「好き」と言いたい。
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#102 [あんみつ]
05、亀裂
この頃の私は、自分の事で精一杯で、変わってゆく周りの人達の様子に、気付く事ができなかった。
そんな私だから、自分の事でさえ、よく分かっていなかったんだと思う。
それでも、自分の涙によって、私は嫌でも自分の気持ちと正面から向き合わなきゃいけなくなった。
けど、それさえも恐れた私は、同じ事ばかり考える無限ループから、抜け出そうと必死だった。
:07/07/28 16:31
:N901iC
:lVLMhbPg
#103 [あんみつ]
――――――――
「俺は、ねこちゃんの事が好きだ」
洋平君は、真剣な瞳で私を見つめる。
顔が熱い。
背中が汗ばむ。
いくら私でも分かる。
洋平君は、本当に私の事・・・。
:07/07/28 16:33
:N901iC
:lVLMhbPg
#104 [あんみつ]
「あっあの・・・けど私は」
「健二の事!!・・・まだ、好きでもいいよ」
私の言葉は、洋平君に遮られた。
「・・・俺が、言いたかっただけだから。・・・ほっとけなかっただけだから」
洋平君は、私の手にかばんを持たせた。
「今すぐ付き合ってって言ってる訳じゃないから。・・・心に余裕ができたら、俺の事ちゃんと考えてみて欲しい。返事はそれからでいいから」
そう言って、洋平君は自転車をUターンさせる。
:07/07/28 16:38
:N901iC
:lVLMhbPg
#105 [あんみつ]
「・・・じゃ」
自転車を漕ぎ始めた。
「・・・洋平君!!」
私は何故か呼び止めていた。
ただ、何か言わなきゃと思って。
洋平君は、止まって私を見る。
「・・・ありがとう」
ぎりぎり洋平君に聞こえるぐらいの、小さい声で私は言った。
「・・・またな!!」
洋平君は笑顔で言って、再び自転車を漕ぎ始めた。
私はしばらく、その後ろ姿を見ていた。
:07/07/28 16:40
:N901iC
:lVLMhbPg
#106 [あんみつ]
素直に嬉しかった。
告白なんてされたのは生まれて初めてで、自分の事を見てくれる人がちゃんといるって、実感できたみたいで、嬉しかった。
『俺は、ねこちゃんの事が好きだ』
『・・・好きなんです』
不覚にも私は、洋平君とあの子の姿を重ねてしまった。
:07/07/28 16:49
:N901iC
:lVLMhbPg
#107 [あんみつ]
(・・・健二、何て答えたんだろ・・・付き合っちゃうのかな・・・)
私はベットに転がって天井を見た。
目から涙がつたい、布団に吸い込まれる。
『・・・もう、健二のために泣くなよ』
泣きながらも、洋平君の想いに少し救われてる自分がいるのを、私は否定できなかった。
:07/07/28 16:51
:N901iC
:lVLMhbPg
#108 [あんみつ]
――――――――
次の日は雨だった。
静かに降り注ぐ雨の音が、町を埋め尽くす。
私は健二を待たずに、重い足で学校に向かう。
真実を知るのが怖かった。
私が変わっても、健二は変わらないって、信じていたかった。
その内、顔を合わす事になるのは分かってた。
けど私は、少しでもそれを先延ばしにしたかったんだ。
:07/07/28 19:40
:N901iC
:lVLMhbPg
#109 [あんみつ]
――――――――
「・・・ねこ」
「あ、奈津美おは」
言い終わる前に、私は奈津美に手を引っ張られた。
私は黙ってついて行く。
階段を上がって、着いたのは屋上。
昨日の洋平君の暖かい手が思い出される。
雨が降る朝の屋上には、誰もいなかった。
:07/07/28 20:33
:N901iC
:lVLMhbPg
#110 [あんみつ]
「また、そんな目して・・・。学校休めば良かったのに」
ドアの所にある屋根の下で、奈津美は手を離した。
屋根から落ちた大きな水滴が、足元に水を散らした。
「だって・・・私、皆勤賞狙ってるし」
皆勤賞を狙ってるのは本当。
私の言葉に、奈津美は少し微笑んだ。
「話したくなったら、話してね。たいした事言えないけど、聞くならできるから」
「・・・うん」
:07/07/28 20:35
:N901iC
:lVLMhbPg
#111 [あんみつ]
まだ、奈津美に話す訳にはいかない。
自分の中で、何もまとまっていない。
幼なじみに戻れないと分かって、自分がこれからどうしたいのか。
どうするべきなのか。
「・・・教室戻ろっか」
私がまだ話さないと分かったのか、奈津美が言った。「・・・うん」
(ありがと、奈津美)
私のペースを守ってくれる奈津美の優しさが、有り難かった。
:07/07/28 20:37
:N901iC
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