#312 []
「やかましいわ!!」

姫菜をうちわで仰いでいたコウが、驚いた表情で俺を見る。

なんでうちわ持ってんねんこいつは。

「なんですか志乃くん大きな声出さないで下さい」

「ベタベタすんなや!暑苦しい!!」

⏰:08/02/03 01:20 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#313 []
俺とコウが火花を散らしていると、困ったような表情の幸子が、

「電車、きたんちゃう?」

と指差した。

「あ、来ましたね。乗りましょう。志乃くん早く席取ってください」

「俺が!?」

「あなた以外誰が?」

お前じゃ!!

⏰:08/02/03 01:23 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#314 []
やはりいつものようにコウに使われやすい俺は、真っ先に四人用の席を取った。

「志乃くんもやればできるじゃないですか」

棒読みでコウが言い、席に座る。

礼くらい言わんかい!

⏰:08/02/04 03:20 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#315 []
伊豆までの電車内は
それはそれは地獄だった。コウの姫菜へのサービスはエンドレスで、見ている幸子はずっと苦笑い。
俺?俺はもちろんコウにやかましいオーラを出しまくった。まぁ完璧無視を決め込まれたけど。

ようやく地獄から伊豆へ到着した。

「やっと地獄から脱出!」

⏰:08/02/04 03:24 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#316 []
電車から降りるなり、でかい声で叫んだ俺を、コウは怪訝な顔つきで見る。

「地獄とは?」

「あ〜別に気にすんな」

イヤミったらしく言うてやった。

「そうですか」

気にせえや!!

⏰:08/02/04 03:26 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#317 []
イライラしながら別荘までの道のりを歩いていると、前方から幼い少女が歩いてきた。

「おや、あの子は…」

コウが少女を見ながら呟いた。

「知り合いか?」

「いえ、彼女、幼いながらお美しいです」

お前はロリコンか!

⏰:08/02/04 03:30 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#318 []
コウを不審者に思いながらも、俺も少女が気になった。

見る感じ小学5〜6年といったところか。

サラサラの長い髪に白い肌。伏せている目は、長いまつげにおおわれている。

美少女、といったところか。

でも俺はその美少女にそぐわない、あるものが気になっていた。

そう、彼女の右目には

眼帯がつけられていた。

⏰:08/02/04 03:35 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#319 []
「眼帯…」

「怪我でもされているのでしょうか」

綺麗な瞳がもったいない、とコウは言いながらも気にする様子もなく少女とすれ違った。

すれ違いざま、チラリと少女を見ると、彼女は眼帯をしていない左目で俺達を見、足早に歩いていった。

⏰:08/02/06 04:13 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#320 []
 
「やっと着いた〜」

長い道のりの果てにようやく別荘にたどり着いた。

「久しぶりですね」

久々に来た別荘相手に(?)コウは懐かしむように話しかけた。

不気味すぎる。

「コウ、懐かしむとこ悪いが、部屋割りはどーすんねん?」

⏰:08/02/06 04:17 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#321 []
もちろん俺と幸子が一部屋。コウと姫菜が一緒だろうが別々だろうがどーでもいい。幸子と一緒の部屋にしてくれ。

「そうですね…志乃くんの考え通りにしましょう」

よし!コウ!お前の株が上がっ…

「僕と志乃くん、幸子さんと姫菜さんでいいでしょうか?」

「はあ!?」

⏰:08/02/06 04:20 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#322 []
「…なんですか志乃くん。文句でも?」

いやいや、文句あるに決まってるやろ。

「またお前と同じ部屋とか嫌や。」

「なぜ」

「毎日毎日一緒やねんで!毎日一緒の部屋におるんやで!?たまには別々の部屋でもえーんちゃうか!?」

⏰:08/02/06 04:23 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#323 []
「無理ですね」

即答!?

「なんで」

「あなたは幸子さんと同じ部屋になりたいだけでしょう?仮にあなたと幸子さんを同室にしたら姫菜さんはどうなるんですか?」

⏰:08/02/06 04:24 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#324 []
「1人でえーやろ?」

「だめです。女性1人、個室に泊まらせるのは危険です。姫菜さんも怖がります。」

怖がるか?
むしろそっちのがいいと思いますが…

「志乃くんの言いたいことはわかります。それならば僕と姫菜さんが同室になればいい、と思っているんでしょう?」

別に思ってねー!

⏰:08/02/06 04:27 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#325 []
「いや…」

「僕も姫菜さんと同室がいいです。が、僕は男です。姫菜さんと密室で二人きりとなると僕は理性を保てるか自信ありません」

…あ、そ。

「ですから僕は渋々あなたと同室にするんです。わかりましたか?」

「……………」

「わかればいいんです」

なんもゆーてないやん!

⏰:08/02/06 04:30 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#326 [ミミ]
更新されてる
アゲ

⏰:08/02/06 10:26 📱:SH904i 🆔:☆☆☆


#327 []
ミミちゃん
ありがとう

⏰:08/02/08 03:43 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#328 []
>>325

まずい。
このままでは毎回同じパターンで
俺は泣く泣くコウと同じ部屋になってしまう。

いかんいかん。
なんとかしなければ。

俺の脳内で思考を練っているうちにコウはさっさと俺の荷物を運んでいる。

「コウ!ちょ…待てよ」

俺がキムタクに勝った瞬間だった。

⏰:08/02/08 03:46 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#329 []
「なんですか」

ため息まじりにコウが振り返る。

「やっぱりお前、姫菜と同じ部屋になれ。姫菜もそれがいいってよ」

コウにしか聞こえないように耳打ちした。

「…本当ですか?」

うそです。

「マジで」

⏰:08/02/08 03:48 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#330 []
「そうですか…女性の頼みには僕も首を縦にふるしかないですね。いいでしょう、姫菜さんと僕が同室、ということで。」

不適な笑みをちらつかせながらコウが言った。

姫菜には悪い気もするが、勘弁してくれ。

これで俺はようやく幸子と…………ん?

⏰:08/02/08 03:51 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#331 []
俺の荷物と幸子の荷物が、コウの手により別々の部屋に移動されている。

「コウ?気のせいか俺の荷物と幸子の荷物が別の部屋に移動されてんねやけど」

「気のせいではありませんよ。別々の部屋です」

はい?

「僕と姫菜さんが同室になるからといって、あなた方を同室にするとは一言も言ってませんよ」

⏰:08/02/08 03:54 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#332 []
なんやとー!?

まぁ、夜中幸子の部屋に行けば問題ないか。

「おう、じゃあ俺と幸子は1人ずつってことで」

俺の言葉にコウは疑わしげな目で俺を見たが、気付かないふりをして俺は部屋に入った。

⏰:08/02/08 04:17 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#333 []
しばらく部屋に1人で寝転がっていると、コウがご飯できましたよ、とドア越しに言った。

リビングへ行くと
それはそれは豪勢な

「…ピザ?」

ピザが数枚届いていた。

「今日はピザで我慢して下さい。まぁ、せっかくですので飲みましょう」

⏰:08/02/08 04:20 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#334 []
こいつはほんまに酒大好きやな…。

コウの一言で、意外とお酒大好きな幸子がノリノリに乾杯をした。

かーわーいーいー!

コウと幸子に促され、俺は飲んで飲んで


飲みすぎた。

⏰:08/02/09 03:04 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#335 []
 
「きゃああああ!!」

時刻は夜中2時。

幸子の悲鳴で俺は目が覚めた。

「幸子!?」

起き抜けでこれほど身体が反応したことはない。

俺は幸子の部屋のドアを勢いよく開けた。

「幸子!!どしたん!?」

⏰:08/02/09 03:07 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#336 []
ドアを勢いよく開けた途端、目に入ったのはベッドの横でうずくまり両手で目をふさいでいる幸子だった。

「幸子!?どないしたん!?」

幸子の元に駆け寄り、
俺は幸子の肩を掴んだ。

⏰:08/02/09 03:08 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#337 []
「目…目が…」

肩を掴んだとき

幸子が震えているのがわかった。

両手で目をふさぎながら
幸子は肩を震わせている。

「目?目がどしたん!?」

⏰:08/02/09 04:37 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#338 []
幸子は何も言わずガタガタと震えているだけだった。

「騒がしいですね」

部屋のドアが開くと同時に上半身裸になったコウが部屋に入ってきた。

「お前…まさか…」

上半身裸でだるそうに頭をかきながらあくびをするコウを見て、俺は呆然とした。

⏰:08/02/09 04:41 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#339 []
「姫菜とヤッたんか…?」

俺の問いにコウは何も答えずに幸子に声をかけた。

「幸子さん、どうされました?」

幸子は変わらず両手で目をふさいでいる。

「幸子?何があってん?」

コウの事も気になるが
やはり今は幸子だ。

⏰:08/02/09 04:44 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#340 []
「どしたん?俺おるから大丈夫やで?」

両手を優しく掴み、幸子の顔を覗きこんだ。

幸子はゆっくりと目を開き俺の顔を見た瞬間、勢いよく抱きついた。

「志乃…志乃ぉ…」

俺の背中に回された手に力が入る。

一体何があったんだ?

⏰:08/02/09 04:48 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#341 []
しばらく幸子は泣き止まず俺に抱きついていた。

10分ほどたった頃か、
コウがホットミルクを持って部屋に戻ってきた。

「幸子さんどうぞ。ホットミルクは安眠効果がありますので」

幸子にコップを渡し、コウはベッドに腰かけた。

⏰:08/02/09 04:51 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#342 []
幸子はホットミルクを一口飲み、俺に片手を差し出した。

俺が幸子の手を握ると安心したのか幸子はゆっくりと話し出した。

「…急にカタカタって音がしたん…あたし目が覚めて…気付いて目を開けたら…窓の外に…」

「窓の外に?」

「…眼球だけが…浮かんでたの……あたしを…見てた」

⏰:08/02/09 04:56 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#343 []
「眼球だけが…?」

コウは窓を開け、辺りを見渡した。

「何もありません、夢でも見たのでは?」

ガタガタ震える幸子の肩をなだめるようにポンポンと叩きながらコウが言った。

「夢……」

幸子はチラリと俺を見る。

⏰:08/02/11 03:21 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#344 []
「夢…かぁ…。そうかもしれない!夢見たんかも。騒いでしまってごめんね!」

眉を垂らし、ふにゃっと幸子は笑った。

この表情は心配をかけたくない幸子のくせだ。

「いいですよ、夢は誰でも見ますから」

コウはにっこり笑い部屋から出ていった。

⏰:08/02/11 03:24 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#345 []
「幸子、大丈夫か?」

コウが部屋のドアを閉めたのを確認し、俺は言った。

「うん、大丈夫!夢見ただけやから…」

「嘘つくな。俺にはちゃんと言うて。何があってん?」

俺の言葉を聞き、また幸子は泣き出してしまった。

⏰:08/02/11 03:26 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#346 [匿名]
物凄い読みたいですでも主サンペースで頑張って下さい!!

⏰:08/02/16 19:30 📱:SH902i 🆔:Ex3tyTpk


#347 [我輩は匿名である]




ぁげちャいます



⏰:08/02/20 16:41 📱:N703iD 🆔:mmzC529g


#348 [菜美]
あーげ

⏰:08/02/21 00:46 📱:N903i 🆔:1MMMYVfw


#349 [我輩は匿名である]


主サン
頑張れ(ω)⌒

待ッてます
本気でこの話スキ

ッレにもこれだけゎ
ォススメしました


⏰:08/02/21 05:24 📱:N703iD 🆔:ILhXQuyQ


#350 [我輩は匿名である]
ファィト

⏰:08/02/22 04:25 📱:N703iD 🆔:kWtvvmYQ


#351 []
すみません!かきます

⏰:08/03/20 04:38 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#352 []
>>345

「今話したこと…夢なんかじゃない…。ほんまに眼球だけ浮かんでてん…なぁ…志乃は信じてくれる?」

泣きながら幸子は言った。

もちろん。

きみが丸見えな嘘をつこうとも、きみの口からほんまやねん信じてと言われれば、俺は信じますよ。

⏰:08/03/20 04:42 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#353 []
とりあえず夜中なので
俺は幸子が眠るまでずっと手を握っていた。

20分くらいたった頃、幸子は安心したように眠りについた。

俺はホッとし、リビングへ向かった。

⏰:08/03/20 04:44 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#354 []
今夜は幸子に付き添わなな…コーヒーで眠気を覚ますしかな…

「ぎゃあ!!」

リビングへたどり着きコーヒーを入れようとコンロの側まで近寄った時、俺はびっくりして腰を抜かした。

そう。みなさんお気づきだろう。
コンロの側ではろうそくを片手にしゃがみ込む不気味なコウの姿があった。

⏰:08/03/20 04:46 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#355 []
「間違いなく眼帯ですね」

不気味な風貌のコウが驚く俺に放った最初の言葉だった。

「は?」

「幸子さんの見た眼球とは、昼間見た眼帯の少女の目です。間違いありません。」

「え?お前夢やって…」

「夢だと言わなければ怖がらせるだけでしょう?僕は女性を怖がらせたくありません。」

⏰:08/03/20 04:49 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#356 []
不気味だが、コウは眉間にしわを寄せ親指を噛んだ。
イラついているコウのくせだ。

「幸子さんが見たのは恐らく右目。昼間の少女が隠している右目です。そして少女もまた、僕達を見ています。」

「…見て…?」

見て…い ま す ?

「はい。気付きませんか?ほら、そのテーブルの下から。見られていますよ、僕たち。」

⏰:08/03/20 04:55 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#357 []
コウの言葉を聞き、テーブルの下に目を向ける。

「…な…なんやねんアレ」

「眼球です」

「見たらわかるわ!なんで眼球が浮いてんねん!」

「僕にわかるわけないでしょう?」

以前おまえ何でもわかる言ってたんちゃうんかい。

⏰:08/03/20 10:42 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#358 []
俺は眼球から目が離せない。眼球はただただじっとこちらを見ている。

俺…眼球と見つめあっとる…?

「大丈夫ですよ、ただ見ているだけ…危害は加えないでしょう」

コウはろうそくの火をフッと消し、リビングの電気をつけた。

その瞬間、眼球はパッと消えてしまった。

⏰:08/03/20 10:48 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#359 []
「…気味が悪いな」

眼球がウロウロしてるなんて気持ち悪すぎる。

「ええ…」

コウは眉間にしわを寄せながら腕を組んだ。

「伊豆にいる間、毎晩覗かれているのでは姫菜さんに手が出せません。」

お前は一体何の心配をしとるんじゃ!

⏰:08/03/24 03:15 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#360 []
「まぁ、僕の方は見られていても平気ですし、むしろ燃えますが。姫菜さんは嫌がるでしょうね」

こいつさっきイラついとったんはこーゆー事考えとったからか。

「どーでもいい。俺、幸子んとこ戻るわ。」

リビングを出る俺に、コウは背後から小さな声で言った。

「部屋を暗くすると現れますよ。」

⏰:08/03/24 03:19 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#361 []
【第八章 ギブス】

その日、俺は眠れなかった。コウの言う通り部屋の明かりを消さなかった。

「志乃…?」

幸子が目を覚ます。

付き合ってから初めて見る寝起きのマイハニー。

か わ い い 。

この一言に尽きる。

⏰:08/03/25 05:58 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#362 []
幸子は目をぎゅっと瞑りながら、「ん〜」と大きく伸びをした。

はっ!いかんいかん。
俺の息子さんが反応しちまう!

「志乃ぎゅーして?」

寝起きは甘えたさんなのか?寝ぼけたようなかわいらしい顔で幸子が言った。

限界。

俺は幸子を抱きしめた。

⏰:08/03/25 10:45 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#363 []
俺の息子が元気になったところで部屋のドアが開いた。

「…すみませんタイミング悪く…ご飯ですよ」

…ノックしろ。

「神谷くん、おはよ」

にっこりした幸子が言う。

「幸子さんおはようございます。志乃くんもおはようございます。志乃くんの息子さんもおはようございます。」

こいつ…!いらん事まで!

⏰:08/03/25 11:04 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#364 []
「息子…?」

きょとんとしながら幸子が俺の顔をのぞいた。

「いや、なんでもないなんでもない。飯食い行こ」

俺は前かがみになりながらドアのそばに行き、コウをぺちんと叩いた。

「いらん事言うなアホ」

「勃起しながら出来ず終いな方にアホとは言われたくありません。」

コウはわざと幸子に聞こえるようにでかい声で言った。

こいつマジしばくしばくしばく!!!

⏰:08/03/25 11:08 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#365 []
イライラしながらリビングへたどり着くと、
姫菜がキッチンのところにしゃがみ込んでいた。

「おい、どーした…」

「姫菜さん!どうされましたか!?」

俺の言葉を遮ってコウが姫菜に駆け寄った。

⏰:08/03/25 23:31 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#366 []
「姫菜さん!?」

姫菜は震えているみたいだった。

まるで昨日の幸子のように手で顔を覆いながら。

「…まさか眼球が…」

コウのそばに寄り、俺は小さく言った。

「いえ…まさかこれは…」

⏰:08/03/26 04:40 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#367 [主です]
震える姫菜の肩を抱きながらコウは親指の爪を噛む。

「…コウ?」

俺と幸子は全く状況が出来ず、ただ二人を見ていた。

しばらくの沈黙の中、
コウが立ち上がり口を開いた。

「ご飯にしましょう」

⏰:08/03/28 04:42 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#368 []
しまった!名前ミスった笑

⏰:08/03/28 04:43 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#369 []
何事もなかったかのようにパンやスクランブルエッグ、サラダなどをテーブルに運ぶ。

「コウ?なぁ状況…」

「何もありません。姫菜さんはお腹が痛いだけです。さぁ、食べましょう」

一式テーブルに運び終わったコウは椅子に座り俺たちにも座るよう促した。

⏰:08/03/28 04:46 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#370 [我輩は匿名である]
書かないの
待ってるから書いて下さい

⏰:08/04/09 22:02 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#371 []
匿名さん

書きます!
ありがとう

⏰:08/04/11 04:39 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#372 []
>>369

朝食の間、誰も口を開かなかった。

コウを見ても、もくもくと飯を食い、俺のスクランブルエッグにまで手を出しただけだった。

「すみませんが、僕少し用事を思い出したのでしばらく外に出ます。」

朝食を食べ終えた後、コウが言った。

⏰:08/04/11 04:42 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#373 []
絶対何かあるな。

俺はコウにばれないようコウの後をつけることにした。

「幸子、ごめんやけど姫菜についててくれるか?」

姫菜は朝食の間も顔色が悪く、とても大丈夫には見えなかった。

幸子は少し困った表情をしながらも、わかったと笑顔で言った。

「なんかあったら電話して。すぐ戻るから」

幸子に手をふり、俺はコウの後を追った。

⏰:08/04/11 04:45 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#374 [我輩は匿名である]
続き読みたい

⏰:08/04/12 13:23 📱:F704i 🆔:8kLwIDhk


#375 [我輩は匿名である]
がんばって!

⏰:08/04/12 21:38 📱:PC 🆔:☆☆☆


#376 []
ありがとうございます!
書きます

⏰:08/04/21 03:36 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#377 []
>>373

30分ほど歩き回ったころ、ようやくコウが立ち止まった。

コウの前にはキレイな一軒家。

玄関先に立ち、コウはふぅっとため息をついた。

横顔しか見えないその表情は、心理は読み取れないが困惑に似た表情だった。

⏰:08/04/21 03:48 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#378 []
コウの指先がインターホンに近づいてゆく。

俺は木陰から息を飲みながら眺めていた。

なぜだ?
冷や汗が流れる。

【ピンポーン】


インターホンが鳴る。

⏰:08/04/21 03:50 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#379 []
一分たっても家の主はでてこない。

2、3度インターホンを鳴らす。

ようやく、玄関の扉が開いた。

コウの知り合い…?

一体どんな奴だ?

ゆっくりと主の顔が現れた。

⏰:08/04/21 03:52 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#380 []
「久しぶりですね」

玄関から顔を出した相手に作り笑いをしながらコウが言った。

いや、作り笑いというよりもバカにしたような、
見下しているように見えるが。

「…何の用?」

相手はボソッと答えた。

⏰:08/04/21 04:29 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#381 []
相手は同じ年くらいの男。身長はコウと同じくらい、あるいはコウより少し高めの今風のチャラっとした外見だ。

こんな奴がコウの知り合い?

俺は謎につつまれた。

「…何の用だよ?あ?用もねーのにくんなよ」

黙っているコウにしびれを切らしたのか、男はイライラした口調で言った。

⏰:08/04/21 04:32 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#382 []
「イライラしないで下さいよ。僕の方があなたよりイライラしてるんですから」

口角を釣り上げ、コウが言った。

「はぁ?久しぶりに来て、何なんだよお前は?」

相手も負けじと言い放つ。

コウはさらに口角を上げた。

「あなたの仕業だと、もうわかっていますよ」

男の右腕には

真っ白なギブスがついていた。

⏰:08/04/21 04:36 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#383 []
「はぁ?俺の仕業?何の話だよ?」

男はバカにしたように笑いながら言った。

「見えない腕は暗闇で活動する。見えないゆえ、それがあたかもあるように思える。目に見えるものだけが全てではない。」

棒読みでコウが言った。

表情はわからない。

⏰:08/04/22 02:16 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#384 []
「何言ってんだお前。きもちわりぃ」

男は物凄く嫌悪感をむき出しにした表情で言った。

コウ、悪いが俺もその発言きもち悪いと思ったぜ。

「では、ギブスを外して見せなさい。あなたの腕を。木陰は日差しに遮られ、あなたの思う暗闇になる。あなたの腕をさらけ出せば、彼の元から消えるでしょう」

⏰:08/04/22 02:20 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#385 []
あいつ何言ってんだ?

とうとう頭がおかしくなったか?

彼の元…?

…あぁ…それにしてもさっきからやけに寒気がする。

足元が冷えるな…

足元…足も………


「うわぁぁぁあ!!!」

⏰:08/04/22 02:22 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#386 []
「…志乃くん…今さらやっと気がついたんですか、やはりあなたはバカですね」

コウがこちらを見ながら呆れたように言った。

「お…お前いつから俺に気付いて…ってか、この腕なんやねん!!」

俺の足には、がっしりと肘から下の腕だけがくっついていた。

⏰:08/04/22 02:30 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#387 []
「ずっと気付いてましたよ。その腕は、こちらの方の腕ですので気にしないで下さい。」

気にするっちゅーねん!

俺は足をバタバタさせたが、腕は頑固して離れない。

「正志くん。離してあげなさい。」

ため息がてらコウが男に言った。

⏰:08/04/22 03:22 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#388 []
「だから俺関係ないから。マジ意味わかんねー」

正志らしき男はフイとそっぽを向いて答えた。

「正志くん、いい加減にしないと僕、怒ることになりますよ。」

コウが親指を口元に当てた。

⏰:08/04/22 03:23 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#389 []
爪を噛むのだろう。
コウはイラついた時は爪を噛む。

コウが口を開けたその瞬間、

俺の足元から腕が消えた。

「…ふん……神谷、お前相変わらずだな。」

正志が口角を上げて言った。

⏰:08/04/22 03:25 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#390 []
「それはお互いさまですよ。」

俺の足元を確認した後、コウも口角を釣り上げた。

「わりぃな。ささやかな歓迎だ。」

正志はギブスをしていない方の腕をあげる。

「歓迎にしては度がすぎています。」

正志の腕をガシッと掴みながらコウが言った。

二人はお互いニッコリと笑い、まるで俺の存在を
忘れているかのように。

⏰:08/04/22 03:29 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#391 []
【第九章 親友】

俺は

コウは俺だけしか

友達がいないと思っていた

だから俺がいないと
俺が一緒にいてやらないとって

でも

本当は俺の方が

コウを必要としていた―

⏰:08/04/22 03:32 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#392 []
俺は、ただ二人の再会を眺めているだけだった。

コウと正志は久しぶりの再会を、とてもとても嬉しそうに笑いあっていた。

以前、コウが俺に言ったセリフ。

【僕は友達と呼べる方はいませんでしたから】

あれは

嘘だったのか―?

⏰:08/04/22 03:35 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#393 []
「…―乃くん?…志乃くん!」

コウに肩を掴まれハッとする。

「何ぼけーっとしてるんですか」

笑いながらコウが言った。

俺が見たことのないような無邪気で優しい笑みをして。

「…や、何でもない」

なぜだか俺は

すごく悲しくなった。

⏰:08/04/22 03:37 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#394 []
寝ます。
今まで放置気味でごめんなさい見てくれてる方いますか?よかったらコメント下さい

⏰:08/04/22 03:38 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#395 [我輩は匿名である]
>>394
コメ求めるなら『感想板に』とか書けよ

ただでさえ『あげ』とか有りすぎて読みにくいのに

自分勝手な主だな

⏰:08/04/22 06:33 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#396 []
ぎゃあ!
すみません
感想版ひっぱってきたのでこちらにお願いします
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2368/

自分勝手とか言わないで

⏰:08/04/22 07:20 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#397 []
>>393

こんなにも感情を表したコウを、俺は今まで見たことがあっただろうか。

コウは俺の目の前でニッコリと笑っているが

俺はなぜだかコウが

すごく遠い存在に思えた。

⏰:08/04/23 02:27 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#398 []
「志乃くん、顔色悪いですが大丈夫ですか?」

コウが俺を覗きこむ。

「大丈夫やって!俺、別荘戻るわ!」

コウに作り笑いをし、その場から離れようとした。

が、

⏰:08/04/23 03:14 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#399 []
「説明、聞かないんですか?」

俺の腕を掴み、コウが言った。

⏰:08/04/23 03:16 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#400 []
説明?

なんの説明だよ。

お前とコイツの関係を説明すんのか?

「…彼は…」

「説明とかいらん」

コウの言葉を冷たく遮って、俺はその場を離れた。

イライラする。

「…あいつ誰やねん…」

⏰:08/04/24 03:39 📱:P904i 🆔:☆☆☆


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