黒蝶・蜜乙女
最新 最初 全
#901 [向日葵]
どうして皆そんな心配そうな顔ばっかするの?
あ、そっか。
私が原因か。
しっかりしないと。
永遠の別れなんかじゃない。
蜜「小川君。一時間目、何だっけ?」
小川君の目は、何かを聞きたそうだったけど、すんでの所で止めたみたい。
小川「日本史だよ。」
蜜「そっか。一時間目からはキツイなぁ。」
しっかり……。
だから私はまた会う時までは、その名前は呼ばない。
:07/08/12 00:03 :SO903i :ApATvOLs
#902 [向日葵]
空を見上げた。
今日も青空。
あの漆黒の羽の君は
またいつの日にか……。
・・・・・・・・・・・・・・
そして私はいつの間にか3年生になろうとしていた。
意外にも早く過ぎて行った。
ラフィーユ達も約束を守って私の側にずっといてくれて、寂しくはなかった。
時々思い出すあの姿は、少し悲しさを伴う事もあった。
でも胸には“いつか会える”。
それだけを信じて乗り越えて行った。
:07/08/12 00:16 :SO903i :ApATvOLs
#903 [向日葵]
『月、綺麗……。』
自分の部屋で、真っ暗のままベッドの上に座って星が一杯の空を見上げる。
そういえば、髪の毛伸びたなぁ。
そろそろ切るべき?
でもラフィーユみたいに長くもしてみたいしなぁ。
コンコン
ラフィーユ「蜜。いいか?」
ノックした相手は今正に憧れていた対象のラフィーユだった。
珍しい。
ラフィーユが私の部屋を訪ねるなんて、これまで2、3回くらいしかなかった。
:07/08/12 00:22 :SO903i :ApATvOLs
#904 [向日葵]
蜜「入って。」
ラフィーユは静かに入って来て、ドアに立ったままもたれた。
ラフィーユ「眠れないのか?」
蜜「んー…。ちょっとね。月が綺麗って、思ってただけ。」
ラフィーユはクスッと笑ってベッドまで近づいて、側に座った。
蜜「ラフィーユ…?」
ラフィーユ「泣いても、いい…。」
……え。
ラフィーユも月を見上げる。
月の光に照らされた白い肌がとても綺麗だと思った。
:07/08/12 00:28 :SO903i :ApATvOLs
#905 [向日葵]
ラフィーユ「正直、一年前、泣かなかったの、驚いた。」
一年前……。
その姿は、完璧の様で朧気だ。
ラフィーユ「私の、喋り方おかしい訳、話すな。」
それはラフィーユがまだ5つの時の話。
ラフィーユは親に捨てられたショックで言葉を無くしてしまった。
そんな時、いつも側にいてくれたのがオウマ君だった。
喋れなくてもまるで会話してる様に毎日を楽しく過ごした。
:07/08/12 00:33 :SO903i :ApATvOLs
#906 [向日葵]
ラフィーユ「そんなある日、私、声出た。……でも。」
喋り方を忘れてしまった。
ぎこちない単語の繋ぎ合わせは、笑われる対象にもなった。
ラフィーユはまた口を閉ざしてしまった。
ラフィーユ[皆笑う。なら声なんていらなかった。これじゃ……]
オウマにも笑われてる。
そこへ、オウマ君がやって来た。
オウマ[よ!ラフィーユ!]
:07/08/12 00:36 :SO903i :ApATvOLs
#907 [向日葵]
逃げたかった。
笑われる。
オウマのさげずむ笑い顔なんて見たくなかった。
持たれて座ってた壁から立ち上がって、ラフィーユはその場を逃げようとした。
オウマ[ラフィー待って!]
ラフィーユはピタッと止まる。
ラフィー……?
オウマ[何で、今日、喋らないの?]
おずおずとオウマの方へ振り向く。
:07/08/12 00:47 :SO903i :ApATvOLs
#908 [向日葵]
ラフィーユ[私、喋り方、変だろ……?]
怖くて目を瞑った。
オウマもきっと笑う。
せっかくずっと側にいてくれたのに。
これじゃ、喋れない方がマシだった……。
オウマ[変って……何で?ちゃんと気持ちは伝わってくるよ?]
私は目を開く。
オウマ[だから、もっと一杯喋ってよ!ラフィー!!]
私はラフィーユの話を黙って聞いてた。
ラフィーユは月を見つめたままだ。
:07/08/12 01:02 :SO903i :ApATvOLs
#909 [向日葵]
ラフィーユ「私にとって、オウマ大切。蜜もそうだろ?」
ダメ、その名は言わないで。次に会うまでは言わないって決めてたの……っ。
ラフィーユ「蜜にとって、セツナ大切。大切な人いない。それは一番辛い事。だから我慢する、よくない……。」
溢れ出した。
名前を形にした瞬間、全ての決心が粉々に砕け去って行った。
頬に熱く、そして冷たい滴が流れて行く。
蜜「ひ……っどいなぁ……ラフィーユ…。言っちゃうんだもん名前……。」
:07/08/12 01:10 :SO903i :ApATvOLs
#910 [向日葵]
喉の奥で息が絡まる。
呼吸が上手く出来なくなる。
蜜「寂し…。で、も…永遠の…別れじゃないからって……私の為だからって思って……ひ、ひ……っしで押し殺して……。」
何度も悲しみに体が押し潰されそうになって、それでも踏ん張って……。
蜜「早く……会いたい……。声……聞き、た……。」
ボロボロ哀れに落ちる涙を、ラフィーユは綺麗な長い指で拭ってくれる。
そして細い腕で私を優しく包んでくれた。
:07/08/12 01:18 :SO903i :ApATvOLs
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194