黒蝶・蜜乙女―第2幕―
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#20 [向日葵]
その相手は、男の僕でも見とれてしまいそうな綺麗な顔でこちらを見る。
そして可笑しそうに顔を歪ませて僕に一言言った。
セツナ「ジロジロ見てんなよ。」
その言葉に我に返った僕は、顔が赤くなるのを感じながら鞄を持っておぼつかない足で走って帰った。
走りながら色々考えた。
:07/08/13 20:03 :SO903i :tJdVPUMQ
#21 [向日葵]
本山は無理矢理されたんだとか、あの人が悪いんだとか……。
僕にはどうにも出来ない悩みの様なムシャクシャした気持ちのまま家に帰って、ベッドに沈み込んだ。
僕はまだこの頃僅かな期待を胸にしていた。
本山の微妙と言う言葉を信じて、いつか僕に振り向いてくれるだろうと気を緩めていた。
……その可能性は無く、二人が結ばれたと気付いたのは、バレンタインの時だった。
本山からチョコをあげると言われた時、正直「マジで?!」の言葉で脳内が一杯だった。
:07/08/13 20:09 :SO903i :tJdVPUMQ
#22 [向日葵]
そのすぐ後に「友チョコだ」と聞いた時は、ピンク色の脳が崩れ去って一気にブルーになった。
相変わらず思い上がりが激しいなと反省した。
でもこの時に確定の判子を押した訳じゃ無い。
本山が帰ると言って教室を出た後、密かに後をつけて行った。
辿り着いた先は屋上だった。
息を切らして、心なしか浮足だっている本山を見ながら、屋上に何が待っているのか分からなかった。
そしてドアの隙間から見たその光景……。
僕は一生忘れる事が出来ない気がする。
:07/08/13 20:14 :SO903i :tJdVPUMQ
#23 [向日葵]
夕暮れがかった空の下の冷たい風が吹く中で、セツナと本山がいた。
本山は自覚がないだろうけど、彼を見る目は愛しさで満ちていた。
そして彼の顔に手を触れていたその姿は、なんだか泣きたくなった。
それは失恋したからとかじゃなくて、とても温かく感じたから。
心が、とても満たされた気がしたから。
だから余計に痛いほど分かってしまった。
―――僕には遅かったんだと……。
:07/08/13 20:21 :SO903i :tJdVPUMQ
#24 [向日葵]
―――――……
「……君。小川君!」
小川「あ、……何?」
現実だ。
いつになく物思いにふけってしまった…。
蜜「委員会、始まるから行こう。」
気付けば時間は3時半。確か委員会は4時から。
まだ30分もあるのに真面目だなー。
そんなトコもたまらなく好きだ……。
ぼんやりしている僕に、彼女は首を傾げた。
そんな彼女に僕は微笑む。
:07/08/13 20:28 :SO903i :tJdVPUMQ
#25 [向日葵]
小川「本山、後で時間ある?」
・・・・・・・・・・・・
「では委員会を始めます。」
長机に二人で座る。
配られたプリントに目を通す。
蜜「ねぇ、後で何かあるの?」
僕は思わず笑ってしまった。
本山が素で聞くからだ。
僕がすることなんて読者でも分かるハズだ。
そう、告白だ。
:07/08/13 20:42 :SO903i :tJdVPUMQ
#26 [向日葵]
普通ならそんな事容易に考えられるのに、本山は違うみたいだ。
蜜「な、何?」
小川「クスクス。ゴメン。でも内緒なんだ。あと、約束してくれない?後で何があっても普段と変わらないでいてくれるって。」
大きなヒントをあげたにも関わらず、本山は全く訳が分かっていないようだった。
蜜「?うん……。わかった。」
それからは委員会に集中した。
僕は不思議と緊張はしていなかった。
フラレると分かっている開き直りかな?
:07/08/14 02:23 :SO903i :BHHisEIE
#27 [向日葵]
でも言う言葉はあれこれ考えていたりした。
レパートリーが少ない僕は、率直に好きだと伝える事にした。
・・・・・・・・・・・・・・・
ガラガラ
委員会が終わって、僕達はもう誰もいない教室へと帰ってきた。
蜜「で、どうかした?」
僕がこれから何を言うか分かってない本山は無邪気に聞いてくる。
僕は胸に手を当ててみた。変なの。別に緊張してるつもりないのに、バクバクいってる。
:07/08/14 02:26 :SO903i :BHHisEIE
#28 [向日葵]
蜜「小川君?」
瞬きを何度かしながら、本山が見つめてくる。
そんな本山に、僕は微笑み返す。
小川「約束、ちゃんと守ってね。」
蜜「勿論!任せて。」
にっこり笑う本山に笑顔を向けたまま、僕はいよいよ想いを告げる……。
小川「好きだよ……。」
蜜「…………え?」
小川「俺ずっと、本山が好きだった……。」
:07/08/14 02:30 :SO903i :BHHisEIE
#29 [向日葵]
本山は固まった。
笑みを残したままの口元は段々と力を無くして元の状態に戻る。
そしてまた、薄く微笑んだ。
蜜「ありがと…。」
小川「……うん。」
本山の笑みが徐々に崩れて、悲しみに顔がいがむ。
蜜「……っありがとう……。」
うん。分かった。
そのありがとうは、ごめんなさいも含まれているよね。
蜜「待ってる…、人がいるから……。でも、ありがとう……。」
涙を拭きながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ本山。
:07/08/14 02:34 :SO903i :BHHisEIE
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